先輩はわがまま

Joker0808

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 いつもなら、お風呂上がりだろうとなんだろうと、先輩にドキドキする事なんて無いのに、今日の俺は、先輩が風呂に入っていると言うだけでドキドキしてしまう。
 いやいや、別に今まで先輩と寝たり、下着見たりしてきたし……今更別に……。
 なぜだろう、こういう時ばかり、先輩の綺麗な姿しか想像出来なくなる。

「こういうときって……俺どんな顔で待ってれば良いんだ……」

 とりあえず俺は正座で待ってみる。
 ダメだ、余計に緊張してしまう!!

「あぁ!! もうなんなんだ……」

 正座をしているのもなんだか落ち着かず、俺は部屋の中を歩き始める。
 落ち着かない……何をしていても落ち着かない。
 そうだ、ティッシュはあっただろうか?
 あぁ、そうだ、この前買ってきてあったんだ……他に何か必要な物とかあるっけか……。
 そんな事を俺が考えていると、先輩が風呂から上がって来た。

「何してるの?」

「え……あ、いや何も……」

 いつもなら、先輩は風呂上がりは下着かネグリジェ姿で出て来るのだが、今日は珍しくルームウエアを着ていた。
 お風呂でのぼせたのか、それとも照れているのか、先輩は頬を赤くし俺の方を見ていた。

「つ、次……入ってきたら……」

「あ、はい……」

 俺は先輩に言われるがまま、風呂に入る。
 落ち着かない、いつもは風呂は俺の落ち着ける場所の一つなのだが、今日ばかりは落ち着かない。
 浴槽に浸かり、俺はふと先輩が家から持ってきたシャンプーと、俺が前からここに置いていたシャンプーを見る。
 女物と男物でパッケージがちがく、家に自分以外の人間が住んでいる事を感じる。

「いかんいかん! また先輩の事を……」

 この気持ちはなんなのだろう?
 不安のような、興奮のような、どちらとも似ていてどちらとも違うような気持ちに、俺は頭を悩ませる。

「上手く出来なかったらどうしよう……」

 童貞には辛い時間である。





 私は彼がお風呂に入っている間、私はドキドキしながら、ベッドの布団に入って彼を待っていた。
 ヤバイ……凄く緊張してきた。
 いつもは彼をからかう名目で、体をくっつけたり、ちょっとエッチな姿を見せたりして来たが、本番は全く違う。
 考えて見れば、私自身、彼以外の男性には下着姿も見せた事は無い。
 始めては痛いと言うけど、どれくらい痛いのかしら?
 血が出るって言うけど、どれくらい出るのかしら?
 不安な事ばかりを私は考えてしまう。

「あぁ~こんな事なら、友達の夜の体験談をちゃんと聞いておけばよかたぁぁ……」

 女子会と称しては居るが、女子大生が話す内容は恋バナとそんな話しだけだ。
 私はそう言う話しになると、適当に周りに合わせて居たのだが、ちゃんと聞いておけば良かったと後悔していた。
 そんな時、ふと手に取った彼の枕から彼の匂いが香ってきた。
 私はふと、枕を手に取り抱きしめる。
 あの日から、私は彼に夢中だった。
 最初の数ヶ月は、そんな事実から目を背けようとしていた事もあった。
 イケメンって言う訳でも無いし、何かに秀でているわけでも無い。
 でも、私は一年前のあの日、彼に始めての真剣な恋をしてしまった。
 
「懐かしいなぁ……」

 そんな彼と今、私は念願叶って付き合っている。
 私の場合、叶わない恋など無いと思って生きてきた。
 しかし、彼は手強かった。
 誘惑してもダメ、弱さを見せてもダメ、着飾ってもダメ。
 本当に苦労した。
 でも、本当に好きだった。
 だから、今は凄く幸せだった。
 私がそんな事を考えている丁度そのとき、お風呂場のドアが開いた。





 俺は風呂から上がり、いつものスウェットを着て、部屋に戻った。
 部屋は真っ暗だった。
 かろうじて、豆電球の光でベッドに先輩が寝ている事が確認出来た。
 あぁ、本当に来てしまった。
 俺はそんな事を考えながら、ベッドにゆっくり近づき、先輩に尋ねる。

「先輩……あの……」

「い、痛くしたら……怒るから!」

「まだ、何も言ってないんですけど……」

「う、うっさいわよ! どうせメチャクチャにするんでしょ!」

「あの、人聞き悪いこと言わないでもらえますか……」

「ゆ、ゆっくり脱がして行くんでしょ! し、しし知ってるんだからね!」

「何情報ですか……」

 さっきまで何をドキドキしていたのだろう、いつも通りの先輩の態度に、俺は一気に緊張がほぐれてしまった。
 とりあえず俺は、ベッドに腰を下ろす。

「な、何座ってるのよ!」

「いや、別に良いでしょ……」

 なんだか過剰に反応しすぎな気がする先輩。
 いつものあの調子は何所にいったのだろう?
 暗くて良くわからないが、恐らく先輩の顔は真っ赤だろう。
 俺はそんな先輩を見て、笑顔を浮かべる。

「先輩……」

「な、ななな何よ!」

「驚きすぎですよ……それで良くやるなんて言えましたね……」

「う、うるさいわね!」

 興奮する先輩。
 俺はそんな先輩の手を取り、握りしめる。
 その瞬間、先輩の顔は恐らく更に赤くなっただろう。
 固まってしまった。

「先輩」

「ひゃ、ひゃい……」

「あの……キスとか……しても良いですか?」

「ば、バッチコーイ!!」

「……野球じゃないんですから」

 俺は先輩にそう言い、先輩の唇に自分の唇を重ねる。

「ん……」

 先輩は恥ずかしそうに、声を漏らす。
 先輩の顔の熱気が、俺にまで伝わって来る。
 恐らく今の先輩は今相当、顔を真っ赤にしているのだろう。
 俺は唇を先輩の唇から離し、先輩を抱きしめる。

「は、ひゃっ! な、何よ!!」

「すいません、なんか……抱きしめたくなって……」

 こう言うのは、男がリードするものだと俺は思っている。
 俺は先輩に恥を欠かせないように、優しくゆっくり事を進め始める。
 すると……。

「ね、ねぇ……次郎君……」

「はい?」

「私の事……可愛いって言って……」

「え?」

「い、良いから! 言いなさい!! 先輩命令よ!」

「そんな強引な……」

 先輩は俺を強く抱きしめながらそう言ってくる。
 一体どうしたのだろうか?
 先輩の言葉の意味はわからなかったが、俺はとりあえず先輩の言うとおりにする。

「可愛いです、先輩」

「は、はぁ? な、ななな何を言ってるのよ馬鹿ぁ!」

「どうしろと……」

 先輩はいつも通り、わがままで面倒くさい。

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