【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

ザシャとディアナ

--- ヒルデガルド Side ---「ヒルダ!」「お兄様・・・」
なんか面倒な雰囲気がある。
「ヒルダ。その・・・なんだ・・・すまなかった」「お兄様が謝るような事は、無いと思いますが・・・」「いや・・・そうだな。・・・ヒルダ。アルはどうした?」
本当に、お兄様は、何かと言えば、”アルはどうした”ですからね。これでは、クリス姉様が、二人の関係を疑っても仕方がないことでしょう。王族に、友達ができないと言え・・・アルノルト様が、初めての友達だとしても・・・。
「お兄様。アルノルト様は、エルフの姫君とドワーフの姫君を、助けに行っています」「ザシャとディアナを、助け行ったのだろう?そんな事は解っている。その後、"何か連絡があったか"と、聞いている!」「いえ、何もありません」
実際に、アルノルト様からの連絡はない。どうせ、何か新しいおもちゃを見つけて、それに夢中になっているのかも知れない。今回は、クリス姉様の部下になっている、カルラがついている。本当に、何かあれば連絡してくるだろう。お兄様も、そのくらいの事は解っているのだろうけど・・・。
「なっお前、それでいいのか?」「良くはありませんが、ここから、ヘーゲルヒやエルブンガルドに、移動できるわけではありませんし、アルノルト様から、難民の事を頼まれてしまっています」「・・・そうだな。」「それで・・・なんだ・・・」「お兄様。お父様の事なら、覚悟を決めています。それに、お兄様は、私よりも、クリス姉様の所に行くべきです」「・・・そうだな。すまん」「それに、今、ユリアンネやラウラやカウラやアンネリーゼが、王都の状況を、眷属を使って調べてもらっています」「そうだったな」
ユリアンネとルラとカウラとアンネリーゼは、ノース街に来てから、神殿で過ごす事が多くなってきている。対応するのも、一人が出て来る事が多くなっている。しかし、アルノルト様から頼まれているのか、ノース街や王都の様子を、眷属を使って調べている。今回の事も、大筋で把握しているのは、もしかしたら、あの4人かも知れない。
「今から、報告を聞きに行きますが、お兄様も来ますか?」「あぁそうさせてもらう」
お兄様と神殿に向かう。
「ユリウス様。ヒルデガルド様。今日は、どういった御用ですか?」「神官長。ユリアンネ殿かラウラ殿かカウラ殿かアンネリーゼ殿から、王都の様子をお聞きしたい」「解りました。少しお待ち下さい」
隣接する小部屋に通された。そこで5分ほど待っていると、ラウラが部屋に入ってきた。
「ユリウス様。ヒルダ様。ご足労ありがとうございます。王都の様子という事ですが・・・」「ラウラ。アルからの連絡は無いのか?」
お兄様がいきなり、ぶっこんできた。苦笑するしかない。
「ユリウス様・・・。私達の所に、アル様からご連絡はありません。ただ、繋がりは感じます。ですので、アル様は大丈夫です」
ラウラ達は、アルノルト様が生きている事は、繋がりを感じる事で、実感出来る。これは、私にはない能力だ。そのラウラが言っているのだから、無事なのは、間違いない。それで、連絡をしてこないというのは、まだ何も伝達出来る事が発生していないか、とんでもない問題に遭遇しているのかのどちらかだろう。でも、なんとなく・・・新しいおもちゃを入手したが・・・。
「・・・そうか・・・」「お兄様!!」
「あぁそうだった。ラウラ。それで、王都の様子はどうだ?」
ラウラは、じっと、私とお兄様を見つめて居るだけだ「ラウラ。覚悟はできている。教えてちょうだい。お兄様も、私も大丈夫」「はい」
それから、また少しの沈黙があって、ラウラは口を開いた「王弟・・・私達は、偽王と呼んでいますが、偽王は、先程、皇太子とホルスト・フォン・フォイルゲンを、国王暗殺の容疑で捕えたと・・・そして、即刻死刑にしたと発表しました」「なっ!」「お父様・・」
「ユリウス様。どこに行かれるのですか?」「わかりきった事を聞くな。ラウラ!偽王を殺しに行く!」
入ってきたドアが開いた「ユリウス様。おやめ下さい」「クリス!」「クリス姉様」「ラウラ。ありがとう。後は、私が話します。引き続き、王都と近隣の様子をお願いします」
ラウラが、クリス姉様に一礼して、部屋から出ていく。「クリス。どういう事だ!」
お兄様が、クリス姉様に詰め寄る。
「ユリウス様。”どういう事”とは?皇太子様とお父様の事ですか?それとも、私がこの場に来た事ですか?」「両方だ!」
クリス姉様は、ため息のような物を吐き出してから「だからです。ユリウス様。アルノルト様も、ユリアンネ達も、皆自分が出来る事をやっています。ユリウス様。今、貴方がやらなくてはならない事はなんですか?」「・・・それは・・・」「ユリウス様。お父様と皇太子様。それに・・・多くの者が覚悟を決めています。貴方はどうされたいのですか?」「・・・」「アルノルト様は、私達の為に、いろいろ準備をされていました。ユリアンネ達が王都に眷属を放っているのも、そうです。ユリウス様。貴方は、どうしますか?」「・・・・」「クリス姉様」
”ふぅ”とクリス姉様は、息を吐き出してから
「ユリウス様。これをお渡ししておきます」「これは?」
小さな箱が、クリス姉様から、お兄様に手渡された。
「今日、私がここに来た理由です。王都の神殿に努めていた者が、持ってきたものです。ユリアンネ達の眷属が護衛して、本日ノース街の神殿に避難してきたそうです」
お兄様は、渡された小箱の蓋を開ける。
「クリス!これは・・・」「・・・」
お兄様が小箱から取り出したのは、”玉璽”だったのです。国政を司る時に、必要になる物だったはず。貴族に叙する時や、任命を行う時には、必要になる物だ。それが、ここにあるという事は、お父様やフォイルゲン様は、自分たちが殺される事が解っていたという事なのでしょうか?
「ユリウス様。よく考えて下さい。今、貴方が、王都に行って何ができますか?アルノルト様と連絡が付いたとして、何ができますか?貴方が、”しなければならない事”は、何なのですか?」「クリス姉様!」「ヒルダ。いい。俺の覚悟が足りなかった。すまん。クリス」「いえ・・・」
お兄様も、クリス姉様も、黙ってしまった。「そうだな」
お兄様が重い口を開いた「そうだな。俺がする事は、俺が無事である事を公表する事と、王都に居る偽王に対する、反対勢力をまとめる事だな」「そうです。お飾りになって下さい」「わかった。それが一番良い事なのだな」「はい」
お兄様も、覚悟を決められたようです。私も、覚悟を決める必要がありそうです。アルノルト様と一緒に生きる事は決めています。それは揺るぎない気持ちです。それと同時に、私は王族でもあった者です。そんな者が表に出て、良い結果が出るわけがありません。私は、お兄様が王位に就いた時に、表舞台から姿を消すことにしましょう。アルノルト様やクリス姉様に話をして、今後の身の振り方を考える必要が・・・。でも、アルノルト様の正妻の座は誰にも譲りません。
--- ザシャ Side ---「ディアナ!」「うん。大丈夫。先を急ごう!」
私達は、ヘーゲルヒ街の商店で、働いていた。現実には、責任者という立ち位置に居るが、実務や経理的な事は、専門家にまかせている。私達は、本家との連絡をしっかりする事が役目になっている。
本家は、エルブンガルドとドワーフの里とノース街が含まれている。長老衆とノース街にある、行政区に連絡をする。コンラート殿に頼むことや、アルに直接頼む事が、私達の役目だ。
ヘーゲルヒ街が、魔物とアンデット兵の襲撃を受けた。誰が攻めてきたのか解らない。解っている事は、アルが準備していた事が、有効に働いたという事だ。街は混乱の局地だったが、マナベ商会やエルフの商会は、敷地内を覆う結界に守られている。
アルが設置していったもので、緊急時に作動させるように言われていた物だ。結界は、外部から内部に入る為には、一定の手続きを行うか、識別札を持つ必要がある。その為に、魔物やアンデット兵は、結界を越えてくる者はいなかった。
エルブンガルドが襲われたという一報が飛び込んできた、商会に居れば安全な事は解っていた。でも、私とディアナは、商会を出て、エルブンガルドに向かった。エルブンガルドは、結界があるので、大丈夫だと思うが、それでも心配だった。私達が行って、何が出来るのかは解らない。もしかしたら、足手まといになるだけかも知れなかったが、何もしないで居る事が出来なかった。そして、もう一つは、エルブンガルドが、危ないとなったら、アルが来るかも知れない。アルの為に、私達が何か出来るかも知れない。

二人で、交代で休みながら、魔物やアンデット兵がいるかも知れないと思い、索敵をしながら、森の仲を進んでいた
「ザシャ様!」
正面に現れた者が、私の名前を叫んだ。名前は解らないが、見覚えがあった。エルブンガルドに来ていた、氏族の関係者だろう。
「何が有ったのですか?」
体中、傷だらけだ。初級の癒やしの魔法を唱える。何もしないよりは、”まし”というレベルだけど許して欲しい。
「エルブンガルドが・・・襲われました、魔物の数は、数万・・・結界が破られて・・・何度か、結界を張り直しては居るのですが、都度破られてしまっています・・・私達は、長老衆の命令で、ヘーゲルヒ街に向かっている所です」「・・・わかった。この先は、安全だと思うけど、注意して、ヘーゲルヒも魔物に襲われていたけど、数はそんなに多くなかった。もう倒されていると思う」「わかりました。ありがとうございます。ザシャ様は?」「私達は・・・エルブンガルドに向かいます。多分、話を聞いた、アルノルト・フォン・ライムバッハ子爵が来るはずです。その時に、力になりたい」「・・・わかりました。道中。魔物や兵士がいます。お気をつけて・・・」「ありがとう」
エルブンガルドから逃げてきた者と別れてから、少し考えた。実際に、このまま、エルブンガルドに向かうのがいいのか?それとも、戻ってアルの到着を待つほうがいいのか?
「ザシャ」「なに?」「何か来る!」
木のから、人が現れた。『何かとはひどいですね。ドワーフの姫君は・・・』「なにこれ?」「頭に響く」
『おやおや。念話をご存じないのですか?アルノルト君は、君たちに教えていなかったのですか?』「え?アル?」「なんで、アルの事を・・」
『知っていますよ。子供の頃からよく知っていますよ』「え?クラーラ!」
『おやおや、エルフの姫君は、私の事を知っていたのですね』「・・・・」「・・・・」
アルが殺したいほど憎んでいる男が目の前に居る。ラウラを殺した相手。そして、アルの父親を裏切った男。
『今回は、私達の仕事では無いので、でしゃばるつもりはなかったのですがね』「なっどういう・・・事?」
『ふぅ・・・幸せな人なのですね』「なに?」
『質問すれば、誰かが答えてくれる、そんなぬるい・・・環境にいたのでしょう。幸せな事だった・・・のでしょうね』「・・・」
いきなり、ディアナが、剣を脱いで、切りかかった「ザシャ!逃げて、早く逃げて」
『おやおや。分身体ですから、少し手加減が難しいのですけど・・・ね!』
それだけいうと、クラーラは、ディアナを蹴飛ばした。その威力だけで、ディアナは10m以上先の木に飛ばされた。
「っぐふ」
それでも、口から血を吐き出しながら、立ち上がった。剣を持つ手が震えている。「ディアナ」「ザシャ。何している。早く逃げて!」
ディアナは、必死に立ち上がっている。
「私も・・・」「ダメ。ザシャ。早く、アルに、エルブンガルドへ・・・ぐっ」
クラーラの手刀が、ディアナの肩に食い込むのが見えた。
『つまらないですね。ラウラの方が楽しかったですね』「なっ」
ディアナ・・・。
目の前で、ディアナが崩れ落ちるのが解った。何が起こっている、逃げなきゃ・・・ダメ、足を動かさないと・・・。
「ざ・・・しゃ・・・にげ・・・て・・・」
「あぁぁぁあぁっぁぁぁ!!!!!!!”風の精霊よ”「遅い。アルノルト君に、教えてもらわなかったのですか?」」
「え?なに?」
なんで、私の胸から腕が?
「ア・・・ル・・・」
--- クラーラ Side ---今回の仕事は、私達が絡んでいないから、つまらない監視業務だけだ。そもそも、私が出てこなくてもいいとは思っていたが、分体が使えるのが、私だけだからしょうがない。
ヘーゲルヒ街も、エルブンガルドも問題なく、パニックになってくれている。今頃、豚と猿が王都で暴れているのでしょう。そちらの方が面白かったのと思うのですけどね。
さて、この転がっている二人の有効活用でも考えますか?言われている程ではありませんでしたね。
エルフの姫君も、もう少し魔法発動速度が早くなければ、実戦では役立たないでしょうし、ドワーフの姫君は、力は有りましたが、それだけでしたね。あと、数年アルノルト君と一緒に居て、実戦を繰り返していれば、使えるようにはなったと思いますが、残念ですね。
まぁこれ以上、訓練の必要も無いでしょうし、ゆっくり休んでいただきたい。
そうそう、アルノルト君への伝言役になってもらいましょう。
彼女たちを、アンデットにする事も考えましたが、そのためにわざわざ呼ぶのも面倒ですし、ここは、さっきの男を使いましょう。
そうそう、腐らないようにと、アンデット化しないように、しておきましょう。アルノルト君へのお土産ですからね。しっかり、処理をしておかないとなりませんね。
直接、アルノルト君の絶望する顔が見られないのは、残念ですが、これはしょうがありませんね。今頃、王都で、豚や猿の対応をしているのでしょうからね。落ち着いたら、アルノルト君の顔を見に、ノース街に向かうのもいいかもしれませんね。
その前に、王都での火遊びが収束してくれればいいのですけどね。さて、帝国に戻って、ピクニックの準備を始めないとなりませんね。
楽しくなりそうな事はいいのですが、あまり忙しくならないといいですね。また、どっかの貴族の食客にでもなりましょうかね。でも、アルノルト君程に楽しそうな子に出会えそうに無いですよね。暫くは、王国で遊びを見つけるのがいいのかも知れないですね。

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