【旧】魔法の世界でプログラム

北きつね

迷宮攻略・中編

休憩場所に選んだ場所は、小部屋だったが、カウラが何やら見つけてきた。鉄鉱石だ。この手の物が見つかるから、冒険者が沢山潜っているのだろう。そして、持ち帰ってきた物を買い取るための商人がいたり、武具にする為の鍛冶職人が居る。鍛冶職人をまとめる為に、職人ギルドも支店を出している。
「さて、一息つけたし、そろそろ行きますか!?」「なぁにいちゃん。」「どうした?ナーテ。戻ってもいいぞ?」「ううん。そうじゃなくて、おいらも戦いたい。」「そうだな・・・。ルト。どう思う?」「ご主人様のお心のままに、フォローが必要でしたら、私やラウラやカウラにお申し付け下さい。」「そうだな。まずは、一戦してみてだな。どの程度、現有戦力で戦えるのか把握できないと、判断ができない。ナーテ。弓は使えるよな?」「うん。にいちゃん。ユリ姉に教えてもらっているから使えるよ。」
ステータス袋から、小ぶりの弓を取り出して、ナーテに渡す。矢筒には専用の矢も入れてある。
「ナーテ。その矢がなくなるまでに、一回でも魔物を倒せたら、今後も戦う事を許すけど、できなかったら、魔法での支援だけにするからな。」「わかった!」
新しいおもちゃを与えられた子供の様に、弓矢を何度も手になじませている。
「さて、行くか?ラウラ。カウラ。表の様子はどうだ?」「大丈夫です。」「誰もいないにゃ」
それなら、3階層の探索はほどほどにして、4階層に向かおう。
4階層から迷宮ダンジョンが牙を剥いく・・・はずだ。1~3階層までは、RPGとかでよく見る迷宮ダンジョンだったが、4階層に降りた途端に雰囲気が変わった。洞窟という感じになっている。
地図は、10階層までは存在している。街でも売っている。いろいろな種類が売られていたが、シンプルな地図を購入した。そのおかげで迷わずに来ている。
4階層では、魔物が出現してくるはずだが、予定の半分位進んだ所で、初めて魔物化したワーラビットに遭遇した。連携訓練と考えていたが、ユリアンネが放った魔法で倒されてしまった。ナーテ弓矢を放つ時間さえもなかった。
その事から、4階層はそのままスルーする事に決めた。5階層におりた。10階層まで、同じように洞窟的な雰囲気が続いていると書かれている。
5階層でも同じように、何度か魔物化した獣の襲撃を受けたが、苦戦らしい苦戦をしないまま過ごしている。
「にいちゃん。おいら・・・。」「そうだな。戦ってもらおう。でも、俺が無理だと思ったら、下がってもらうからな。」「うん!」
ナーテに、短槍を渡した。”槍の加護”があるので、弓よりは上手く扱えるだろう。3列目から短槍では攻撃ができないのは当然なので、陣形を入れ替える事にした。
俺とカウラが先頭を行く。次を、ナーテとヒルダとユリアンネが続く、後ろを、アンネリーゼとラウラとルトが守る事になる。武器の入れ替えを終えて、先に進む事にした。
これまで、魔法は補助魔法を少し使っただけで殆ど使わないで来ている。地図もあるからだろうけど、なんとなく魔法を使いたくなっている。
6階層。7階層。8階層。と、魔物を見かけるが、簡単に倒せる程度の数しか襲われない。ラウラとカウラに寄って上手く回避されてしまっている印象がある。
「ラウラ。カウラ。魔物を避けなくてもいいからな。少し戦っておかないと、感覚がわからないからな」「はい。かしこまりました。」「はいにゃ。アル兄ィ。次の分かれ道を右に進むと、魔物が居るにゃ」
そうか、カウラが調べて、ラウラが誘導するという感じで魔物を避けていたのだな。
「よし、右に進んで戦闘訓練をする。時間も遅いから、その戦闘が終わったら、安全地帯まで移動して今日は休む事にしよう」「「「「「「「おおぉ!」」」」」」」
本当にRPGで見ていたような魔物がいた。コボルトとゴブリンだ。こちらの世界では、魔族と分類されるようだが、本来なら、彼らともコミュニケーションが取れるのだが、迷宮ダンジョンに居る魔族とはコミュニケーションが取れない”らしい”。実際に、目の前に居る奴らはいきなり襲い掛かってくるし、言葉が通じるような雰囲気もない。
戦闘は、簡単に終了した。俺とラウラだけで十分だった。それぞれ10体ほどだったが、多分、俺1人でも余裕を持って対応できたと思う。それくらいの戦力差があった。多分、刀が実力の上乗せをしてくれているのだと思う。魔法も結局使わなかった。
その後、数回戦闘があったが、危なげなく安全地帯に到着した。
今日はここで一泊する。幸いな事にまだ他のパーティがいない。このすきに少しだけ改良させてもらおう。やってはダメだとは言われていない。魔法も使ってこなかったので、まだ大量に使える状況だ。
まずは、大きな部屋の端っこに、小部屋を造ろう。その小部屋の奥に仕切りを作って、シャワールームっぽい感じの部屋を造ろう。簡易的なお風呂を作りたかった。汗や返り血で気持ち悪い。”風魔法”清潔にする事は出来るが完全ではないし、やはり風呂に入れたほうがいいに決まっている。全員が風呂に入った事を確認してから、風呂を壊して寝床にする事にした。風呂は、作るのにもそれほど力を使わなかったので、壊しておく事にした。
その後で、ユリアンネにお願いしてベッドを作らせた。俺はその間に、夕ご飯を作る事にした。同時に、トイレも作っておく。これは常設してもいいだろう。少し離れた場所に男女で別々に作った。排泄物の処理はスライム君にやってもらおう。カウラが、数匹捕まえてきて、トイレの中に放っていた。まぁそのうち誰かがもっといい方法を考えてくれるだろう。実用レベルで困らない物ができたので、満足して、作った部屋に戻った。
なんとなく想像は出来るが、一応聞いておくことにした。「ユリアンネ。これは?」「あっ。お兄様。これは、私とお兄様のベッドです。」「俺は、『人数分、別々に用意しろ』と言ったよな?お前も『解りました』と答えたよな?」「えぇだから、人数分用意致しましたわ。これが、ナーテとルトのベッドで、こちらの二つが、ラウラとカウラのそれぞれのベッド。ヒルダとアンネリーゼは入口近くに寝ればいいのですわ」「・・・ユリアンネ。」「はい。お兄様!」「ふざけるのもいい加減にしろよ。」「ふざけて何ていませんわ。私とお兄様はこのベッドで寝る。これは決まりです。」
そう、ユリアンネが作ったのが、一番奥に天蓋付きの豪勢なベッドが一つ。その横に、シングルベッドの様な物が二つ。少し離れて、ダブルのベッドが一つ。さらに”ござ”だけになっている場所が一箇所という感じだ。
「ユリアンネ。仲良くしろとは言わないけど、ヒルダ達も俺の大切な仲間だ。それは解っているのだろう?」「・・・・だって、お兄様。ヒルダやナーテばかりで、ちっともわたくしの事を見てくださらないです。」
最後は、泣き声になってしまっている。そして、なぜか皆の視線で俺が悪者になっている事が理解できた。
「解った。解った。ユリアンネ。もう裸で布団に入ったりしないな?」「うん」「俺のいう事を守るな」「うん!」「それなら、今日は、一緒に寝るか?」「うん!!」
とびっきりの笑顔というやつだ。
はぁなんでこんなになってしまったのだろう?心当たりが全くない。確かに、子供の時には、チアキにしてきた様に接したはずだ・・・・。それが間違っていたのか?
「おぃアンネリーゼ。少し聞きたい。」「なに?」「俺って、妹の接し方間違えているのか?」「何を今更・・・。どう贔屓目に見ても、妹への接し方じゃなかったわよ。私とのデートよりも、チーとの買い物を優先したり、」「それは、家族だから当然だろう?」「体育祭の時に、一番大切な娘と書かれた借り物競走の時も、観客にいたチーを最初に抱きかかえてゴールしていたわよね?」「家族が大切なのは当然だろう?」「泣きながら連絡してきたチーの声を聞いて、私を置いて帰った事もあったわよね。」「おぉ・・・。そうか、でも、普通だろう?」「普通かどうかは置いておくとして、チーはそれで、真一を好きになっていたのは間違いないわよ。ね。ヒルダ?」「うん!どんな男の子よりもかっこよくて、どんな人よりも頼りになって、いつでも一緒にいてくれた。」
「アルノルトお兄様も同じです!幼年学校に入るまででしたが、いつも一緒にいてくれたとルグリタが言っていました。」「そりゃ家族だからな。それに、父上も母上も忙しい人だからな。」「はい。毎年、可愛いぬいぐるみや髪飾りを送ってくれました」「そりゃ妹だからな。」「私が困っていたら、アドバイスを沢山くれました」「手紙で相談されたら答えるだろう」「王都で会える時には、お忙しいのに一緒にいてくれました」「そりゃぁ俺も会いたかったからな」「それから、それから、大きな獣からも守ってくれました!」「おまえ・・・覚えていたのか?」「勿論です。お兄様。わたくしのお兄様の絆です。忘れるはずはありません。」「そうか・・・。」
「なぁアンネリーゼ。」「手遅れだね」「ルト・・・。」「わたくしからはなんとも。」「ラウラ。」「・・・アル様。」「カウラ・・・は・・・いいか」「ん?アル兄ィが、群れのボスなんだにゃ、ボスだから、メスが寄ってくるのは当然にゃ」
「解った。解った。俺が悪かったって事だろう?ユリアンネ。ヒルダ。」「・・・」「・・・」「そうだな。できれば、俺はみんなと仲良くやっていきたい。今はそれじゃダメか?」「はぁお兄様」「アルノルト様」
「ハハハ。アルらしいな。ふたりとも解っているのだろう。」「解りましたわ。お兄様。ヒルダもいいですわよ。でも、お兄様の一番はわたくしですからね」「その戦い受けて立ちますわ。アルノルト様の事を一番知っているのはわたくしですからね」「それを言い出すと、一番長居付き合いなのは、わたしじゃないのかな?」
おい。アンネリーゼ。今それを言い出すな。面倒な事に・・・・。
もう遅かった。3人が顔を突き合わせて何か言い出している。
もういい勝手にやっていろ。付き合いきれない。俺は寝る。
ユリアンネが作ったシングルベッドの一つで寝る事にした。後は好きにしろ!
☆★☆★☆★ ユリアンネ Side「わたくしとお兄様は、産まれた時からの付き合いですからね。」
私との付き合いが、一番長いに決まっています。今年で13歳になるのですから、13年間の付き合いがあるのです。
「ふっふん!ユリアンネ。僕には、”地球”での13年間があるから、それをプラスしたら、私のほうが長いわよ!」
ヒルダは、お兄様がいない所で、自分の事を”僕”と呼んでいる。お兄様の前では、”わたくし”や”私”と言っているのに、急に口調が変わる事が多い。お兄様の前では、本性を隠しているのだ!
「ユリ。ヒルダ。二人とも甘いわ。私は、小学校入った時からの付き合いで、小学校5年のある時期から"彼女”となって、19歳までだから、期間は同じ13年だけど、”彼女”であった私が一番に決まっています。」
アンの事を忘れてはダメです。生前の事とは言え、彼女だったのは間違いない。アンが不幸な事故で死ななければ、結婚していただろうとは、お兄様も認めている。一番の敵なのかもしれない。
「アン。でも、貴女は、彼女で一緒に居る時間も短かったのですからね。僕のほうが、沢山一緒にいたのですよ。」「そうです。私は何度も、お兄様と一緒に寝ていますよ。」「ユリアンネ。それはダメ。アンには勝てない。」「ふっふん。ヒルダは気がついているみたいね。私のほうが上だって!」「いいえ。それは、今から変わる事です!」
「二人して、何を・・・あっ!」
そうだった。アンは、お兄様の彼女で、お兄様に女にしてもらったのだ。それは、私やヒルダには無い事だ。確かにこれからではあるが・・・。今の所は、一歩リードされている。
「ユリアンネ。でも、騙されてはだめ。それは生前の事。生まれ変わってからは同等のはず!」
それから、二人と、”お兄様のこんな事を知っている”自慢を繰り返した。ネタも少なくなってきて、疲れてきた。
「あぁぁぁぁぁ」「ヒルダ。どうした?」「ユリアンネ。アン。あれみて!」
ヒルダが示す方向を見ると、私が作ったラウラとカウラ向けのベッドの上で寝ているお兄様。枕元に、白虎の姿になって丸くなるカウラ。同じく枕元で朱雀の姿で眠るラウラ。ベッドの脇には、麒麟の姿で眠っている。ルトラウト。そして、お兄様に抱きつくようにして幸せそうに寝ているナーテの姿が目に入ってきた。
「ねぇヒルダ」「なに、ユリアンネ。」
「あぁぁこのままだと、ナーテに嫁の立場を持っていかれそうだね。」
そうなのだ、お兄様は、ナーテが男の子だと思いこんでいるが、私達は、ナーテが女の子だと知っている。お風呂にも一緒に入っているので気が付かないわけがない。ナーテが、”おいら”と言っているからだと思うが、お兄様は、ナーテが少し可愛い感じの男の子だと本気で思っている。私達もそれが解っているがあえて誤解を解かないようにしている。これは、3人で決めた事だ。ラウラも協力してくれている。カウラは、もともと性別という概念が薄いようだ。ルトは、ナーテの味方だろうが、ナーテが自分から言い出すか、お兄様が、気がつくまでは、このままで居ると言ってくれた。
もしかしたら、一番の敵は、ナーテなのかもしれない。

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