女神に毒殺されたら異世界でショタ魔法使いでした

奈楼小雪

第十二話 双子の始動

 


 「お帰り」 「旦那様、ただいまです!」 「旦那様、今日の出張販売で得た、お金置いときます」 「二人が来てから、ひっきりなしで出張販売の依頼が来ている」 「「これも、ご主人様のパンが美味しいからです」」 「イヤイヤ」
 こんにちは、サンダーです。ヒュマン国に入国してから、早二ヶ月。 妹のボルトと一緒に、パン屋で、仕事をしています。 パン屋の主人は元軍人、戦争で膝に矢を受け退役。 顔に刀傷を負い、山賊のリーダーみたいな顔でパン屋を開店しました。
 ですが、そんな顔では、客を呼び込めず、商売が上手くいく訳が、有りませんでした。 そこで、赤字解消の為に、可愛い店員を募集していました。
 ヒュマン国に来て、首都パリスの職業斡旋所に、貼られた紙を見つけて応募しました。 面接の結果、二人共仕事を得ることが出来ました。 毎日、色んな所へパンを出張販売し、利益を上げました。 人間なんて、ちょろいです。 少し、上目遣いで父性をくすぐる様にお願いをすれば、財布からホイホイお金を出してくれます。
 パンという物は庶民から貴族まで、必要不可欠な食材の一つで、美味しい物は皆、手に入れたがります。 この間は、王国の公爵家に、パンを納入しました。
 貴族というのは、実に面白い生き物です。 血縁と噂で成り立ったシステム社会で、互いに牽制と融通をしているのです。 そんな、貴族に奉公している人達は、ストレスが溜まり、回数を重ねる度に心を許し、私達に話をしてました。 自分の主人の愚痴から、他の貴族への不満等。 聞いて上げ、頷けば満足してくれてパンを買ってくれます。
 「今日は、上がっていいよ!これ、後で食べなよ!」 「「旦那様、ありがとうございます」」 
 気前の良い、パン屋の主人からパンを受け取り、部屋に戻りました。 
 「はーやってられないのです。ヤりたいな」 「まあ、待ちなさい。獲物は熟れた程、美味しいですわ」 「お姉ちゃん、でもパンも皆、美味しくない」 「まあ、そうですわね。でも、我々が美味しいと思う事は、無いですわ」 「マスターが舌に、分析サーチの魔法付与したから、舌が勝手に分析し脳に伝えちゃう」
 私達、二人はマスターによって、人造人間に生まれ変わった。 外観は、可愛らしさを生かしつつ、中身は化物見たいな性能。 まるで、羊の皮を被った狼。胃は文字通り、最強鋼オリハルコン。 五感は魔法が付与された魔導具で、脳に伝えられる。場合によっては、痛覚等を切ることも可能。 味覚も、舌に付いた魔導具の機能で、自分で判断する前に、美味しいと脳に伝えられる。
 妹は、パン屋の制服を脱ぎ、魔法でアイロンがけを始め、私にも手振りで脱ぐ様に、合図する。
 「そういえば、今日、面白い話を聞いたのです」 「そうなの?」 「二ヶ月後に、アエルフィンカ合衆国の大使と皇太子のアンリが、宮殿内の礁湖の間ラグーンで、会議があるのです」 「ターゲットが公式の場に出てくる……狙い目ね」 「そう思うのです」 「大量の爆薬が、必要ですね」 「そうなのです」 「帰りながら考えましょう」 「そうするのです」
 ハンガーに、妹にアイロンして貰った服を掛け私服に着替えた。 そして、旦那様に挨拶をすると家に戻る事にした。
***
   ――パン屋の仕込み場にて(店主視点)
 あの子達に付いて、聞く評判は何れも、非常に良い。 毎日、遅刻もせずパン屋に仕事に来てくれる。 だが、私の長年の艦が何か違和感を感じる。 賢く、可愛い、サンダーボルト姉妹シスターズに……
 何というか、完璧な人間パーフェクト・ヒューマンは、ああいうのをいうと、今までの経験から分かっている。 だが、違和感が有るのだ。 多くの俺が出会った人間は、【完璧な人間パーフェクト・ヒューマン】を自分で役を、作っていた。 あの二人は、何というか……造られた自動人形オートマタンの様な完璧な人間パーフェクト・ヒューマンという無機質な存在の様だ。
 私は、気分転換を兼ねて、二人を追いかけて見ることにした。
 二人は可愛らしい、赤と蒼のフリルの付いたワンピースの服を着、街の中を歩いている。 出店で、ハンカチを買ったり、買い食いをしたり。 顔見知りらしい、女性と買い物をし、少女らしい生活をしている。
 やがて、少女達は一軒の古びたアパートの中に入り、一室に明かりが付いた。
 なんだ、俺の思い過ごしか……と思いながら、家路へ戻る事にした。 視線を感じ、視線の先を見ると、暗がりにフードの人物が見え、俺が目を合わせると逃げ出した。 何奴!っと追いかけ様としたが、俺の膝は満足に動かず、諦めた。
 だが、ガラガラと音がし、音の方へ向かうとフードの人物が、壊れた壁の前で転がり、意識を失っていた。 どうやら、暗がりで段差に気が付かず、踏み外し壁にぶつかった様だ。
 俺は、そいつを拘束し、廃屋に引っ張っていき、フードを外すと知った顔が居た。 近くに有った、桶で水を汲み、そいつの顔に水を掛けると、ブルブルと震え、目を覚ました。
 「てめー、何しやがるんだ!てめーはレパン」 「お前こそ、何しているんだ!情報屋のジャベール」 「其れは、こっちのセリフだ!何故、あの子達を覗いていた」 「お前も、気になっているのか?もしかして、これか?」  「そんなんじゃない!で、お前は?場合によっては、また痛い目に合わすぞ!」
 小指を立てるジャベールの前で首を振り否定し、両手を鳴らし威嚇し、尋ねる。 ジャベールの話を纏めると、王国警備隊から彼女達に付いて、調査を依頼された。 依頼内容は、パンを配達する彼女達の調査。 理由は、多数の貴族の屋敷に出入りしている為。  現在は、怪しい所が無いか、調査している事。
 「で、どうだった?」 「ああ、怪しい所なんて、無かったぜ」 「綺麗な位に、何も無かっただろ?」 「そうだ、長年の勘だが、アレはヤバイ」 「お前もそう思うか?」 「ああ、あんな綺麗すぎる、人間居てたまるか!」 「そうなのか?」 「パリス市の政治・宗教の全てのイベントに、参加している」 「それが、何か問題でも?」 「それだけならな!だが、数回の出会いで、何時の間にか、上級貴族・枢機卿と話をしているんだぜ」 「ほぅ……」 「貴族と坊主は、何れも長い間掛けての信頼関係で成り立っている。新参には、見向きもしない」 「いくら、可愛いく、賢くてもな……」 「そうだ!だから、王国警備隊も何処かの国の工作員じゃないか、と疑っている」
 確かに、彼女達は完璧な人間だ。 だが、それだけで、彼女達を疑うのは時期尚早だと私は思った。
 「彼女達は、現在、私の店で、働いている。何か、おかしな事が有ったら、直ぐにお前に伝える」 「旦那、頼みましたよー、所で、旦那、この拘束を外して貰えませんか?」 「分かった、今離す」 「ありがとう、だんぐぃぃぃ……」
 ジャベールの首が、ポキッと音を立てた。 驚愕の顔をしたまま折れ、バランスを崩し倒れる。 目の前には、何時も店で出会う、金色の目が特徴的な少女の姿が見えた。 何時もの笑顔は無く、目が死んでいた。
 「ボルトちゃん?君が、どうしてこんな事を?」 「他人の事を心配する、暇は有るのです?」
 躰が浮き、息が苦しくなる。 首を締めているのは縄、縄の先には、八重歯から姉サンダーだと分かった。
 「うーん、完璧な人間を演じるのは、難しいのよねー疑われちゃったわ」 「そうなのです、サンダーお姉ちゃん、ハイ、箱なのです」 「ありがとう、ボルト。此れで、人間関係の問題で、人を殺し、自殺した退役軍人の出来上がり」 「私達、来週から伯爵家のメイドとして、お仕事しますのです。お給金の心配は、無いのです」 「だから、安心して逝ってね!あと、貴方のお店も今頃は、火事で凄いわ……燃やしたけど」
 朦朧とする、意識の中で私が最後に見たのは、二人の釣り上がった口角に、店の方から煙が上がっているのが見え……
*** 
 全く、興味心は猫を殺すというのに、人間という生き物は馬鹿ですね。
 「サンダーお姉ちゃん、この人間どうする?解体バラする?」 「そのまま、ぶら下げて置きなさい」 「分かったーのです」
 元パン屋の男は驚愕、諦め、そういった感情を孕んだ顔を浮かべ、糞尿を垂れ流している。 ああ、もっと、もっと殺したい、殺されるという恐怖の顔を見たい。 私達が、受けた苦しみ、悲しみ、痛みを全ての人族に、自由に平等に与えたい。 振り子の様に、ギシギシと音を立てる男の前で思わず、感情が発露し、濡れてしまった。
 「さて、ボルト、帰りましょうか?」 「そうだね、お姉ちゃん。明日は、引越しだね」 「楽しみだねー、今度の伯爵様はどう踊ってくださるかしら……」
 愚かで、馬鹿な男達の死体が、月光に照らされるのを眺め、私達は部屋へ戻る事にした。

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