99回告白したけどダメでした

Joker0808

215話

「ところで、何をプレゼントするんだ?」

「写真立てだよ」

「おぉ、誠実にしてはマシだな」

「俺にしては、ってどう言う意味だよ」

「さっき言ったけどよ、別に普通に渡せば良いんじゃねーの? 何緊張してんだよ」

 武司の言うことも最もなのだが、ちゃんと誕生日プレゼントを渡すのは少し緊張する高志。
 最近は美奈穂の様子も変な事もあり、高志にとってはこんなどうでも良いことでも悩んでしまう問題だった。

「まぁ、どうだけどよ……」

「だろ? はい、じゃあこの話しは終わりだ!! 夏休みもあと少しだし、どこかに遊びに行かないか?」

「良いけど、俺はそこまで金無いぞ?」

「マジか、健は?」

「俺は若干残ってるが……言い出しっぺの武司はどうなんだ?」

「え? 俺は………すまん、誰か金貸して」

「「ねーのかよ!!」」

 結局、武司の金が無い問題があり、誠実達はその場で解散となった。
 誠実は家に帰る道すがら、普通に渡すとはどういうことなのかを考えていた。

「普通か……はい、これプレゼント! うーむなんか軽い気がする……」

 考えている間に家に到着してしまった。
 玄関を開けると、誠実の両親が帰ってきていた。

「ただいま」

「あぁ、おかえり」

 喪服姿の二人に誠実はそう言う。
 誠実の父親はソファーに体を預け疲れをとり、母親は冷蔵庫から出した麦茶をコップに注いで飲んでいた。

「今年もお疲れ様」

「あぁ……毎回この日が憂鬱でな」

「来年の事を考えたら私はもっと憂鬱になるわよ……ねぇ、本当に来年言うの?」

「決めただろう……それにあの子も大人だ……知らないままと言うわけにはいかない」

「……美奈穂……ショックを受けるわよね」

「まぁ……そうだろうな」

 誠実は二人の話しを聞きながら、自分も冷蔵庫から飲み物を取り出して飲む。
 
「あいつなら大丈夫だよ……なんたって母さんの娘だろ?」

「あぁ……それは一理あるな! たまにうるさいけど」

「親父、それって本当にたまにか?」

「ほぼ毎日」

「「アハハハ!!」」

「ん、んんん!! なんか言った?」

「「ごめんなさい何でも無いです」」

 誠実と誠実の父親は鬼のような形相の母親に土下座をする。
 よほど頭にきたのだろう、誠実の母親の額には血管が浮き出ていた。

「ハァ~ア……あの二人が生きていればなぁ……」

「やめてよ……悲しくなるでしょ」

「そうだけどよ……」

 誠実の父親はそう言いながら、自分の財布から写真を撮りだした。
 そこに映っているのは、若かりしころの誠実の両親と綺麗な女性と爽やかな男性が楽しそうに写っていた。

「この二人が?」

「あぁ……美奈穂の本当の両親だ」

「そうなんだ……この二人の遺伝子だったら、あれだけの美人が生まれてきたのにも納得がいくな」

「うちはお父さんがこれだかね……生まれてきたのもこれだし」

「これってなんだよ!! 息子に対して失礼だろ!! 親父はどうでも良いけど……」

「おい高志! 少しは父親のフォローをしろ!」

 誠実の父親が言ったとおり、美奈穂の両親は別に居る。
 その事実は美奈穂以外の全員が知っていた。 高校に入学した誕生日に、誠実達はこの事実を美奈穂に伝えようと昔から決めていた。 
「……美奈穂の両親……美奈穂の成長を見たかっただろうな……」

「そりゃあそうだろう……あんなに可愛い子だ……」

「そうね……きっと天国で見守っているわよ……」

「よし、この話しはもう終わりだ。今日は美奈穂の誕生日だし! 何か食べに行くか!」

 そう誠実の父親が叫んだ瞬間だった。
 リビングのドアが勢いよく開き、誰かがリビングに入ってきた。
 誠実達三人がドアの方を振り向くと、そこには……。

「み、美奈穂……」

「お父さん……さっきの話し……どういうこと……」

 ドアを開けたのは、モデルの仕事を終えて帰ってきた美奈穂だった。
 誠実達は驚き、全員が美奈穂に注目する。
 美奈穂は父親にゆっくり近づきながら、今にも泣き出しそうな表情で尋ねる。

「い、いや……そ、その……は、早かったんだな……」

「誤魔化さないで!! 私はお父さんとお母さんの子じゃ無いの!?」

「み、美奈穂、少し落ち着きましょう」

「落ち着ける分けないでしょ!! じゃあ何? 私は……私だけが……この家の人間じゃないの?」

「み、美奈穂!! 少し落ち着いて親父達の話しを……」

 誠実がそう言うと、美奈穂は誠実の顔を見て尋ねる。

「おにぃは知ってたの!?」

「そ、それは……」

「なんで……なんで早く言ってくれなかったの!!」

「いや……それはお前がもう少し大きくなってからって……親父達と……」

「なんで……なんで早く言ってくれなかったの……」

 美奈穂はそう言うと、ドアを出てそのまま外に走って行ってしまった。

「美奈穂!!」

 誠実は大声を出して美奈穂を呼ぶ。
 しかし、美奈穂は止まらず、そのまま家の外に行ってしまった。

「まずいわよ! 早く探しに行かなきゃ!」

「わ、分かってる!! あの子の精神状態じゃ、何をするか分からないぞ!!」

 自分がこの家の子では無い。
 それを知った中学生の精神状態は不安定だろう。
 頭も混乱して、正常な判断が出来ないかもしれない。
 誠実達は美奈穂を探す為に、直ぐに家を出た。

「美奈穂……」

 誠実は自分の言った言葉を思い出し、自分に腹が立った。

「何が大丈夫だ……いくら気が強くても……あいつはただの女子中学生じゃないか……」

 誠実は走って美奈穂を探した。
 しかし、美奈穂はどこにも居なかった。
 電話にも出ず、誠実は焦りを感じていた。

「くそっ……どこに行ったんだ」

 誠実は駅前を探していたが、美奈穂の姿はどこにも無い。
 別なところを探してみようとしたところ、誠実はある人物とであった。

「あら? 誠実君、どうかしましたか?」

「え? あ……先輩……」

 そこに居たのは優しく微笑む栞だった。
 

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