99回告白したけどダメでした
172話
「山瀬さん……」
「以外に近くに居てくれて良かった。知らない土地に一人は不安だから……」
「何を忘れたの?」
「財布。無いと帰れないから」
「なるほど、バスに乗る前に気がついて良かったね。じゃあ、一緒に旅館に戻ろうか」
「伊敷君の野暮用は大丈夫?」
綺凜にそう言われ、誠実は一瞬考える。
野暮用なんて本当は無い、ただあんな事があった後では、二人も気まずいだろうと思い、誠実が皆から離れたのだ。
「あ…あぁ、大丈夫だよ、それに山瀬さんは財布取って、皆と合流しないと……」
「みんなには先に帰ってて言ったから、大丈夫。私一人の都合で、みんなの帰りを遅く出来ないし……それに、いざとなったら、お父さんが経営してる、近くのビジネスホテルに泊まろうと思って」
「さ、流石お金持ち……」
誠実と綺凜は二人でとりあえず旅館に戻る。
財布は従業員の方が見つけて保管していてくれたおかげで、直ぐに綺凜の手元に戻ってきた。
しかし、問題はここからだった。
「……」
「……」
誠実と綺凜は、旅館の前で言葉を失った。
何を隠そう、滝のような大雨が降り始めていた。
雨はどんどん激しさを増し、側溝からは水が溢れて来ていた。
「ど、どうしよう……さっきまで降って無かったのに……」
「……これは電車も止まってるかもな……あいつら帰れたかな?」
誠実達は、旅館からの厚意でしばらくの間、中で雨宿りさせてもらうことになった。
「まいったなぁ……」
誠実がそんな事を呟きながら、外を眺めていると、綺凜は隣に来て尋ねる。
「用事は大丈夫?」
「あ、えっと……だ、大丈夫だよ」
「一時間くらいで、弱くなってくれれば良いんだけど……」
「まぁ、そうだね……」
二人は窓の外を眺めながら、早く雨が止まないかと思っていた。
しかし、雨は次第に強さを増していく。
「そう言えば、用事ってなんの用事?」
「え? あ、えっと……その……」
綺凜の質問に、誠実は言葉を詰まらせる。
用事など本当は無い、誠実はなんと言って綺凜をごまかそうか考えていた。
「そう! 近くに親戚の家があって、そこに顔を出そうと思ったんだけど、この雨じゃなぁ……」
我ながら、良くこんなにスラスラ嘘がつけたものだと、誠実は自分で自分に感心した。
もちろんこの近くに誠実の親戚の家など無い。
「そうなんだ。じゃあ、前から連絡してたの?」
「あ、いや……その……サプライズ的な感じで行こうと思ってたから、連絡は……」
(なんだサプライズって……)
などと自分で自分の言葉に疑問を抱きながら、綺凜に説明する。
案の定、綺凜も不思議そうな表情で誠実の話しを聞いていた。
「そ、そうなんだ……サプライズって事は、親戚の誰かの誕生日とかだったの?」
「ま、まぁそんな感じだ……」
こんな事なら、もっとまともな事を考えておけば良かったと後悔する誠実。
そんな誠実の心を察してか、雨は更に強くなっていく。
時間は流れていき、時刻は18時を過ぎてしまった。
若干雨脚は弱くなったのだが、電車が遅れている事がわかり、誠実と綺凜は近くのビジネスホテルにもう一泊することにした。
今から帰ったとしても、相当遅い時間になってしまうし、昨日と今日の疲れもあり、無理をせず、もう一泊することにした。
旅館の方に傘を借り、二人は近くのビジネスホテルに足を進める。
「お父さんに電話して、部屋を取ってもらったから」
「俺の分もありがとう、それにしてもすごいな、山瀬さんのお父さん、ホテルの経営もしてるのか……」
「そのせいで、毎日忙しいみたいだけどね。友達の分の部屋もってお願いしたら、一番良い部屋を二つ取ってくれたから、遠慮無く宿泊して欲しいって」
「それはありがたいんだが……本当に料金は良いのか? 一応宿泊代くらいはあるぞ?」
「これくらいしか、父親らしい事が出来ないから、代金はこっちで持つって。色々あって。お父さんも責任を感じてるみたい……」
「……なるほど」
夏休み前の駿の一件があったあの日から、綺凜の父親は綺凜に対して、責任を感じているらしい。
誠実を疑い、学校にまで連絡をしてしまった事を謝罪したいと何度か綺凜を通して言われたこともあったが、誠実は未だに綺凜の父親と会ったことは無かった。
「俺の事は正直気にしなくても良いと思うんだよなぁ……本当にストーカーぽかったし」
「確かにね……」
「あれ? そこは否定してくれないんだ……」
「でも、誠実君はそんな私の為に頑張ってくれたから……」
「終わった事だよ。それに俺以外にも武司と健も居たし……そんなに大した事はしてないよ」
二人はそんな話しをしながら、雨の中を傘を差してホテルに向かう。
ビジネスホテルは、意外と人が多かった。
大雨の影響で、誠実達と同じく帰れなくなった人などが押しかけている様子だった。
「すいません、山瀬ですけど……」
「あぁ、お待ちしておりました。お話はお聞きしております、最上階のお部屋二部屋をご用意させていただきました」
「ありがとうございます」
誠実と綺凜は、一階のフロントで鍵を受け取ると、エレベーターで上の階に上がって行く。
「じゃあ、また後で」
「あぁ……」
誠実と綺凜は部屋の前でそれぞれの部屋に別れた。
雨で濡れた事もあり、誠実はまずはシャワーを浴びて、さっぱりしようと誠実は着替えを出してシャワーの準備を始める。
そんな時、誠実のスマホに通知音が鳴った。
「ん? 武司か……」
武司からのメッセージの内容は、無事に帰宅したという連絡とそっちは大丈夫かという内容だった。
「武司達は無事に帰ったのか……」
誠実は今の状況を簡単に説明し、武司にメッセージを送る。
誠実はメッセージを送った後、服を脱ぎシャワールームに向かおうとする。
すると、またしてもスマホが鳴った。
今度は武司からの電話だった。
誠実は裸のまま、電話に出る。
「もしもし?」
『あぁ、俺だけどそっちは大丈夫か?』
「あぁ、こっちはまだ大雨だよ。でも今夜泊まるホテルも取ったし、ひとまず大丈夫だ」
『そうか……なぁ、本当はどうしたんだ?』
武司の言葉に、誠実は息を飲んだ。
「以外に近くに居てくれて良かった。知らない土地に一人は不安だから……」
「何を忘れたの?」
「財布。無いと帰れないから」
「なるほど、バスに乗る前に気がついて良かったね。じゃあ、一緒に旅館に戻ろうか」
「伊敷君の野暮用は大丈夫?」
綺凜にそう言われ、誠実は一瞬考える。
野暮用なんて本当は無い、ただあんな事があった後では、二人も気まずいだろうと思い、誠実が皆から離れたのだ。
「あ…あぁ、大丈夫だよ、それに山瀬さんは財布取って、皆と合流しないと……」
「みんなには先に帰ってて言ったから、大丈夫。私一人の都合で、みんなの帰りを遅く出来ないし……それに、いざとなったら、お父さんが経営してる、近くのビジネスホテルに泊まろうと思って」
「さ、流石お金持ち……」
誠実と綺凜は二人でとりあえず旅館に戻る。
財布は従業員の方が見つけて保管していてくれたおかげで、直ぐに綺凜の手元に戻ってきた。
しかし、問題はここからだった。
「……」
「……」
誠実と綺凜は、旅館の前で言葉を失った。
何を隠そう、滝のような大雨が降り始めていた。
雨はどんどん激しさを増し、側溝からは水が溢れて来ていた。
「ど、どうしよう……さっきまで降って無かったのに……」
「……これは電車も止まってるかもな……あいつら帰れたかな?」
誠実達は、旅館からの厚意でしばらくの間、中で雨宿りさせてもらうことになった。
「まいったなぁ……」
誠実がそんな事を呟きながら、外を眺めていると、綺凜は隣に来て尋ねる。
「用事は大丈夫?」
「あ、えっと……だ、大丈夫だよ」
「一時間くらいで、弱くなってくれれば良いんだけど……」
「まぁ、そうだね……」
二人は窓の外を眺めながら、早く雨が止まないかと思っていた。
しかし、雨は次第に強さを増していく。
「そう言えば、用事ってなんの用事?」
「え? あ、えっと……その……」
綺凜の質問に、誠実は言葉を詰まらせる。
用事など本当は無い、誠実はなんと言って綺凜をごまかそうか考えていた。
「そう! 近くに親戚の家があって、そこに顔を出そうと思ったんだけど、この雨じゃなぁ……」
我ながら、良くこんなにスラスラ嘘がつけたものだと、誠実は自分で自分に感心した。
もちろんこの近くに誠実の親戚の家など無い。
「そうなんだ。じゃあ、前から連絡してたの?」
「あ、いや……その……サプライズ的な感じで行こうと思ってたから、連絡は……」
(なんだサプライズって……)
などと自分で自分の言葉に疑問を抱きながら、綺凜に説明する。
案の定、綺凜も不思議そうな表情で誠実の話しを聞いていた。
「そ、そうなんだ……サプライズって事は、親戚の誰かの誕生日とかだったの?」
「ま、まぁそんな感じだ……」
こんな事なら、もっとまともな事を考えておけば良かったと後悔する誠実。
そんな誠実の心を察してか、雨は更に強くなっていく。
時間は流れていき、時刻は18時を過ぎてしまった。
若干雨脚は弱くなったのだが、電車が遅れている事がわかり、誠実と綺凜は近くのビジネスホテルにもう一泊することにした。
今から帰ったとしても、相当遅い時間になってしまうし、昨日と今日の疲れもあり、無理をせず、もう一泊することにした。
旅館の方に傘を借り、二人は近くのビジネスホテルに足を進める。
「お父さんに電話して、部屋を取ってもらったから」
「俺の分もありがとう、それにしてもすごいな、山瀬さんのお父さん、ホテルの経営もしてるのか……」
「そのせいで、毎日忙しいみたいだけどね。友達の分の部屋もってお願いしたら、一番良い部屋を二つ取ってくれたから、遠慮無く宿泊して欲しいって」
「それはありがたいんだが……本当に料金は良いのか? 一応宿泊代くらいはあるぞ?」
「これくらいしか、父親らしい事が出来ないから、代金はこっちで持つって。色々あって。お父さんも責任を感じてるみたい……」
「……なるほど」
夏休み前の駿の一件があったあの日から、綺凜の父親は綺凜に対して、責任を感じているらしい。
誠実を疑い、学校にまで連絡をしてしまった事を謝罪したいと何度か綺凜を通して言われたこともあったが、誠実は未だに綺凜の父親と会ったことは無かった。
「俺の事は正直気にしなくても良いと思うんだよなぁ……本当にストーカーぽかったし」
「確かにね……」
「あれ? そこは否定してくれないんだ……」
「でも、誠実君はそんな私の為に頑張ってくれたから……」
「終わった事だよ。それに俺以外にも武司と健も居たし……そんなに大した事はしてないよ」
二人はそんな話しをしながら、雨の中を傘を差してホテルに向かう。
ビジネスホテルは、意外と人が多かった。
大雨の影響で、誠実達と同じく帰れなくなった人などが押しかけている様子だった。
「すいません、山瀬ですけど……」
「あぁ、お待ちしておりました。お話はお聞きしております、最上階のお部屋二部屋をご用意させていただきました」
「ありがとうございます」
誠実と綺凜は、一階のフロントで鍵を受け取ると、エレベーターで上の階に上がって行く。
「じゃあ、また後で」
「あぁ……」
誠実と綺凜は部屋の前でそれぞれの部屋に別れた。
雨で濡れた事もあり、誠実はまずはシャワーを浴びて、さっぱりしようと誠実は着替えを出してシャワーの準備を始める。
そんな時、誠実のスマホに通知音が鳴った。
「ん? 武司か……」
武司からのメッセージの内容は、無事に帰宅したという連絡とそっちは大丈夫かという内容だった。
「武司達は無事に帰ったのか……」
誠実は今の状況を簡単に説明し、武司にメッセージを送る。
誠実はメッセージを送った後、服を脱ぎシャワールームに向かおうとする。
すると、またしてもスマホが鳴った。
今度は武司からの電話だった。
誠実は裸のまま、電話に出る。
「もしもし?」
『あぁ、俺だけどそっちは大丈夫か?』
「あぁ、こっちはまだ大雨だよ。でも今夜泊まるホテルも取ったし、ひとまず大丈夫だ」
『そうか……なぁ、本当はどうしたんだ?』
武司の言葉に、誠実は息を飲んだ。
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