家出したら異世界で御厄介になる事になりました

Joker0808

異世界生活スタート7

 目が覚めると、体がやけに重たかった。起き上がろうにも起き上がれない、俺の上に何かが乗っているようだ。俺は何が乗っているのか確認するために、自分の腹部付近に目をやった。
「....うぅん....」
 リウがいた。なぜかわからないが、俺の腹の辺りに乗っかり、腹這いになって眠っている。
「おい、リウ!」
 俺はリウを起こしてどかそうとするが、リウは一切起きない。何とか自分の上からどかそうと試みるが、寝起きで力が入らず、どかすことが出来ない。
「昨日何があったんだっけ.....」
 俺は、リウをどかすことを諦め、なんでこんな状況になっているのかを考え始めた。よく見ると、ここは俺とクリミリアが住んでいる家の俺の部屋だ。俺とリウはベットで寝ており、よく周りを見ると、マルノスさんも床で寝ていた。
「えっと....確か....」
 あの後は、シャングスでレベッカさんが酒を飲みまくり、それに付き合ってミーシャさんとマルノスさんも飲み始めて、どんちゃん騒ぎの宴会になってしまった。しまいには店にいた人たちも巻き込み明け方まで飲んでいた。シャングスの店主であるリティーの父親と母親も加わり、収集がつかなくなってしまったのだ。
「俺とクリミリアは目立たないように隅でこっそり飯食ってたんだっけ....」
 確かその後は、魔道研究院のメンバーがほぼ全員寝ちゃったから、クリミリアの魔法でこの家まで運んで、その後レベッカさんが起きて二次会が始まったんだった。
「はぁ~、この人達を信用して良かったのかな....」
 俺は、目が覚めたところでリウをどかして、ベットから起き上がりリビングに出ていく。
「あぁ、ユウト君起きたんだ」
「おはようございます、ユーカスさん」
 リビングではユーカスさんが椅子に座って優雅にお茶を飲んでいた。ユーカスさんは昨日はそこまで飲んでおらず、みんなを家に運ぶのを手伝ってくれた。
「良く眠れた?なんて聞くのはおかしいかな、昨日は大変だったし」
「はい....まさか酔ったレベッカさんがあんなにめんどくさいなんて....」
「まぁ、昨日は彼女も楽しかったんだろうし、あそこまで飲むのは珍しいよ。前にあれだけ飲んだのは....勇者召還の儀式を任された時だったかな?」
「割と最近ですね....」
 研究院の中でも真面なユーカスは、普通に話していれば、性格が良いイケメンのお兄さんという感じなのだが....
「ユーカスさん、距離が近いんですが...」
「あぁ、ごめんごめん。君の横顔が可愛くてつい」
 さっきから少しづつ俺の方に迫ってきていたのだ。その距離はもう数センチで顔が触れてしまうほどの距離だ。
 さっきから妙に視線を感じてはいたが、まさかこんなに近づいてきていたとは....
 危険を感じた俺はユーカスさんから距離をとって座りなおす。ユーカスさんは「つれないな~」とつぶやきながらお茶を飲む。そんあ事をしていると、二階から誰かが下りてきた。男衆が一階で寝ているという事は、女性陣は二階のクリミリアの部屋で眠ったのだろう。
「おはようございます。ユウトさん、ユーカスさん」
 降りてきたのはクリミリアだった。初めて会った時に来ていたフード付きのマントをつけて、すっかり目を覚ました状態で降りてきた。
「おはよう。後の二人は?」
「あぁ、ミーシャさんとレベッカさんはまだ寝ていますよ。昨日のお酒が残っている様子で....」
 疲れた表情を浮かべるクリミリア。その表情から、あの後も大変だったことが伺える。
「その恰好からすると、やっぱり今日実行されるの?」
「はい、先ほどレイティンさんから連絡がありました」
 話の内容から察するに、ディオニスの一件であることはすぐに分かった。
「やっぱり、レイティンさんも説得できなかったの?」
「はい、今さっき連絡がきて、本日の午後に儀式を開始すると....」
「じゃあ、クリミリア達は儀式に参加するってこと?」
「いえ、なんでもデュオニスさんの知り合いの魔導士団体が召還を行うと、私たちは何かあった時に対処できるように立ち会うだけです」
「デュオニス本人が取り仕切るわけではないんだね?」
 俺とクリミリアの会話にユーカスさんが真面目な顔つきで入ってくる。昨日の話ではデュオニスが自ら儀式をやるような流れで話を聞いていたが、実際は他人任せにして意味があるのだろうか?確かデュオニスは勇者を自分で召喚して、自らの地位や信頼を上げて国王になろうとしているはずなのだが....。
「はい、私がレイティンさんから聞いた話ではそうです」
「それでは、デュオニスの手柄とはあまり言えないんじゃないだろうか?デュオニスは一体何を....」
 三人で考えていると、また二階から降りてくる足音が聞こえる。おそらくレベッカさんかミーシャさんであろう。目が覚めて降りてきたらしい。
「フア~ア。おはよう....」
「あ、おはようございます。レベッカさん、よく眠れましたか?」
「あぁ~、大丈夫よ。途中から記憶がないけど....」
「それって大丈夫じゃないんじゃ....」
 レベッカさんもクリミリア同様にフード付きのローブに着替えて降りてきていた。眠そうな表情を浮かべているが、二日酔いではなさそうだ。 ユーカスさんの隣にレベッカさんは座った。昨日は酔っぱらった状態のレベッカさんしか見ていないので、なんだか新鮮な感じがする。
「はぁ~、なんだかだるいわ~。昨日何時くらいまで飲んでたの?」
「レベッカさんは明け方まで飲んでましたよ!お酒は控えた方が良いと言っているのに....」
「いやー、私は酒がないとやっていけないから~」
「もう!今日はしっかりしてくださいよ!」
「大丈夫だって、体の調子も良いし~」
 パタパタと右手を振り笑顔で答えるレベッカさんだが、本当に大丈夫なのだろうか?昨日あれだけ飲んでいたのに、二日酔いになっていないのはすごいと思うのだが....
「うぇ~、気持ち悪い~。吐く~」
 見るからに二日酔いという感じで、二階から降りてきたのはミーシャさんだ。顔色は悪いし、階段の手すりに寄りかかってフラフラの状態で階段を下りてきた。
「ユーカス~。水....」
「はぁ~、ミーシャは二日酔いみたいだね」
「もう無理~、死ぬ~」
 フラフラ状態で椅子に倒れ込むように座り込み、机にうつぶせになり呻き声を上げるミーシャさん。 ユーカスさんはやれやれといった様子で水を差し出し、クリミリアは頭を抱えて苦笑いをしている。
「ミーシャさん、今日の仕事は大丈夫ですか?」
「う~、薬飲めば何とか....」
「じゃあ、薬出しますからしっかりしてください!」
「は~い....」
 今にも死にそうな声を上げるミーシャさんに、クリミリアは薬を差し出す。こんな調子で今日は大丈夫なのだろうか?王国消滅とかしないだろうな....
「ハ~ア~。おはー」
「うぅ....お、おはよう....ございます....」
 今度は俺の部屋から、リウと見るからに顔色の悪いマルノスさんが部屋から出てきた。
「マルノスさんまで二日酔いですか?!」
「め....面目ない....うぅ....」
 ミーシャさんとマルノスさんがこんな状態で、大丈夫なのだろうか?二日酔いで顔を真っ青にしている男女とやる気があるんだかないんだかわからない少年、男も女もOKなイケメンに、あんなに飲んでも一切弱ない蟒蛇ウワバミみたいな女性。その団体の代表が、料理を殺人兵器に変えてしまう巨乳魔導士。
「個性が強すぎるよ....」
 結局、召喚の時間が迫っていたこともあり、二日酔いの二人に薬を飲ませ、みんなしていそいそと同じフード付きのマントに着替えて、レイティンさんと待ち合わせている場所に向かった。 時刻は11時くらいで、町は賑わいを見せていた。待ち合わせは王宮の門の前らしい。
「で、俺は何をしてればいいの?」
「ユウトさんを一人にしておくのはまだ早いですから、とりあえず一緒に来ていただこうと思いまして」
 俺はこの世界ではまだ、手のかかる子供のような扱いのようだ。しかし、ここ数日で分かったが、やはりクリミリアがいてくれてよかったと思っている。通貨の使い方にも慣れないし、何が食べれるものなのかもわからない、地の利だってないし、何よりこの世界を知っている人間と一緒にいないと不安だ。
「まぁ、ユウト君は私たちの仕事を見てればいいだけよ。もしかしたら何もないかもだけど」
「何もない方が良いに決まってるだろ、でも召還する団体の情報がない以上は僕らの出番も無いとは言えないからね」
 ユーカスさんとレベッカさんが難しい顔で考え込んでいるのをよそに、若干二名はグッタリした様子でうずくまっている。言わずもがなミーシャさんとマルノスさんだ。
「あ~、まじでなんで、あんな奴のために私らが頑張んなきゃいけないのよ~」
「ミーシャさん、いけませんぞ...これも仕事です」
 先ほど薬を飲んで、少しは体調が回復している様子のミーシャさんとマルノスさんだが、顔色はまだ悪い。
「なんでレベッカはピンピンしてるのよ~」
「私は自分の限界って言うのを知ってるのよ~。まぁ、あんたらはノリでガブガブ飲みまくるからそうなるのよ」
「.....化け物」
「マルノス、聞こえてるわよ~」
 ミーシャさんに得意げな表情で語るレベッカに対して、聞こえないよう本音を漏らすマルノスさんだったが、レベッカさんには聞こえてしまっていたらしい。ただでさえ具合の悪いマルノスさんの顔色がさらに青ざめて悪くなっていく。
「....すいません、許してください....」
「今夜一杯おごってね」
「.......はい」
 逆らう気力もなかったようで、マルノスさんは大人しくレベッカさんに従っている。そうこうしている間に、王宮からレイティンさんと国王が兵士を数人連れて出てきた。
「そろっているようですね。時間通りで結構です」
「デュオニスさんはいないんですか?」
「あの方とは召還場所で合流する事になっています」
「レイティンさんなんか疲れてませんか?」
「えぇ、疲れてますよ。誰かさんのせいで」
 横目で隣の国王を睨みつけるレイティンさん。国王はビクビクしながら若干震えている。当たり前だが、レイティンさんはものすごく不機嫌で、ずっと眉間にシワが寄っている。
「じゃあ、行きましょうか。皆さんの分も馬車を用意したので乗ってください」
「あれ?魔法を使っていくんじゃないんですか?」
「転移魔法は、転移する場所に転移魔法陣がなければ、その場所に転移は出来ないんです。ユウトさんを王宮に一瞬で連れてくることが出来たのは、王宮に転移魔法陣があったからなんです」
 俺の問いに、クリミリアが小声で横から耳打ちをする。 つまり出口がない場所には転移が出来ないという事の様だ。便利なんだか、不便なんだか....。
「では、行きますよ」
 後から来た馬車に乗り込み、俺たちは目的の場所へと向かい始めた。途中、二日酔いの二人が吐きそうになり何回か馬車を止める事になったが、なんの問題もなく目的地にたどり着いた。
「なんか、久しぶりだな...」
 一面に広がる草原に、洞窟の入り口だけがある丘の上。俺が初めてこの世界に来た時に訪れた場所だ。 丘からはファリネオス王国を見渡すことが出来、その光景に驚いたのを覚えている。
「じゃあ準備をしましょう。積み荷を降ろしますよ」
 レイティンさんが兵士に指示を出している。俺も何もしないのは申し訳ないので、積み荷を降ろすのを手伝い、準備を進める。
「ねぇ、このお荷物はどうする?」
 リウが馬車の中から顔を出して呼んでいるので、俺とクリミリアは馬車の方に向かい中を見る。そこには、もともと二日酔いだったミーシャさんとマルノスさんが、馬車の揺れによってまた顔色を悪くしてうなだれていた。
「お二人とも大丈夫ですか?」
「ミリア~、何とかして~」
「うぅ...申し訳ない....」
 心配そうに二人の様子を見るクリミリアに対して、リウはため息をついて呆れている。
「ハァ~、毎度のことだけどこの二人は....」
「私が状態回復魔法で何とかしてみます!」
 二人の事をクリミリアに任せ、俺とリウは他を手伝うことにして馬車を離れた。 ていうか、二日酔いに状態回復魔法が効くのだろうか?毒とかまひ状態の回復ならわかるのだが....。
「すいませんが、お二人で水を汲んできていただけないですか?」
 丁度馬車を離れたところで、レイティンさんから頼まれ俺とリウは近くの川に水を汲みに行った。
「はぁ~、めんどいなー」
「水とかも魔法で出せるんじゃないの?」
「出せるけど、水量と勢いがすごいから攻撃向きなんだよ」
「また、便利なんだか面倒なんだかなぁ....」
「ま、魔法の原点は戦う事を目的に作られたらしいから、生活に役立つかはいまいち微妙なんだよね」
 二人で話をしながら近くにある小川まで向かっていた。水を汲み終わり、レイティンさんのところへ戻ろうとしたときだった、洞窟の方に向かう馬車が数台見えた。おそらくデュオニスという人が到着したのだろう、馬車もどこか高級そうな雰囲気を醸し出していた。
「げ~、ほんとに来やがったよ....」
「デュオニスさんの事?」
「俺あいつ嫌いなんだよね...」
 すごくいやそうな顔で答えるリウ。そんなに悪い人なのだろうかと内心ドキドキしながら、俺とリウはレイティンさんのところに戻った。 戻ってみると、俺たちが乗ってきた馬車の隣に先ほど遠目からみた高級感のある馬車が止まっていた。馬車は合計で4台で、先頭の馬車は一番豪華な感じがした。
「すごいですね~。流石は貴族って感じですけど....」
「えぇ、そうね。こんなことにしか金を使う頭が無いのよ」
 皮肉っぽく言うレイティンさんもどこか不機嫌で、その奥の国王はただその馬車を見つめていた。 停車した馬車からは次々と人が出てきた。しかし、その人たちの衣服は皆ボロボロで腕と足には鉄の鎖をつながれていた。これがクリミリアが言っていた奴隷というものらしいが、どうにも気持ちの良いものではなかった。
「国王陛下」
「デュオニスか....」
 先頭の馬車から金髪の少年が下りてきた。歳はもしかしたら俺やクリミリアとさほど変わらないかもしれない。その後ろには執事のような初老のおじいさんが立っている。
「待たせてしまい申し訳ありません。準備に手間取ってしまいまして」
「良い、そこまで待たされたわけでは無いのでの。しかし、気に入らんの....」
 国王は鋭い目つきで、せっせと作業をするデュオニスの奴隷たちを見る。レイティンさんが言っていたが、国王は奴隷制度に反対している、そんな国王からしたらデュオニスが奴隷を使うのはあまり気持ちの良いものではないようだ。
「失礼、しかし人手が必要なのも事実です。それに奴隷であれば、犠牲が出ても影響がないので」
「そういう事ではないぞ、デュオニスよ」
「しかし、奴隷によって支えられている国も少なからず存在します。国王もそれはお分かりのはずですが?」
「もうよい、今日はそんな事を話に来たわけではないでの」
 国王は聞くに堪えかねたのか、デュオニスとの会話をすり替えた。 後ろで聴いていた俺は、このデュオニスという男の事を好きになれそうもなかった。
「そうでしたね、では今日召還の儀式を行う者たちを国王陛下にご紹介します」
 デュオニスはそういうと、国王とレイティンさんを連れて二台目の馬車の方に向かった。俺とリウはその場に残り、ひそひそとデュオニスの話をしていた。
「あー、なんなんだろう?マジであいつ嫌いだわ~」
「何となくだけど、リウの気持ちわかったよ...」
「だろ?」
 リウと話をしている間、どうしても俺は奴隷の人たちが気になってしまい、どうしても目がそちらへ行ってしまっていた。体の大きな男に女性、更にはまだ幼い子供までいる。それらを見張るように鎧を着た男たちが数人あちこちに立っていた。
「あんな小さな女の子まで....」
 元の国では奴隷なんて制度はなかった、こうやって人が道具のように使われるなんてありえなかった。だからそんな光景に俺は悲しさとつらさがあった。 幼い女の子が道具を運んでいるのを俺は静かに見ていた、しかしその女の子に持っていた道具は重たかったらしく、道具を落としてしまった。
「あっ!」
 道具は辺りに散らばり、それを見ていた鎧の男がその子の元までやってきた。
「おい貴様!何をやっている!さっさと拾って運ばんか!!」
「すいません!...い、いま片付けます!」
「さっさとしろ!」
「痛い!いっ!!...ご、ごめんなさい....」
 鎧の男は鞭で女の子を叩いた。俺はその光景に驚くと同時に怒りを覚えた。
「リウ!あれは良いのか!?」
「良くねーよ。でも我慢しろよ、あいつは奴隷だ、しかもデュオニスの奴隷なんだ。かばったりしたらどうなるか分かんねーぞ」
「でも....」
 鎧の男に叩かれたところが痛むのか、女の子はうずくまって動かない。鎧の男は更に女の子を叩き続けた。
「誰が!休んで!いいと!言った!!さっさと作業をしろ!」
「ごめん...あう!...ごめんなさい...」
 女の子の目には涙があった。俺は男に対する怒りで頭が一杯になりつつあった。 なんであんな小さな子が鞭で打たれなければならない、どうして一回の失敗でここまで痛めつけるんだ。胸の中に違和感があった、あの理不尽な光景に対して、俺はどうしようもなくこう思っていた。
 助けたい。
 女の子が妹に似ていたというのもあったと思う。気が付いたら俺はリウの静止を振り切って女の子の元に駆けだしていた。そして俺は鎧の男の腕を掴み、これ以上女の子を叩かせないようにした。
「もう良いでしょ!やめてくださいよ!」
「なんだお前は!お前には関係ないだろう!こいつはデュオニスさんの持ち物なんだぞ!」
「...おかしいだろ、人を持ち物なんて....この子だってあなたと同じ人間でしょ?!」
「人間?笑わせるな、こいつらは人権を持たないただの道具だ!」
「ふざけんな!この子だって人なんだぞ!道具じゃない!」
「道具を道具と言って何が悪い!邪魔するならお前も!!」
 鎧の男は俺の腕を振りほどき、俺に向かって鞭を振り下ろそうとしてくる。やられる!そう思ったその時だった。
「やめんか!!」
「こ...国王陛下....」
 国王が止めに入ってきた。国王はゆっくり鎧の兵士に近づき、いつもの優しい顔つきでなく、眉間にシワを寄せ鋭い目つきで男に言った。
「奴隷嫌いのわしの前でいい度胸じゃの~」
 いつもの国王ではない、その言葉には重みがあり、恐怖すらも感じた。
「し...しかし、これは...」
「言い忘れておったが、この少年は国賓での、召還の儀式を見学したいと異国よりはるばるやってきたのじゃ、国賓が貴族と同等の立ち位置になる事を王国に住む貴様なら理解しているな?」
「は...はい!申し訳ありませんでした!!」
 頭を下げて鎧の男は去って行ってしまった。女の子は今の状況に驚き、ただ固まっているだけだった。
「ユウト君、気持ちはわかるが静かにしておいてくれんかのぉ~。わしも色々大変なんじゃ...」
 いつもの国王に戻っていた。優しい口調で俺に耳打ちをし、その後ろではレイティンさんが俺を睨んでいる。 これは、かなりヤバイ....
「ユウトさん!ご自分の立場を理解してください!!あまり目立つようなことは控えてもらわないと、万が一にも正体がバレたらどうするつもりなんですか!!」
「す...すいません」
「分かったら、大人ししていてください!良いですね!」
「は、はい...」
 レイティンさんの言うことも最もだ、俺の正体がバレてしまったら、俺だけではない国王やクリミリアにも迷惑をかける事になってしまう。
「...まぁ、人としては立派な行為だと思います....」
「え?」
「なんでもありません、早く行きますよ!」
 そういうとレイティンさんは洞窟の方に言ってしまった。
「なんだったんだ?」
「要するに、代わりに怒ってくれてありがとうと言いたいんじゃ。わしらは立場的にそういったことが出来んからの....」
 国王も一言だけ言って、洞窟の方に言ってしまった。みんな気持ちは同じだったらしい、でも立場が邪魔して行動には出せなかったのだ。
「みんなも俺と同じだったのかな....」
 真意はどうかわからないが、俺はそうであって欲しいと願っていた。女の子もいつの間にかいなくなっていた。俺もみんなのところに戻る事にした。

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