【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

ナーテの秘密

さて、それでは、トリスチド・ル・テリエの尋問を始めよう。その前に、「なっ助けてくれるのではなかったのか?」「あぁ?”助ける”とは言ってないだろう。考えるだけだ。熟考したが、やはり、助ける意味がなさそうだからな。まぁ指は残しておいてやるよ。」全員のアキレス腱を切った。この世界で治療法があるかわからないが、表面の傷は綺麗に治しておいて、アキレス腱が断裂した状態にしておけば、なかなか治せないだろう。まぁ良く大手に言われたセリフだな。”考える”"考慮する"。結局ゼロ回答になる。よくある話だ。
「起きろよ。いつまで寝ている?」「おま・・何を・・・え?」「あぁおまえの事は、お仲間がいろいろ教えてくれたぞ。首都に居るときの事とかな。女のくせまでな。そんなにお母様が恋しいのか?でも、挿れている最中に首を締めるのは良くないぞ。あぁそれから、赤ちゃん言葉を使って甘えるそうだな。可愛い癖だな。僕って呼んであげましょうか?”ぼくちゃん!"」「なっだれがそんな事を・・・。そんなわけあるか、俺は、選定委員の息子だぞ。おまえなんかよりも偉い。」「偉いのは、おまえの父親であって、おまえじゃない。おまえは、親の権力を自分の物だと思っている愚か者だ。おまえが、真面目に働いている人たちよりも偉いと思っているのは、おまえの努力ではない。ただの勘違いだ。ぼくちゃん!」
「うるさい。俺は、優秀だ。優秀だから、妖精の涙フェアリーティアにも・・・」「へぇ是非そのあたりのことも聞きたいな。エタンやブノアの事も知っているだけ話してもらいましょう。」「へ?なんで、エタン様とブノア様の事を?」「へぇあいつらそんなに偉いのか?それじゃクラーラの事も知っているのか?」「・・・え?いや、そんなはずは、なんで?」「ほぉ、知っているようだな。あぁ大丈夫。3人に会うことがあったら、おまえから聞いたと言っておいてやるから、安心して牢屋にでも、炭坑にでも、行ってくれや。それとも、喉潰して、男娼の店にでも放り込むか?選定委員の息子なんて言えば、レア物だろうし、恨みに思っている奴らも多いだろうな。どこに行っても人気者になれそうだな。」
想像できたのだろう。やっと、自分の立場がわかったようだ。
「・・・辞めてくれ。」「やだね。」
「ご主人様。それでは、子供と同じですよ。」「そうだな。おい。トリスチド・ル・テリエ。まぁ今日はもう遅い。ゆっくり休んでくれ。一時間毎に指を降りに来るけどな。その時に、思い出した事を話してくれればいい。なぁに2日間位だ。領主の守備隊が来るまでの時間つぶしだからな。それでは、おやすみ。」
部屋を出ていく時にも言い忘れた事があった。「あぁこの男共もここに置いていくから好きに使ってくれ。1人部屋から逃げ出したら、残っている奴の指を一本切り落とす。二人なら二本だ。10人以上居なくなったら、次は耳だ。そして、舌。鼻で目だ。全員上手く逃げ出せたら、褒美で、全員見つけ次第殺してやる。あぁそうか、全員歩けないのだったな。せいぜい。村長が逃げ出さないように見張っていろよ。村長が逃げ出したら、残っているやつの性器を使えなくしてやるからな。」
アンとユリアンネが外で無力化した奴らも全員アキレス腱を切って、この部屋に放り込んだ。全部で30名近いはずだ。汗や血はそれ以外の匂いで臭い。正直、1分でも居たくない。次来る時には、俺達の周りには、空気の壁を作ってみよう。
ここまでやっても、仕入れた情報は多くない。やはり、帝国の商人の行方は知らないらしい。3ヶ月に一度位やってくると言っているが、時間的な事を考えると不可能だと思える。エタンやハンスだけではなく、クラーラの事も知っていた。妖精の涙フェアリーティアの事も、魔法と商人ギルドで、帝国では教会にも影響力を持つギルドだと聞かされているようだ。エヴァ達から聞いた話しとは違う。どちらかと言うと、秘密結社的な組織だと思ったが、共和国では商人や魔法技能者として受け入れられているようだ。なぜ共和国?という思いもあるが、トリスチド・ル・テリエの言葉を信じれば、共和国の首都に行けば、妖精の涙フェアリーティアの出張所があるという。そこに言ってみればわかるだろう。割符も暗号も入手した。
しかし・・・・俺なら、割符や暗号は一定期間で変える。
朝になったが、誰一人も逃げ出していない。残念な事だ。今までに追った指の数は、これで10本になる。
妖精の涙フェアリーティアの割符は間違いないだろう。でも、これって今は使えないのだろう?」「なっそんな事は・・・。」「暗号も変わっているのだろう?その為に、妖精の涙フェアリーティアの関係者が3ヶ月毎に訪れていたのだろう?おまえは、幹部でも組員でもなく、単なるゲストなのだろう?」「・・・。」
やっぱりそうなのだな。そうなると、こいつだけではなく、多くの物が妖精の涙フェアリーティアに加担している可能性があるって事だな。領主はどうなのだろう?今のところ、そんな兆候はない。後ろから矢が飛んできたら考えればいい。即座に反転して攻撃してもいい。ナーテとヒルダだけが問題なだけだ。常に一緒に居れば今度は守れるのだろう。
まぁいい。まずは、折った指を治すか。また後で折らないとならないからな。
二日後。領主が守備隊を率いてやってくるまで、尋問は続けた。得られた情報は多くなかったが、領主に対するおみやげも幾つか得る事ができた。近隣の村や街で、トリスチド・ル・テリエに靡いた代官や村長や商人の名前リスト。それに、バックハルムの街での工作員の名前と所在地。最初に現れた5人の中で1人が、トリスチド・ル・テリエに寝返っていた。これらの情報を領主に渡した。勿論、無償ではない。馬車を一台と、食料を首都までの分+1ヶ月分を貰い受けた。そして、追加報酬もしっかりと受け取れるようになる。正直、ステータス袋に食料はまだある。凍らせている物もある。首都までの距離がわからなかったので、そういう言い方をしたのだが、全部で2ヶ月分位あるという事から、ここから首都まで1ヶ月位だと判断できる。それも道がわかっていればの話だろう。一応、簡易的な地図があったので、それも追加で貰った。
領主からは、首都に行った時に、選定委員に渡す文章を書いてもらった。依頼の形になるが、これで、選定委員との面談も出来る。領主が信頼していると言っている人物に繋がるようになっているらしい。これは行ってみないとわからない。後は、そのための路銀も貰った。実際には、必要ないが、もらえる物は貰っておこう。
テリエメールの村を出て、次はナーテの村に向かう。湖を半周すれが良い。昼過ぎには着く。今度は、馬車での移動なので、少しだけ余裕がある。
「やっと。ナーテの村。ブラント村に行けるな。」「え?なんで、にいちゃん。おいらの村の名前を・・・。おいら話してないよ?」「あぁごめん。ごめん。ライムバッハで、子供たちに魔法を教えている時に、子供たちに教えてもらった。」「あっそうか・・・で、おいらの事は?」「ナーテ。村長の子供ってだけだよ。後は、ナーテから直接聞いたほうがいいだろうから、聞かなかった。」「え。あっ・・・そう・・・。」
明らかにホッとしている。話しにくい事もあるだろう。そのうち話してくれればいい。
馬車を進めた。少し進むと、以前”村”だった場所に出た。
「ナーテ。」「・・・ありがとう。にいちゃん。でも、おいらは大丈夫。今は、にいちゃん達とおいらの村をこんな風にした・・・」
ナーテの側にルトが立っている。肩に手を載せている。「ナーテ。」「ルト・・・。おいら。おいら。」
ルトが、ナーテを抱きしめた。村が攻め滅ぼされているのはもう解っていたのだろう。それでも、自分の目でそれを確認して、”もやっ”としていた事が認識への変わったのだろう。
「にいちゃん。」「なんだ。ナーテ。」「おいらの村をこんな事にしたのは、トリスチド・ル・テリエだよね?」「あぁそうだ。」「でも、そのトリスチド・ル・テリエを裏で操っていたのだが居るのだよね?」「操っていたか・・・、正直、俺にもわからない。でも、少なからず責任の一端はあるのだろう。」「そいつらは、にいちゃんの家族を殺したのだよね。」「あぁそうだ」「そいつらは、ルトの家族や家の人たちを殺したのだよね」「あぁそうだ」「にいちゃん。おいら、強くなる。そうしたら、そいつらを殴れるよね?」「あぁ殴れる。」「おいら、強くなる。もっともっと。沢山訓練して、沢山魔法使って、沢山・・・沢山・・・とおちゃん。かあちゃん。にいちゃ・・・ん。」「ナーテ・・・。」
ナーテは、俺を見ながら、大きな瞳に零れそうな涙を浮かべながら、見据えている。手を広げた。ナーテが俺の胸に飛び込んで来て、胸にすがって泣き出した。声を押し殺して、今まで我慢してきたのだろう。服を掴んだまま、肩を震わせながら・・。俺は、そんなナーテの肩を抱きしめながら、頭を撫でてやる事しかできない。違う一つだけある。”あの方”が関係しているであろう、妖精の涙フェアリーティアに乗り込んで、ナーテの村に関わったやつがいたら殴る。ナーテの代わりに本気で殴る。それで、気が済む話ではないが、ナーテの手を汚すほどの価値がない奴らだろう。だから、俺が代わりに思いっきり殴る。
「にいちゃん。」「アル様。」「アル兄ィ」「お兄様。」「アル」「どうした?」
4人が普段よりも緊張している。囲まれているのか?この気配は、人ではないようだな
「人じゃ無いみたいだな」「えぇ獣の類だと思います。どうしますか、アル様?」「ラウラ。カウラ。行けるか?」「はい」「はいにゃ」
「よし、左右は二人に任せる。正面を、俺とナーテとヒルダで突破する。殿をアンとユリアンネ。頼む。そのまま、迷宮ダンジョンに向かういいな!」「「「「「はい!」」」」」
ラウラとカウラは左右に別れて、向けに突っ込んでいった。俺が馬車の手綱を握って、ヒルダとナーテを荷馬車に乗せて、前方に走り出す。後ろを、ユリアンネとアンが守る。
「ナーテ。迷宮ダンジョンはどっちだ!」「あっちだよ。にいちゃん」「わかった!」
拙い操作だが、囲いの薄い部分からから突破できたようだ。ラウラとカウラを迎撃する為に、別れているのだろう。獣の群れを寸断して、各個撃破していく。本来なら、ナーテの村で食料となっていた獣も居るだろう。それが、狩る人間が居なくなって、魔物化したのかもしれない。やはり、適度な間引きは絶対に必要なのだろう。
前に立ちふさがる獣だけを蹴散らしながら、進む。
2時間も走り続けたら、獣の群れも諦めたようだ。それとも、獣同士で殺された物を捕食しているのかもしれない。事情は分からないが、バランスが崩れているのは間違いないだろう。
ラウラとカウラ。殿をしていた、アンとユリアンネも合流した。そのまま馬車で進むと、少し開けた所に出た。
「にいちゃん。ここがそうだよ。ブラント迷宮と呼ばれていた場所だよ。もう、何十年も何もないと言われて来た場所。3階層までは判明しているけど、それ以下には降りられないし、魔物も好物も宝物も出ない。」
そこは、ライムバッハにあった迷宮ダンジョンと違って、何も整備されていない本当に、洞窟と言った雰囲気だ。馬車を止めて、馬を連れて、中に入る。二頭なら連れていけそうだ。一階層の適当な場所に餌と水を用意して逗留しておけばいいだろう。どのくらい日数がかかるかわからないが、取り敢えず2週間分位は十分賄える量を用意しておいた。困ったら、逃げ出せるように、縛ったりしないで自由に出来るようにしておく。
「さて、行くか!」
本当に、三階層まで何もなかった。一本道ではないが、ほぼ一本道だ。それに、人が入っている形跡もあるが、そうとう昔なのだろう。いろいろ壁を叩いた後や破壊しようとした後などがある。広さは、それほど広くない。フットサルのコートと同じくらいだろうか?調べるのにも1時間もあれば十分全部の道を探る事が出来る。
4時間後、3階層のマッピングをしていた、アンが一つの事に気がついた。「ねぇアル。」「なんだ?」「1階層と2階層は、洞窟みたいな作りだったから、気にしなかったけど、3階層は、ダンジョンっぽい作りだよね。」「あぁそうだな。それで、過去の人たちも何かあると思って調べたのだろう。」「うん。でも、一つ気になる事があるのだけど・・・。」「ん?だからどうした?」
アンが提示した地図を見ると、たしかに不自然に一箇所に空白がある。3階層の中央部分に一部屋分の空白がある。「測量のミスじゃないのか?」「うん。その可能性はあるけど、明らかに何かあるよ・・・これ?」
「お兄様。でも、この場所に面している部屋は、何もありませんでしたわよね」「あぁでも、なんか不自然だし、もう一度探ってみるか?他に、何もなさそうだしな。」「そうですわね。」
それから、空白地帯に面している部屋を徹底的に調べる事にした。面している部屋は5つ。4つまでじっくり時間をかけて探したが何もなかった。最後の一部屋に入った。ここも、前に来た時には何もなかった。
ナーテが空白部分に繋がっている壁を調べている「にいちゃん。」「どうした?」「なんか、この部分だけ、石の並びおかしくない?」「どういう事だ?」「上手く言えないけど、模様が・・・えぇっと・・・。」
ナーテが見ている場所を見てもおかしいとは思えない。皆で見つめるが、違いがわからない。間違い探しになってきている。でも、ナーテは何かを確認している。
「あぁぁぁ解りましたわ。お兄様。いいですか・・。」
次にわかったのが、ユリアンネだ。壁には、石を組み合わせた模様が書かれているが、その一部で順番が違っているのだ。それも、3回続いて、2回続いてが3セットで一つの模様になっているが、一箇所だけ2回の部分が3回続いているのだ。一回多い部分を触ったり、押したりしてみても何もおこならい。ただの偶然か?と思っていた。
ナーテが、その部分に触れると『血族反応を確認』
その機械音声と共に、模様が光りだす。『汝。ディートフリート・フォン・フランケンシュタインの意思を継ぐもの』
「にいちゃん。手が・・・手が・・・離れない。」「ナーテ。落ち着け。」
『生体データを解析。汝、ディートフリート・フォン・フランケンシュタインの子孫である可能性、89.7%。女子。98への接続情報を確認。扉を開きます。』
ナーテが手を触れている部分から壁が取り除かれていく。何かしらの魔法的な仕掛けがされていたのだろう。
・・・、今、ナーテの事を女子って言わなかったか?

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