最恐魔王の手さぐり建国ライフ!!〜政治に農業、時々戦争!?〜
第28話 G
「俺が怖い?」
「ええ」
意味が分からんぞ。
優しさだけが取り柄のような俺が怖いとはどういう了見だ。
「あなたは気づいてないでしょうが、魔道具を身に着けたことであなたはとても強くなられた。僕も少し怖いくらいにね」
「怖いって…………俺がそんなことしないってわかってるだろ」
「ええ、しかし理屈じゃないんですよ。こういうのは」
そんなもんか。
まあでもそのおかげで楽にここまで来られたならいいとするか。
「じゃあこのまま山頂まで行くとするか」
「ええ、ゴールは目前です。あと少しだけお願い致します」
ケビンは何か眩しいものを見る様に山頂を見やる。
この時、ケビンの表情の持つ意味に気づけていたら何かがかわったのだろうか。
俺たちの旅の終わりは、近い。
◇
道中も魔獣に襲われることはなく、俺たちは数時間で山頂までたどり着くことが出来た。
「こいつは凄い……!!」
山頂は異様な空気に包まれていた。
高すぎる魔力濃度のせいで過剰に魔力摂取してしまった魔獣の死体がそこかしこに転がっている。俺も流石にここまで濃いと呼吸が苦しく感じる。
「悪循環ね。魔力に惹かれた魔獣がここに来て死に、その魔獣の魔力がこの地に染み込み更に魔力濃度が上がる。このままにしては日本全土に悪影響が出かねないわ」
舞衣さんのいう事も最もだが、それだけではない。
火口から今まで感じた事がない程のとんでもない火の魔力を感じる。
少しでも刺激したら今にも噴火しそうだ。
俺と舞衣さんは警戒して辺りを見ていたが、ただ一人反応の違う者がいた。
「はは、はははははははは!! 凄い! 予想以上だ! これならいけるぞ!!」
「ケビン……!?」
突然タガが外れたかのように笑い出すケビン。
いったいどうしたってんだ?
「いやごめんなさいね、まさかここまで好条件だとは思わなかったんです。これで悲願が果たせます」
「的を得ない回答ね。はぐらかすつもり?」
殺気むき出しで舞衣さんが構える。
俺も嫌な予感を感じケビンに臨戦態勢をとる。
「僕は今まで嘘はついてないですよ。世界平和のためにここまで来たんです」
「この状況、平和とは程遠いと思うのだけど?」
「そうですね。だけどあるモノを呼び出すのにピッタリなんですよこの状況は」
「あるモノ……?」
「そう、神です」
「!?」
何を言ってるんだこいつは!?
そんなの呼び出してどうするってんだ!?
「絵空事ね。魔力濃度が濃いだけでそんな事が出来ると思ってるの?」
「魔力濃度《そんなもの》は数ある要因のひとつです。重要なのは火口に眠る膨大な火の魔力です。これさえあれば呼び出せる。」
ケビンは初めて見せる歪な笑顔でその名を告げる。
「悪神アンラ・マンユを」
「つっ――――――!?」
ケビンの言葉に驚愕のあまり目をむく舞衣さん。
そんなにやべえ奴なのかそのアンラなんとかってのは。
「そうか、だから火の魔力……!! 日本選んだのもそれが理由ってワケね」
「ええ、理解が早くて助かりますよ」
「え!? 俺にも分かるように言ってくださいよ!!」
魔法初心者の俺にはちんぷんかんぷんだ。
分かりやすく説明してくれ。
「ふふ、いいですよ。どうせもう止めることは出来ないのですから」
気が付けば火口を取り囲むように半透明のドーム状の壁が出来ていた。
俺と舞衣さんはその外側、ケビンは内側にいる。そのため壁を何とかしないと止められない。
「なめんな! こんな壁壊してやるよ!!」
「やめなさい!!」
「!?」
振り上げた拳を下ろそうとした瞬間、舞衣さんに制される。
その顔には焦燥の色が浮かんでおり、額には脂汗が垂れている。
「この壁はマズい。神力を感じるわ」
確かに普通の魔力とは何か違うと感じてはいたが、これが神力なのか。
ということは……!
「本当に神を降ろす気なのか!」
「さっきからそう言ってるじゃないですか」
ケビンはヤレヤレと首を振る。ぐぬぬ。
「話を戻すわ。悪神アンラ・マンユはゾロアスター教という宗教に登場する悪神の事よ」
「ゾロアスター教?」
聞いた事がないな。
「ええ、日本ではあまり聞かないかもしれないけど、世界最古の宗教とも言われている歴史のある宗教よ。火を神聖視していて拝火教《はいかきょう》とも言われているわ」
「拝火教……火の魔力……日本……そういうことか!」
点と点がつながる感覚。
思わず鳥肌が立ってしまう。
「そう、日《火》の本の国だなんて拝火教にピッタリでしょう? 言葉の力は魔法に大きく作用しますからね。そしてこの富士山は日本の中でも一際強い火の魔力を持っていたんです。僕は実は魔力大規模感染《マジカル・パンデミック》が起きる前からここに目をつけていました、なのでここに魔力溜まりが出来たと知ってからスムーズに事を進められました」
そう言いケビンは懐より何やら白い棒のような物を取り出す。
「これはゾロアスター教で厳重に保管されていた聖遺物でしてね、一説には開祖の遺骨と言われているものなんだ」
「…………マズいわね。ここまで材料を揃えられると流石に絵空事じゃ無くなって来たわね」
「……そして最後に僕が生贄になる」
「!? 馬鹿なことを言うな!! そんなことして何になる!!」
神を降ろすため死ぬ?
そこまでしてこいつは何がしたいんだ!?
「………僕はドイツでKevin・G・Barthと名乗っている。でも、それは真の名前ではないんです」
「どういうことだ……!?」
「僕の真の名はKevin・God・Birth。僕の一族は神を降ろすために作られた一族なんだ」
「ええ」
意味が分からんぞ。
優しさだけが取り柄のような俺が怖いとはどういう了見だ。
「あなたは気づいてないでしょうが、魔道具を身に着けたことであなたはとても強くなられた。僕も少し怖いくらいにね」
「怖いって…………俺がそんなことしないってわかってるだろ」
「ええ、しかし理屈じゃないんですよ。こういうのは」
そんなもんか。
まあでもそのおかげで楽にここまで来られたならいいとするか。
「じゃあこのまま山頂まで行くとするか」
「ええ、ゴールは目前です。あと少しだけお願い致します」
ケビンは何か眩しいものを見る様に山頂を見やる。
この時、ケビンの表情の持つ意味に気づけていたら何かがかわったのだろうか。
俺たちの旅の終わりは、近い。
◇
道中も魔獣に襲われることはなく、俺たちは数時間で山頂までたどり着くことが出来た。
「こいつは凄い……!!」
山頂は異様な空気に包まれていた。
高すぎる魔力濃度のせいで過剰に魔力摂取してしまった魔獣の死体がそこかしこに転がっている。俺も流石にここまで濃いと呼吸が苦しく感じる。
「悪循環ね。魔力に惹かれた魔獣がここに来て死に、その魔獣の魔力がこの地に染み込み更に魔力濃度が上がる。このままにしては日本全土に悪影響が出かねないわ」
舞衣さんのいう事も最もだが、それだけではない。
火口から今まで感じた事がない程のとんでもない火の魔力を感じる。
少しでも刺激したら今にも噴火しそうだ。
俺と舞衣さんは警戒して辺りを見ていたが、ただ一人反応の違う者がいた。
「はは、はははははははは!! 凄い! 予想以上だ! これならいけるぞ!!」
「ケビン……!?」
突然タガが外れたかのように笑い出すケビン。
いったいどうしたってんだ?
「いやごめんなさいね、まさかここまで好条件だとは思わなかったんです。これで悲願が果たせます」
「的を得ない回答ね。はぐらかすつもり?」
殺気むき出しで舞衣さんが構える。
俺も嫌な予感を感じケビンに臨戦態勢をとる。
「僕は今まで嘘はついてないですよ。世界平和のためにここまで来たんです」
「この状況、平和とは程遠いと思うのだけど?」
「そうですね。だけどあるモノを呼び出すのにピッタリなんですよこの状況は」
「あるモノ……?」
「そう、神です」
「!?」
何を言ってるんだこいつは!?
そんなの呼び出してどうするってんだ!?
「絵空事ね。魔力濃度が濃いだけでそんな事が出来ると思ってるの?」
「魔力濃度《そんなもの》は数ある要因のひとつです。重要なのは火口に眠る膨大な火の魔力です。これさえあれば呼び出せる。」
ケビンは初めて見せる歪な笑顔でその名を告げる。
「悪神アンラ・マンユを」
「つっ――――――!?」
ケビンの言葉に驚愕のあまり目をむく舞衣さん。
そんなにやべえ奴なのかそのアンラなんとかってのは。
「そうか、だから火の魔力……!! 日本選んだのもそれが理由ってワケね」
「ええ、理解が早くて助かりますよ」
「え!? 俺にも分かるように言ってくださいよ!!」
魔法初心者の俺にはちんぷんかんぷんだ。
分かりやすく説明してくれ。
「ふふ、いいですよ。どうせもう止めることは出来ないのですから」
気が付けば火口を取り囲むように半透明のドーム状の壁が出来ていた。
俺と舞衣さんはその外側、ケビンは内側にいる。そのため壁を何とかしないと止められない。
「なめんな! こんな壁壊してやるよ!!」
「やめなさい!!」
「!?」
振り上げた拳を下ろそうとした瞬間、舞衣さんに制される。
その顔には焦燥の色が浮かんでおり、額には脂汗が垂れている。
「この壁はマズい。神力を感じるわ」
確かに普通の魔力とは何か違うと感じてはいたが、これが神力なのか。
ということは……!
「本当に神を降ろす気なのか!」
「さっきからそう言ってるじゃないですか」
ケビンはヤレヤレと首を振る。ぐぬぬ。
「話を戻すわ。悪神アンラ・マンユはゾロアスター教という宗教に登場する悪神の事よ」
「ゾロアスター教?」
聞いた事がないな。
「ええ、日本ではあまり聞かないかもしれないけど、世界最古の宗教とも言われている歴史のある宗教よ。火を神聖視していて拝火教《はいかきょう》とも言われているわ」
「拝火教……火の魔力……日本……そういうことか!」
点と点がつながる感覚。
思わず鳥肌が立ってしまう。
「そう、日《火》の本の国だなんて拝火教にピッタリでしょう? 言葉の力は魔法に大きく作用しますからね。そしてこの富士山は日本の中でも一際強い火の魔力を持っていたんです。僕は実は魔力大規模感染《マジカル・パンデミック》が起きる前からここに目をつけていました、なのでここに魔力溜まりが出来たと知ってからスムーズに事を進められました」
そう言いケビンは懐より何やら白い棒のような物を取り出す。
「これはゾロアスター教で厳重に保管されていた聖遺物でしてね、一説には開祖の遺骨と言われているものなんだ」
「…………マズいわね。ここまで材料を揃えられると流石に絵空事じゃ無くなって来たわね」
「……そして最後に僕が生贄になる」
「!? 馬鹿なことを言うな!! そんなことして何になる!!」
神を降ろすため死ぬ?
そこまでしてこいつは何がしたいんだ!?
「………僕はドイツでKevin・G・Barthと名乗っている。でも、それは真の名前ではないんです」
「どういうことだ……!?」
「僕の真の名はKevin・God・Birth。僕の一族は神を降ろすために作られた一族なんだ」
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