シリ婚~俺の彼女はラブドール!?
23話 「親心」
「……久我君と繭さん後で娘について話がある」
古家さんの有無を言わせぬ雰囲気に俺と繭さんは従うしか無かった。
「さて、お前達悪いがお父さんは大切な話しをするから出てくれないか? 心春あとは頼んだよ」
「わかりましたわぁお父様、さあ、あなた達行くわよぉ」
心春さんは他の姉妹達を連れて部屋を出ていった。
……。
「はぁ、確かに僕は娘達を嫁に出すとは言ったけどねえ、本当に嫁に行かれるととても寂しいんだよ」
古家さんはそう言うと涙を流した。
「……」
俺は言葉がでなかった。
「あの、古家さんが夢見鳥達を販売中止にしたり尚且つ自主回収しようとしてたのはもしかしてお嫁さんに出したくなくなったからですか?」
「……その通りだよ繭さん、こんな私情を挟んで会社に命令を出した僕は社長として失格かもしれないけど父親として当然のことをしたと思ってる」
古家さんは涙を拭う。
「親父、何でそこまで人形のわたし達を気にかけるんだ?」
胡蝶が質問すると、古家さんは、ひと呼吸間を置いて語り始めた。
「胡蝶それはね僕が君達を愛してるからだよ、確かに最初は最高の商品ができたと思ったし動けるようにしたのも興味本意からだった」
「……」
「けど次第に本当の娘だと思えてね、この娘達と過ごしたい離れたくないと思ったよ……けどその感情に気づいた時には遅かったよ、胡蝶と夢見鳥、君達二人は買われて僕の側からいなくなってしまったからね」
夢見鳥ちゃんが古家さんに駆け寄り手を握る。
「――あの時夢見鳥もお父さんと離れるのは嫌だったけど今は繭と一緒で幸せだよ」
「そうかい夢見鳥、でもね女性同士は結婚できないんだよ」
「――え、そうなの?」
「それと胡蝶、君は久我君の妻と言ったがそれは本当かい?」
「本当だぜ親父、大我はわたしを死ぬまで可愛がると誓ったんだ」
あの時か!
俺は海から旅館に帰るとき確かに言った。
「そうなのかい? でも久我君は本心からそう言ったのかな?」
「……親父、何が言いたいんだ?」
何やら不穏な空気が流れる。
「僕はね君達二人が久我君と繭さんと暮らす事に反対だと言いたい、君達は人形だ人間と暮らすにはいずれ無理が出る」
「お父さん何で夢見鳥にそんな酷い事言うの!?」
「そうだ親父! それを言うなら人形と暮らしてる親父は何なんだ?」
古家さんに対して夢見鳥ちゃんと胡蝶が声を荒げる。
「僕は年を取ったしもう結婚する気はない、それに大勢いる娘達を養う余裕もある……僕が死んだら心春が跡を継ぐしその手配もすんでいる」
「それがどうしたって言うんだ親父!」
「分からないかい? 僕は後がないけど久我君と繭さんは若くて未来のある若者だ、これから先未来がある、けれどもしかしたら今後君達が彼等の障害になるかもしれない」
「な、あ……」
古家さんの言葉で胡蝶は言葉に詰まってしまう。
「待ってください古家さん、俺は胡蝶と居ることで別に障害なんありません!」
「そうです、私も夢見鳥とずっと一緒に暮らしたいと思ってます!」
俺と繭さんは古家さんに思いをぶつける。
「久我君、若さ故の過ちと言うものがある冷静に考えなさい、それに君は障害はないと言ったが今まで胡蝶と居て周りから偏見を感じなかったかね?」
「そ、それは……」
確かにここまでくるのに偏見の視線は感じたし正直嫌な気分になった。
「繭さんにも言えることだ君も夢見鳥といると苦労するはずだ……それに君は思いを寄せている人がいるね?」
「そんな苦労なんてしません! それに私は別に……思いを寄せてなんか……いません」
繭さんは俺をチラリと見たかと思うと直ぐにそっぽを向けた。
「繭さん?」
「……」
俺の呼び掛けるが繭さんは下を向いて黙ったままだった。
おかしい、何かとんでもないことに事態が向かっている。
そんな気がして俺は震えた。
「どうやら僕は余計な口出しをしてしまったみたいだね、だが久我君、君はもう一度自分の身の回りを見た方がいい、これは年寄りからの助言だと思ってくれ」
自分の身の回りを見る? 何をだ? 俺の回りには今は胡蝶がいる……それと……繭さんもいる。
「お、親父は……何がしたいんだ?」
胡蝶が声を震わせ尋ねる。
「僕はね胡蝶と夢見鳥、一度手放してしまった君達二人を引き取って再び僕の元へ戻したいんだ……勿論タダでとは言わないちゃんと返金には応じるよ」
「そ、そんなの認められません、俺は胡蝶と一緒にいると決めてます!」
当然だ、お金とかの問題ではない俺は胡蝶が好きなんだ。
「大我、お前……」
胡蝶は俺には熱い眼差しを向けてくる。
「私もです、夢見鳥は私の妹みたいなものでもう家族なんです!」
繭さんも俺と同じ気持ちで古家さんに思いを伝える。
「繭とずっと一緒にいるー!」
夢見鳥ちゃんは古家さんからの離れて繭さんに抱きつく。
「……はぁ、やはりそうなるよね僕は娘を売ってしまったんだからね」
古家さんはそう言うと項垂れてしまった。
「古家さん……」
古家さんは胡蝶達を手放したことを本当に後悔しているんだ。
娘と離ればなれになった父親とはどんな気持ちになるんだろう、それはきっと悲しいし、寂しい事だと思う。
俺は今の古家さんの姿を見て居たたまれなくなった。
「久我君、繭さんどうしよもなく我が儘なお願いだとは分かっている、だけど僕はまだ娘と話したいんだ……だからしばらくここで泊まって行ってくれないかね?」
古家さんは俺達に土下座する。
「そんな、古家さん頭をあげてください!」
「頼むよ! 僕はどうしても手放した娘達と暮らしたいんだ、少しの間だけでいいんだ、お願いだ!」
俺は胡蝶に目で合図をする。
「大我、私は構わない……それに私を造ってくれた恩があるから親孝行したい」
繭さんと夢見鳥ちゃんを見る。
「大我さん私は大丈夫ですよ」
「夢見鳥もお父さんにお礼する」
二人とも賛成のようだ。
「古家さんは分かりました、泊まって行きます胡蝶達に思う存分親孝行されてください」
俺の言葉を聞いて古家さんは泣き出した。
「……ありがとう……うう、本当にありがとう」
「親父、泣くな」
「お父さん泣かないで」
胡蝶と夢見鳥ちゃんの二人が古家さんに寄り添う。
「お前達、まだ僕のことを父親と思ってくれるんだね、酷いことを言ってすまなかった……うう」
古家さんは胡蝶と夢見鳥ちゃんを優しく抱き締め胡蝶達も古家さんを優しく抱き締め返した。
……。
しばらくして古家さんは落ち着いた。
「……客室に案内するよ、心春お客さまを部屋へ案内しなさい」
すると心春さんは外で待機していて呼ばれると直ぐに来て俺達を客室へ案内してくれた。
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