99回告白したけどダメでした

Joker0808

180話

「えい」

「何やってんですか、恵理さん……」

 恵理は誠実の背中に乗り始める。

(フフフ……これなら嫌でもドキドキしちゃうでしょ! さぁ、さっさと顔を赤面させなさい! そして私は誠実君をからかって遊ぶ!)

 などと、恵理はそんな事を考えながら、誠実の背中に全体重を乗っける。
 一方の誠実は、また何かくだらない事をしているなと、半分呆れて居たのだが、背中に伝わってくる二つの柔らかい感触に気がついた瞬間、頬を真っ赤に染める。

「え、恵理さん……」

「ん~? なにかな? 誠実君」

「どいて下さい、重たいです」

「な! お姉さんになんてことを!!」

「だって……重いんですもん……」

「重くありません!!」

「思いです! いい加減にどいて下さい!」

(お、重いですとぉ~……なんでこの子は毎回! 私を女として見てないのかしら?)

 恵理は誠実の反応にそんな事を思う。
 しかし、誠実は確実に恵理を意識意識していた。
 背中に当たる胸の感触、しかも結構な大きさだ、健全な男子高校生が意識しないハズが無い。
 しかし誠実は、恵理に顔を隠し平静を装って離れるように言うが、それが逆効果になってしまった。
 恵理は、それならばと、更に誠実を後ろから抱きしめる。
 
「おりゃ!」

「え、恵理さん! い、いい加減にして下さい!」

 最早、恵理もただの意地だった。

(ええい! もう何でもしてやる! さっさと顔を赤らめて、お姉さんの遊び道具に……ってこの格好……まずくない?)

 抱きついた瞬間、恵理は今の誠実と自分の体勢を改めて確認し、冷静に考える。
 そして、考えた瞬間、顔を赤くしたのは恵理だった。

(な! なにこの体勢! 破廉恥! って違う!! 早く離れよう……これはやり過ぎた……)

 恵理は早速誠実から離れようとする、しかしなんだか抱き心地が良く、離れがたくなってしまった。

「あの……早く離れてくれません?」

「ど、どうせお姉さんで興奮とかしないんでしょ?」

「いや……あの……」

(ヤバイ! 結構良いかも……えへへ良い匂いもするし……って私は変態か!)

「恵理さん……当たってるんですけど……」

「え? あ………」

 誠実に言われ、恵理はようやく気がついた。
 自分の胸が誠実の背中に密着している事に……。
 しかし、これは恵理にとってチャンスだった。

「あれれ~? 何? お姉さんで興奮しちゃったの?」

「し、してないです……」

 誠実の真っ赤な顔を見て、恵理は待ってましたと言わんばかりに、誠実をからかい始める。
「じゃあ、離れなくてもいいよね~?」

「あ、暑苦しいんです!」

「お姉さん熱くないも~ん」

「あぁぁ! もう! いい加減にして下さい!」

「きゃっ!」

 誠実は恵理から離れようと、勢いよく立ち上がる。
 恵理は誠実が立ち上がった衝撃で、床に倒れてしまった。

「もぉ~痛いよぉ……」

「恵理さんが悪いんです! あんな悪ふざけをするから……」

「……ねぇ、誠実君…」

「なんですか?」

「なんでそんな前屈みなの?」

 立ち上がった誠実は、何故か不自然に前屈みだった。
 恵理はそんな誠実の姿を見て、楽しそうな笑みを浮かべながら尋ねる。

「……腹が痛いんです……」

「ふぅ~ん……」

「なんですか、その目は」

「別に~、誠実君も男の子なんだなぁ~って、お姉さんそのうち食べられちゃう?」

「怒りますよ」

「アハハ冗談だって、そんな事したら、美奈穂ちゃんに後ろから刺されちゃうよ」

「何故に?!」

「誠実君が」

「しかも俺?!」

 そんなやりとりをしているうちに、ご飯が炊きあがり、無事カレーが完成する。
 誠実と恵理は二人で向かい合ってカレーを食べる。

「おぉ、なんか自分で作ったからか、美味しい気がする」

「そう思うなら、少しづつ自炊しましょうよ。冷凍食品とコンビニ弁当じゃ、体を壊します」

「う~でも、面倒かも……」

「はぁ……こんな大学生にはなりたくないな……」

「あ、またお姉さんを馬鹿にしたな! そんなに言うなら、誠実君が定期的に教えに来てよ、どうせ暇でしょ?」

「なんですかその言い方! 俺だってバイトあるし、学校だってあります!」

「お姉さんだって、仕事とか大学とかあるもん!」

 言い争う二人、良い争いながらも二人はカレーを口に運ぶ。

「はぁ……じゃあたまに教えに来ますから……少しは自炊して下さい。もったいないですよ、折角スタイル良いのに」

「え、本当?」

「ま、妹もお世話になってますし」

「やった! じゃあ、私が暇な日に連絡するね」

「はいはい」

 その後、誠実と恵理はカレーを食べ終え、食器を片付けた。
 時間は夜の二十一時を回っており、外は真っ暗だった。

「それじゃあ、俺はこの辺で」

「うん、気を付けて帰るんだよ」

「恵理さんにだけは言われたくないです」

 そう言って、誠実は帰宅していった。
 誠実が居なくなった後、恵理は先ほどまで誠実が居た部屋を見渡す。

「この部屋……こんなに広かったんだ……」

 先ほどまで誠実が居て、凄く楽しかった。
 誠実が居なくなり、静かになった部屋の中が何故か広く感じた。
 恵理はクッションを抱きしめ、ベッドに横になりスマホを手に取り、連絡先の誠実の項目を開く。

「電話しても……良いかな?」

 さっき別れたばかりなのに、何故か声が聞きたくなった。
 そして、スマホの通話ボタンを押そうとした瞬間、恵理はハッとする。

「な、何を私は!! なんで誠実君が居なくなっただけで、寂しがってんのよ!! 乙女か! あ、乙女だった……」

 などと一人でボケて見るが、恵理は少しづつ気がつき始めていた。
 誠実の事を男性として意識し始めていると言う事に……。

「………良い匂いだったなぁ……」

 恵理は誠実の背中に抱きついた時を思い出し、そんな事を呟く。
 そして再びハッとし、自分に言い聞かせる。

「違う! 違う! 私は誠実君の事なんてなんとも思ってない! だって三個下だよ?! なんで私が年下なんか、私は年上の大人っぽい人が……」

 自分で言っているうちに恵理は気がつく、自分の顔をがどんどん熱くなり、真っ赤になっている事に……。

「あぁぁぁ! 誠実君の馬鹿!!!」

 ベッドに潜って、恵理は誠実を罵倒する。
 しかし、恵理の顔は赤いままだった。

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