先輩はわがまま

Joker0808

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「御子さん、早く行きますよ、新幹線のチケット持ちましたか?」

「大丈夫よ、子供じゃ無いんだから。さ、行きましょ」

 俺は御子さんが部屋から出るのを確認し、アパートの部屋に鍵を掛ける。
 二人で大きめのバックを持って、俺たちは駅に向かって歩き始める。
 
「お土産も買って行かなきゃいけませんね」

「良いわよ、そんなの持って行かなくて」

「そういう訳にも行きませんよ、俺は一応他人なんですから」

 俺がそう言うと、御子さんはニヤリと笑って、からかうように俺に言う。
 
「あら? 家族になりたいとか思わないのかしら?」

 完全に俺をからかいに来ている。
 俺はそう感じ、平然とした態度で先輩に答える。

「家族になりたいから、御子さんの両親に気に入られたいんです。だから手土産くらい持って行かないと」

「そ、そそそう……な、ななによ。私と結婚とか、したいと思う……わけ?」

「まぁ、御子さんが良ければですけど……嫌だって言うなら、諦めます」

「そ、そんな事言ってないでしょ!」

「じゃあ、御子さんは俺と結婚したいと?」

「そ、それは……」

 先輩は顔を赤くして、俺から視線を反らしてしまった。
 からかうつもりだったのだろうが、そうはいかない。
 俺だって先輩と生活を始めて一ヶ月以上経っているのだ、学習だってする。

「じゃあ、御子さんは俺とは遊びだってことですね」

「ちがっ! そうじゃ無いわよ!」

「じゃあ、どうなんですか?」

「うぅ………次郎君の馬鹿……」

「はいはい、冗談もこれくらいにしますか」

「覚えてなさいよぉ……」

 先輩は真っ赤な顔で頬を膨らませて俺を睨んで来る。
 正直、その顔は逆に可愛い。
 自然と手を繋ぎ始め、俺と先輩は駅に向かって歩いた。
 歩いて十数分、近くの駅に到着し、俺と先輩は電車に乗って、大きな駅に向かう。
 そして、ようやく新幹線に乗り、先輩と俺は席に座った。

「新幹線なんて久しぶりですよ」

「私もよ、酔わないと良いけど……」

「新幹線って酔うんですか?」

「さぁ? でも嫌じゃ無い、気持ち悪いまま三時間なんて」

「まぁ、確かにそうですね」

 俺と先輩は新幹線に乗り、先輩の実家のある町に向かう。
 日も落ち始め、外は綺麗な夜景が見えた。
 俺と先輩は、スマホを弄ったり、音楽を聞いたりして、目的地に着くまでの時間を潰した。 そして、約三時間後。

「あぁ……帰って来ちゃった……」

「へぇ……ここが御子さんの出身地ですか……」

 駅前は賑やかで、居酒屋の呼び込みの声や行き交う人の話し声が聞こえて、結構うるさかった。

「えっと……お父さんが迎えに来るって言ってたけど……」

「いきなり親父さんと会うのかぁ……緊張するなぁ~」

「大丈夫よ、うちのお父さんはそこまでうるさい人じゃないから」

「それなら良いんですが……」

「あ、見つけた! お父さーん!」

 先輩は父親の車を見つけたようで、手を振って声を上げる。
 しかし、おかしい。
 先輩が手を振っている先にある車は、車に詳しくない人でも、名前くらいは聞いたことのある高級車ばかりだ。
 まぁ、先輩の住んでいるアパートや先輩のお財布事情から、実家は結構な金持ちなのでは無いかと思っていたが、なんとも予想通りである。
 この調子だと、家の方も凄そうだ。
 俺と先輩は荷物を持って、シルバー車に近づいていく。
 ちなみに車種はベンツ。
 確か新車だと三千万位だったと思うが……。

「御子、良く帰ってきたな」

「私は帰る気なんて無かったわよ。あ、こっちは彼氏の岬次郎君」

「ど、どうも初めまして!」

 車の窓から顔を覗かせたのは、男前でダンディな男性。
 眉間にシワを寄せ、鋭い目つきで俺を見ている。
 いやいや、超警戒されてますやん!
 もの凄く怖そうじゃん!

「君が娘の……そうか……」

「は、はい! よ、よろしくお願いします!」

「まぁ、そう堅くならないでくれ……積もる話もあるだろう、早く家に行こう」

「は、はい!」

 こえーよ!
 なんで話してる間、ずっと眉間にシワ寄せてんだよ!
 娘に近づくなオーラがビンビンだよ!
 俺はとりあえず、後部座席に乗った。
 先輩は荷物を後部座席に置き、助手席に乗る。
 車が発進し、俺は全くリラックスが出来ないまま、ピーンと姿勢を伸ばして座っていた。

「御子、ちゃんとご飯は食べているのか?」

「あぁ、大丈夫。次郎君が毎日作ってくれるから」

「何? 君がか?」

「は、はい! お、お母様からお聞きかと思いますが、一応同棲させて貰っていますので!」

「そうか……御子、お前は岬君の手伝いをしているのか? 同棲と言うのは、お互いに協力して家事をしてだな……」

「もう、お父さんはうるさいなぁ~、ちゃんと手伝ってるよ」

「本当か? 岬君もあまり御子を甘やかさないで欲しい、家事くらい出来なくては、人間としてダメだからな」

「い、いえ。最近は御子さんも積極的に家事をして下さります。はい」

「そうか……それと、そんなに緊張しないでくれ、もしかしたら家族になるかもしれないだろ?」

 うわぁ……家族の部分を強調した上に、なんか黒いオーラがお父さんから出てる気がする……。
 ヤバいよ……完全に俺の事をお父さん歓迎してないよ……。
 だってずっと眉間にシワが寄ってるんだもん……。

「気まずい車内での会話を終えると、直ぐに先輩の実家に到着した。
 デカい、それが先輩の家を見た最初の感想だった。
 三階建ての大きな建物に、庭もある。
 そして、高級車が三台も止まっているガレージまである。

「さぁ、上がってくれ。ようこそ我が家へ」

「うわぁ……懐かしい気がする……て言うか、お父さんまた車変えたでしょ?」

 俺は先輩とお父さんの後に続いて、玄関の中に足を踏み入れる。
 玄関もこれまた広い。
 先輩のご両親は、一体何をやっている人なのだろうか?
 気になった俺は、先輩のお父さんとの距離を縮める為に質問してみる。

「あの…ご職業は何を……」

「一応、病院で医院長をやっているんだ。まぁ、大したものではないよ」

 大した事ありすぎだろ?!
 マジか! 医院長って奴か!
 後ろに先生方を引き連れて回診する人か!
 俺は先輩の家に来たばかりだと言うのに、なんだか凄く疲れてしまった。

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