99回告白したけどダメでした

Joker0808

119話




「じゃあ、今日の日程は終了です、お疲れ様でした~」

 夕方の5時に、本日の撮影スケジュールは終わりを告げた。
 誠実も一日働きもうクタクタだった。

「はぁ……疲れた」

「何疲れてるのよ」

 ホテルのロビーで椅子に座ってぐだぐだしている誠実に、私服に着替えた美奈穂が声を掛ける。
 先ほどまで、モデル仲間の子達と仲良く話しをしていたので、誠実は一人ホテルのロビーで疲れを取って居たのだ。

「なかなか肉体労働だったぜ……」

「情けないわね、早くご飯食べにいくわよ」

「へいへい」

 晩飯は、ホテルのラウンジで取ることになっており、バイキング形式になっていた。

「俺に気を使わなくても、友達と食って来て良いんだぞ?」

「ま、おにぃだけ一人寂しくってのも可愛そうだから」

「それはどうも」

 美奈穂と誠実は、兄妹そろってホテルのラウンジに行き、席を確保する。

「あら、奇遇ね貴方達も今からディナー?」

「中村さん達も夕飯ですか?」

 近くの席に陣取っていた、中村とその他のスタッフの方々に誠実は尋ねる。
 美奈穂は食事を取りに行って、席には誠実一人だった。

「どうだった、今日は?」

「いろいろ新鮮でしたよ、なかなか出来ない体験をさせていただきました」

「彼、なかなか良く働いてくれましたよ」

「そうですね、気が利くし器用になんでもしてくれて」

「いや、そ…そんな大したもんでは……」

 スタッフの方々から、褒められ誠実は照れる。
 明日も期待していると口々に言われ、誠実も食事を取りに行こうとしたところで美奈穂が帰ってきた。

「結構取ってきたのな……」

「そう? 普通でしょ?」

「いや、確かに飯は普通だけど、デザートがその倍はあんだろうが……」

「デザートは別腹なのよ、それよりもアンタも取って来たら?」

「あ、そうだな」

 誠実は席を立ち、料理を取りに向かった。

「えっと……どれにするかなぁ~」

 皿を片手に、一人悩んでいると後ろから声が聞こえて来た。

「そのお肉美味しかったわよ」

「え……あ、恵理さん」

「こんばんわ、誠実君」

 振り返ると、そこには私服姿の恵理が誠実と同じく、皿を持って立っていた。
 にこやかな笑顔を浮かべる彼女に、誠実の頬も自然と緩む。

「恵理さんも食事ですか?」

「えぇ、誠実君も?」

「はい、妹と一緒に。恵理さんは?」

「私はスタッフの方と一緒よ、ちょっと息苦しいのよ……良かったらご一緒しても良いかしら?」

「それは良いですけど、良いんですか? スタッフさんとの付き合いとかあるんじゃ……」

「良いのよ、随分年の離れた人ばかりだし、それに誠実君とお話したいし」

「そ、そうですか、お、俺なんかでよろしければ話し相手位いくらでも」

「ウフフ、ありがとう。それじゃあ、そっちのテーブルにお邪魔させてもらうわね」

 恵理はそう言って、誠実の元を後にし一旦自分の席に戻って行く。
 誠実は、このことを美奈穂に伝える為に、料理を取ることなく、再び席に戻る。

「え? 恵理さんが……」

「あぁ、そうなんだよ、別に良いだろ?」

 事の経緯を話し、誠実は美奈穂に許可を取る。
 美奈穂はどこかつまらなさそうな顔で、誠実に答える。

「ま、良いんじゃない……おにぃ昼間も仲良さそうにしてたもんね」

「お前は話したことあるのか?」

「少しね、あんまり撮影一緒になったことないし」

「そうなのか? しかし……綺麗な人だよなぁ~」

 誠実が恵理の事を思い出し、顔をにやつかせると、美奈穂は眉間にシワを寄せて、イラッとしながら嫌みっぽく誠実にいう。

「なに? おにぃって年上趣味なの?」

「そういう訳じゃないんだが……やっぱりモデルするだけあって綺麗な人だと思ってさ!」

「あっそ……」

 自分以外の女性の事を綺麗と言う誠実に、美奈穂は悲しげな表情で顔をそらした。
 そんな事をしていると、噂の本人である恵理がやってきた。

「ごめんなさいね、兄妹みずいらずを邪魔しちゃって」

「いえいえ、こいつとは部屋も一緒なんで、誰か間に入ってくれたほうが話題がつきないですよ」

「ありがとう、美奈穂ちゃん久しぶりね」

「恵理さん、お久しぶりです。大学決まって以来ですか?」

「そうね、私の合格が決まって直ぐの撮影で一緒だったわよね? たしかそれ以来ね」

 業界の話しで盛り上がる二人を見て、誠実は今のうちに料理を取ってこようと、再び席を立って料理を取りに行く。

「美奈穂ちゃんのお兄さん、いい人だね」

「そうですか? ただのスケベですよ」

「ウフフ、男の子はちょっとエッチな位が丁度良いのよ? 私もあんなおにぃさん欲しかったなぁ~」

「? 恵理さんからしたら弟では?」

「そうね、でも…妹の事を可愛いって行ってくれるお兄さんの方が、私は良いな……」

「え? どういう……」

 恵理の言葉の意味が理解出来ず、美奈穂は聞き返す。
 すると恵理は、微笑みながら話し始めた。

「今日、彼に何回か話し相手になってもらってたんだけど……誠実君が度々言うのよ」

「なんてですか?」

 すると恵理は、美奈穂に手招きをする。
 近づいてきた美奈穂に、恵理は耳打ちをする。

「やっぱり美奈穂が一番可愛いって」

「………」

 美奈穂は自分の顔がどんどん熱くなり、赤くなるのを感じる。
 先ほどの誠実が恵理の事を褒めたのを忘れてしまうほど、美奈穂はうれしかった。
 

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