99回告白したけどダメでした

Joker0808

199話

「なんだ、美奈穂ちゃんと一緒か?」

「いや……美奈穂じゃないんだ」

「ん? じゃあ誰だ?」

「まぁ、なんていうか……友達?」

「なんで疑問系なんだよ……まぁ、買い物袋のほとんどが女性向けブランドだから、きっと女なんだろうが」

「なんで女性ブランドなんて知ってるんだよ……」

 ベンチす座りながら、誠実と健は話しをしていると、丁度そのとき戻ってきた恵理が
誠実と健の前にやってきた。
 
「お待たせーってあれ? またお友達?」

「あぁ、はいまぁ……」

 健は恵理を見た瞬間、誠実の方を見て深いため息を吐いた。

「お前は次から次へと……馬鹿なのか?」

「おい、急に何だよ……この人はただの……」

「はいはい、良いから説明とか。じゃあ俺はコレで帰る。またな」

「え? あ、おう……じゃあな」

 健はそう言って誠実と恵理の前から立ち去り、家路についた。
 これから誠実は誰を選び、どんな結末を選ぶのかを一人で予想しながら。







 健が去った後、誠実と恵理も帰りのバスに乗って帰路についていた。
 大きな紙袋何個も持たされ、誠実はヘトヘトの状態で恵理の家に向かっていた。
 
「はーい、ご苦労様」

「つ、疲れた……」

 恵理のアパートに到着し、誠実は荷物を下ろして座りこむ。
 流石に一日歩き周り、重い荷物を持ったので誠実はかなり疲れており、直ぐに立ち上がる気にはなれなかった。

「少し休んでいって良いよ。何か飲む?」

「あぁ、じゃあ麦茶で」

「了解、まぁくつろいでてよ」

 麦茶を飲み、少しゆっくりした後、誠実は家に帰ろうと立ち上がる。

「んじゃ、俺は帰るんで……」

「え……あ、うん……」

 誠実がそう言ってドアの前に立つと、恵理は見送るために後に続いた。
 その時、恵理の頭の中に今日の出来事が脳裏に浮かんだ。
 これで今日の楽しい時間が終わりだと思うと、恵理はなんだか寂しくなり、恵理は思わず誠実の服の袖を掴んでいた。

「えっと……何か?」

「あ、いや……その……ま、またね」

「はい、じゃあまた」

 そう言って誠実は恵理の部屋を後にした。
 服の袖が手から離れる時、恵理は「あっ」っと小さく呟いたが、誠実はそれには気がつかず、恵理のアパートを後にした。
 一人になったアパートで恵理は深いため息を吐く。

「はぁ……何だろ……この気持ち……」

 さっきまでは最高に気分がよかった。
 しかし今はあまり気分は良くない。
 そんなことを思いながら、恵理は服を脱ぎ部屋着に着替え始める。
 モヤモヤした気持ちのまま恵理は、着替えを終えベッドに横になる。

「………また行きたいなぁ……」







 健は自宅に帰り、部屋の掃除をしていた。
 今まで持っていたアイドルグッズを一つにまとめ、クローゼットにしまう。
 
「ま、こんなもんか……あとはオークションにでも出して……」

 いままで集めてきたコレクションを処分するというのはかなり抵抗があった。
 しかし、健の意思は堅く、今までのコレクションを段ボールに入れていく。

「はぁ……いくら使ったかは、あんまり考えたくないな」

 健はため息を吐きつつ、ガムテープを段ボールに貼っていく。

「少し休憩するか……」

 健は休憩がてら、部屋のテレビをつけてベッドに座る。

「はぁ……えっと……」

 いつもの癖で歌番組をのチャンネルを押す健。
 そこには、神様のイタズラか綾清が写っていた。
 恐らく録画なのであろう、ニコニコしながら司会のおじさんにライブの時の話しや今回の新曲のコンセプトを話している。

「テレビの中では神ってるんだがなぁ……」

 リアルを見てしまい、健は綾清に対する興味を失ってしまった。
 テレビでニコニコと笑っている綾清は可愛いのにと思いながら、今日の綾清を思い出す。

「………ないな」

 ため息を吐き、テレビを消して健は作業に戻る。





「すいません!! 最近色々あってどうかしていました!」

 ショッピングモールのスタッフルームで、綾清はマネージャーの男に頭を下げる。
 マネージャーの男は眉間にシワを寄せながら、綾清に厳しい言葉を投げかける。

「綾清ちゃんわかってる!? 君一人が居なくなるだけで、このお店にもメンバーにも事務所にも大きな迷惑がかかるんだよ!」

「はい、すいません。反省してます!」

「まったく……幸いゲリラライブで告知はしてないから、そこまで大事にはならなかったけど……これからはしっかりしてくれよ」

 そう言ってマネージャーの男は綾清の元を離れる。
 綾清は結局戻って来ていた。
 健の言葉を聞き、綾清は考えを改めた。
 いや、改めたのではない、ただ悔しかった。
 健のようなただの一般人に、あそこまで言われたら綾清は黙ってられない。
 
「……絶対あいつに後悔させてやる………ファンをやめるなんて言ってすいませんって土下座させてやる………その為には……私はトップアイドルになる!!」

 綾清は健を見返すためだけにアイドル業界に留まることを決めた。
 まっずはこのグループで一番になると心に決め、綾清は静かに闘志を燃やしていた。
 






「なぁ、古賀よぉ」

「何よ? 暑さで馬鹿になった?」

「声掛けただけだろが!」

「んで、何よ」

「いや、誠実のことなんだけどよぉ……」

 志保と武司は帰りの道を歩いていた。

「伊敷君がどうかしたの?」

「あぁ、俺の予想だけどさ……あのお姉さん……」

「うん……」

「絶対Cはあったよな……」

「なんの話しをしてんのよ!」

「ぐがっ!! 殴るなよ!!」

 志保に頭を小突かれ武司は声を上げる。
 ただの冗談のつもりだったのだが、志保には通じなかった。
 
「まぁ、冗談はさておきにだ……絶対誠実を狙ってると思うんだよ」

「あら、鈍感そうなアンタでも気がついたのね」

「まぁな……誠実に惚れてるやつらと同じ目をしてたからな……」

「はぁ……沙耶香は大丈夫かしら……」

「いや、大丈夫云々の問題じゃねーよ」

「え? どう言うこと?」

「誠実はいまだに山瀬さんしか見えてないってこと」

 武司の言葉に、志保は眉間にシワを寄せて尋ねる。

「なんでそんなことがわかるのよ!」

「同じ理由だよ」

「はぁ? だから、それがどう言う意味かを教えなさいよ!」

「目が……違うんだよ……」

「目?」

「あぁ……山瀬さんを見る誠実の目と他の女の子を見る誠実の目は全然違う。目が輝いているとでも言うのかな?」

 そう話す武司に、志保は少し厳しい口調で尋ねる。
  

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