【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

後始末の後始末

表の後始末も終わった。結局、あの後、ルネリートは、深夜の闇に、紛れるように、屋敷から逃げ出した。眷属に尾行させて、一緒に逃げていた奴らを含めて捕縛した。
「ルネリート殿。こんな夜更けに、どこに行くつもりだったのですか?かなりの荷物のようですが?」「アルノルト!!お前!!」「あっ今は、臨時ですが、エルフ族から、収集官の役職を頂いています」「・・・なぁ許してくれよ・・・」「何をですか?」「・・・・」「黙られると、わかりませんね。そうだ。貴方たちが、よくやっていた事をやりましょう。おい。中に、ルネリート殿の奥方と子供が居るだろう連れてこい」「な・・・何をする。妻子は関係ない」「そうですね。その関係ない人たちを、貴方は自分の欲望の為に、何人殺したのでしょうかね?」「・・・・おれは、貴族だ」「だから?」「領民を、そうだ!俺の領民を、俺が好きにして何が悪い。俺には、領民を殺す権利がある!」「・・・」「アルノルト。お前も、貴族なら解るだろう。な。な。」「びっくりだな。本当に、そんな事をいう奴が居るとは思わなかったよ。ヘーゲルヒ辺境伯も可哀想に、これで残るのは、俺の奴隷になっている、コンラートだけだな」「なっどういう事だよ」「解らない?それとも、考えないようにしているのか?」
「アルノルト様。連れてきました。」
怯えた様子の夫人が二人の子供を必死に背中にかばっている。
「夫人。申し訳ない。旦那様とはここでお別れになります」「・・・・。こどもだけは、夫の罪は私も償います・・・。だから、子供だけは・・・夫は、子供にも私も優しい、いい旦那様です。どうか、どうか、御慈悲を・・・」「夫人。何か勘違いされているようです。貴方の旦那は、いい旦那だから、子供に優しい素晴らしい人だから、ここに居るのでは無いのです、人としてやっては行けない事をしたからです。本当なら、これを、この場で実演するつもりでしたが、辞めておきます。その代わり、貴女がこれを読んで下さい。お子さんに聞かせても良かったのですが、それも辞めておきましょう」
夫人に、奴隷商から見つかった、デブレールとルネリールがやった事。そして、その後始末の方法が書かれたメモを渡す。
「それが、真実なのかどうかは、私にはわかりません。証人は全て死んでいます。被害者もです。だからこそ、私はそこに書かれた、被害者や名前もない、殺されるだけに生まれた子供の、無念を晴らす必要があると思っています」
「うそだ。おい。そんな奴の言うことを信じるな。俺は、知らん。そんな事をしていない。本当だ。俺を信じろ!」
二人の間にナイフを一本投げる。刃は落としてあるし、刺そうとしても刺さらない程度の物だ。に、刃が飛び出す仕組みになっている。
全部を読み終えたのだろう。「アルノルト様。お願いがあります」「なんでしょうか?」「子供達をお願いします」「解りました。アン。ルト。子供たちを安全な場所で確保して、暴れるようなら、眠ってもらえ」
”パパ”や”ママ”という声が聞こえる。しばらくすると、声が収まった。眠らせたのだろう
「感謝致します。アルノルト様」「いえ、構いません」
夫人は、ナイフを拾い上げた。
「なっやめろ。嘘だ。そんな物に騙されるな。俺は、俺は、お前だけだ。本当だ。俺は何もしていない。そうだ、アルノルトが全部でっち上げた事だ」「貴方。ルネリート様。馬鹿な人。私が、何も知らないと思っていたのでしょう?第一夫人の連れてきた侍女に始まったのですよね。次は、第一夫人の浮気相手の前だったのですよね」「なっなんでそれを・・・」
夫人の口から乾いた笑い声が漏れている。「ハハハ。知らないと、本気で隠せていると思っていたのですか?地下室の事も、勿論知っていますよ。貴方が時々、珍しい肉が手に入ったと言って持ってきた肉のこともね。全部。それでも私はよかった。私だけを見てくれていると思えたから・・・」「・・・おい。やめろ。な。な。やり直そう。もう。俺は」
ナイフを持って、ルネリートの前に、よたよたと歩み寄った。そして、ナイフの柄をルネリートに握らせて、その手を、夫人は自分の首に持ってきた
「あなた。ルネリート様。私を殺して下さい。どんなに考えても、私には貴方を殺せない。憎めない。やはり、貴方の事を愛している。でも、お願い、普通に殺して、貴方が普通に殺した、最初の人間でありたい。」
夫人は目を閉じた。
「・・・。ア・ル・ノ・ル・トぉぉぉぉ。お前さえいなくなれば、お前さえ、お前さえ・・・」
握られた、手を振り払って、握ったナイフのまま。俺に向かってきた、勿論、俺は避ける事はしない。胸の位置にナイフを突き立てて、体重を乗せて、突っ込んでくる。
そのまま、倒れ込んだ。
「アル!」「ご主人様!」「あなた!」
地面に、血が広がる。暖かい液体が広がっていくのが解る。ニヤリと笑った。ルネリートが、次の瞬間に”なぜ?”とつぶやく
俺がルネリートの身体をどかして、立ち上がる。血で汚れてしまった服を、星の明りが照らして、赤黒く見える。夫人が駆け寄る「馬鹿な人。本当に・・・」
もうすでに、事切れているだろう。遺体に寄り添って、泣くでもなく、喚くでもなく、取り乱す事もなく、ただそこに居る。
どのくらい経ったのだろう。「アルノルト様」「なんだ?」「夫は、どう裁かれるのでしょうか?」「さぁな。奴隷商に殺されたとなるか、逃げ出そうとして、事故にあったか、夜道を夫人と歩いていて、賊に襲われて、夫人をかばって殺されたか、そんな所でしょうかね」「ありがとうございます。できましたら、公式には、奴隷商に殺されたとして下さい」「善処致します」「それから、子供たちの事ですが、お願いしていいですか?」「構いませんが、貴方はどうされますか?」「夫と一緒に逝きます」「それは許されません」「なぜですか?私も、死なせて下さい。お願いします」「駄目です。貴方の旦那は、エルフ族に100億の借金があります。それを、貴方は返す義務があります」「・・・・」「そうですね。交渉しますが、金額は、大分抑えられるようにしましょう。その代わり、書類は王家に連なる物には渡します」「・・・はい。それは、しょうがない事でしょう」「針の筵になる事は、覚悟して下さい。貴方には、"死んだほうがなし"と、思える様な事をやってもらいます」「・・・覚悟はできています。でも、子供は、子供たちだけは・・・」「貴方が逃げ出さない限り、子供たちの安全と生活は、私アルノルト・フォン・ライムバッハが保証します」「ありがとうございます。それで、私は何をしたら?」
「簡単な事です。エルフとドワーフが、この街に店をだします。この手伝いを行って下さい。店番です。エルフ族やドワーフ族が沢山来る店の店番です。それに耐えて下さい。苦情が来る度に、貴方の待遇は悪くなります。貴方の待遇が悪くなれば、子供たちに皺寄せが行くと思って下さい」「・・・解りました。それが、私の罰なのですね」「いいえ、違います。貴方への罰です」「そうですね。わかりました。お受け致します。少ないですが、持ち出した物や屋敷は、アルノルト様の好きにして下さい」「解りました。現金化して、税金の補填にします。それから、暫くの間の生活費は必要でしょう。持ち出した現金はそのままお持ち下さい」
これで、全部終わった・・・かな?『アン。ルトとフルールとエステルを連れて、ルネリートの屋敷に行ってくれ。もしかしたら、妖精の涙フェアリーティアの手がかりがあるかもしれない』『了解』
アンとルトとフルールとエステルは、高速移動で、屋敷に向かった。
『アル。ごめん』『どうした?』『あるじ殿。申し訳ない。遅かった』『どうした?』『誰かがもう書類を持ち去った後だった』
『アル。』『どうした?』『ううん。取り敢えず、帰る。そっちで説明する』『わかった。商会で待っている』『了解』
誰が・・・と、考えるまでもないか、妖精の涙フェアリーティアの奴らなのだろう。最初から見ていたのか、それとも、何かのトリガーで来たのか・・・。最初から見ていたのなら、俺のやった事は、奴らの邪魔にもならなかったという事か?それとも、目的に沿った行動だったのか?解らない。あまりにも情報が少なすぎる。
商会に戻って、身分を伏せたまま、ルネリート夫人を、エルフ達に紹介して、人族相手の対応を、やらせる様にした。
アン達が戻ってきて、新しく作った執務室に入った。ギルとザシャとディアナは、それぞれやることがあるという事だ「ご主人様」「ルト。何があった?」「はい。ルネリート夫人に話を聞いて、ルネリートの書斎と隠し部屋に向かったのですが、すでに書類らしき物は一切ありません。その代わり、これが置いてありました」
紙切れを受け取る”アルノルト・フォン・ライムバッハ殿”そう書き始められていた。内容は、ルネリートとデブレールが、妖精の涙フェアリーティアから借り受けていた魔道具や資金相当の物を貰っていくという内容だ。ご丁寧に明細まで書かれている。
そして、辺境伯に飲ませている毒物は、やはり、妖精の涙フェアリーティアが用意した物だが、このまま数日、毒物を与えないで居れば、回復するだろうという事だ。食事に混ぜてあるので、食事を変えれば回復するだろうという事だ。
書類を持っていく事への謝罪が書かれていた。
最後に署名が”ブランカ・ゾル・バラーク”となっていた。敵の名前が解った。わかったからと何か解るわけではない。
それよりも、辺境伯をどうするのかを俺に委ねられた事になる。確実に敵だ。奴から見ても、俺は憎むべき敵になった。何と言っても、息子二人は間接的にだが、俺が殺した。一人は、奴隷になっている。ターゲットは俺になったほうがいいだろう。
この文章を、アンとルトに写させて、書類を、辺境伯の屋敷に届ける事にする。俺達が、出立してからの方がいいだろう。全部を終わらせて、出立するのは、明後日になるだろう。辺境伯も、俺がにくくても、表立って、エルフやドワーフや商人ギルドや冒険者ギルドと喧嘩するわけには、いかないだろう。安全とは言わないけど、なんとかなるだろう。
明日は、ギル達と旅程に関して調整しよう。食料はすでに買い込んでいるから大丈夫だろう。
今日は、もうゆっくり寝よう。
そうだ。俺のステータスもかなり変わってきている。妖精語が解るようになった事で、亜人種との会話も出来るようになっている。そのあたりのスキルはどうなっているのだろう。気になってステータスを久しぶりに開いてみた。
名前:アルノルト・フォン・ライムバッハ[異世界日本語変換:1.75][妖精語変換:1.00][鑑定:4.51]空間把握:2.75時間把握:2.59思考加速:1.34魔法制御:6.13精霊の加護 地の加護:2.79 火の加護:3.07  炎の加護:2.59 水の加護:2.77  氷の加護:2.18 木の加護:2.53 風の加護:3.44  雷の加護:2.42 闇の加護:2.37 光の加護:2.81 武の加護  剣の加護:0.97  刀の加護:2.97 [守の加護]アイテム:473/613 配置(1):73/99 配置(2):42/99 配置(3):21/99 配置(4):7/99 配置(5):1/99
みなきゃよかった。寝よう。
寝てもすぐに起きてしまった。一つ気になった事があった。
新しく配置した魔法だ。魔法を起動する。
最初に、魔法陣が現れる。これは、ダミーで何もしない。なんとなく、かっこいいからって事と、強いてあるとしたら、範囲の特定だ。魔法陣の中が、魔法の有効範囲になる。
魔法が発動された。終了条件は、俺の魔力の”1/100”を消費するまで、とした。安全装置として、移動中や反対側の魔法陣から出るまでは、魔法は終了しないようにしている。イレギュラーケースは、おいおい実験していく事にする。
魔法が上手く作動しているのかは解らない。ただ、見た目上はうまくいっている。そのまま放置してみるが、60分経っても消える様子はない。これなら、実用レベルに持っていけるだろう。
最近解った事だが、俺の魔力1/10が、小さめの魔石1個分だという事は、わかっている。そうなると、小さめの魔石1個で、今の魔法が、一回の利用時間を6分としたら、100回唱えられる計算になる。マージンを取るとしたら、発動終了後から3分として、発動後から魔法陣の色を、徐々に変えていく事にする。RGB指定で、(0,0,FF)~(FF,0,0)まで、Rを増やして、Bを削っていく感じで変えてみた。あまりキレイでは無いが、解りやすいだろう。赤くなってきたら、急げという事だ。点滅させても良かったが、これ以上処理を追加したくなかった。場所は、パラメータで、場所の数値(多分、緯度経度+高さの様な物)を渡す必要がある。パラメータを、プロパティとして持たせたオブジェクトを、呼び出す事で、対応した。もっとスマートなやり方があるだろうけど、今この魔法を使えるのは、俺だけだし、場所も限られているから大丈夫だろう。パラメータの事は、今度の課題としておこう。
自分が寝ている部屋から、隣の元執務室まで移動出来る事が確認できた。次に、ポケコンに記載されていた。戻される場所の座標に移動してみた。これも、問題なく、元執務室から、森の見覚えのある場所まで移動できた。次に、森から元執務室に移動した。これも問題なく移動できた。
移動魔法の”正常系”の確認が取れた!俺だけが使うのなら、これで問題ないだろう。汎用性を持たせるための開発は、ゆっくりやっていこう。まだまだ考えなければならない事はおおい。
これで安心して寝る事ができそうだ。ゲートの様に扉をだしてもいいな。でも、個人的には、魔法陣を使った方がかっこいいと思うのだけどな。

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