99回告白したけどダメでした

Joker0808

107話

「何! 今度は志保が男と居たって!」

「私、もう色々ありすぎて、訳わかんない……」

 和波と伊智は次々と繰り出される美沙の暴露に脳が追いつかず、頭を抱えていた。
 言われた志保も顔を真っ赤にして、その事について話す。

「あ、あれはただの勉強会っていうか……」

「それにしては、随分気合いの入った私服だったような?」

「ちょっと笹原さん御黙ろうか!」

 志保が顔を赤くしながら、美沙の肩を強く叩いてそう言う。
 これ以上は言わない方が良いと思った美沙は、無言で首を縦に振った。
 そして、みんなが落ち着いたところで、改めて話しをまとめる。

「えっと……つまりは、伊敷君は山瀬さんを諦めたと」

「はい」

「…で、山瀬さんも伊敷君に好意は無いけど、そっちの笹原さんが伊敷君を狙って告白をしたと……」

「そうだよ」

「それでもって、志保は武田君を落としている最中と……」

「べ、別にあんな男……私は全く興味無いわよ!!」

 伊智はこれまでの話しを順を追って確認する。
 当の本人達は一人を除いて落ち着いて話しを聞く。
 そして、その話しを聞いた料理部の残り四人はと言うと……。

「じゃ、じゃあ伊敷君は今、沙耶ちゃんと美沙ちゃんの二人から告白されてるって事?!」

「そ、そうなるわね……」

「だね」

 顔赤くしながら、和波が沙耶香と美沙に尋ねる。
 美沙と沙耶香は気まずそうに答える。
 場の空気は重たいかと思いきや、料理部の四人のおかげでそうでもない。
 四人はなにやらニヤニヤしながら話しをしている。

「伊敷君モテモテだね~」

「そう言う問題じゃないでしょ! 伊敷君には、武田君や古沢君がいるのに!!」

「うん、いっちゃんは少し黙ろうか」

「そ、それよりも……志保もなんか武田君と二人で居たって」

「だよね~、鈴もびっくりだよ」

 こそこそ話しをしているつもりの四人だが、当の本人達にも丸気声だった。
 そんな四人を見ながら、当の本人達は……。

「……なんかごめね……知られちゃいけない人たちに知られて決まった気がする……」

「い、いえ…こちらこそ部員が噂好きですいません……」

 美沙が余計な事を自覚し、沙耶香に謝罪する。

「そんな事よりも、私は志保が武田君とそんな関係だったなんて知らなかったんだけど」

「な、なに言ってるのよ沙耶香! わ、私はただ……あの馬鹿に勉強を……」

「あんなに勉強の教え方で揉めてたのに? あやしぃ~」

「ほんとだってば!!」

 美沙と綺凜を放って、沙耶香と志保が盛り上がる。
 そんな二人を見ながら、綺凜と美沙も話し始める。

「軽はずみにとんでもない爆弾を投下してしまったようだわ……」

「美沙は少し場の空気を読もうか?」

 それぞれが盛り上がっていた。
 そんなか、料理部の伊智と和波は昨日の帰り道の事を志保に尋ねる。

「そういえばしーちゃん、昨日の放課後は武田君と一緒に居たよね?」

「そうそう! びっくりしたわよ……何してたの?」

 二人に聞かれ、志保は顔を赤くしながら説明する。

「た、ただの勉強会よ」

「へ~、それにしては仲よさげに歩いてたけど?」

「べ、別に普通よ! ふ・つ・う!」

 自分と武司はそんな関係ではないと言う事を必死に説明する志保、そんな志保にその場に居る皆が注目する。
 実際のところ、志保からの話しだけでは二人の関係がどのような関係なのかはわからない。 なので、この場はあまり何も聞かずに、後日武司も交えて話しを聞こうと決める料理部の部員達。

「でさ……鈴的には伊敷君争奪戦の方がきになるんだけど?」

 鈴の一言で、その場の空気がまた重くなる。
 沙耶香と美沙は、真剣な表情で互いに視線を合わせ、綺凜はどこか気まずそうにそわそわする。

「前橋さんは誠実君のどんなとこが好きなの?」

 最初に切り出したのは美沙だった。
 表情を柔らかくし、若干微笑みながら沙耶香に尋ねる。

「優しくて、一途で、一生懸命なとこかな? 笹原さんは?」

「美沙でいいよ。私もほぼ同じ……最近気がついたけど、一緒に居ると楽しいんだよね、やっぱり……ずっと二人っきりで居たいって思う位……」

 どこかうっとりとした表情で答える美沙に、沙耶香も負けじと応戦しようと試みる。

「そっか……あ、私の事も沙耶香で良いよ? それに山瀬さんも」

「ありがとう、私の事も綺凜で良いわ」

「知ってる? 誠実君って胸の大きな女性が好みみたいだよ?」

 その発言には料理部の部員全員が驚いた。
 その発言は明らかに、美沙に対して自分が優位に立っていると思わせる発言だ。
 しかも、沙耶香は胸の大きさにコンプレックスを持っており、普段だったら自分の胸をアピールするような発言は絶対にしない。
 料理部の部員達は、沙耶香が本気で誠実の心を掴みに行っている事を感じた。

「あはは、まぁ男の子だもんね~、でもそれは性癖の話しで好きなタイプとは違うんじゃない? 綺凜はぺったんこだし」

「美沙? 怒るわよ?」

 美沙の発言に、無表情で淡々と言葉を発する綺凜。
 そんな綺凜に親近感を持った、同じぺったんこの和波は、目を輝かせながら綺凜の手を握り「ぺったんこにも需要はあるわ!」などと言い始める。

「う……で、でも! 私はデートの約束したもん!」

「私はもうデートしちゃった」

「ただ勉強しただけでしょ!」

「図書館デートよ、それに私の事可愛いって言ってくれたし」

「わ、私だって……」

「はいはい、ストップストップ!」

 ヒートアップする二人の言い争いに割って入ったのは志保だった。
 頭を手のひらで押さえ押さえながら、二人を落ち着かせる。

「あんたらがここで争ってもしかないでしょ! 決めるのは伊敷君でしょ! 無意味な争いはやめさない」

「で、でも……」

「でもじゃない! 最初は妙に落ち着いて話してると思ったら結局これよ……」

「志保にはわからないのよ、ライバルの居ない志保には」

「美沙は黙ってなさい! アンタはさっきから爆弾落としすぎ!」

 志保は二人を叱りつけると、ウーロン茶を飲み干し席に座る。 

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