女神に毒殺されたら異世界でショタ魔法使いでした

奈楼小雪

第十八話 北部伯と南部伯






 私、サンダーは北部伯ジル・ド・レとして、南部へ援軍として来た。 今日は、南部伯爵と歓迎のパーティがあった。
 「今日のパーティーどうかね、ジル・ド・レ伯爵」 「歓迎いたみいる、ラ・クロワゼット伯爵」
 屋敷の屋上で、街の風景を見ながら、この男の人と話している。 なんか、不思議な人。掴みどころが無い、魔力の流れも何か、違和感が有る。 そして、疑問は確信へ、変わった。彼は私の耳元でこう囁いた。
 「へーメイドから伯爵へ化けるとは、やるねサンダーちゃん」 「なっつ!!」
 私は、男の胸に暗器を差した。だが、武器は手で押さえられた。 男は武器を下げながら、自分の糸目をカッと開けた。 左目は蒼く、右目は紅い魔導具だった。
 「まさか、貴方は傀儡人間パペットドール、マスターからは聞いていない」 「そうだね、僕は、君のマスターの姉上のプラントー様の傀儡人間パペットドール」 「魔族は、人族に関与しないのでは?」 「イァ、僕は、マスターのアバターさ、今は操作プレイされていない」 「どういう事?」
 彼は、自分を語り始める。 この彼は、昔は伯爵家の六男として生まれた。 六男といえば、どうでも良い存在。 そこで、彼は十四歳で冒険者デビューした。 冒険者として大成し、家族を見返してやろうと決めた。 だが、現実は甘くなく、彼は仲間に裏切られ、奴隷商に売られた。
 そして、奴隷の中でも魔法力が有る事を分かり、ドラゴ伯に売られた。 だが、性格に問題あり調査で判断され、売れ残った。 そして、ある人物が彼を買い取った。 その人物は、プラントー・レッドアイ。
 彼は、彼女に買われた。 そして、彼女は彼の経歴を全て話させ、ある提案をした。 【君の躰を使って、人族の世界で、冒険者をしてみたいんだ】 彼は、彼女の提案に乗ると、彼女は彼の躰を改造した。
 その日に、彼は、生まれ変わった。。 右目の赤い魔導の他にも、色々な機能を付けて貰った。 彼は、彼女に遠距離操作され、人族社会に戻った。 冒険者の基本は、魔獣のドラゴン退治という事で倒した。 次に、魔獣の氾濫から、王国の砦を守った。 そして、自分を裏切った奴らに、復讐をした。 更に、魔族や盗賊の退治を冒険者の仕事として行った。 結果、Sランクにまで上り詰めた。
 そして、国王と謁見が叶った。 彼は、自分が南部伯爵の六男で有る事、家族の不正を国王に報告した。 一家は全員処刑され、処刑は彼自身の手で行った。 やがて、彼は、国王の娘と結婚し、子供が生まれた。 地獄のどん底から、ハッピーエンドを迎えた。 気がついたら、南部伯爵の地位に立っていた。
 【取り敢えず、頑張ってハッピーエンドにしたよ、内政は任せた】
 頭にマスターの彼女プランターの声が聞こえ、操作プレイが切れた。 内政では、彼女プランターは、彼が必要な知識を得る為、奴隷情報網スレイブ・ネットワークに組み込んだ。 奴隷情報網スレイブ・ネットワークで私の上げるデータから入れ替わりは、分かったそうだ。 奴隷情報網スレイブ・ネットワークのお陰で、彼の領地は発展。 でも、自分が、内政向けの人間だったと、気がついたそうだ。 
 「私は、君と同じ様に、人間が嫌いだ。だから、人間を殺し合わせている」 「中々、良い趣味をしてますね」
 彼は、得た知識を内政で使った。 得た資金で、国外の反政府や組織に、資金を回し替りに資源を得た。 組織の多くが過激派で自爆テロ、女子供を誘拐し奴隷としている。 彼は、そういった子供達を買い、育て、各国政府へ奴隷兵と装備を高値で、売っている。 典型的なマッチポンプ。もしかしたら、私達より質が悪いのかもしれない。
 「今回の共和国の奴でも、合衆国側の駆逐艦トンキン号に、爆弾を仕掛け爆破した」 「成程、其れが開戦の原因ですか?どうやって?」 「Sランクの冒険者が久しぶりに、潜入し、仕掛けた」 「心は、どうでした」 「高鳴っり、ぴょんぴょんした」 「分かります」 「我が同志よ!」
 私と彼が握手をした。 同時に、共和国側へ新型魔導ミサイルという物が、山の所から発射された。 山を超えて、共和国の村や街に落ちていくのだろう。
 「私は南部伯としても、この戦争は、長期戦して欲しい」 「どうして、だい?」 「マルセル港の修復、前線へ行く合衆国兵士の通過、資金・人の流れは大量で利益が出る」 「あと、我が国は、まだ宣戦布告はしてませんもんね」 「その通り、国王陛下は、南部領内の通行は許可されたが、宣戦布告はしていない」 「まあ、横にドラゴ伯という魔族の領地が有る以上、下手に動いたら」 「五十年前の二の舞が起こると、二の足を踏んでいる」 「取り敢えずは、義勇軍として私が、参戦しよう」 「任せた」
 私は、夜空を眺めながら、グラスのワインを飲み干した。
***
 私は、部屋に戻り、サンバルテルミ民主主義人民共和国のジェノス上空へ転移した。 下では、爆撃機が低空飛行爆弾し、戦闘機が迎え撃ち、爆撃機を落とす。 街は炎で包まれ、人々は夜だというのに逃げ惑っている。
 教会の鐘楼に降り、戦闘を見てみる。 共和国兵士や市民達が武器を持ち、バリケードを作り、合衆国軍兵士と銃撃戦をしている。 中には、小さい少年まで、籠の中から手榴弾を出し投げ、抵抗をしている。
 夜なのに、血気盛んでだなーと思いながら、魔銃を出し、籠の中の手榴弾めがけ撃つ。 バリケードを揺らす大爆発が起き、少年は下半身を無くし、青白い顔をしている。
 バリケードが崩れた所へ、合衆国兵士達が大量の手榴弾を投げ、少年の目の前に落ちた。 バーンバリバリと大音響が起きると、少年の姿は消失し、焦げた肉に変わった。 市民や兵士達が、逃げ出そうとしている所へ、銃撃は行われ、彼等は全員蜂の巣にされた。
 中々、心地の良い悲鳴だ、と思いながら別な方を覗く。 別な方では、合衆国兵士マークのラックの前に、少女が飛び出し、少女が引かれ爆発が起きる。 トラックから投げ出された、兵士達。 それを、廃屋から出てきた市民達が、手に持ち、武器で襲い掛かる。 が、彼等を覆う様に、撃墜された爆撃機が落ち、仲間の兵士、市民達をも吹き飛ばす。
 何か、こみ上げる物が有り、口が開き、歌の様に、声が出る。
 【聞こえますか?お父様、お母様、この、レクイエムを!】
 お母様、お父様、私は今幸せです。 優しい、マスターに恵まれ、飢に苦しむ心配も有りません。 でも、私は人として生まれたのに、人を捨てました。 お母様が聞けば、嘆かれるのは、分かります。
 ですが、嘆か無いで下さい。
 私は、今、幸せです。 何故なら、この世界を良く出来るからです。 人族の進歩は、戦争で起こります。 サンバルテルミ民主主義人民共和国民の命を、人類の進歩の為の礎とします。
 私は、父と母の命で、生きながらえ、成長出来ました。  だから、私は、今度は人族に、恩返しをします。 皆さん、自分の命で、対価を払って下さい。
 此れは、私に取っては、小さな恩返しです。 ですが、人族に取って、大きな一歩です。
 【皆さん、ふるって、戦争に参加して下さい】
 語り終えると、目から水銀が流れていた。
 やがて、目を拭き、一蔑すると私は、転移して部屋に戻った。  

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