エルフに転生したんだけどこんなはずじゃなかった〜エルフ集落から追い出されたのでロリババアと異世界でぶらり旅〜
第2話 テンプレ通りに美少女はいつもすぐ側に
「ふぁぁぁ」
目が覚めると同時にそんな声が漏れる。いつもと同じか細い声。
ん、ちょと待てよ?
あれれ、僕転生しませんでした?
「あー、あー、あああー」
喉の奥から声をゆるく吐き出してみるのだが、なんか以前の自分の声よりも幾分かか細くなっている感が否めない。
「なんなの、これ……」
転生は夢の中の話だったのか。しかし、自分は現によくわからない馬鹿でかい大樹の下にいるし、真横に白い色のサイが寝ている。
「はぁ……」
意味もわからずそのまま落胆していると、サイの角から何かがモコモコと出てきて地面に落ちた。
見てみるとそれはタブレット型端末機器で、電源ボタンを押してみると、大きく画面にPSYphoneの文字。
なんだよサイフォンって。サイから出てきたから? ダサいなおい。
しばらくするとうるさくタブレット端末がなり始めたので、通話マークを押して通話に出る。
『もしもし、私アフターフォローも欠かさない素晴らしき担当官、佐藤です!』
「ちょっと佐藤さん、これどういうことですか?」
『おお! 私の予想通り、動きが加わるとさらに見目麗すぃボディですな!』
「いや、だからこれどう言う……」
『スンバラスィィィ! 全て香音さんのご希望のままに取り揃えさせて頂きましたよ!』
「いや、これ前と変わらな……」
『転生先の周囲に住む同種族同性のエルフの平均身長よりやや高く、転生先の周囲に住む同種族同性の平均顔面偏差値よりもやや高い、家事生活のスキルは万全、戦闘能力も桁違いの万能エルフ美少女です!』
「……え?」
『はい! 万能エルフ美少女です!』
万能エルフ、美少女……?
「え、美少女?」
『はい!』
「少女?」
『その通り!』
「女?」
『はい、それはもう立派なものをお持ちで!』
「なんで女になってんのさァァァ!?」
『へ?』
「僕、男! ノットウーマン、分かる!?」
『いや、どう見ても女性じゃあありませんか、前も今も。あ……』
そこでなにかに気づいたのか、あ、とこぼした佐藤に問い詰める。
「何が『あ……』なんですかねぇ?」
『いや、その……』
「はい?」
頭の中でブチブチブチと何かがはち切れる音がしている。いけないいけない、冷静に。
「で、なんなんです?」
『いや、その、そう言えばあのデータにも男と書いてあったな、と……』
「おいこら、てめぇそれでいてこんなミスしやがったのか」
自分の口から初めて暴言というものを聞いた。自分を第三者視点でわぁ、怖、と傍観している自分はいるものの、それを止められる訳では無いのでどうしようもない。
『あ、いや、あはは……では』
ブツっと音がして通話が切れ、その後佐藤に何度かかけ直すが繋がることは無かった。
「あの野郎……」
怒りで我を忘れそうになったけれど、なんとかそれを我慢してその場から動こうとする。
が、しかし。上手く歩けない。
体が動かしづらいのだ。
まぁ、それはそうだろうと思う。いきなり自分ではない誰かの体に入って、しかも性別まで変わっているのだ。色々と無理がある。
「なんか重苦しいのまで引っ付いてるし……」
自身の胸部に重くるしい2つの塊がくっついていることに少しいらだちを感じる。
足元が醜いじゃないか、邪魔だなぁ。
「それにしてもあのクソ担当官め、間違って僕を女に転生させやがって……」
うまく動けない中、ふつふつと湧き上がるその怒りをひたすらに佐藤にぶつけ続けていると、次第に眠くなってきて、僕はその場で横になって眠ってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……じゃ! お……きるのじゃ! おい、起きるのじゃ!」
「うわっ!?」
誰かに大きな声で頬を叩かれていることに気づき、びっくりして思い切り起き上がる。
「まったく、おぬし、グランドエルフならばもっとプライドを持たんか、プライドを」
「へ?」
「他人の家の裏で堂々と使い魔とお昼寝とはいい度胸じゃのう?」
何か言っているが、それどころではない。
目の前に美少女が座っている。
エメラルドグリーンの双眸に金色の透き通った長髪。長くとんがった耳は先が少し赤みがかっている。水色のワンピースの上に紺色のカーディガンのようなものを羽織っており、手には木製の編みかごを持っていた。
「まったく、どこの冠位じゃおぬし。100年も生きたグランドの者とは思えんの」
「100年?」
「それはグランドエルフなのだから当たり前じゃろ? 生まれた時から冠位のエルフなどおらんわ」
「ろ、ロリババア……」
「誰がババァじゃ、このすっとこどっこい! おぬしこそ、エルフの癖にそんな無用の長物を二山も携えよって、恥ずかしいとは思わんのか!」
「ただただ邪魔だとは思ってるけど……?」
「本当にどうしようもないやつじゃな……で、どこの冠位じゃ」
「いや、さっきこの世界に来たばかりでなにも分からないんだけど」
「なに?」
「さっきこの世界に来たばかりなんだ」
「転生者か……どうりで反応が素っ頓狂だと思ったわい」
可愛らしいエルフはジジババ口調でどんどんと僕から捲し立てるようにして情報を引っ張り出して行った。
「……あやつ、どうしようもない阿呆になったの……」
「ん、どうしました?」
「いや、何でもない、こちらの話じゃ」
「はぁ」
何やら1人でブツブツ呟き始めた。老人の独り言は、死んでしまった近所のおばあさんの間際の姿を思い出す。ずっと1人で何かと話しているのだ。そしてこちらを見るとあなたも話しましょと笑顔で手招き。
老人の独り言は危険。いくら偏見だと罵られようがこれはトラウマどつにもならない。
ゆっくりとその場を立ち去ろうとすると、不意にまた彼女から声をかけられた。
「おい、どこに行くきじゃ、宿がないのじゃろ、うちに寄っていけ」
そう言うと、彼女は強引に僕の腕を引っ張ってサイの上にまたがる。
「おい使い魔よ、おぬし、こやつの使い魔じゃろ? こやつはしばらくはうちで面倒見るから、おぬしはわしら乗せてわしのうちまで運べい!」
そう彼女がいうと、サイから
『承知した、案内を頼もう、ご婦人』
と声が聞こえた。イケヴォかよ、僕がそんな声出すイケメンになりたかったよコンチキショー、しかも僕のあこがれはサイかよ……
『さぁ、主、ご婦人、行くぞ』
そう言うとサイは勢いよく走り出した。
その時に思った。
ああ、僕本当に女の子になってしまったんだな、と……股を守る剣が1本なくなった代償をこんなことで知る事になるとはと、考えていたら少し悲しくなった。
目が覚めると同時にそんな声が漏れる。いつもと同じか細い声。
ん、ちょと待てよ?
あれれ、僕転生しませんでした?
「あー、あー、あああー」
喉の奥から声をゆるく吐き出してみるのだが、なんか以前の自分の声よりも幾分かか細くなっている感が否めない。
「なんなの、これ……」
転生は夢の中の話だったのか。しかし、自分は現によくわからない馬鹿でかい大樹の下にいるし、真横に白い色のサイが寝ている。
「はぁ……」
意味もわからずそのまま落胆していると、サイの角から何かがモコモコと出てきて地面に落ちた。
見てみるとそれはタブレット型端末機器で、電源ボタンを押してみると、大きく画面にPSYphoneの文字。
なんだよサイフォンって。サイから出てきたから? ダサいなおい。
しばらくするとうるさくタブレット端末がなり始めたので、通話マークを押して通話に出る。
『もしもし、私アフターフォローも欠かさない素晴らしき担当官、佐藤です!』
「ちょっと佐藤さん、これどういうことですか?」
『おお! 私の予想通り、動きが加わるとさらに見目麗すぃボディですな!』
「いや、だからこれどう言う……」
『スンバラスィィィ! 全て香音さんのご希望のままに取り揃えさせて頂きましたよ!』
「いや、これ前と変わらな……」
『転生先の周囲に住む同種族同性のエルフの平均身長よりやや高く、転生先の周囲に住む同種族同性の平均顔面偏差値よりもやや高い、家事生活のスキルは万全、戦闘能力も桁違いの万能エルフ美少女です!』
「……え?」
『はい! 万能エルフ美少女です!』
万能エルフ、美少女……?
「え、美少女?」
『はい!』
「少女?」
『その通り!』
「女?」
『はい、それはもう立派なものをお持ちで!』
「なんで女になってんのさァァァ!?」
『へ?』
「僕、男! ノットウーマン、分かる!?」
『いや、どう見ても女性じゃあありませんか、前も今も。あ……』
そこでなにかに気づいたのか、あ、とこぼした佐藤に問い詰める。
「何が『あ……』なんですかねぇ?」
『いや、その……』
「はい?」
頭の中でブチブチブチと何かがはち切れる音がしている。いけないいけない、冷静に。
「で、なんなんです?」
『いや、その、そう言えばあのデータにも男と書いてあったな、と……』
「おいこら、てめぇそれでいてこんなミスしやがったのか」
自分の口から初めて暴言というものを聞いた。自分を第三者視点でわぁ、怖、と傍観している自分はいるものの、それを止められる訳では無いのでどうしようもない。
『あ、いや、あはは……では』
ブツっと音がして通話が切れ、その後佐藤に何度かかけ直すが繋がることは無かった。
「あの野郎……」
怒りで我を忘れそうになったけれど、なんとかそれを我慢してその場から動こうとする。
が、しかし。上手く歩けない。
体が動かしづらいのだ。
まぁ、それはそうだろうと思う。いきなり自分ではない誰かの体に入って、しかも性別まで変わっているのだ。色々と無理がある。
「なんか重苦しいのまで引っ付いてるし……」
自身の胸部に重くるしい2つの塊がくっついていることに少しいらだちを感じる。
足元が醜いじゃないか、邪魔だなぁ。
「それにしてもあのクソ担当官め、間違って僕を女に転生させやがって……」
うまく動けない中、ふつふつと湧き上がるその怒りをひたすらに佐藤にぶつけ続けていると、次第に眠くなってきて、僕はその場で横になって眠ってしまった。
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「……じゃ! お……きるのじゃ! おい、起きるのじゃ!」
「うわっ!?」
誰かに大きな声で頬を叩かれていることに気づき、びっくりして思い切り起き上がる。
「まったく、おぬし、グランドエルフならばもっとプライドを持たんか、プライドを」
「へ?」
「他人の家の裏で堂々と使い魔とお昼寝とはいい度胸じゃのう?」
何か言っているが、それどころではない。
目の前に美少女が座っている。
エメラルドグリーンの双眸に金色の透き通った長髪。長くとんがった耳は先が少し赤みがかっている。水色のワンピースの上に紺色のカーディガンのようなものを羽織っており、手には木製の編みかごを持っていた。
「まったく、どこの冠位じゃおぬし。100年も生きたグランドの者とは思えんの」
「100年?」
「それはグランドエルフなのだから当たり前じゃろ? 生まれた時から冠位のエルフなどおらんわ」
「ろ、ロリババア……」
「誰がババァじゃ、このすっとこどっこい! おぬしこそ、エルフの癖にそんな無用の長物を二山も携えよって、恥ずかしいとは思わんのか!」
「ただただ邪魔だとは思ってるけど……?」
「本当にどうしようもないやつじゃな……で、どこの冠位じゃ」
「いや、さっきこの世界に来たばかりでなにも分からないんだけど」
「なに?」
「さっきこの世界に来たばかりなんだ」
「転生者か……どうりで反応が素っ頓狂だと思ったわい」
可愛らしいエルフはジジババ口調でどんどんと僕から捲し立てるようにして情報を引っ張り出して行った。
「……あやつ、どうしようもない阿呆になったの……」
「ん、どうしました?」
「いや、何でもない、こちらの話じゃ」
「はぁ」
何やら1人でブツブツ呟き始めた。老人の独り言は、死んでしまった近所のおばあさんの間際の姿を思い出す。ずっと1人で何かと話しているのだ。そしてこちらを見るとあなたも話しましょと笑顔で手招き。
老人の独り言は危険。いくら偏見だと罵られようがこれはトラウマどつにもならない。
ゆっくりとその場を立ち去ろうとすると、不意にまた彼女から声をかけられた。
「おい、どこに行くきじゃ、宿がないのじゃろ、うちに寄っていけ」
そう言うと、彼女は強引に僕の腕を引っ張ってサイの上にまたがる。
「おい使い魔よ、おぬし、こやつの使い魔じゃろ? こやつはしばらくはうちで面倒見るから、おぬしはわしら乗せてわしのうちまで運べい!」
そう彼女がいうと、サイから
『承知した、案内を頼もう、ご婦人』
と声が聞こえた。イケヴォかよ、僕がそんな声出すイケメンになりたかったよコンチキショー、しかも僕のあこがれはサイかよ……
『さぁ、主、ご婦人、行くぞ』
そう言うとサイは勢いよく走り出した。
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ああ、僕本当に女の子になってしまったんだな、と……股を守る剣が1本なくなった代償をこんなことで知る事になるとはと、考えていたら少し悲しくなった。
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