【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

北のダンジョン

「あるじ殿」「あぁそれは、こうして作れば出来る」「おぉぉヴァルマ。手伝ってくだされ」
何をしているのかというと、神殿の様な、教会の様な建物に、迷宮ダンジョンへの入口があったので、シュトライト達が野営出来る場所を、皆で作っている所だ。特に、後方支援を行う。ヒルダ。ナーテ。ヴァルマ。フルール。アン。ルトを中心に、野営地の設営を行っている。ベースを作ったら、後はシュトライト達に任せる事になっている。結界には、ポケコンとナビを並行して使う事にした。操作は、シュトライトに教えてある。
一通りの野営地ができた事が確認できた。「シュトライト。俺達は、そろそろ攻略を始めるよ。1ヶ月程度で、一旦戻ってくる予定だけど、遅くなるようなら、連絡を入れる」「はい。かしこまりました」
俺達は、順番に、迷宮ダンジョンに入っていく。そこは、地下室の様に、石畳でできた迷路になっている。ナビを起動して、ユリアンネに渡す。自動マッピング機能が動作すれば、道に迷う事も少ないだろう。
やはり、死んでいるのか、魔物が出てこない。順調に、5階層まで降りてきた。マッピングも問題ないようだ。
今日は、野営準備の確認の為に、早めに休む事にした。今までの迷宮ダンジョンと同じなら、生き返らせた後で、調整が出来るだろう。ダンジョン・ダンジョンしている様な作りも嫌いではないが、建物の下は、やはりこういう石畳迷宮が、よく似合う。
6階層に向かう階段の近くの部屋に、休む場所を作成する。生き返らせたあかつきには、安全地帯にするつもりだ。簡易宿泊施設を作る事にした、男女別のトイレと風呂も用意してある。後々、使う事も考慮して、丁寧に作る事にした。建材は、迷宮に沢山転がっていた。部屋の中に、石畳が積み重ねられている場所があったので、それを建材に使う事にしている。
無事、今日の宿泊所が完成した。これから、5階層毎をめどに、簡易宿泊所を作っていく事にする。
「なぁあるじ殿」「なに?」「魔物も獣も出ない場所を誰も攻略しようとしないのじゃ?」「メリットが分かりにくいから、じゃないのかな」「メリット?」「うん。まず、魔物が必ず最後まで出ないとは決まっていないよね」「あぁそうじゃな」「その上、何階層まで有るかわからないよね」「そうじゃな」「俺達みたいに殆どの人間が、ステータス袋を使えるパーティでもない限り、大量の食料を持ってこなければならないよね。今日も、ゆっくり進んだと言っても、5階層がやっとだよ。急いでも、そんなに大きくは変わらないとよね」「そういう事じゃな。魔物が出ないとも限らないから、ある程度の人数は必要になる。人が増えれば、飲食の運搬が必要になる。それらを運ぶ人足も別途必要になって、人足が増えれば、また食料が必要になる」「そうだね。それで、今日までで俺達が得た物って何?」「・・・そうじゃな。メリットが薄いって事だな」「そう、攻略したら、全部もらえるって解っていても、精神的にもタフじゃなければやっていけないだろう?」「なんとなく、楽に来ていたけど、これが異常な状態だって事を忘れていた」「異常なのか・・・わからないけど、これで魔物が出れば、素材を得るというメリットが加わるから、多少は違うのだろうけどな」
素材が出れば、迷宮ダンジョンを潜る意味が出てくる。素材が取れなければ、現金化出来る物を得るのが難しい。その上に、食料もただではない。収支を考えれば、何も出ない死んだ状態の迷宮ダンジョンに潜る意味は皆無と言ってもいいだろう。
「あるじ殿」「ん?」「生き返らせると、言っていたが、どうするのじゃ?」「あぁその辺りは、テディが詳しいよ。後で、テディから聞いて、ここが同じ方法で生き返るかわからないけど、前の所は、魔力の充填を行えば、生き返ったよ」「そうなのか?あるじ殿。わらわも一緒について行っていいのだよな?」「あぁいいよ」
一応、予定では、二週間程度は、下に降り続ける予定でいる。マッピングのおかげで、びっくりする位に、簡単に下に行く事が出来る。石畳がまだ続いていて、風景的な違いがない事から、迷いそうだが、マッピング機能のおかげで、通った事がない場所を探す事で、下の階段を見つける事が出来る。5階層目で、簡易宿泊施設は作っているが、ここ2日間は、一日で15階層進んでいる。今は、35階層の簡易宿泊施設で休んでいる。
「お兄様。ナビを見比べてみたのですが、やはり、30階層位までは、徐々に広がって、その後は縮まっているようです」「そうか、勘違いではなかったのだな」「はい。でも、良く気が付かれましたね」「あぁ実際に気がついたのは、カウラだけどな」「すごいですね。カウラは」「あぁそうだな。それでどうなのだ?」「あっはい。計算してみましたが、多分100階層辺りで、一部屋の広さに、なります」「そうか、100階層は覚悟しなければならないという事だな」
ナーテとヴァルマが不思議そうな顔をしている「なぁ兄ちゃん」「どうした?不思議そうな顔をして?」「ユリ姉もだけど、なんで、100階層って思うの?30階層が一番広くなっているのだろう?それなら、59階層で終わって、60階層が目的地じゃないのか?」「そうか・・・説明が難しいな。アン。説明任せていいか?」「はい。はい。いいよ。ナーテだけじゃなくて、ヴァルマも納得していないって顔だね。二人に説明するよ」
アンが、ナーテとヴァルマを連れて行った。残った面子も、早々に休む事にしている。100階層だと仮定すれば、今のペースで降りれば、十分日程的には余裕が持てる。
何もなければ・・・だけどな。「あるじ!」
肩に止まっている、エステルだ。最初の頃は、ご主人様とか呼んでいたのだが、いつの間にか”あるじ”呼びに変わっている。
「なぁあるじ!地下の方だけど、何か居るみたいだぞ」「本当か?テディは何か感じるか?」「・・・・何か、"ある”のは感じるけど、制御室かなと想っています」
少し考える。エステルは、妖精だけあって魔力の検知には優れている。俺も、下層に探索を向けてみたけど、何も変わったと所を見つける事が出来なかった。でも、エステルには、今までと違う何かを感じ取ったのだろう。テディは”ある”と表現している。”居る”ではなく、”ある”。そして、俺は、変わった所を見つけられない。降りてみれば解るが、エステルとテディの二人が何かを関知しているのなら、”何か存在”しているのだろう。
いま考えても答えは出ないだろう。二人には、感じ方が変わったら、すぐにアクションを興すように、言っておく事にした。
「アル様」
ラウラが呼びに来たって事は、食事ができたのだろう。最近、皆から、食事の準備は、自分たちでするからと言われてしまって、料理を作っていない。今日は、ヒルダとフルールが作ったようだ、あの二人だと、材料を無駄にしていないかが少し心配だったが、大丈夫だったようだ。ラウラとルトが、見ていたようだ。
「どうじゃ?」「ん?美味しいよ。このスープは誰が?」「スープは、私!」
どうやら、スープはヒルダが作ったようだ。メインも美味しいが、疲れたからだに少し塩味が強めになっているスープは美味しく感じる。そう評価すると、塩味は偶然の産物だったようだ。
食事を終えて、順番に風呂に入る事になった。俺は、最後に入ると伝えた。順番になったら、風呂に入る必要がない。テディが呼びに来てくれる事になっていた。風呂の順番を待っている最中に、今日の歩いたマップの確認を行う事にした。
ここまで歩いてきて、やはり気になっているのは、中心部が、どの階層でも歩けていない事だ。一つか二つなら偶然だと考えられるが、”全て”の階層で中心部だけ踏破できていないのは、異常な事だ。中心部に何か有るのかも知れない。
「あぁそれ、アルも気になったの?」「そうだな。最初は、偶然かなと思ったのだけど、全部を重ねてみたら、キレイに繋がったよ」「へぇすごいね」「あぁそうだな。何の為に作ったのかわからないけど、もしかしたら、地上から繋がる何かがアルのかも知れない」「え?あぁそうだね。私が言ったのは、違うけど、そっちもすごいよね」「ん?何?」「ナビで、そこまで解るだなっと思っただけだよ」「あぁそういう事か、そうだな、データが抜き出せるからな。ほら、ノーパソでも見られるだろう。それで、階段の位置を合わせれば、ほら・・・な」
今、居る35階層から、階段の位置を揃えながら、画像をかぶせていく、多少の角度の問題で、いびつな感じになってしまうが、中心部に正方形の形で空間がある事がわかる。
「そうだね。アル。それで、どうするの?」「どうする?って何を?」「いや、明日から、中心部の調査も合わせて行うの?」
必要ないとは想っている。
「そうだ。必要ないとは思うけど、明日探索しながらでも、みんなに聞いてみるよ」「そうだね。でも、皆アルが考えて、決めた事なら従うと思うよ」「・・・そうか・・・皆の意見が聞きたいのだよね」「そう?私は、無視してもいいと思うよ。なんか、最後にならないと子和えが出ないと思うからね」「・・・解った、一応の方針は考えておくよ」「うん。そうして・・・ね」

俺の横で勉強をしていたナーテがルトに呼ばれた、一緒に風呂に入るようだ。ついでに、俺の頭上に居る。エステルを摘んでルトに渡す。「ナーテ。エステルも一緒に洗ってあげて」「ひどい!あるじ。私の羽根つままないでよね。取れちゃったら、あるじに責任取ってもらうからね!」「うん。兄ちゃん。エステル。お風呂に行こう!」「いいですよ。ナーテ。私をキレイにするのですよ」「もちろん!」
ナーテとエステルがお風呂に向かった。入れ替わりに、フルールが戻ってきた。「あるじ殿。ここは、本当に迷宮ダンジョンの中なのか?わらわとしては、物語の英雄譚の様な事を期待したのだけどな」「・・・そんな事にはならないと思うよ。なっても困るけどな」「そうなのか?」「あぁ最初の迷宮ダンジョンの時には、階層主がいたりして戦闘が少し合ったけどな」「あぁぁぁそうじゃ!あるじ殿。聖女伝説は、どこまでが本当の事なのか?」「なんで、フルールが、聖女伝説を知っているのだ?」「え?あぁ奴隷商が、”暇つぶしに”と、本を買ってきては、渡されていた。その中に、最近王都で有名な話だって事で、渡されたからな」「・・・。どの聖女伝説なのか知らないけど、全部嘘とは・・・言えないけど、殆ど嘘だからな」「そうなのか?聖女と勇者たるあるじ殿が、両思いだって部分も嘘なのか?」「・・・そんな話があるのか?」「あぁ、魔王を倒して、二人は結ばれるって話が一番好きじゃな」「なんだ、そりゃぁ。そこまで言っていると、別物になっているから、読んでみたくなるな。王都に戻ったら、探してみるかな」「なんじゃ、本当に作り話何だな」「そう言っているだろう」
ナーテが風呂から出てくるまで、そんな話をしていた。呼びに来た、エステルに礼を言って、風呂に向かった。風呂で身体をキレイにしてから、横になる。それほど疲れているとは想っていなかったけど、あっさりと夢の中に旅立ってしまった。

翌日も、その次の日も予定通りに、15階層ずつ降りる事ができた。今は、65階層に居る。ルーチンワークとなっている。簡易宿泊施設を作ってから、下に移動を開始する。
後、3日で目標地点である100階層に到達出来る。ここで戸惑う事も無ければ、躊躇する必要はない。また、2日かけて、95階層に来ている。
「アル兄ィ明日で終わり?」「多分な。でも、制御室があったら、そこの探索を行うから、もう少しかかると思うぞ」「うん。了解。ユリ姉やヒルダ姉にもそう伝えておくにゃ」「頼む。後、明日から、少し厄介事があるかも知れないと伝えておいてくれ」「わかったにゃ」
95階層で止まったのは、当初からの予定だったからという事もあるが、階層自体もかなり狭くなってきているので、踏破できなくはない。でも、95階層に出た時に、エステルとテディがはっきりと、”次の階層から何か居る”と警告を受けた。その為に、今日は大事を取って、95階層で休む事にした。
ヴァルマは、常日頃からの訓練で魔法制御が上がってきている。もう少しで、1.00を超える事ができそうだ。
食事の籍で、明日からは、俺達攻略組が、先に階層を降りることにした。ヒルダ達は、この場所に残ってもらって、下の階層の安全がある程度確保できた段階で、移動してもらう事になった。当初からの予定だったが、この最終局面になってから必要になる陣形だったようだ。
その為に、今日は配置を見直したり、武具の手入れをしてから寝る事にした。

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