99回告白したけどダメでした

Joker0808

15話

 誠実と美奈穂は近くのファミレスまで足を運んだ。
 中学生の妹に晩飯を奢ってもらう日が来るなど、誠実は思ってもみなかったが、それ以上に驚いたのが、二人きりで食事に出かける日が来たという事だった。

「いらっしゃいませー! お客様は何名様ですか?」

「二人です」

 店に入り、店員のお姉さんが笑顔で誠実達に尋ねる。
 誠実達は店員のお姉さんに案内され、窓際の席に座り、メニューを見始める。

「………」

「………」

 先ほど、家では普通に話せていたはずなのにも関わらず、少し時間をおいて、ファミレスに来たらお互いにまったく話さなくなってしまった。

(気まずいな……何んか良い雰囲気だったから、飯に誘ったけど、正直話題も金もない……)

 ダメな兄貴だなと、誠実は自分自身をそう思いながら、メニュー表を見るふりをして、美奈穂の様子を伺う。

「私決まったけど、そっちは?」

「ん? あ、あぁ…俺は……」

 奢って貰う側なのだから、少しは遠慮せねばと思い、誠実は店で一番リーズナブルなハンバーグセットを注文する事にした。

「俺も決まった、じゃあ店員呼ぶか」

 席の呼び出し用のボタンを押し、数秒で店員さんがやってくる。

「ご注文の方をお伺いします」

「俺はハンバーグのライスセットで」

「私は、チキンドリアと食後のデザートでイチゴパフェで、お願いします」

「かしこまりました、少々お待ちください」

 注文を聞き終えた店員が戻って行き、再び二人のテーブルには沈黙が訪れる。
 メニュー表を見るという逃げ道もなくなり、誠実は気を使って何か話題は無いかと考える。

「ねぇ、聞きたい事あるんだけど?」

「ん? ど、どうした??」

 何か話題は無いかと考えていた誠実に、美奈穂が突然話をかけてきた。
 誠実は急な事に戸惑いつつも、先ほどの玄関ではしっかり会話が出来ていた事を思い出し、美奈穂の言葉を待った。

「あのさ、これって誰の写真?」

「な……なんでお前がそれを……」

 美奈穂は誠実に一枚の写真を取り出し、見せてくる。
 誠実はその写真に見覚えがあったのと同時に、なぜ美奈穂がその写真を持っているのか不思議だった。

「女の子? しかも確実に隠し撮り……」

「い、いや……そ、それは……」

 写真に写っているのは綺凛だった。
 この写真は誠実が学校の写真部から買ったものだった。
 写真部は学校内の可愛い生徒の写真などを販売していた事があり、誠実は一枚だけ購入した事があった。
 写真は、誠実の部屋の引き出しに入れていたはずであり、なぜ美奈穂がその写真を持っているのか、不思議でならなかった。

「そ、それはそうと、なんでお前がそれを!」

「今日の朝、あんたが落としていったのよ」

 言われて誠実は思い出した。
 今朝、誠実は願掛けのつもりで、写真を制服のポケットに入れて学校に向かったのだった。
 誠実はすっかりそのことを忘れており、写真は玄関で落としたのだろうと思った。

「で? 誰なの?」

 
 なぜか不機嫌そうに誠実に尋ねる美奈穂。
 誠実はそんな美奈穂に、綺凛との関係をどう話すか考える。

「えっと……同じ学校で……」

「あんたの好きな人?」

「ま、まぁ……」

「ふーん……」

 机に写真を置き、なぜか不機嫌な美奈穂。
 誠実はそんな美奈穂の前で、気まずそうに視線を泳がせる。

「お、お前に関係ないだろ……」

「妹として、兄貴がストーカーまがいの事をしてないか心配なのよ」

(ごめん、おにぃはもう多分、他の人から見たら、完璧なストーカーだよ……)

 誠実は美奈穂に対してそんな謝罪を心の中でしながら、さらに気まずそうに眼を泳がせる。

「まぁ、私には関係ないけど……」

 とは言いつも美奈穂は相変わらず機嫌悪そうに、スマホを操作し始める。

「ま、まぁ……写真くらいなら別にいいだろう…」

 誠実はそう言いながら、テーブルの写真に手を伸ばし写真を回収する。

「そ、それにだな……今日振られたんだ……」

「え……」

 美奈穂は誠実の発言に、先ほどまでスマホに向けていた視線を誠実に移す。
 誠実はどうせ写真をも見つかっているならと、振られた事実も美奈穂に話す。

「あのさ、高校入ってから料理をしたり、急に柔道始めたのって……」

「まぁ、ちょっとしたアピールというか……」

 実際はちょっとどころではない、そう思いながら誠実は今までの綺凛との事を話し始める。
 あまり美奈穂と最近話をしなくなっていた誠実は、いい機会かもしれないと思った。

「……と言うわけで、99回の俺の告白物語は終わったって事、今考えると、正直山瀬さんも良く俺に付き合ってくれたな…」

 改めて自分がしてきた告白の話を他の人にしてみると、誠実は自分のやっていた事の異常さに気が付く。
 綺凛以外が見えておらず、ただ彼女に好かれるために行動していた自分が、変な奴だったということに気が付き始め、誠実はため息を吐く。

「はぁ~、なんていうか……恋って難しいな…」

「そうね、ところで病院ってまだやってるかしら? 今から精神科に行ってきた方が良いわよ?」

「だから諦めたって言ってんだろ!!」

「あ、ごめん。脳外科だったわね」

「頭を見てもらえってか! 心配しなくても正常だよ!!」

 振られてブルーになり、カラオケで奢らされ、帰り道に少女を助け、家に帰ったら迷惑な客を追い出し、挙句の果てには妹に馬鹿にされる。
 本当に今日は色々なことがあるものだ、そう誠実は思いながら今度は深いため息を吐いた。

「はぁ~、まぁそれはさておき、今日来てた男は誰なんだよ?」

「あんま覚えてないわ、どっかのプロダクションの社長だった気がするけど……あの感じからして、そこまで大きなプロダクションじゃないわ。普通社長がスカウトなんて来ないもの」

「まぁ、確かに……まぁ、お前は容姿は良いからな……」

「ま、まぁね……」

 誠実が容姿を褒めた途端に、美奈穂は頬をほんのり赤く染め、誠実から視線を外し、再びスマホを操作し始める。
 久しぶりに話して緊張でもしているのだろうか? などと考えていた誠実。
 ちょうどその時、注文していた料理が運ばれてきた。

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コメント

  • 黒流星

    いいねぇ〜笑

    1
  • ペンギン

    もしかして、兄妹ってある…?
    まぁ、僕は別に嫌いではないのですが...

    4
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