【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

共和国

街を出て国境に向かっていく。何度か商隊とすれ違ったが、俺達を奇異な目で見るものは居なかった。
明日には国境に到着するだろう。最初は、バックハルムという国境近くの街に入って、情報がないか調べてから、ナーテの記憶を頼りに、ナーテの村を目指す。
馬車での宿泊にもなれた。「アル様。もうすぐ国境だと思いますが、どうされますか?」「商人としてこのまま進もう。」「かしこまりました」
30分位進むと、国境が見えてきた本当に、定番のイベントが発生しない。誰にも絡まれる事もなく、王女様や聖女様を助けるイベントも発生しない。国境で待っている間も誰にも絡まれる事もなく順番が廻ってきて、身分確認をされて終わりだ。”マナベ商会”の人間で登録している。ナーテに関しても、共和国の人間だとすると面倒になる事が考えられたので、王国で市民登録をして、マナベ商会の従業員としている。本人もそれで問題はないと言っていた。
「にいちゃん。これで共和国に入れたの?」「あぁそうだな。まずは、近くの街まで行って、そこで情報収集をしよう。」「うん!」「ユリアンネ。問題を起こすなよ。」「お兄様。わたくしは、ヒルダと違います。大丈夫ですわよ」「ユリアンネ。わたくしも大丈夫です。アルノルト様。わたくしは大丈夫です。」「解った。解った。ルト。二人を頼むな。」「かしこまりました。ご主人様」
「ご主人様はどうされるのですか?」「俺は、情報収集は苦手だからな。アンとラウラとカウラにまかせて、宿屋でいろいろいじっているよ。」「解りました。ナーテも、宿屋で、ご主人様と一緒なら安心できます。」「ナーテがそれでいいのか?」「え?おいらは「ナーテは、共和国の出身です知り合いが居たら、面倒な事になるかもしれません。ご主人様」」「そうか、そう言えば・・・。そうだな。ナーテ。俺と一緒に宿屋に居る事にしよう。ユリアンネとヒルダとルトで、商人や職人から話を聞いてきてくれ。アンとラウラとカウラで、冒険者や街の人から話を聞いてくれ。主に、ナーテの居た村の話と、二人の帝国商人の話と、”聖女伝説”についてだな。」「かしこまりました。」
「そう言えば、ナーテの村の名前聞いてなかったな?」「あぁぁぁにいちゃん。それは、「アル。私達で聞いておきますわ。そろそろ、交代の時間ですわ。ラウラとカウラを起こして、アルが休むのですよね。」」
「そうか、わかった。なんか、釈然としないが、わかった。俺は、少し休むけどいいか?」「えぇ大丈夫です。」
すぐに眠くなって寝てしまった。もしかしたら、誰かが魔法を発動したのかも知れないけど、ゆっくり寝られるからまぁいいか・・・。
★☆★☆★☆ アンネリーゼ Side「さて、ルト。ナーテ。そろそろ、はっきりさせましょう?」「何をでしょうか?アンネリーゼ様。」
「ナーテの事よ。別に、私は、ナーテが何者でも構わない。アルの嫁に座を狙っていても構わない。でもね。はっきりしないのは嫌なの!」「そうですね。アンネリーゼ様。ナーテ。いいですよね。」「うん。おいらは・・・でも・・・。にいちゃんに嫌われたくない。」「ナーテ。それは大丈夫ですよ。私は、貴女の味方ですからね。」「アン姉。」「ラウラとカウラもね。」「うん。」
「でも、その前に、幾つかの事を知りたいのよ。」「うっうん。」「ナーテ。貴女の本名は、ナーテリンデ・ブラントで間違いないのよね?」「うん。そう。」「そして、貴女の出身の村は、ブラント村でいいのよね?」「・・・うん。」「貴女は、村長や代官の娘なのよね?」「・・・そう。家は、代々代官をやっていた。だから、あの二人もおいらの家に泊まっていた・・・。」「やっぱり、それでいろいろ知っていたのね。」「うん。」「ナーテ。それは、貴女から、アルにいいなさい。村長の"子供"だとね。」「え?娘じゃなくて、子供?」「うん。娘って言ってもいいわよ。私は、その方がいいと思っているのだけれどね。」
ルトを見る。「そうね。いい加減に意識してもらわないと、ヒルデガルド様やユリアンネ様と対等の立場になりませんからね。私もいいと思うわよ。」「本当!おいら、にいちゃんに、女だって言っていいの?」
「やっぱりね。ルトが口止めしていたのね。」「そうね。最初の意図は違ったのですけどね。」「そうだろうと思っていたわ。アルが鬼畜なら、ナーテを襲うかも知れないと思ったのでしょ?」「えぇそうですけど、そんな素振りを見せないどころから、わたくしにも指一本触れないヘタレだとは思いませんでしたわ。」「あぁやっぱりね。それで、その大きいだけの物を強調する様な事を最初の事はしていたのね。」「そうですけど、それこそ、無駄でしたわね。なんですのあれは?」「あれとは?」「ご主人様の周りには、その気になれば、色とりどりの女性が居るのに、誰にも手を出していないのですわよね?」「そうなるね。もう、15なのだから遠慮する事ないのに・・・。」「えぇそれに、ご主人様の資産なら、正妻1人に妾10人居ても文句を言われないでしょう。毎月の稼ぎを聞いてびっくりしましたわよ」「ルト。意見が合いそうね。」「あら、貴女もそう思いますの?」「えぇ勿論。あのヘタレを焚き付けたくてしょうがないわ」「面白そうですわね。」「それに、アルは前世では、初めては、14歳ですからね。大丈夫ですよ。」「それはいい事を聞きました。遠慮する必要はなかったというわけですね。」「えぇでも、ルトはナーテを推すよね?私はヒルダを推させてもらいます。」「解りました。今のところ、貴女が一歩も二歩もリードしているでしょうけど、負けませんわ。」
「なぁラウラ姉。二人は何を言っているの?」「はぁナーテは気にしなくていいですよ。ナーテは、アル様の事が好きですよね?」「うん。おいら。にいちゃん大好きだよ。優しいし、かっこいいし、時々怖い顔しているけど、それでもすごく頼もしい。おいら。にいちゃんの事、大好きだよ」「それならいいのですよ。二人も、そんな話をしているのですからね。」「ふぅ~ん。みんなにいちゃんの事が好きだよね?ユリウス様も、ギルも、クリスも、イレーネも、ザシャも、ディアナも。にいちゃんの事が好きだよね?」「そうですね。アル様は、不思議なお方ですからね。」
女二人の共同戦線が決まった瞬間だった。アルノルト。遠慮はしないからね。★☆★☆★☆ 
なんとなく、悪寒を感じて目が覚めた。アンとルトがこちらを見て笑っている。仲がいいのはいいことだ。
馬車を止めて、御者をしていた、ユリアンネとヒルダとカウラが戻ってきた。なんか前が騒がしいという事だ。
ラウラが眷属を召喚して、探索する事にした。やっとイベントかなと思ったが、馬車が渋滞しているだけの様だ。
渋滞の原因もすぐに判明した。街道に木が倒れていて、それをどかすのに時間がかかっているだけの様だ。
渋滞している所まで行くと、5台の馬車が立ち往生しているのが解った。何か文句を言っている奴らも居たが、ここは騒いでもしょうがないので、皆でゲームでもして待っている事にした。
イベントらしいイベントが発生しない。大木の撤去も進んでいるらしい。1人の役人が馬車に駆け寄って説明してくれた。
後、2~3時間はかかるという事だ。それを聞いて国境に引き返す馬車も出てくる様だ。俺達は、引き返さないで待つことにした。ここで野宿してもよい。それだけの装備は整えてある。
外に出て、”リバーシ”で遊んでいると、恰幅のいい紳士が話しかけてきた。
「急に申し訳ないない」「はい。何でしょうか?」「もしかして、それは”リバーシ”ではないでしょうか?」「そうですが?」「おぉぉやっぱり、私、バックハルムで商人をやっています。バロワンといいます。よかったら、その”リバーシ”をお譲り頂けないでしょうか?」「え?」「王国大銀貨5枚でどうでしょうか?いや、7枚でお譲り頂けないでしょうか?」「ちょっと待ってください。これ、今王国内では銀貨5枚で買えますよ?」「いえ、それが、今、王国内でも品薄で買えなかったのです。」「え?本当ですか?」「はい。なんでも、”チェス”や”しょうぎ”なる新しい物を作るのに職人を移してしまって、”リバーシ”は品薄らしいのです。サンプルで一つはシュロート商会に譲ってもらったのですが・・・これは、領主に渡さなければならなくて、息子や娘へのお土産に買っていけなくて・・・。」
「そうなのですか?少しお待ち・・・あっこちらに来て下さい。」馬車の方を見ると、ヒルダがOKサインを出している。ステータス袋から出してくれているのだろう。
バロワンと名乗った商人を、馬車の中に誘導した。「これでしたら、銀貨5枚でお譲りしますがどうですか?」
そこには、商売をしようと思って、ギルから受け取っていた、”リバーシ”が10個ほど積み重なっていた。「え?よろしいのですか?」「はい。あっご挨拶が遅れました。私、アルノルト・マナベともうします。マナベ商会の代表をしております。」「え?マナベ商会・・・。あっもしかして・・・。」
「えぇ”リバーシ”の開発者です。その他のゲームの考案者でもあります。ご迷惑をおかけしたようで申し訳ない。」「いえ、とんでもありません。マナベ商会の代表の方だとは・・・・。知らない事とはいえ失礼致しました。でも、よろしいのですか?」「え?なにがですか?」「いえ、”リバーシ”を売りに来たのではないですか?」「そうではありません。わたくし達は冒険者をしております。商会の仕事は、アイディアを出して、試作品を作る事です。作成と販売は、シュロート商会にまかせてあります。こうして持ち歩いているのは、自分たちで遊ぶ為もありますが、商家の方や有力な方へのお土産にしようと持ってきているのです。」
「・・・そういうことでしたら、遠慮なく、銀貨5枚で買わせていただきます。」
バロワンさんは、大銀貨5枚を出そうとしたので「いえ違います。10台で銀貨5枚です。」「え?それでは・・・。」「そうですね。もし、それでは、バロワン殿の気が済まないという事でしたら、共和国の事を教えていただければと思います。共和国で商売をするつもりはありませんが、冒険者としての活動は考えております。どんな事が好まれるのか知っておきたいと思っておりました。なんせ、私達は、王国の田舎者ですので・・・ね。」
「ハハハ。」
「いや失礼。若いのに、なかなかおもしろいお方ですね。解りました、”リバーシ”10台を銀貨5枚で買わせていただきます。」「ありがとうございます」「その代わり、これから、街までの間。私の話に付き合って頂きます。よろしいですか?」「えぇ勿論です。」
にこやかに笑いながら握手をかわす。悪い人ではなさそうだ。商人としても、そこそこの規模なのだろう。領主との伝手がある事はわかる。”リバーシ”を買いに、王国の王都まで足を伸ばす行動力もある。いろいろ仕入れては居るだろうが、それでも子供のお土産を気にする善良な気質もありそうだ。嘘だとしたら、騙された俺が悪いと思っている。打算も計算もあるだろう。商人だから当然だろう。
それから、街に着くまでの2日間。バロワンさんの馬車と一緒に行動した。護衛の方々も居て、カウラやラウラにはいい刺激になったようだ。
俺達の事もあまり詮索しないで居てくれる事も好感が持てる。食料などは、予め馬車の荷台にある程度出していたが、不審と言えば不審だろう。子供だけで、旅を続けているのだ。
それでも、バロワンさんは、共和国の事をいろいろ教えてくれた。貨幣に関しては、王国貨幣がそのまま使えるという事だ。共和国というだけ有って、7つの国の集合体の様だ。もうひとつの国と言ってもいいらしいが、それでも出身を聞かれたら自分の国を答える事が一般的だと教えてくれた。
俺達が共和国と呼んでいた国は、ラフォン共和国。ラフォンという国が母体になっている。ここが宗主国となるらしい。さらっと流して聞いていたので、あとで、ユリアンネやヒルダに教えてもらう事にする。
共和国にも、ギルドが存在している。ギルドの本部は王国にあるので、共和国には本部は存在しないが、各ギルドは共和国本部と呼んで、ラフォンの首都にあたるレーヌに本部を作っていると教えてくれた。
あとは、食べ物や文化の事も聞いたが、実際に見てみたいとわからない。そんな話をしていたら、バロワンさんが店を出している、バックハルムに着いた。俺達が情報収集する事にしていた場所だ。
「アルノルト殿。道中。ありがとうございます」「いえ、こちらこそ、貴重なお話ありがとうございます。大変助かりました。」「いえいえ。もし、この街でお困りの事が有りましたら、私の店に来て下さい。多少ですが、顔が聞きます。」「それは心強い。何かの時に頼らせていただきます。」「そうじゃなくても、店に遊びに来て下さい。リバーシの勝負もお願いしたいですからな」「解りました。時間ができましたら、お邪魔したいと思います。」「えぇお待ちしております。それでは、私達はここで。」「はい。道中ありがとうございます。」
バロワンさんを見送った後で俺達も街で宿屋を探す事になった。別れた後で宿屋を紹介してもらえばよかったと思ったが、後の祭りだった。

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