最恐魔王の手さぐり建国ライフ!!〜政治に農業、時々戦争!?〜
第31話 ソウルリネーマー
「うう……」
光に飲み込まれ意識を失っていた俺は、体に付いた土をはたき落としながら身を起こす。
体のあちこちが痛むが重症ではなさそうだ。問題なく体は動く。
「そうだっ!! 舞衣さんは!?」
俺は光に飲まれる直前の事を思い出し、急いで辺りを見渡す。
周囲の光景は一変していた。
悪神の攻撃で巨大なクレーターが出来ており、その中心付近は熱がまだ残っているのか赤く光っている。
そして、その中心部から僅《わず》かながら魔力反応があった。
「まさか!! 舞衣さんっ!!」
一縷の望みをかけてクレーターの中心部へ走る。
幸運なことに悪神はこちらに興味を失くしたのかボーっとしていて動かない。
「舞衣さん!! 大丈夫ですかっ!?」
魔力反応のあった所へ駆け寄ると、少し地面が盛り上がっている。
俺は急いでその土を手で掘り起こす。
そこにあったのは。
「あぁ、ああああぁぁああぁあああああああああああああああああ!!!」
全身が黒く焼け焦げ、人の形をかろうじて残している彼女の姿だった。
「嘘だっ!! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!」
皮膚は火傷どころか炭化しており、特に手足の先端は炭化が酷く崩れてしまっている指もある。
顔もかろうじて口と思わしきところから「コヒューコヒュー」と空気が漏れる音がしているだけで目や鼻といったパーツは完全に判別出来無くなってしまっている。
もはや外見では彼女だと判別できる箇所はない。
しかし、感じられる魔力は確かに彼女のものだった。
「こんな、こんな事って……」
彼女の受けたダメージは甚大だ、人が耐えられるであろうダメージを遥かに超えているだろう。
そんな彼女がかろうじて生きている理由は一つしかない。
俺の渡した魔道具『災厄より守りし指輪』のせいだ。
こいつの強すぎる加護のせいで魂にすらダメージを与える神力にも舞衣さんは耐えてしまったのだ。
これがなければ舞衣さんは痛みを感じる間もなく消し飛ばされていただろう。
「守るつもりが苦しませてしまうなんて……」
悔やんでも悔やみきれない。
だけどその前にやることがある。
「特大回復《エクステンドヒール》!特大回復《エクステンドヒール》!特大回復《エクステンドヒール》!!」
舞衣さんの体を緑の光が包みこむが一向に回復する気配はない。
「くそっ! 普通の回復魔法じゃその場しのぎにもならないか!」
口より漏れる呼吸音もだんだん弱くなってきている。
時間はあまりない。
「だけど俺の使える魔法に神力に効果のあるモノはない……どうすれば……」
考えろ、考えるんだ。
彼女を失いたくない。彼女を救うためならどんな犠牲だって払う。
だから、彼女を救う力を俺にくれ!
「……ん!? これは!?」
俺は突如ポケットから熱を感じ、それを手でつかみ出してみる。
出てきたのは一本のペン。これは魔道具作成の素材として舞衣さんに渡されたものだ。
しかし、取り出したそれからは強烈な魔力を感じる。
「………まさか!! この方法なら……!!」
俺はこのペンの正体に思い当たり、彼女を救うただ一つの可能性を見つける。
それは可能性と呼ぶにはあまりにも分の悪い賭けだ。
だけど、彼女を救うためなら俺に迷いはない。
俺は左手で懐よりペンを強く握りしめ、もう片方の手で舞衣さんの頭に優しく手を置く。
「いくぞ! 共感覚全力発動!!」
俺の意識は右手を伝い舞衣さんの中に溶け込んでいった。
◇
気が付くと俺は不思議な空間にいた。
真っ白な世界にモニターがズラっと浮かんでおり、そこには舞衣さんが映っていた。
「これは、記憶?」
そこにはここ数日の舞衣さんが映っていた。
そしてそのモニター達ははるか先までまるで道のように並んでいた。
「どうやらあっちの様だな」
俺は遠くに目的のモノの気配を感じ取り、無数に並ぶモニターに沿ってそこに歩き始めた。
奥に進めば進むほど映像の舞衣さんは幼くなっていった。
どうやら陰陽師専門の学校に行ってたらしく友達と学校で魔法の練習をしているところがよく映った。
そして時々学生から告白される場面もあった。
舞衣さんは全部断っていたが。イエイ。
そして幼少のころの映像も過ぎると、とうとう行き止まりになる。
そして、そこにこそ俺の探していたモノがある。
人が生まれて最初に得るもの。
そう、名前だ。
「これは酷い……」
宙に浮き実体化した舞衣さんの名前は現実の体と同じく焼け焦げ、所々読みにくくなっている。
これをどうにかする。
名前と魂は密接に繋がっている。
名前が回復すれば現実の舞衣さんも回復するはずだ。
俺は左手に握ったペンを取り出す。
思えば一回不自然に魔力が抜けた感覚があった。
『お前が名前に縛られているならそれを変えてやる!』
それはケビンを引き留めようとした時だ。あの時無意識で作ってしまったのだろう。
その名も『魂の再命名』
読んで字のごとく、名前を変える魔道具だ。
しかしこの魔道具を使うにあたって一つ懸念点がある。
それは名前を変えてしまったら中身も別人に変わってしまうということだ。
存命出来たとしても別人に変えて意味はあるのだろうか。
分からない。
「だけど、それでも俺はあなたに生きていて欲しい!!」
ペンを横に振るうと舞衣さんの名前がカタカナに変換される。
改名後の名前に求められる条件は二つ。
舞衣さんの名前に元々ある文字を使う事。しかし損傷が酷いため使えるのは2~3文字。
そして、火のダメージを打ち消すため水を意味する単語にする事。
俺が選んだ言葉はイタリア語で『海』を表す言葉。
俺は舞衣さんの中からその言葉を作る文字を二つ選択して抜き取る。
そしてその言葉同士をペンを砕き、繋げる。
「さようなら……舞衣さん」
新しいその名を作ってしまえば礼堂院舞衣という名前はこの世から消えさる。当然、俺の記憶からもだ。
この選択が正しいかは分からない。
でも、彼女なら肩を叩きよくやったよと褒めてくれる。そんな気がした。
だから俺はやる。
後悔しない人生などないのだから、後悔するなら選んだ道でしたい。
「我が魔力を持ってここに名を新たに授ける! 目覚めよ『マーレ』!!」
水色の光に包まれ意識が覚醒する中、俺は肩を優しく叩かれた気がした。
光に飲み込まれ意識を失っていた俺は、体に付いた土をはたき落としながら身を起こす。
体のあちこちが痛むが重症ではなさそうだ。問題なく体は動く。
「そうだっ!! 舞衣さんは!?」
俺は光に飲まれる直前の事を思い出し、急いで辺りを見渡す。
周囲の光景は一変していた。
悪神の攻撃で巨大なクレーターが出来ており、その中心付近は熱がまだ残っているのか赤く光っている。
そして、その中心部から僅《わず》かながら魔力反応があった。
「まさか!! 舞衣さんっ!!」
一縷の望みをかけてクレーターの中心部へ走る。
幸運なことに悪神はこちらに興味を失くしたのかボーっとしていて動かない。
「舞衣さん!! 大丈夫ですかっ!?」
魔力反応のあった所へ駆け寄ると、少し地面が盛り上がっている。
俺は急いでその土を手で掘り起こす。
そこにあったのは。
「あぁ、ああああぁぁああぁあああああああああああああああああ!!!」
全身が黒く焼け焦げ、人の形をかろうじて残している彼女の姿だった。
「嘘だっ!! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!」
皮膚は火傷どころか炭化しており、特に手足の先端は炭化が酷く崩れてしまっている指もある。
顔もかろうじて口と思わしきところから「コヒューコヒュー」と空気が漏れる音がしているだけで目や鼻といったパーツは完全に判別出来無くなってしまっている。
もはや外見では彼女だと判別できる箇所はない。
しかし、感じられる魔力は確かに彼女のものだった。
「こんな、こんな事って……」
彼女の受けたダメージは甚大だ、人が耐えられるであろうダメージを遥かに超えているだろう。
そんな彼女がかろうじて生きている理由は一つしかない。
俺の渡した魔道具『災厄より守りし指輪』のせいだ。
こいつの強すぎる加護のせいで魂にすらダメージを与える神力にも舞衣さんは耐えてしまったのだ。
これがなければ舞衣さんは痛みを感じる間もなく消し飛ばされていただろう。
「守るつもりが苦しませてしまうなんて……」
悔やんでも悔やみきれない。
だけどその前にやることがある。
「特大回復《エクステンドヒール》!特大回復《エクステンドヒール》!特大回復《エクステンドヒール》!!」
舞衣さんの体を緑の光が包みこむが一向に回復する気配はない。
「くそっ! 普通の回復魔法じゃその場しのぎにもならないか!」
口より漏れる呼吸音もだんだん弱くなってきている。
時間はあまりない。
「だけど俺の使える魔法に神力に効果のあるモノはない……どうすれば……」
考えろ、考えるんだ。
彼女を失いたくない。彼女を救うためならどんな犠牲だって払う。
だから、彼女を救う力を俺にくれ!
「……ん!? これは!?」
俺は突如ポケットから熱を感じ、それを手でつかみ出してみる。
出てきたのは一本のペン。これは魔道具作成の素材として舞衣さんに渡されたものだ。
しかし、取り出したそれからは強烈な魔力を感じる。
「………まさか!! この方法なら……!!」
俺はこのペンの正体に思い当たり、彼女を救うただ一つの可能性を見つける。
それは可能性と呼ぶにはあまりにも分の悪い賭けだ。
だけど、彼女を救うためなら俺に迷いはない。
俺は左手で懐よりペンを強く握りしめ、もう片方の手で舞衣さんの頭に優しく手を置く。
「いくぞ! 共感覚全力発動!!」
俺の意識は右手を伝い舞衣さんの中に溶け込んでいった。
◇
気が付くと俺は不思議な空間にいた。
真っ白な世界にモニターがズラっと浮かんでおり、そこには舞衣さんが映っていた。
「これは、記憶?」
そこにはここ数日の舞衣さんが映っていた。
そしてそのモニター達ははるか先までまるで道のように並んでいた。
「どうやらあっちの様だな」
俺は遠くに目的のモノの気配を感じ取り、無数に並ぶモニターに沿ってそこに歩き始めた。
奥に進めば進むほど映像の舞衣さんは幼くなっていった。
どうやら陰陽師専門の学校に行ってたらしく友達と学校で魔法の練習をしているところがよく映った。
そして時々学生から告白される場面もあった。
舞衣さんは全部断っていたが。イエイ。
そして幼少のころの映像も過ぎると、とうとう行き止まりになる。
そして、そこにこそ俺の探していたモノがある。
人が生まれて最初に得るもの。
そう、名前だ。
「これは酷い……」
宙に浮き実体化した舞衣さんの名前は現実の体と同じく焼け焦げ、所々読みにくくなっている。
これをどうにかする。
名前と魂は密接に繋がっている。
名前が回復すれば現実の舞衣さんも回復するはずだ。
俺は左手に握ったペンを取り出す。
思えば一回不自然に魔力が抜けた感覚があった。
『お前が名前に縛られているならそれを変えてやる!』
それはケビンを引き留めようとした時だ。あの時無意識で作ってしまったのだろう。
その名も『魂の再命名』
読んで字のごとく、名前を変える魔道具だ。
しかしこの魔道具を使うにあたって一つ懸念点がある。
それは名前を変えてしまったら中身も別人に変わってしまうということだ。
存命出来たとしても別人に変えて意味はあるのだろうか。
分からない。
「だけど、それでも俺はあなたに生きていて欲しい!!」
ペンを横に振るうと舞衣さんの名前がカタカナに変換される。
改名後の名前に求められる条件は二つ。
舞衣さんの名前に元々ある文字を使う事。しかし損傷が酷いため使えるのは2~3文字。
そして、火のダメージを打ち消すため水を意味する単語にする事。
俺が選んだ言葉はイタリア語で『海』を表す言葉。
俺は舞衣さんの中からその言葉を作る文字を二つ選択して抜き取る。
そしてその言葉同士をペンを砕き、繋げる。
「さようなら……舞衣さん」
新しいその名を作ってしまえば礼堂院舞衣という名前はこの世から消えさる。当然、俺の記憶からもだ。
この選択が正しいかは分からない。
でも、彼女なら肩を叩きよくやったよと褒めてくれる。そんな気がした。
だから俺はやる。
後悔しない人生などないのだから、後悔するなら選んだ道でしたい。
「我が魔力を持ってここに名を新たに授ける! 目覚めよ『マーレ』!!」
水色の光に包まれ意識が覚醒する中、俺は肩を優しく叩かれた気がした。
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