女神に毒殺されたら異世界でショタ魔法使いでした

奈楼小雪

第六話 乙女達のお風呂場




 ――機艦アルファワン女子風呂の中にて(バルクホルン視点)
 ああ、いい湯だ…… 戦闘の後の風呂というのは、良いものだと思いながら、風呂に浸かっている。
 「まさちゃん、凄いねー、このお風呂」 「ええ、かん、くうちゃん、凄いです。帝国艦は、皆こんな感じなのかな?」 「いいや、この艦だけが特別さーー」 「「バルクホルン大尉、気が付かず、すみません」」 「敬礼はいらんよ、ここでは、私はただのお姉さんで頼むよー」 「「は、はい」」
 茶色の髪に青い瞳、黒い髪に赤い瞳の二人が、洗い場へ向かって行く。 二人は大きな目、長いまつげ、白くみずみずしい肌、巻いたタオルから見える鎖骨、艶やかな髪は我が帝国内でも美少女と言っても過言では無い。
 彼女達、スカイ・フリート・ハイスクールの生徒は、全員が女子、尚かつ美人。最初、会ったときは所詮、綺麗どころを集めた少女達の船と思っていた。 だが、同じ様に彼女達を侮り、喧嘩をふっかけた我が帝国空軍の若手兵士達の戦艦は、模擬戦で彼女たちにコテンパンにされた。
 その結果を漏れ聞いた皇帝陛下は彼女達を褒め、空軍元帥閣下を叱責された。
 彼女達の艦は三十人で運用され、大部分が自動化されている。そして、ヤマト国の艦は我が国の様に大型の戦艦という物は数隻しかない。 殆んどが、駆逐艦サイズで戦闘機を飛ばすための空母が存在しているとの事だった。
 あと、模擬戦で三百年前の直し直しの駆逐艦を高速で運用し、戦艦の死角に入る為に曲芸をし、模擬弾で殴り続けるという芸当をしてくれる彼女達の技術力は高い。 彼女達を見ていて思うのは、人族は寿命が短いからこそ研鑽を欠かさず日夜行い、次世代へ形なき知識を残す事で発展していく種族なのだ。 と思って居ると艦長の空子さんが来た。
 訂正しよう、彼女くうこでは無かった。伯爵の息子チェイスの副官の少女だった。
 「これ、チェイス様からです。確認して、サイン宜しくだそうです」
 書類を手に取り中身を見た。 【撃沈した空賊の船数、六隻。鉄山羊アイアンゴート勲章へ彼女達を推挙する】 書かれており、既に彼の名前と家の紋章の赤い瞳が書かれていた。
 「六隻?私が確認したのは、二隻だけど?」 「急上昇気流アッパー・バーストが発生した時に、後方の四隻の空賊の船は、操作を誤り浮力を失い、堕ちた」 彼女は、私に魔道具を使い映像を見せる。 其処には、艦首を上げていた四隻の空賊の船がマストをへし折られ、バランスを崩し、山肌に激突し転がり落ちていくのと対照に、上昇していく三笠の姿が有った。
 私は、彼女の持っていた筆を取ると自分の名前を記入した。
 「ありがとうございます」
 彼女は礼をすると去っていった。
 「うぁー凄い」 「本当だーでかいー」 「此れって、船ですわよね……」
 多数の少女達が、タオルを巻き現れた。タオル一枚の彼女達の姿は、理性が無い男共なら飛び掛ってしまいそうな脆い美しさを醸し出している。
 私が、理性あるドラキュラ族で良かったというか、私は筋肉ムキムキのヘラクレスヴァンパイア族が好みだ。アレは、先日の事の様に覚えている。 空軍士官学校時代に、男子ロッカーを間違えて開けたら、ヴァンパイア族の屈強な男達がパンツ一丁で、互いの精力を奪いあい、筋肉をぶつけ合い、組んず解れつしていた。
 鮮烈だった……戦闘訓練で、スランプ続きだった私には、光明に見えた。 火花を散らす、力強く美しい攻防。そして、彼のある言葉が私の頭に残った。 【ユー・ガット・ミー・ネバー】 私は、常にこの言葉とイメージを心に留め、多くの敵機の後部を掘った。 数多の戦場を駆け、気がついたら大尉の階級と空軍兵士の名誉象徴である機体コードネーム【ケツ掘りディグ・アス】を与えられた。
 戦闘終了後には、高ぶる感情の侭に、戦った戦闘機と私の戦闘機を男にして描き始めた。 段々、イチャイチャする絵を書き始めると周りから、【貴婦人】と呼ばれた。 上官が、私を指定したのも分かる気がする。 私が、【貴婦人】だから少女達の規範として大人を見せてやれという事なのだろう。
 「はぁーいい湯だねーまさちゃん」 「そうでうねーくうちゃん」
 仲良く湯船に入りながら艦長と副艦の少女は肩を合わせている。
 「艦長と副長が、あんなに近くによって……」 「百合の花が見えますわ……」 「長年付き添った、男と女房役と感じですわー」
 私は、二人を見つめる彼女達の邪魔をしないように風呂から出ることにした。

***
 そして、今、私はマッサージ機で寛いでいる。 本当に、至れり尽くせりという感じの艦である。
 それにしても、この艦アルファワンが建造から魔族歴で五年、人族歴で五百年も使われている物とは思えない。 さらに、我が帝国技術部が、最新と紹介している艦が、総合火力大会という国民の前の演習で、この艦にボコボコにされるのは、更に信じられない。
 古代文明の超兵器ロスト・テクノロジー・ウェポンを発掘したと噂もあるが、そんな物がポコポコ埋まっている訳が無い。 第一、形が違う、古代文明の船はこんな矢じりの様な形では無く、我が帝国の艦の様に、海を走っても違和感が無い形をしている。
 やがて、執事服を着たボーイが私に飲み物を持ってくる。ワインとしたい所だが、任務中の為に、トマトジュースを受け取る。 グラスのトマトジュースを揺らし、展望デッキから見える風景を見て楽しんでいると、傍の艦艇から発光信号が焚かれていた。
 【コ・ー・ド・ア・ル・フ・ァ・了・解】
 【コードアルファ】というのは【状況次第では、攻撃、徹底殲滅せよ】を意味している。
 グラスを落としそうなのを抑え、私は【コードアルファ】の対象を見ようとデッキの窓ガラスに寄ると遥か遠くに何かが見える。 何だろうとドラキュラの遠見で、見ると其処には星のマークに十字架が描かれた戦艦が見えた。
 星のマークに十字架は、海の向こうエルフ族と人族が建国した大国、アエルフィンカ合衆国。 我が帝国、イヤ、ドラゴ伯爵とは魔族歴で一年戦争、人族歴では百年戦争を人族歴で、三百年前にした国である。
 「こんな所に、アエルフィンカ合衆国の空軍艦隊が……ヒュマン国の同盟国だからか……」
 呟いていると、前衛の二艦が武装と魔法陣を展開させる。帝国空軍、十二管空部隊も陣形を整えて向かい合っている。 前衛の艦が、アエルフィンカ合衆国の艦隊に迫ると互いのシールドが衝突し閃光が走り、アエルフィンカ合衆国の艦隊が仰け反る様にしてバランスを崩しながら押し込められていく。
 大出力だけには定評が有る、精霊スピリットエンジンが負けるという信じられない光景を見ている……。 一体、この艦はどれだけの力が有る魔導マギエンジンを使っているのだろうか?っと思って居ると発光信号が焚かれた。
 【つ・ぎ・は・な・い】
 【て・き・い・は・な・い】
 相手からも発光信号で、返答された。両艦から連続し、発光信号が焚かれながら、バリバリとシールドが衝突する。
 内容としては、アエルフィンカ合衆国の艦は、ヒュマン国内側のジェットストリーム内で訓練をしていたが突発的な風により、伯爵領内の防空識別圏に入ってしまったそうだ。 此方は、了解した事と返電し、最後にある質問をした。
 「戦艦三、空母四、駆逐艦三十が貴国籍の艦で良いか?」 「そうだ」 「了解した、此れより、貴艦下に居る国籍不明不審船を撃沈する。敵意は無い、繰り返す敵意は無い」
 前衛の二艦から、多数の火を吹く矢が発射され、アエルフィンカ合衆国艦隊下に向かっていき爆発した。 爆炎が晴れ現れたのは、エイという平べったい形をしたという魚に似た船が、煙を上げながら三隻現れた。
 「どうやら、隠匿ハイドが使える、ノクターン精霊スピリットエンジンが使われている様です」
 発光信号がされ、魔法陣が展開されると三隻の艦は、光の光線に貫かれ爆発しながら高度を落としていく。
 「これで、この空域の安全は確保された、航海の検討を祈っている」 
 相手の艦隊は何も言わずにソロソロと後退を始めながら雲海の中へ消えて行った。
 全く、伯爵の息子チェイスは合衆国と戦争をする気なのかと私が思っていると、更衣室の方から少女達の声がし、展望デッキの天井が閉じられた。 成程、私に見せるためにこうしていたのか……と私は納得するし、少し温くなったトマトジュースを口に含み、再びマッサージ機に躰を委ねた。

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