家出したら異世界で御厄介になる事になりました

Joker0808

異世界生活スタート6

「今なんて言いあがりましたか?」
 国王が勇者召喚を許したと言ったとたんに、レイティンさんは額に血管を浮かび上がらせながら、無表情で国王に迫っていた。
「い....いや、だから....その....」
「しつこくて面倒だったから、許可した?勇者召喚が失敗したら何が起こるかわからないんですよ?」
「いや....許可しないとまた来そうだったし、しつこいから一回失敗して痛い目を見れば、もう懲りるだろうかと思ってじゃのぉ....」
 レイティンさんの淡々とした口調と、怒りを感じさせる雰囲気に国王は圧倒されて後ずさっている。 怒りがこちらの方にも伝わってくるので、俺とクリミリアも若干後ろに後ずさってしまった。
「それが国王の言う事ですか!!」
「は、はいぃぃ!!」
 ついに爆発した。レイティンさんが国王に向かって大声を上げる。国王はその声に怯え、頭を抱えてうずくまる。
 いや、ほんとにこの国王は.....
 気持ちもわからなくはないが、国王が怯えている姿はなんとも情けない。
「おそらく、ディオニスさんは近いうちにでも召還の儀式を行うでしょう....なんとかしなけらば....」
「明日実行するとか言ってたのぉ....。前々から準備はしていたとか」
「なんでそれを早く言わないのですか!」
「す、すいません!!」
「明日だったらすぐじゃないですか!」
「レイティンさん、どうにかしないと!デュオニスさんだけじゃなくて王国にも被害が出たら大変ですよ!」
 クリミリアがレイティンさんに言う。失敗が確定しているからには、召還を実行すれば何かしらの事態が起こってしまう。それがもし王国にも飛び火したら大変だ。俺たちは文献や書類の山を片付け、召喚の儀式を阻止する方法を考え始めた。
「はぁ~、次から次へと問題が....」
「だって、しつこいんじゃもん....」
「もんとか言ってんじゃねーでやがりますよ?国王....」
「ほんとにわしのせいで、すいません....」
 これじゃあどっちが国王なんだかわからないな。 国王はレイティンさんの目が見れないようで、一切目を合わせようとしない。クリミリアは一人でワタワタと焦っている。 正直俺は、話を聞いただけなので、そこまで危機感が無く落ち着いていた。
「あの、失敗したらどうなるんでしょうか?」
 俺はレイティンさんに尋ねた。みんな大変だと言っているが、何がどう大変なのかよくわからない。
「魔法の失敗は、魔法の威力や効果が大きいほど失敗したときの事態も大きくなります。簡単な魔法の失敗であれば、魔法が発動しないことや発動できても正しく動作しないなどなのですが....」
「ですが?」
「勇者召還のような大規模な魔法の失敗となると、逆にこちらの世界の人間が異世界に吸い込まれてしまうかあるいは周辺地域にまで影響のある大爆発を引き起こすか....」
「な、なるほど....」
 大変な事態だという事を、今更ながらに実感した。しかももう既に俺がこの世界に来てしまったせいで、勇者召還は失敗する可能性が高い。
「どうしましょう!デュオニスさんに本当の事を!」
「駄目です!あの男にそんな事が知れて見なさい!本当にこの国はあの男の手に落ちてしまう....」
「じゃあ、どうすれば....」
「とりあえず、私と大臣たちでデュオニス邸に行き説得を試みます。貴方たちは帰りなさい。バカ王いきますよ!」
「バカ王って....国王に向かってバカ王って....」
 レイティンさんは国王を引っ張って部屋を後にした。残された俺とクリミリアは、その姿を目で追った後に、お互いに顔を合わせてこの後どうするか話をした。
「なんだか大変なことになっちゃいましたね....」
「あの国王様はあれで良くこの国を回してきたな....」
「あはは、良い人なんですけど、たまにやらかすんですよ」
 クリミリアが苦笑しながら言う。本当に大丈夫なのだろうか?レイティンさんはともかく、国王はあんなのだし、話を聞く限りデュオニスという人も舞い込んできたチャンスを簡単に手放すとは思えない。
「大丈夫かな....」
「まぁ、何とかなりますよ。デュオニスさんだってそこまで愚かではないですよ!」
「だと良いけど....」
 俺とクリミリアは王宮を後にした。外に出るともう夕方で、食堂からは楽し気な声が聞こえ始めている。 そういえば腹減ったなぁ....
「今日もリティーの食堂に行きますか。この時間だったら混んでるかもですけど....」
「そうだね、まだまだこの世界の美味しいもの食べてみたいし、あの店は雰囲気も良いし」
 俺とクリミリアは晩飯を食べるために、今日もリティーの食堂『シャングス』に向かった。 食堂に到着すると、確かに混んでいた。昨日は時間も遅かったこともあって空席があったが、今日は満席だ。
「本当に混んでるね....」
「本当ですね、どうしましょう。席が空くのをまちますか?」
 俺がクリミリアに同意することを伝えようとしたその時、店の中からクリミリアに向かって誰かが声をかけてきた。
「クリミリアさーん!」
「あ、レベッカさん!」
 声をかけてきたのは、クリミリアや俺よりも少し年上の女の人だった。レベッカと呼ばれたその女性が座るテーブルには、他にも5人ほどの男女がご飯を食べていた。 レベッカはクリミリアと俺の方まで駆け寄ってきた。
「何?あんたらも晩飯?なら席二つ開いてるから、うちのテーブル来なさいよ」
「え、でもいいんですか?」
「良いから良いから、ユウト君だっけ?君も来なさい」
「あ、すいません....ん?なんで俺の名前を?」
 俺はレベッカさんとは初対面のはず、クリミリアもここでは俺の名前を呼んではいない、なのになぜ、この人は俺の名前を知っているのだろう?
「なによ~、自分で名乗ってたじゃない、召還に参加してたのに、忘れられちゃった?」
 レベッカさんは来ていたマントのフードを被って俺に見せてくる。
「あぁ!あの時いたフードの!」
「そうよ、今日居るメンバーも召還の時に居たメンバー、みんなあんたと話したがってんのよ」
 レベッカさんは、長く赤い髪を先で縛っているだけの髪形に口には口紅をしている、女性にしては少し背の高い女性だった。 俺が召還されたとき、クリミリアの他にもフードにマント姿の人たちが何人か居た。その人たちとは王宮についてすぐに分かれてしまったのだが、まさかまた会うことになるとは....。
「でも、俺は....」
「勇者じゃなかったんでしょ?」
 やはり、知っていた。それもそうだ、国王は俺の召喚については国民や貴族には秘密にしている。情報が漏れないよう、召還の儀式に参加したメンバーにも事のあらましを言っているの当然だ。
 何を言われるのだろう、がっかりしたとか、色々攻められるのだろうか....
「ごめんね。あたしたちが未熟だったから」
 返ってきた言葉は以外にも謝罪の言葉だった。俺は驚いた、話を聞いていてわかった事だが、勇者の召喚はかなり難しい上に危険な儀式だ。それなのに召喚されたのは勇者ではない、ただの一般人。 普通だったらガッカリしたり、文句の一つも言いたくなるはずなのに...。
「いや、なんか召喚されたのが、逆に俺みたいな駄目な奴ですいません」
「あんたは何も悪くないわよ。召還した私たちが未熟だったから、みんな反省してるのよ。あんたに謝りたいって言ってる奴もいるのよ。勝手にこんな危険な世界に召還したのはあたしらなんだし」
「いや、でも....」
「良いから、良いから!早く行くわよ!」
 俺はレベッカさんに押されて、テーブルに着いた。隣にはクリミリアを座らされ、食事をとっていたみんなが、俺に注目の目を向けていた。
「申し訳ない!」
 いきなり向かい側の男の人が俺に頭を下げてきた。俺はいきなりの事に驚き、少しビクついてしまった。 男は頭を下げたまま言葉を続ける。
「私どもが未熟なばっかりに、異世界の方にご迷惑を....。私どもも今必死になって帰る方法を探しておりますので、しばしご辛抱を!!」
 男に続けと言わんばかりに、席に居た人皆が俺に向かって頭を下げてくる。俺はその光景に困惑してしまった。
「いや、本当に気にしないでください。逆に世界の危機で召還したのに、召還されたのが俺みたいなのですいません」
「しかし、聞くところによれば、あなたは平和な世界から、この国に来てしまったとのこと!勝手に危険な世界に招いてしまった我々が悪いのです!」
「でも、みんな必死だったみたいだし、それに失敗は誰にだってありますし....」
「ですが、このままでは気が収まりません!この私、マルノスの命で御勘弁を!」
「え!ちょっと!!!」
 マルノスと名乗った男は、持っていたナイフを自分の首筋に持っていき自殺しようとする。 やばい、この人やばい人だ!!
 俺はそう思いながら、マルノスを止めようとするが、脇に座っていた女性がマルノスの頭を空になった器で思いっきり殴って止めた。
「なにやってんのよバカ!」
「ぎゃいん!」
 殴られたマルノスはナイフから手を放してテーブルに倒れ込んだ。
「まったく、ユウトさん引いてんでしょうが!ごめんなさいね、こいつバカだから....」
「あ、いえ....」
 どんだけ責任感強いんだよ!責任感じて死のうとするなんて!
「あ、自己紹介まだだったわね、私はミーシャ。よろしくね」
「よ、よろしく」
 ミーシャから握手を求められ、俺はその握手に応じた。この子はまだ常識がありそうだ。
「改めてだけど、本当にごめんなさいね。色々苦労するでしょ?」
「いえ、それにクリミリアもいてくれますし」
 ミーシャさんはショートカットの髪形にカーキーグリーンの髪色の小柄な女性だった。レベッカさんが大人の女性だとすると、ミーシャさんはお姉さんのような雰囲気の人だ。
「それに、そんなに謝られても困りますよ。やっちゃったことは仕方ないんですし...」
 笑いながら言う俺に、ミーシャさんは「ありがとう」と少し寂しそうな表情でいった。
「それはそうと、腹減ってるんでしょ?今日は私らが奢るから、ジャンジャン食べてよ!」
 木で出来たジョッキを持ちながらレベッカさんが俺に言う。少しアルコールの匂いがするところから、レベッカさんはお酒を飲んでいるようだ。
「レベッカ、あまり飲みすぎはいけませんよ。運び役の僕の身にもなってください」
「良いじゃない、金はたんまりあるんだし~」
 背の高い黒髪の男性がレベッカに注意を促す。レベッカさんは、笑いながらミーシャさんの隣に座っていたその男性に絡んでいく。しかし、男性はレベッカさんを交わして、俺の元までやってきた。
「すまないね、騒がしくて。僕はユーカス、困ったことがあれば何でも言ってください」
「あ、すいません。ありがとうございます」
 ユーカスさんは俺に飲み物を渡しながら自己紹介をした。整った綺麗な顔立ちと、スラットした長身。一言で言えばイケメンの部類に入る男の人だ。
「君が心優しい人で良かった。僕達はみんな心配していたんだよ、君が僕達を恨んでいるのではないかってね」
「いえ、この国の状況も大変みたいですし、逆に俺なんかが召還されてしまって....」
「ストップ」
 申し訳ない、そう続けようとした俺の口元をユーカスさんが制した。
「さっき君が言ったじゃないか、謝られても困るって。僕達も一緒さ謝られても困ってしまうよ。今日は君と親睦を深めたいと思っているんだ。」
 なんだこのイケメンは!男の俺でもカッコいいと思えてしまうぞ! ようやくまともな常識人に出会えた。王宮でも町でも少し変わった人ばかりだったが、ユーカスさんは普通の人の様だし、何よりいい人だ。
「あ~あ、ユーカスに捕まったか~」
 なんとも気だるそうな声で言ってきたのは、眠そうな目をした俺と同じくらいの男だった。青っぽい髪色に男にしては少し長めの髪形で、少しパーマっぽい。
「えっと?どういう意味?」
「ユーカスはどっちもイケる感じの人だから、少し気を付けた方がいいよ。あ、俺はリウ、よろしく~」
 リウはそういうと、だるそうに手を振ってくる。リウからはやる気が感じられないというか、無気力というか....
「ていうか、どっちもイケるって!!」
 俺はリウの言葉を思い出し、ユーカスの方に向き直る。気のせいであって欲しいが、若干さっきよりもユーカスとの距離が近くなっている気がする。
「大丈夫だよ、僕だってあったばかりの人にそんな失礼はしないよ。でも、君に興味はあるかな...」
 ユーカスさんはそういうと、俺の頬に手を当て顔を近づけてくる。俺は何かゾッとするものを感じ、椅子から立ち上がって距離をとった。
「あ~あ、またユーカスがやらかしたよ。リウの時で懲りたんじゃなかったの?」
「あはは、嫌われちゃったかな?でも、嫌がられるのも悪くないね....」
 呆れた声で、ジョッキを片手にミーシャさんがユーカスさんに言う。
 嫌がられるのも悪くないってどういう事だよ!俺完全にあの人にロックオンされてんじゃん!!
 唯一の常識人がまさかの両方イケる人で、しかも俺を気に入ってしまった。なんだか一番危ない人に目をつけられてしまったかもしれない....。
「以上合わせて6名が、あんたを召還した魔道研究院のメンバーだよ!代表はこのクリミリアだ!」
 レベッカさんが、少し赤くなった顔で俺に宣言する。各面々を見ても個性豊かそうなメンバーばかりだ。まぁ、クリミリアが代表なのも少しわかる気がする。
「ちょぉぉぉぉっとまたぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「あれ?生きてたのマルノス?」
「生きてます!しかも私だけ紹介もないし、メンバーにさえ含まれていないとはどういう事ですか!!」
「いや、いても居なくても一緒だし?」
「ミーシャさん!あなたって人は!」
 先ほどまで床で倒れていたマルノスとか言う男性が勢いよく起き上がり、殴った相手であるミーシャさんに文句を言う。 マルノスさんは金髪の髪色に髪形はおかっぱ頭のような感じだ。体系は高い身長ですごく痩せている。一言で言えばガリガリだ。
「改めて、マルノスと申します。この度は大変申し訳ありません」
「い、いえ....それより頭大丈夫ですか?」
 ミーシャさんによって、殴られたときに出来たのであろう場所は大きなコブになっていた。
「はい、いつもの事ですから」
 にっこりと笑顔を向けてくるマルノスだが、こんなことがいつも起こっていたら、体の方は大丈夫なのだろうか?
「マルノス、もう良いでしょ?ユウト君もお腹減ってんのよ」
「は!そうでした、どうぞメニュー表になります」
「あ、どうも」
 俺はマルノスさんからメニュー表を受け取る。脇ではミーシャさんからクリミリアもメニュー表を受け取り、何を頼むか考えていた。 少しして、俺とクリミリアは何を頼むかを決め、店員に注文をして料理を待った。
「それよりも、クリミリア。明日デュオニスの奴が勇者召還の儀式をするって本当かい?」
「え!もう知ってるんですか、レベッカさん?」
「まぁね、大臣の一人から脅迫....じゃない、聞いたんだよ」
 おい、いまこの人脅迫って言ったぞ、大丈夫なのか大臣! この話は、ここに居る全員が知っているようだ。みんな先ほどまで料理に夢中だったのに、今はクリミリアとレベッカの話に注目している。
「本当です。国王陛下が許可してしまって....」
「あちゃー、相変わらずバカね」
「レイティンさんが、大臣さん達と一緒に説得に行くと言ってましたがあの人の性格から考えると....」
「無理でしょうね。デュオニスの事だから、強引にでも明日は召還の儀式を実行するわ。まぁ、無理でしょうけど」
 レベッカさんはジョッキをグイッと飲み干すと、大きなため息を吐いた。不機嫌そうな顔で話すところを見ると、この人もデュオニスさんの事は嫌いなようだ。
「あのボンボン、成功するとでも思ってるんでしょう、私らがどれだけ苦労したかも知らないくせに...」
「そんな事よりも今は失敗したときの被害の方が心配だよ。もし爆発なんてしたら、とんでもないことになる....」
 ミーシャさんとユーカスさんも真面目な表情で話している。それだけ失敗したときの心配が大きいのだろう。
「先ほども大臣の方から、万一に備えて我々も召還に同行するようにと命を受けましたし、失敗しそうな場合は我々が力づくで止めに入るしかありませんな」
「でも、デュオニスって騎士団ももってたよね?僕達は魔導士だから肉弾戦では絶対勝てないよ?」
「ふ、そんなもの私の土魔法で蹴散らしてやりますとも!」
「あー、あの土人形ね....」
「ゴーレムです!!リウさん!いい加減に覚えてください!!」
「なんでも良いけど、クリミリア。明日もし召還が行われれば、僕らも同行しなくちゃいけないから、よろしく~」
「聞いてるんですか!!」
 もう、そこまで話が進んでいるとは俺もクリミリアも思わなかった。おそらくレイティンさんが最悪の状況を回避するために手配したのだろう。 そんなシリアスな雰囲気をぶち壊すように、リティーが俺とクリミリアの料理を運んできた。
「はーいお待たせ!なんの話してんの?みんなして」
「いえ、ただの雑談ですよ。それよりもリティーさん、私にワインのお代わりをお願いします」
「はいはーい、かしこまりました!」
 リティーはユーカスさんからの注文を聞くと、厨房の方に消えて行った。ここに居る魔道研究院のメンバーは俺の正体を知っているが、リティーは知らないし、教えるわけにもいかない。ユーカスさんはリティーにバレないように、テーブルからリティーを遠ざけたのだ。
「まぁ、良いじゃない!今はうまいもん食って、飲みましょう!考えるのは明日よ!!リティーちゃーん泡お代わり!!」
「レベッカ!何杯目だと思っているんだ!もうやめとかないと、明日きついですよ」
「だいじょうぶよ~。ユーカス~、まだまだ酔いつぶれたりしないわぁ~」
「うわ!レベッカさん!抱き着かないでください!」
「クリミリアは良い匂いね~、おっぱい大きいし~」
「え!ちょ...揉まないで...くださ...い....」
 レベッカさんはクリミリアに抱き着くと、クリミリアの胸を揉み始めた。なんともエロい光景に、俺は目をそらした。しかし、正直言うと羨ましい....。 他のメンバーはいつもの事だと、言わんばかりに呆れた表情でその姿を見ている。
「まったく、レベッカ!いい加減になさい!クリミリアが嫌がってるでしょ?」
 見かねたミーシャさんが、止めに入る。しかし、レベッカさんはミーシャさんの胸まで揉み始めた。しかし....
「うー、ミーシャは小さいからな~。おっきくなって出直してこ~い!」
 確かにミーシャさんの胸は、レベッカさんやクリミリアと比べると小さい、というか平だ。レベッカさんに言われたミーシャは俯き、肩をワナワナと振るわせている。このテーブルに居るレベッカさんとミーシャさん以外の皆が「やばい、メッチャ怒ってる」と状況を察し、テーブルから料理をもって離れ始める。
「うふふふふふ、ねーリウ?私の胸って小さいー?」
「へ!?い、いやーぼ、僕はそういうの興味ないから....マルノスに聞くと良いよ!」
「な!私に振らないでくださいよ!!」
 君の悪い笑顔を浮かべながら、俺達男性の方に意見を求めるミーシャさん。レベッカさんは、相変わらずクリミリアに抱き着いて胸を揉んでいる。 てか、なんでこっちに聞くんだよ!怒りの矛先を向ける相手が違うだろ!!
「マルノス~。あんたはどう思う~?」
「わ、私は....女性の価値は胸では無いとぉぉぉぉ....」
 言いかけたところで、ミーシャさんがジョッキをマルノスに向かって投げつけてきた。マルノスさんは頭にジョッキが辺り、泡を吹いて倒れている。なんて力だ....
「うふふふふふ....そうよね~、女の価値は胸じゃないわよね~。ユーカス?」
「も、もちろんだとも正直、僕はミーシャの少年のような体系は逆に武器だとぉぉ.....」
 今度はユーカスさんに向かって椅子を投げつけてきた。まぁ、でも今のはユーカスさんも悪いと思う。
「うふふふふふふふふふふふ、巨乳なんて、巨乳なんて....滅亡すればいいのよぉぉ!!!」
「ちょっ!こんなところで暴れたら!」
「無駄だよ、ユウト。こうなったらミーシャは誰にも止められない、それよりも机の下に隠れた方がいいよ。とばっちりが来る」
 そういうとリウは俺を机の下に誘導し、料理を食べ始める。ミーシャさんは、レベッカさんに向かって攻撃を開始し、レベッカさんは笑いながら逃げている。残されたクリミリアは厨房の方に人を呼びに行ったようだ。他の客も慣れた様子で、机の下や物陰に隠れ始めた。
「いつもこんな感じなの?」
「うん、まぁね。シャングスの常連ならこうなった時の対処はみんな知ってるよ」
「そうなんだ、リウ...さんは、魔道研究院に所属して長いの?」
「リウでいいよ、ユウト。まぁね、もう3年くらいかな?」
「そうなんだ、みんな賑やかな人たちだね」
「うるさいだけだよ、でもまぁ....毎日飽きなくていいかな?悪い奴らじゃないし」
「そうなんだ」
 クリミリアが言っていた一緒に働く仲間というのは、この人たちの事だろう。なるほど、確かにこの人たちがいれば、寂しいなんて感情は湧く暇なんてない。みんな変な人達だけど、どこか暖かくて、家族みたいな信頼関係を感じる。 クリミリアにとっての居場所はここなんだろうな.....
「なに悲しい顔してんの?」
「え?いや、別にそんな事は....」
「まぁ、急にこんあ珍妙な連中を頼りにしろって方が無理だけどさ、残念ながらここで飯を食った時点でユウトも俺らの一員なんだよ。ユーカスにも気に入られてるみたいだし」
「え?でも一回だけの食事で....」
「回数なんて関係ないよ。実はクリミリアが君と生活するって聞いた時、みんな心配になって今日一日遠くから見てたんだよ。君がどんな人なのか、クリミリアにひどい事をしないかって」
 リウは料理を食べながら俺に今日の事について話してくる。クリミリアを気遣ったのは良かったとか、一緒に店を回って疲れなかったのかなど色々だ。
「見てるうちに、ユウトに申し訳なくなってきてさ。僕たちが間違えて召還したのに、クリミリアに気を使ったり、時々寂しそうな表情をしたり....」
「そうだったんだ....」
「世界に一人だけって、寂しいじゃん....。だから、俺達を頼って欲しいって意味で、今日は飯の席に呼んだんだ。もしかしたら食事に来るかもって待ち伏せてね」
「......」
「俺たちみんな同じような奴らだから、ユウトの気持ちはわかるつもりなんだよ。だから、もうユウトは俺らの同類、残念だったね。君も変人の仲間入りだ」
「.....」
「なんだよ、さっきからなんも言わないで、そんなにショ....ック?」
 気が付くと、俺は目から涙を流していた。先ほどまで料理に夢中だったリウがこちらを向き、俺が泣いているのを見て驚いた顔をしている。
「あ、いや...ごめん!ちがうんだ!ただ、うれしくて....」
 俺は顔を見られるのが恥ずかしくなり、リウに背を向ける。 うれしかったんだ。仲間っていわれて、頼ってくれって言われて、俺はうれしかったんだ。この世界でも居場所なんてないと思っていたけど、こんなにも暖かい居場所が出来たことがうれしかったんだ。
「そうだよな、やっぱ寂しかったよな。強がっても誰だって寂しいもんは寂しいもんな。こっちいる間はユウトは俺らを頼ればいいよ、みんな同じ気もちで今日集まったんだ」
「あぁ、ありがとう....」
 顔を上げると、ミーシャさんとレベッカは落ち着いていた。魔道研究院のみんなが、俺とリウのテーブルを囲むように見ている。みんな笑顔で、俺を見ていた。
「ユウト君!まだまだ飲むわよ!付き合いなさい!」
「ユウトさん、この料理は絶品ですからどうぞ一口」
「泣き顔もユウト君はかわいいね」
「ユーカス、本気で口説こうとするのやめなさい。怖がっちゃうでしょ?」
 俺はレベッカさんにテーブルの外に出され、テーブルに座らせられた。みんな料理を進めてきたり、話をかけてきたり。リウの言うことが本当だとわかってきた。
「ユウトさん、食べましょう!」
 最後にクリミリアが俺の隣に来て、料理を差し出した。 暖かかった、この雰囲気が、この空間が、どうしようもなく暖かくて、安心できた。俺はここに居て良いんだと、みんなが言っているような気がした。
「ありがとう、みんな....」
 この日、俺は異世界で自分の居場所が出来た。変な人ばっかりで、騒々しいけど、みんあ優しい良い人達だ。


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