先輩はわがまま

Joker0808

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 名前を呼ぶだけで、なんでこんなに恥ずかしいのだろう。
 小学生の時なんかは、何も思わなかったはずなのに、この年になると、異性の名前を呼ぶと言うだけで、羞恥心が出てくる。

「もう一回」

「え! 勘弁して下さいよ……」

「もう一回!」

 本当にこの人は……。
 俺は相変わらずな先輩に負け、もう一度名前を呼ぶ。

「御子……さん」

「まぁ……良いわ……合格」

「合格ってなんすか……」

 そんな先輩と俺の事をマスターと片瀬さんは興味津々と言った様子で、ジッと見ていた。

「あの、店でイチャつくのはちょっと……」

「君が変な事言ったせいだよね!?」

 原因を作った本人に、そんな事を言われたくは無い。
 本当……お客さん少なくて良かった。

「あの……ついでにもう一つ聞いても良いですか?」

「何? もうあんまり変な事を聞かないでね」

「週に何回のペースで性行為を?」

「変な事聞かないでって言ったよね!!」

 本当に最近の女子高生はわからない……。
 




 大晦日前日、俺は今年最後のアルバイトをしていた。
 そうは言っても、今日のバイトは午前中でおしまい、午後は荷物をまとめて先輩の実家に行く事になっている。

「いらっしゃいませ~」

 いつもの営業スマイルを浮かべながら、俺は入店してきたお客さんにそう言う。
 皆、年末とあって忙しいらしく、持ち帰りやドライブスルーのお客さんがいつもよりも多い。
 
「岬君、そろそろ上がって良いよ。お昼のピークになると、抜けられないし」

「すいません、ありがとうございます」

 俺は店長に言われ、レジから厨房の奥のスタッフルームに引っ込んで行く。
 今年もコレでバイトは最後か……。
 そんな事を考えながら、休憩室に戻ると、そこにはお昼から俺と入れ替わりでバイトに入る、愛実ちゃんが居た。

「あ……」

「えっと……その……お疲れ」

「はい、お疲れ様です」

 ニコッと笑って、返事を返してくれる愛実ちゃん。
 この前の一件以降、愛実ちゃんを顔を合わせるのは、久しぶりだった。
 あの日の夜の事もあり、なんだか気まずい空気が流れている気がする。

「先輩」

「へぇ!? な、なにかね?」

「ウフフ、そんなに緊張しなくても良いのに」

 笑われてしまった。
 だって、あんな事された相手と普通に話せる訳無いじゃん……。

「この前は、急にあんな事してすいません。でも、諦めがつきました」

「そ、そっか……ごめんね」

「謝らないで下さいよ、それに……先輩があの人を大切に思ってる事を知りましたから… …」

 笑顔でそう言う愛実ちゃんを見て、俺は心が痛かった。
 しかし、これが恋愛と言うものなのかもしれない。
 誰かを選べば、誰かの思いを拒否する事になる。
 恋愛と言うのは難しい………。
 俺はそんな事を考えながら、バイトに向かう愛実ちゃんを見送った。

「愛実ちゃんにも、良い相手が見つかると良いな……」

 俺はそんな事を考えながら、店を後にした。
 俺は家までの道のりを急いで帰る。
 昨日少しは準備をしたのだが、まだまだバックに入れていない物が多い。
 俺は早く帰って準備をしなければと思い、いつもより早いペースで歩く。

「ただいまー」

「おかえり」

 俺は玄関で御子さんに出迎えられ、中に入る。
 あのマスターの一件があり、俺は先輩から御子さんに呼びかたを変えた。
 最初はむずがゆい感じもあったのだが、最近は慣れてきてそうでも無い。

「御子さん、準備出来ました?」

「私は実家に帰るのよ? そこまでの準備は必要ないわ」

「それもそうですね」

 俺の右腕にくっつきながら、先輩は呆れたように俺に言う。
 先輩の実家か……どんなところだろうか?
 俺は準備をしながら、そんな事を考えていた。
 先輩が育った町、育った家。
 俺は凄く興味があった。
 楽しみにしながら、準備をしていると、俺のスマホが音を立てて震え始めた。

「ん、電話か……誰だろ?」

 俺はスマホに手を伸ばし、画面を見る。
 電話の相手は、先輩のお母さんだった。
 この前の電話で、番号を聞かれ俺は番号を教えていたのだが、そのことをすっかり忘れていた。
 若干驚きながら、俺は電話に出る。

「もしもし?」

「お久しぶりね…次郎さん』

「お、お久しぶりです。どうかしましたか?」

『いえね、もうそちらを出発したかと思いまして』

「あの……電車は十六時発なんでが……」

 今の時間は昼の一時、いくら何でも今から家を出るのは早すぎる。
 御子さんが電車の時間を伝えて居るはずなのだが……。

『あら、そうでしか……うちの馬鹿娘も準備は済ませていますか?』

「あ、はい。俺の隣に居ますけど、代わりますか?」

 そう言った瞬間、御子さんは胸の前で手を交差させ首を横に振る。
 どうやら、話しの流れから、俺の提案を察したらしい。

『いえ、馬鹿娘が拒否すると思いますので、大丈夫です。それよりも気を付けていらして下さいね。お待ちしていますから』

「あ、はい。ありがとうございます。俺も楽しみにしてます」

 そう言って電話は終了した。
 なんだかんだ言っても、心配なようだ。
 良いお母さんだなと思いながら、何故か膨れっ面の御子さんの方を見る。

「あの……どうかしました?」

「別に……お母さんと仲よさそうね」

「自分の母親に嫉妬しないで下さいよ……」

 先輩が嬉しい事に、俺の事が大好きなのはありがたいのだが、最近どうもヤキモチを妬きやすくなっている気がする。
 そのたびに先輩は、俺にこう言ってくるのだ。

「じゃあ、ちゅーして」

「朝もしたじゃ無いですか」

「おかえりのちゅーしてないもん」

 こんなバカップルみたいな会話が、最近は毎日だ。
 まぁ、誰も見ていないところなら、別に俺も良いのだが……流石に最近は色々やり過ぎな気がする。
 まぁ、そうは思ってもやるんだけどね……。

「じゃあ、目を閉じて貰って良いですか」

「ん……」

 俺は先輩が目を閉じたのを確認すると、先輩を抱きしめて唇を重ねる。
 しかし……。

「………!? ちょっと! 舌入れましたよね!?」

「ん……だめ?」

「ダメです!」

「ケチ……」

 こんな感じで、先輩の家で何もなければ良いが……。 

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