【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

首都アヴェラヴィルへ

「にいちゃん。おかえり。」「お兄様。どうでしたか?」
「ただいま、あぁ一通り確認は終わったと思う。暫くは、これで大丈夫だと思う。遅くなったけど、首都に向かおう。」
首都に向けて馬車を走らせた。首都までは、約1ヶ月半。その間に、街や村を経由していく事になる。その都度、獣や魔物の素材を売っているので、路銀には困らない。食料もステータス袋の中に予備があるので、困らない。
困ったのは、テディだ。久しぶり、本人曰く100年ぶりに地上を移動するので、はしゃいで困る。それに、生前(?)も首都には行った事が無いらしく、楽しみでしょうがないらしい。何度か、馬車から落ちそうになるし、商人とやり取りしている時に、喋りだしそうになるし・・・。連れてきたのは失敗だったか?
俺は、移動の間、ノーパソとステータスからの接続でいろいろ設定を行っていた。ステータスからの接続では、管理者権限を持っているアカウントではなく、通常のユーザ権限を持つアカウントでの接続に変更した。
首都に向かう最中にもいろいろ魔道具の"素"を作ってみる事にしている。今は馬具に装着して、疲労回復を行う魔道具を作ってみた。
しかし、疲労度がわからないので、使い勝手が悪い。魔法を無駄にかけている状態になってしまう。ステータスが見られるような魔法が作れないか、そしてステータスをトリガーにして魔法が発動できれば、またいろいろできそうだ。
ザシャにも確認したが、知らないと言っていた。クヌート先生は、闇魔法で、ステータスを表示したり、体力や魔力を見る事が出来る魔法があると聞いた事があると教えてくれた。ただ、闇魔法に関しては情報が少なく、詠唱までは先生は知らなかった。でも、ヒントが出ただけでも嬉しい。
「アル様。後少しで次の村に付きます。本日は、そこで休みますか?」「そうだな。たまには、宿に泊まろう。」「かしこまりました。」「私とカウラで、先に村に行きます。」「うん。頼む。御者は・・・。」「あっご主人様。私が、ナーテを頼みます。」「あぁ解った。ルト。頼む。ナーテは?」
あぁそういう事か、ナーテは疲れて寝てしまっている。最近、魔法技能を伸ばす訓練をしている。力では、カウラに及ばない。でも、盾の加護を持っている。そのあたりを使った戦略をラウラやカウラと模擬戦をして高めている。魔法に関しても、水と氷がある。これを使って、ギリギリまで魔法を使うようにしている。
ナーテを抱き寄せて、膝枕の状態にして、休ませる事にした。
しばらくして、カウラが帰ってきた。「アル兄ィ。宿屋が取れたにゃ」「そうか、ありがとう。」「うん。今日の宿はお風呂があるにゃ」
「本当なの?カウラ?」「はいにゃ!」「なんか、沢山の人が居て、一杯で、その部屋しか空いていなかったにゃ。ラウラ姉が交渉して、1泊だけって事で借りられたにゃ」「お兄様!」「やだよ。お前たちだけで入れよ。俺は一人で入る」
どうせ、風呂に一緒に入ろうとかいい出すにきまっている。ユリアンネの提案をさっさと却下する。
「お兄さまぁ・・・。」
ユリアンネが何かいいたそうにしているが無視する。膝を枕にして寝ている。ナーテを起こした。最初は事情が把握できなかったようだが、ルトではなく、俺の膝枕で寝ていた事に気がついて、慌てて顔を真赤にして起きた。この頃、ますます女の子っぽくなってきている。
「にいちゃん。」「どうした?ナーテ。もうすぐ次の村に付くからな。そこで、今日は休む事にしたからな」「わかった。ルトは?」「御者をやっている。」「うん。手伝ってくる。」「あぁ頼む。」
照れ隠しだろう。前方で御者をやっているルトの横に移動した。
「アル。」「なんだ?」
アンがニタニタした顔で話しかけてきた。
「アル。優しいね。」「うるさいよ。それよりも、アン。おまえも準備はいいのか?」「大丈夫だよ。準備ってほどの事は無いからね。」
話をそらした事が解った上でそれに乗ってくれるのはありがたい。俺としても、ナーテとの距離感に悩んでいる。今までと同じでいいとは思うが、なんとなく遠慮してしまいそうになる。
馬車は、村に到着した。村の守衛に冒険者である印を示した。首都に向けて移動している旨を伝える。すんなり、村の中に入る事ができた。この辺りは、ラノベであるような。村ごと街ごとで問題が発生したり、何かに巻き込まれるような事がなくて”ほっ”としている。俺が勇者ではなく、たんなるプログラマだからかも知れないが、面倒な事にならないのは助かる。
カウラに案内されて、宿屋に向かった。村には何件か宿屋があるらしいが、その中でも一番立派な宿屋の様だ。
表でラウラが待っていた。「ラウラ。」「アル様。申し訳ありません。ここしか空いておりませんでした。」「謝るような事じゃないよ。宿が取れただけでも御の字だよ。」「はい。こちらになります。」
ラウラに案内されて、部屋にはいる。一番いい部屋なのだろう。そこに通された。馬車は宿屋で預かってくれる事になっている。
食事付きで大銀貨2枚。一泊全員で16万。人数が人数だからしょうがないか・・。たまの贅沢だと思えばいい。それに、そのくらいならすぐに稼げるという計算もある。丁度、商隊が来ているとカウラから聞いているので、道中で狩った魔物や獣。練習で作ったポーションなどを売ってしまおうと思った。ステータス袋があるので、荷物にはならないが、入らなくなってから慌てたくない。必要ない物は売ってしまおう。
商人や商人ギルドとの交渉は、ルトとアンに任せた。俺は、ヒルダとナーテとユリアンネとカウラと部屋で待っている事にした。
「ヒルダ!」「はい。何でしょうか?夜伽でしょうか?お風呂に入ってきたほうがいいですか?それとも、下着だけ新しければ・・・え?このままでいい?アルノルト様。」「黙れ!はぁ・・・・まぁいい。ナーテ。」「にいちゃん。なぁ夜伽って何?」「ヒルダ!ここに来て座れ。ナーテ。ヒルダが言った事は忘れろ。アンにもルトにも聞くなよ。」「うん。わかった。」
「それで、アルノルト様。何か用事ですか?」「あぁ二人に少し検証に付き合って欲しい。」「検証?」「あぁ闇魔法で、ステータスが見えると聞いたからな。それを確認したい。」「わかりました。全裸になればいいですか?」「え?にいちゃん。おいらも?」「違う。二人とも脱ごうとするな。いいか、今から二人には、俺が試作している魔道具を持ってもらう。」
二人に、闇魔法でステータスを表示する魔道具を持ってもらった。それだけでは、何もできないけど、ステータスシートに表示されるはずだ。
「ふたりとも、ステータスシートを開いてみて。」「はい」「はい。」
「え?アルノルト様。」「にいちゃん。これって?」
良かった成功したようだな。俺には見られないけど、もう少し改良したら見ることができそうだな。まずは、魔道具の作りで使える事が解ってよかった。自分でやっても出来るのが当たり前になってしまうからな。闇の加護を持っていても、持っていなくても使えたから、改良ができそうだ。
「にいちゃん。この数字って何?」「あぁわるい。今、出しているのは、体力と魔力を数値で表した物だ。全体を100とした時に、どのくらい残っているのかって事だね。多分、両方共ほぼ100じゃないか?」「うん。両方とも98だよ。」
「アルノルト様。この体力は、HPなのですか?」「う~ん。ニュアンス的には、そうだと思うけど、多分俺達が知っているようなHPじゃないと思う。”体力”って意味だと思う。だから、0になっても死ぬって事はないと思う。」「それでしたら、安心しました」「どういう事だ?」「私の体力が今23でしたので・・・心配していました。ヒルダ。何かしていたのか?」「さっきまで、カウラと訓練をしていました」「あぁそれで、体力が減っていたのだろうな。休んでいれば、徐々に回復すると思うぞ?」「え?あ、本当ですね。そうなると、”スタミナ”と表現した方がいいかもしれませんね。」「あぁそうだな。そのほうがわかりやすいな。ありがとう。」「いえ。魔法使ってみていいですか?」「あっうん。頼む。」
ヒルダが、詠唱を行って、光の攻撃魔法を空に向けて放った。
「あっアルノルト様。魔力が82になりました。」「って事は、今の魔法だと5発が限界なのだろうな。自動回復もするだろうけど、回数の把握は必須事項になりそうだな。」「えぇそうですわね。」
「なぁにいちゃん。この数字。常に出す事できない?」「どうして?」「ステータスシートでいちいち確認しながらだと攻撃が難しいから、どこか邪魔にならない所で見られたらいいな。」「わかった、少し考えてみる。」「うん」
「あれ?カウラとユリアンネは?」「さっき、冒険者ギルドに行くって言っていましたわよ」「そう・・・か、カウラとユリアンネにも試してほしかったのだけどな。まぁ帰ってきてからでいいかぁ」
それから、またいろいろ試して見ては実験を行うと繰り返していた。いつの間にか皆が揃っていたので、今度は、”配置”を行った。配置を行うと、闇の加護がないとダメなようだ。やはり魔道具が必要になってくる。ARの様にできれば、いいのだけどな。ハードウェアに手をだすのはまだ早いかな。魔核だけで出来る事を探してみる事にしよう。詠唱で”ステータスシートに表示せよ”を”目の前に表示せよ”にしたら、本当に目の前に出てきて邪魔だった。右上とか指定したら、視界のギリギリに配置されるし、微調整が難しい。表示位置の調整が出来る事がわかっただけいいだろう。魔道具にするのだから、詠唱を気にする必要が無くなったのが嬉しい。いちいち長々詠唱しなくて済む。
「アル。お楽しみの所申し訳ないけど、そろそろ夕ご飯に行かない?」「あぁごめん。ごめん。忘れていたよ。夕ご飯食べに行こう。そこで、商人ギルドと冒険者ギルドの事を聞かせて」
皆で宿の食堂に移動した。高級宿屋だけあって食事は村の規模では出てこない位美味しかった。冒険者ギルドには、このあたりの獣や魔物の動向を聞きに行ったらしいが、今大規模な商隊移動がある為に殆ど狩られてしまっているらしい。首都にまでの道では、脅威になりそうな"物"はいないという事だ。商人ギルドでは、また残高が増えていたそうだ。あと、職人ギルドからの問い合わせも来ているとの事だ。話の内容的には、人員の事らしいので、アンの判断で、ライムバッハ領に伝達してもらって、向こうで判断してもらう事にしたと言っていた。商人ギルドには、これから人員の事や新しい技術の事は、ライムバッハ領の商人ギルドで一旦預かってもらって、ライムバッハ領の領主の判断を伺う事にしてもらったと説明された。
それから、首都までの道の事や今首都で何が売れているのか?商人ギルドから聞いた話を教えてくれた。
明日早く出るために、今日は早々に寝る事にした。食事が終わって部屋に戻って順番に風呂に入ってから、寝る事にした。


日の出前に、起きた。皆を起こして、宿を出る。準備は終わっているし、馬車も宿屋で簡単にメンテナンスをしてくれていた。
他の商隊が起きて出口が混む前に、村を出る事にした。
高級宿屋に泊まってしまったので、少し倹約の意味も込めて、暫くは野宿する事にした。野宿と言っても、トイレも作るし、風呂も作るので、通常の野宿とは違っている。魔核があるおかげで、一日程度なら貼り続けられる結界の魔道具も作る事ができた。まだ安定はしていないので、もう少し研究開発は必要なのだろう。
そんな快適に近い状態で旅を続けて、やっと共和国の首都”アヴェラヴィル”が見えてきた。明日の昼には着けそうだ。商人だけではなく、冒険者の姿も見かけるようになっている。近くの森が彼らの狩場になっているようだ。
「よし、今日はここで休んで、明日の昼前には首都につけるようにしよう」
この場所は、他にも商隊や冒険者達が宿場として使っているようだ。商人は、余った食料をこれから外に向かう者に安く売っている。これが、頻繁に行われるようになれば、ここに村が出来るのだろう。常設の商隊は居ないようだが、冒険者の数名はここで商売をしているような事を言っていた。
俺達も情報収集の意味が大きかったが、道中で狩った獣や魔物の素材を少し売る事にした。
中でも、気になる情報が二つあった。一つは、選定委員の息子が死んだという物だ。それに関わった者としては、噂話でも聞いておきたいと思って、少し突っ込んで聞いたら。護送された先で自害したらしい。選定委員である父親は何も言っていたらしい。すでに勘当して当家とは関係ない人間というスタンスを貫いている。裏で、それに関わった冒険者を探しているという話も出ているらしい。
そちらは、どうとでもなる。敵に回るのなら潰せばいい。それだけだ。
もう一つは、妖精の涙フェアリーティアの事で、教会でも治せない病気や怪我を治せるという話をしていて、かなりの人間が会員になっているらしいが、会員になるためには、すでに会員になっている者の推薦が必要で、会員の為の試験もあるらしい。それを突破できなければ、ゲストのままで誰かに連れて行って貰うしかできないという話だ。
妖精の涙フェアリーティアにはなんとか接触を図りたいが、無理するつもりはない。まずは、情報収集だ。ターゲットがわからなければ、作戦も立てられないし、道筋を考える事もできない。
商人や冒険者から話を聞いて、明日は首都に入る。

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