女神に毒殺されたら異世界でショタ魔法使いでした

奈楼小雪

第十話 謁見と叙勲




 ステンドグラスから差し込む光は、玉座に座る皇帝の威厳の様に照らし、 天井からは、黄金の山羊のタペストリーが釣られ、シャンデリアは夏の太陽の如く煌き、 儀礼用の甲冑を着込んだ衛兵が、玉座の前に微動だにせず立っている。 私は、中世ヨーロッパの世界に、紛れこんでしまった様な感覚に囚われる。
 「代表、東郷空子とうごうくうこさん、秋山雅子あきやままさこさん此方へ」
 侍従が、彼女達の名前を呼ぶ。 二人は緊張した面持ちで、ぎこちなく呼ばれた所まで行った。 やがて、金髪碧眼に白い軍服に多数の勲章を、頭に王冠を付けた皇帝陛下は玉座から立ち上がり、侍従が書類を渡す。
 「ヤマト国、スカイ・フリート・ハイスクール、留学生艦クラス【三笠】。汝らが、先のジェット・ストリーム内での戦いにて、多数の空賊船を撃沈させた事を称え、鉄山羊アイアンゴート勲章を与える」
 二人の胸に、其々勲章を付けると拍手が生まれる。 普通なら、其処で終わり戻るが、皇帝陛下は玉座に戻らなかった。
 「チェイス・レッドアイ、そういえば、先程、耳に挟んだのだが、玄関前で記念撮影をしたと聞く、事実か?」 「事実で御座います。陛下のご気分を削がれましたら、平にご容赦くださいませ」 「何故、我も誘わぬ?」 「え……」 「我も、美しき乙女達と映りたかったぞ!」 「ですが、陛下には、乙女部隊ワルキューレという、麗しき乙女達がいらしゃるかと」 「美しい花だろうと毎日見てれば、飽きるわ!少しは異国の花に囲まれたいと思うわ!」 「失礼を十分承知で申し上げますが、陛下のお立場を考えて下さいませ、その様な事に、私から陛下をお呼びする事は不敬かと思われます」 「確かにそうだな……」
 皇帝陛下は、ポンと手を叩かれると従者に何事かを呟く。従者は、何処かに全力で走っていった。
 「チェイス・レッドアイ、鉄山羊アイアンゴート勲章は通常は、副賞として金貨十枚だったな」 「はい、陛下」 「今回から、異邦人が勲章を貰った場合は、追加で我とサイン入り写真権利を与える、筆記官、書いたか?」 「は、陛下書きしたためました」 「っという訳で、チェイス頼んだぞ」 「陛下、分かりましたが転写する紙が有りませんが……」
 バンと扉が開き、先程の従者が紙を持って来た。 陛下は紙を取られ、風の魔法を使い、私へ投げて寄越された。 紙は、只の紙では無かった。重要文章で、長期保管時に使用するオリハルコンをすり潰し、練って造られた特殊な紙であった。 全く、魔族歴で百年持つ仕様の物を使うなんて……っと思いなら私は皇帝陛下と少女達の方を向いた。
 「分かりました、撮ります」 「娘達よ、我が玉座の元へ来るが良い」
 少女達は乙女部隊ワルキューレの隊長のビアンカに促され、恐る恐る玉座の周りに座っている。 そこで、私はで皇帝陛下に意見した。
 「陛下、少女達がおっかなビックリ座っております。何か、リラックス出来る何か方法有りませんか?これだと良い笑顔を撮れません!」 「そうかーそうだな、良い考えがある」
 皇帝陛下が、パチンと指先を鳴らすと、天井から白い塊がポロポロと落ちて来た。 其れは、フワフワしており、黒い円らな瞳が覗いていた。 少女達も手に取り、撫で撫でしている。 正体は、ケサランパサラン、謎科不明科の生き物。 愛くるしさ帝国ナンバーワンの生き物。 特定の魔力を放出すると、何処からともなく現れる不思議な生き物。 最近では、共働きの子供の話相手や、心身療法等に使われている。
 「かわいーー」 「くすぐったいー」
 少女達の声がし、雰囲気が良くなった所で、私は写真を撮った。 紙に転写し侍従に渡し、皇帝陛下は受け取ると、一枚一枚に高速サインをし、侍従に返された。少女達は、侍従から写真を受け取ると嬉しそうにしていた。 叙勲式が終わり、少女達が部屋から出ていったが、ケサランパサランが、少女達から離れず服に、モサモサと大量のケサランパサランを付けていた。 私も、少女達が退席したのを見届け、部屋から出ようとすると、陛下に呼び止められた。
 「チェイス・レッドアイ、まだ、お主の叙勲は終わって居らぬぞ?」 「私は、受け取るような事などしておりませんが?」 「ほう、空賊の船を二十隻、イヤ、七十隻沈めた者が、何もしてないと言うのはオカシナ事よの?」 「私の様な、若輩者が、他の先輩に先立ち、叙勲を戴く事等、出来ませぬ」 「結果を出した者には、報奨を出す。其れが、我が帝国の主義である事は知っておろう?」 「はい、陛下」 「其れでは、先の戦果を称え、お主に黄金山羊ゴールド・ゴート勲章と西空軍元帥・対人族全権大使の権限を与える」 「え゛」
 私は、思わず変な声が出た。 黄金山羊ゴールド・ゴート勲章は、貰って嬉しい勲章だ。 だが、西空軍元帥・対人族全権大使の権限は、魔族歴三年前に皇帝陛下が人族と戦争開始時に、父に与えた称号だった。 つまり……戦争が起こるということ……。 私が、黙っていると陛下は話し始めた。
 「お主の事だから、この称号の意味は既に分かっておるだろう?」 「戦争が、始まるのですね」 「そうじゃ、だが今回は人族同士の戦いが、前哨戦」 「まずは、ヒュマン王国と南のサンバルテルミ民主主義人民共和国とでしょうか?」 「イヤ、同時じゃ、北はブリタニカ海賊王国、西からアエルフィンカ合衆国が攻撃、占領するつもりじゃ」  「ヒュマン王国を占領した後は、前線基地とし、魔族領のドラゴ領へ進撃すると」 「その通りじゃ、やる事は言わなくも分かるな」 「はい、陛下」
 陛下は、黄金山羊ゴールド・ゴート勲章、西のウェストと空軍のウィングのWが上下に合わさった西空軍元帥の勲章を私の胸に付けた。 私は、左足を床に付け右手を胸に付け、誓の言葉を言う。
 「全ては、皇帝陛下、皇国民の為に」 「後は、何か望みが有ったら言ってみよ!」 「ヤマト国の女子生徒達の艦、三笠が余りもボロボロで、可哀想です。出不精の姉に、改修する様、勅令でお与え下さい。負担は、我々が持ちます」 「分かった、その様に致すぞ!」
 私は、陛下に礼をし、謁見の間から出た。 廊下を歩きながら、自分に仕事を押し付けた姉に、意趣返しが出来たと喜んでいた。 だが、皇帝陛下の命を受けて姉が、あんなハッチャケタ物を造るとは、私は思わなかった。

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