99回告白したけどダメでした
79話
*
「守らないと言ったら?」
誠実は駿のその言葉に、一つため息を吐き呆れた表情で応える。
「それなら、こうして……こうする」
「お、おい! 何着せてんだ! やめろ! 俺にそんなものを着せるな!」
誠実は自分が来ていたはっぴを脱ぎ、駿に着せてパンツ一丁にさせる。
駿は体を動かす力が残っておらず、抵抗が出来ない。
誠実は、そんな駿の姿をスマホで撮影し、駿を見てニヤリと笑う。
「この画像をネットにアップする」
「お前も十分クズじゃねーか」
誠実は写真を撮り終えると、表情を変え真剣な様子で駿に話す。
「嫌ならあの人を幸せにしろ、絶対に泣かせるな」
誠実の言葉に、駿はため息を吐きながら応える。
「なぁ、そこまで好きなら、本当の事を話して綺凛の好感度上げて、お前が幸せにしろよ。なんで俺に頼む?」
誠実は笑いながら、駿に言う。
「ここでそんな事したら、俺の利用され損だろ? 俺はあの人に利用されるなら、本望だね」
誠実の返答に、駿は深いため息を吐く。
そして誠実は最後に、悲し気な笑顔でこう言った。
「……俺じゃダメなんだよ………」
自分はいくらやっても綺凛を振り向かせられなかったこと。
誠実は、自分では綺凛を笑顔に出来ないとわかっていた。
誠実は、駿にそう言い残すと健と武司の元にゆっくり歩いて行った。
「よぉ、お前らボロボロだな」
「その言葉…そっくりお前に投げ返すよ。で、もう終わったのか?」
「あぁ……多分もう大丈夫だ」
「なら帰ろう、俺は疲れた」
誠実達はフラフラになりながら、工場を後にしようと、出口に向かう。
そこで誠実は振り返り、駿に向かって大声をあげる。
「約束、忘れんなよ!」
言われた駿は、倒れたままで何の反応もしない。
しかし、駿の頭の中では誠実に言われた言葉が突き刺さっていた。
「……幸せに……か」
駿はそうつぶやくと、そのまま目を閉じ考え始めた。
これからどうするべきか、何をするべきかを……。
*
工場を後にした誠実達の少し後で、綺凛は一人帰りの道をとぼとぼ歩いていた。
綺凛の頭の中は混乱していた。
工場内で聞いた話が信じられず、どうしたら良いか分からなかった。
「……私、最低…」
自分に好意を向けてくれていた相手を利用し、更には疑った。
信じていた人は、今までの事がすべて嘘だと話していた。
もう何が何だか分からなくなっていた。
綺凛は頭を抱えながら、家へと帰る。
*
「あ! おい! それは俺の肉だ!!」
「いや、俺のだね! てか食いすぎなんだよ誠実!」
「全く、バイキングなんだから、取ってくれば良いだろう」
工場での激しい戦闘を終えた誠実達は、打ち上げを兼ねてバイキングレストランに来ていた。
時間も丁度晩飯時で皆お腹が減っていた事もあり、誠実達は夢中で料理にかぶりついていた。
「これで、なんの心配も無くなった……これで俺はスッパリ諦められる」
「誠実はバカだな~、あいつの悪事全部を山瀬さんに言えば、お前の好感度が急上昇だったかもしれねーのに」
「良いんだよ! それに……もう諦めるって決めたんだ」
寂しそうな笑顔で、誠実は向かいの席に座る健と武司に言う。
「本当にお前はお人好しだな、あまり優しすぎるのもどうかと思うぞ?」
「そうか? 俺は好きな奴には優しいんだけだよ。嫌いな奴は嫌いだ!」
「……その嫌いな奴を好きになるから、お前はお人好しなんだよ……」
健は呆れた感じでそうつぶやいたが、顔は笑っていた。
席に戻り、健は気になっている事を誠実に尋ねる。
「で、結局お前はこれから誰と付き合うんだ?」
「ふへ? 誰って?」
「現状は前橋と笹原のどちらかだが、どうせ今後も増える」
沙耶香と美沙の名前が出て来たところで、誠実はすっかり忘れていた事を思い出した。
それは現状告白を保留にしている沙耶香の件と、告白の返事をまだしていない美沙の件だ。
「そ、そう言えば……そうだな……」
「スッパリ諦めたなら、あいつらの事を考えてやるべきだ」
「ふぁふぃかにふぁ! ふぉれふぁふぃふぇふぇる!」
「武司、飲み込んでからにしろ」
健に言われ、誠実はその通りだと思った。
同じ恋をしていたから誠実には分かる。
告白した瞬間のドキドキ、返事を聞いた時の絶望。
そして、告白するのにどれだけの勇気がいるかを……。
「そうだな……とりあえず、美奈穂に相談してみるよ。女子の気持ちは、同じ女子が良くわかるだろ?」
「あぁ…誠実……それはやめとけ」
「ん? なんでだよ?」
「お前の明日の為だ……」
「はぁ?」
武司の言葉の意味が分からず、誠実は首を傾げる。
「それより、あと何十分だ?」
「大丈夫だ40分ある、肉取って来ようぜ!」
「野菜も食べなさい」
「健……お前はおかんか、良いだろ? 疲れちまって、肉が食いたいんだよ!」
「おい誠実! 特上カルビが追加されたぞ!」
「おぉ! よし取って来よう!!」
そう言って誠実武司は席を立ち、肉のコーナーに一目散に向かって行った。
そんな二人を見ながら、健は笑みをこぼして昔を思い出す。
「……助けてもらった……か」
ぽつりとそうつぶやくと、健は席を立ち誠実と武司の元に向かい、肉を取るのを手伝い始める。
「カルビは俺の好物だ、もっと盛れ」
「おいバカ! 盛りすぎだ! こんなに食えねーよ!」
「武司ならいけるよな?」
「なんで俺?!」
工場での激闘が嘘のように、誠実達は笑い合っていた。
「守らないと言ったら?」
誠実は駿のその言葉に、一つため息を吐き呆れた表情で応える。
「それなら、こうして……こうする」
「お、おい! 何着せてんだ! やめろ! 俺にそんなものを着せるな!」
誠実は自分が来ていたはっぴを脱ぎ、駿に着せてパンツ一丁にさせる。
駿は体を動かす力が残っておらず、抵抗が出来ない。
誠実は、そんな駿の姿をスマホで撮影し、駿を見てニヤリと笑う。
「この画像をネットにアップする」
「お前も十分クズじゃねーか」
誠実は写真を撮り終えると、表情を変え真剣な様子で駿に話す。
「嫌ならあの人を幸せにしろ、絶対に泣かせるな」
誠実の言葉に、駿はため息を吐きながら応える。
「なぁ、そこまで好きなら、本当の事を話して綺凛の好感度上げて、お前が幸せにしろよ。なんで俺に頼む?」
誠実は笑いながら、駿に言う。
「ここでそんな事したら、俺の利用され損だろ? 俺はあの人に利用されるなら、本望だね」
誠実の返答に、駿は深いため息を吐く。
そして誠実は最後に、悲し気な笑顔でこう言った。
「……俺じゃダメなんだよ………」
自分はいくらやっても綺凛を振り向かせられなかったこと。
誠実は、自分では綺凛を笑顔に出来ないとわかっていた。
誠実は、駿にそう言い残すと健と武司の元にゆっくり歩いて行った。
「よぉ、お前らボロボロだな」
「その言葉…そっくりお前に投げ返すよ。で、もう終わったのか?」
「あぁ……多分もう大丈夫だ」
「なら帰ろう、俺は疲れた」
誠実達はフラフラになりながら、工場を後にしようと、出口に向かう。
そこで誠実は振り返り、駿に向かって大声をあげる。
「約束、忘れんなよ!」
言われた駿は、倒れたままで何の反応もしない。
しかし、駿の頭の中では誠実に言われた言葉が突き刺さっていた。
「……幸せに……か」
駿はそうつぶやくと、そのまま目を閉じ考え始めた。
これからどうするべきか、何をするべきかを……。
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工場を後にした誠実達の少し後で、綺凛は一人帰りの道をとぼとぼ歩いていた。
綺凛の頭の中は混乱していた。
工場内で聞いた話が信じられず、どうしたら良いか分からなかった。
「……私、最低…」
自分に好意を向けてくれていた相手を利用し、更には疑った。
信じていた人は、今までの事がすべて嘘だと話していた。
もう何が何だか分からなくなっていた。
綺凛は頭を抱えながら、家へと帰る。
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「あ! おい! それは俺の肉だ!!」
「いや、俺のだね! てか食いすぎなんだよ誠実!」
「全く、バイキングなんだから、取ってくれば良いだろう」
工場での激しい戦闘を終えた誠実達は、打ち上げを兼ねてバイキングレストランに来ていた。
時間も丁度晩飯時で皆お腹が減っていた事もあり、誠実達は夢中で料理にかぶりついていた。
「これで、なんの心配も無くなった……これで俺はスッパリ諦められる」
「誠実はバカだな~、あいつの悪事全部を山瀬さんに言えば、お前の好感度が急上昇だったかもしれねーのに」
「良いんだよ! それに……もう諦めるって決めたんだ」
寂しそうな笑顔で、誠実は向かいの席に座る健と武司に言う。
「本当にお前はお人好しだな、あまり優しすぎるのもどうかと思うぞ?」
「そうか? 俺は好きな奴には優しいんだけだよ。嫌いな奴は嫌いだ!」
「……その嫌いな奴を好きになるから、お前はお人好しなんだよ……」
健は呆れた感じでそうつぶやいたが、顔は笑っていた。
席に戻り、健は気になっている事を誠実に尋ねる。
「で、結局お前はこれから誰と付き合うんだ?」
「ふへ? 誰って?」
「現状は前橋と笹原のどちらかだが、どうせ今後も増える」
沙耶香と美沙の名前が出て来たところで、誠実はすっかり忘れていた事を思い出した。
それは現状告白を保留にしている沙耶香の件と、告白の返事をまだしていない美沙の件だ。
「そ、そう言えば……そうだな……」
「スッパリ諦めたなら、あいつらの事を考えてやるべきだ」
「ふぁふぃかにふぁ! ふぉれふぁふぃふぇふぇる!」
「武司、飲み込んでからにしろ」
健に言われ、誠実はその通りだと思った。
同じ恋をしていたから誠実には分かる。
告白した瞬間のドキドキ、返事を聞いた時の絶望。
そして、告白するのにどれだけの勇気がいるかを……。
「そうだな……とりあえず、美奈穂に相談してみるよ。女子の気持ちは、同じ女子が良くわかるだろ?」
「あぁ…誠実……それはやめとけ」
「ん? なんでだよ?」
「お前の明日の為だ……」
「はぁ?」
武司の言葉の意味が分からず、誠実は首を傾げる。
「それより、あと何十分だ?」
「大丈夫だ40分ある、肉取って来ようぜ!」
「野菜も食べなさい」
「健……お前はおかんか、良いだろ? 疲れちまって、肉が食いたいんだよ!」
「おい誠実! 特上カルビが追加されたぞ!」
「おぉ! よし取って来よう!!」
そう言って誠実武司は席を立ち、肉のコーナーに一目散に向かって行った。
そんな二人を見ながら、健は笑みをこぼして昔を思い出す。
「……助けてもらった……か」
ぽつりとそうつぶやくと、健は席を立ち誠実と武司の元に向かい、肉を取るのを手伝い始める。
「カルビは俺の好物だ、もっと盛れ」
「おいバカ! 盛りすぎだ! こんなに食えねーよ!」
「武司ならいけるよな?」
「なんで俺?!」
工場での激闘が嘘のように、誠実達は笑い合っていた。
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