白と華と魔王と神と
辺境伯邸にて
「こちらの2部屋をお使い下さい。お風呂は1階にございます。何かありましたら部屋の入口すぐ横にある呼び鈴でお呼びください」
「ありがとうございます」
「あたしこっちのへやー!」
「じゃあおれがこっちだな」
「広いな。ベットでかいし」
部屋は広い方だと思う。ベットもダブルサイズはあるだろう。テーブルと椅子、化粧台のようなものにソファまである。さすが貴族の客室なだけある。
ベットは期待を裏切らずふっかふかだった。とても寝心地がいい。しばらくゴロゴロとしてると寝てしまったようでノックで目が覚める。浅い眠りでよかった。
「ハクヤ様、夕食の時間です」
「悪い、今行く」
「おそぉーい!」部屋を出るとエリスと華音がメイドさんと待っていた。
「わりいわりい。寝てたもんで」
「さ、いきますわよ」
エリスを先頭にメイドさんの後ろで俺と華音は並んで歩く。
「ここよ!」しばらく歩くとでかい扉の前にたどり着いた。
「扉でかくね?」
「お父様だもの」
「なるほど」
メイドさんがドアを開ける。
煌びやかな部屋だった。客を招いて食事をすることも考えられているのだろう。今まで見たどこよりも煌びやかで綺麗な空間であった。ただ、調和は取れている。ゴタゴタしていない。やはりセンスがいい。
「来たな!座ってくれ!」辺境伯と知らない青年2人に綺麗な女の人が座っていた。
「遅くなった、すまない」
「気にするな!」
勧められるがままに俺らも席につく。するとメイドさんが食事を運んでくる。
おぉ、美味そうだ。
「食事の前に紹介しよう。こちら私の妻のユーフィアだ」辺境伯隣の女の人を指しながら言った。めっちゃ美人。あと小柄。並んでたら親子かと思ったわ。なるほどエリスが小柄な訳である。
「ユーフィアと申します。娘がどうもお世話になったようでありがとうございました」
「いえいえ、報酬も貰いましたから」
そして2人の青年を指しながら「私の息子達だ。長男のアルフレッドと2男のアルグレスだ」
「アルフレッドだ。よろしく」アルフレッドと言った長男は中々に筋肉質だが引き締まっている。父のように筋肉が膨らんでるわけでもなさそうだ。ただ、それでも180cmはあるだろうと思う。
「アルグレスです。よろしくお願いします」対する次男のアルグレスはひょろい。そう、ひょろいのだ。もやし男子である。まじでDNA仕事しろよ。
紹介されたので俺らも返しておく。
「白夜だ、よろしく」
「華音よ、よろしくね」
「さぁ、自己紹介も済んだことだ!堅苦しいのは抜きにして飯にしよう!」
「そうだな、テーブルマナーなんかは知らないが許してくれよ」
「「いただきます」」
「それはなんだ?」
「あぁ、俺らの生まれ故郷で食事前に言うんだ。すべての食材に感謝を込めてな」
「なるほど、では私達もやろうか」
「それじゃあ改めて」
パンッ
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
「美味いな」
「当たり前だ。これでも辺境伯だからな」
正直、文明の発展度を見て食事はあまり期待していなかった。だが口にしてみればどうだ。ここは辺境伯邸だからというのもあるだろうが味付け、調理法もしっかりしているのだろう。ふわふわとした白パン、サラダにドレッシング、肉を煮込んだ物などどれもとても美味しい。思わずがっつきそうだ。
いや、横で結構がっついてる女子がいた。
それでいいのか、華音。
「超美味しいよ!!!このお肉!」
「当たり前でしょう?ユーリの料理の腕は最高よ!」
はしゃぐ華音をニコニコしながら見る辺境伯とユーフィアさん。
エリスは華音と喋っている。
「ユーリ?」
「うちの料理長だ。最高の料理人だよ」この料理を作ったのはユーリさんというらしい。素晴らしい腕だな。
「ハクから見てどう思う?」
「なぜあいつに聞くのよ!?」
「素晴らしい腕だと思う。見習いたいくらいね」ほんとだよ!とエリスに内心同意しながら答える。
「ハクも料理上手なんだよー」
「そんなわけないわ!」
何故か否定されている。まあいいか。
「あの、ハクヤ殿」
「殿とかやめてくれ、呼び捨てでいい」黙々と食べるのを再開したら今度はアルフレッド君から話しかけられた。
「では私もアルと呼んでくれ。それでなんだがハクヤ、私に剣の稽古をつけてくれないか?」
「はぁ!?」
いきなりの発言すぎて思わず叫ぶ。しかも食卓静まり返ったじゃねえか!
「む、気にしないで食事を続けてもらって構わないぞ?」
そら無理があるだろうに。周りも気になってしょうがないだろう。
「はぁ、でなんで俺なんだ?ロドリゴとかでいいじゃねえか」
「ロドリゴがハクヤは珍しい剣に見たこともない剣技を使うと聞いた。ぜひご教示したいと思ってな。教えるのが無理でも模擬戦で訓練をつけてくれないか?」
「まぁ、いい、だがこの剣、刀と言うがこれがアルに合うとは限らないし合わないと思えば刀は使わせない。あと、ほうしゅ...」
「そうか!それでもいい!報酬は寝食だ!私に稽古をつけてくれる間は2人ともこの家に泊まってくれ!もちろん食事も出す!いいですよね?お父様!!」
「あ、あぁ、構わない、がお前はそれでいいのか?」
「えぇ、冒険者登録と少しだけ依頼をさせていただければ構いませんよ」
「ふむ、冒険者になるのか。ならば指名依頼としてギルドに出しておこう」
「なるほど、その手があったか。では明日にでも登録してくる」
「では明後日に依頼を出してこよう」
こうして、俺の最初の依頼は冒険者登録する前に決まった。
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