【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

合流

「あるじ殿。遅くなってしまって、申し訳ない」「いいよ。それで、その男は?」
おどおどした男が前に出る「ほら、わらわのあるじだ、しっかり挨拶しなさい」「はっはい。私は、マテウス・ヒットルフといいます。偉大な、アルノルト・マナベ様のご尊顔を」「いや、そういうのはいいから」「はっはい。申し訳ありません。殺さないで下さい。お願いします」「殺したりしないよ。それで、俺に協力してくれるの?」「はい。はい。勿論でございます。マナベ様。何を調べましょうか?なんでも言って下さい」「あぁ頼みたい事は、後でまとめる。ひとまず休んで」「はい。ありがたき幸せ」
後ろに控えていた、エードルフに命じて、マテウスを下がらせた。馬車には、余裕がなかったが、破壊していなかった、奴隷商の馬車があるので、それを使って、休ませる事にした。
「なぁフルール。何をした?」「え?何もしていませんよ?少し、お話し合いをしただけですよ」「そうか、質問を変える。”何人残った?”」「えぇ~と」「ご主人様。捕えていた奴隷商が47名。護衛や家族が、213名。でした。」
フルールは、顔をそむける。変わりに、ルトが答えてくれるようだ。
「それで?」「護衛は、全員"”。奴隷商は、”7名”が、。家族は、全員無事です」「そうか、ルト。汚れ仕事を頼んで悪いが、生きている7名以外の家族で、12歳未満の子供以外は、全員殺せ」「かしこまりました。12歳未満はよろしいのですか?」「あぁ力を付けて、俺を殺しに来るのなら、勝手にすればいい」「あるじ殿。殺すのはもったいない。ルトとわらわの魔法の実験台にしたいが問題ないかえ?」「あぁ好きにしろ、生き残った奴らの家族は、ライムバッハ領に向かわせろ。人質だ。ギルに連絡して、少し待っていてもらえば、追いつくだろう。アヒム!お前たちで護衛して、連れて行け、逃げ出そうとしたら、殺しても構わん」「かしこまりました」「アヒム殿。こちらです」「ルト様。俺に、殿は必要ないです。呼び捨てでお願いします」
ルトは、何も言わないで、アヒムを連れて行った。
「それで、フルール。マテウスが筆頭なのか?」「はい。彼が、一番使い道がありそうです。妖精の涙フェアリーティアの事も知っていました」「そうか、他の6名を上手く使えそうなのか?」「それは、本人たちの申告ですが、彼の所が一番大きくで、帝国の首都に本店を構えているとの事です」「ほぉそれは以外と大物だったのだな」「はい。彼らの言葉を信じれば、帝国でも上位5本の指に入る感じだと言っていました」「そんな、大手が、なんでこんな危ない橋を渡ったのだ?」「エルフの女児の注文が入って、奴隷市場で売りに出されると、聞かされたから、らしいです」「そうか、その”囁いた”のが、妖精の涙フェアリーティアって事だな」「そのようです。そして、残り6名は非合法な奴隷商だったようで、マテウスの傘下に入って、まともな奴隷商になると、言っています」「わかった」「それで、彼らには何をやらせましょうか?」「え?何もやらせるつもりはない」「え?」「だって、妖精の涙フェアリーティアに繋がるような奴らだろう?情報の入手もだけど、こっちの情報も漏れるかも知れないからな」「あっそうですね。それでは、なぜ?」「いつでも、俺が欲しいと思った時に、裏の情報が入手出来る状態にしておきたかったからな。それに、奴らの商売で同じような、奴隷市場が開催されたら、潰してまわれば、”いい金蔓”に、なるだろう。奴らからの上納金も期待できるからな」「そういう事ですか」「あぁだから、奴らに出す命令は、帝国の奴隷相場や食料品流通や、王宮の噂話や貴族間の情報収拾だな」「かしこまりました。彼らには、そう使えます」「あぁもし、王国内でも同様の事が調べられそうなら、調べさせておいてくれ」「かしこまりました。報告はどうしましょうか?」「そうだな。一ヶ月単位位で、ヘーゲルヒに届けさせるか。上納金は、匂わせておけばいいだろう」「かしこまりました」
さて、後はアヒム達が戻ってくるまで待っていればいい。それまで、ナビの拡張を行っていよう。
ナビの拡張を行うのに、組み込んでみたい魔法がある。それは、探索系の魔法だ。人でも、動物でも、魔物でも、なんでもいいから、ナビで表示している範囲で探索できたら、表示出来るようにしたい。探索系は、"火"でも、"風"でも、"水"でも、"地"でも、"木"でも、可能だ。それぞれ、メリットとデメリットがある相手に、気づかれない可能性が高いのは、”火”と”地”だ。草原なら、”木”でもいいかもしれない。トレードオフの観点から、火と地と木の組み合わせがベストでは無いかと思える。火の魔法で、熱源を選択する。地の魔法で、地に接している者と動いている者を選択する。そして、木の魔法で”植物ではない”者を選択する。これらの、And を取れば、”熱を持っていて、地に接していて、植物ではない”者が選択出来る。後は、大きさの取得が出来れば、ある程度の大きさがある事という条件を追加すれば、”地に接している者”を探索する魔法が出来ると思う。同じ事を、風でやるとしたら、”音を出している者で、地に接していない、植物ではない者”となる。浮遊している者を探索する魔法が出来る。水中での探索では、水の加護を使えば出来る。こちらは、地が必要ないので、もっと少なく出来る。
3つの探索を配置して、実行を行う。ナビ画面に、”自分たちが認識している地図”上に、点が表示される。探索が組み込めた。リソースの具合を見ると、まだ余裕がある。少し位探索に時間がかかっても良い場合なら、さらに情報が付与できるかもしれない。”鑑定”が配置しても意味が無いことはわかっている。幸いな事に、ナビはタッチパネルの様だ。タップした点の情報を表示する事はできそうだ。
本当は、仲間の識別が出来ればもっといいのだろうけど、”いい方法”が見つからない。今のところ、問い合わせに対して、発動する魔法を組み込むか、常に発動している魔法を作成するかしか方法が思いつかない。作成中は、常に発動する魔法を使っている方がいいような気がする。それなら、それほど難しくはない。問題は、魔法力が切れてしまった時に、探知ができない事だ。魔道具にしてしまえば、いいような気がするが、それでは、魔道具を敵方に奪われてしまった時に、安易に信じてしまって、接近を許す事になってしまう。
開発をしていると時間があっという間にすぎる。それも、自分が解らない事を含む場合には、調べながら開発を行うので、余計に早く感じてしまうのだろう。
アヒム達が戻ってきた。ギル達は、思った以上に進んでいなかったようだ。7名の奴隷商は、次の街まで一緒に連れて行く事にした。
ここから、3日程度の場所に次の街がある。道中は、増えた7人分の食料は、俺のステータス袋の中に入っているが、わざわざ狩りをして、増やしている。アヒム達の訓練にもなる上に、奴隷商への牽制にもなる。
少し、狩りの回数を増やしてゆっくりと進んだ関係で、次の街に着いたのは、4日目の昼だ。ここで、奴隷商を開放した。一ヶ月毎の報告書が来なければ、妻子の命は保証しない旨を追加で伝えた。ライムバッハの街に行けば、妻子に会えるように取り計らう約束をしておいた。
街の名前は、リールシュ。男爵家が治める街だ。ヘーゲルヒ辺境伯の寄り子になる。長居する場所でもないので、食料を補充して、奴隷商との契約を結んで、一泊するだけになる。王都とは、反対方向に進んでしまっているので、奴隷商を開放したら、少し戻って、本来の旅程に戻る事になる。ちなみに、リールシュの街の先に、シュトライトの実家が治める、イェリネクが存在する。シュトライトは、実家に連絡だけは入れている。ただ、戻るつもりは無いと言うことだ。近いので、”戻るか?”と、聞いたがそのつもりはないという返事だった。
1泊休んで、さっさとと出立する事にした、長居してトラブルに巻き込まれたくなかったからだ。幸いな事に、シュトライトやエードルフ達のおかげで、スムーズに進む事が出来る。成人したと言っても、見た目の問題で、女子供だけのグループよりは、不審がられないで済む。
1日程度戻った場所から、王都方面に向かう。ここから暫くは、街が存在しない。村が幾つか存在しているだけだ。ヘーゲルヒ辺境伯の領地を抜けて、いくつかの男爵家や子爵家の領地の端を通る感じに、なっている。ヒルダ達が待っていると言っていたのは、王都に向かう場合に必ず通る街で、モットル城塞街だ。
城塞街までは、後3日位で着く予定だ。これからは、森なども少なく、食料調達が難しくなる。本来なら、襲われる可能性が減るので、いいことだが、俺達にとっては、マイナスな条件になっている。そして、野盗などの襲撃の心配もなくなってしまう。何がいいたいかというと・・・・”暇”なのである。一日中、馬車に揺られて、進むだけの旅程になってしまっている。
たしか、城塞街は、王家直轄領になっている。アーベントロートの中心にある王都から、南に向かった場所にあると言われている。城塞街は、北以外には、存在しているはずだ。城塞街から内側が全部王家直轄領だったはずだ。北側には、大きな森と巨大な山脈があり、未開の地となっている。ライムバッハ領まで流れる川が、この山脈から流れているという話だ。川より王都に近い場所に、開拓村が存在するが、領地とする貴族は存在しない。北側は、全て王家直轄になっている。北側のアーベントロートの国境は、実は曖昧な状況になっていると言われていて、山脈があまりにも巨大な為に、山脈を越えての進行は、不可能だと言われている。
俺の頭の中での地図しかないので、詳細な事は解らない。いずれ、王都の学芸員で、この世界の領地割や貴族の所在地をしっかり認識したい。ナビが使えるようになった事で、その欲求が更に強くなってきた。
馬車に揺れながら、開発をしたり、ゲームをして遊んだりしていた。「ボス。このまま進めば、今日中にモットルに着きます。どうします?」「う~ん。夕方位になっちゃう?」「そうですね。少し急げば、昼過ぎには付けると思いますが、馬に無理させる事になります」「そうか・・・。ルト。頼む」「え?ボス?」「あぁ言ってなかったな。あぁ面倒だ。ルト。シュトライトとエードルフ達にも説明してあげて、フルールはいいよな?」「わらわは大丈夫だ」「もちろん、わたしも大丈夫!」
馬を休ませるために、ルトに眷属を召喚してもらう。馬は、馬車から切り離して、単独で走らせる事で、負担を減らす事にした。街が見える場所まで、このまま進む事にする。眷属は”ぱっとみ”馬だが、よく見たら解ってしまうので、どこかのタイミングで、入れ替える必要はあるが、まぁ大丈夫だろう。ルトが御者に座ると、馬車の速度が上がる。
夕方前には、城塞街に付くことができた。城塞というだけ有って、堅牢な壁で守られている。街と言っているが、防御施設の役割の方が多く、住民は殆ど軍の関係者か、それに物品を卸す者達や、俺達のように王都に向かっている者達が泊まる宿屋があるだけだ。貴族達も多く使う為に、宿屋も"ピンからキリ"まである。街の中に入るにも、検問があり、審査は厳重だと言うが、俺の名前と、商会と、冒険者としての身分があるので、比較的審査は少なくて済んだ。エステルは、俺の服の中に隠れて、フルールとヴァルマは、俺の奴隷として、それ以外は冒険者の身分を作ってあるので、俺の護衛として中に入る事ができた。
「驚いた。ボス。本当に、貴族様だったのですね」「何を今更・・・」「だって、この街にこんなに簡単に入れるなんて、俺達だけなら、半日程度待たされますよ」「そうなのか?」「えぇ前に来た時には、それこそ外で待った位ですからね」「ほぉそのあたりもなんとかしないとならない事だろうな。そんな感じになっていると、流通の速度が落ちてしまう。商隊ならもう少し早いのか?」「いや、変わらないって話を聞いた。ボスみたいに、幾つかの身分を持っていると早いって聞くけどな」「そうなのか?あぁ身分なら、まだ職人ギルドと魔術師ギルドの身分証もあるぞ!」「なんで、そんなに作ったのだ?」「依頼をこなしていた時に必然的にな」「まぁ驚かないけど、ボスならなんでもありだろうな」
城塞街は、防御がし易いように作られていて、王都寄りに、宿屋や商店が並んでいる。いざとなった時に、壊してもいい建物(軍関係や兵士の宿舎)は、反対側に作られている。宿屋が集中している場所に向かう。馬車の中で、結界を張って携帯電話を取り出した『ヒルダ』『アルノルト様!!!!!!!!』『うるさいな。で、どこに居る?城塞街に着いたぞ』『遅いですわ。一日千秋の思いで・・・』『解ったから、どこに居る?』『アルノルト様は?』『今、宿屋の集中している所に向かっている』『それでしたら、”虎猫亭"という可愛い感じの猫の看板の宿屋があると思います。私達は、そこに宿を取っていますわ』『わかった。こっちは』『3名ですわよね?』『あぁ増えている。男性が8名。護衛役だな。後、男児が1名と女性が3名。と、俺と妖精が一人だな。馬車もライムバッハの馬車じゃない。宿屋に着いたら、アンかルトを向かわせる』『ちょっと待って』『悪いな。それじゃ後でな』
面倒な事になりそうだ。説明は、ルトにしてもらった方がいいだろう。
「ルト。聞こえていただろうけど、ヒルダ達が止まっている宿屋に向かってくれ」「かしこまりました」「それから、宿屋に空きがあればいいけど、なければ、近くで取らないとならないから、アンと一緒に行って、確認してくれ」「かしこまりました」「ん。了解。ヒルダ嬢やユリアンネへの説明は?」「アンとルトに任せる!」「はい。かしこまりました」「はい。はい。フルールの事と、ヴァルマの事と、シュトライトとエードルフの事?」「あぁそうだ、ヴァルマ。おまえも、一緒に行ってくれ。これから、従者としての仕事として、宿屋の確保はあるとおもうからな」「うん。わかった!」「アン。ルト。シュトライトとヴァルマも連れて行って、そのほうが、説明が早いだろう」「了解」「はい」
それから、1時間後に、疲れきった顔で、ヴァルマが俺を呼びに来た。そして、俺も同じような顔になるまで30分もかからなかった。

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