女神に毒殺されたら異世界でショタ魔法使いでした

奈楼小雪

第二話 己とこの世界に付いて

 
 
 私は早起きし、朝日が昇るまで、少年の記憶を遡っている。
 私が、憑依した少年は、チェイス・レッドアイ。 銀髪ショートヘアに赤い瞳、端正な顔立ちをしている。 種族は魔族、男児、十歳。 魔族は人間の時間百年で、一歳と数える。つまり、私は千歳。
 記憶によると、この世界には魔法という物が有る。 全員が、魔法を使えるという訳では無い。使えるのは、千人に一人。 しかも、簡単な水を手から出したり、炎の弾を出せる程度の者が多い。
 人族では、魔族は全員が魔法を使い、人間を支配・殲滅する種族として書かれている。 魔族も全てが、魔法を使える訳では無い。 まして、人族を支配・殲滅する悪の種族でも無い。
 魔族は、人の姿をした者、異形の者まで多種類がいる。 多くは、他の種族と接触を嫌い自分達の世界に引き籠もっている。 さらに、優れた知識を持っている種族は、自ら他世界に渡る。
 そんな、魔族が人間を支配・殲滅しようと考えるだろうか? 答えはノーである。
 では、魔族は人を襲わないのか? 答えはノーである。
 魔族といっても、千差万別、良い奴や悪い奴も居る。 良い奴は、魔族の社会で定職に付き、普通に生を終える。 悪い奴や住所不定無職は、魔族の社会から飛び出し、人族の社会に逃げる。
 人族の社会で、適応し、成功する奴もいる。 だが、人族の社会に溶け込めず、悪の道に走り、退治される奴もいる。
 悪事が露見し、退治後に魔族と分かり、人から人へ、伝言ゲームの様に話が脚色され、物語が生まれる。 その【集大成】が、【勇者が悪魔を倒す英雄物語】。 魔族にとっては、【醜態成な物語】。
 意外にも、子供を持つ魔族には好評で、反面教師資料として扱われている。
 私の種族は、人型の種族。尻尾、牙、羽も生えていない。 そして、私、イヤ、この少年は、天才級の魔法使いだった様だ。
 曰く、【万能の天才】    【魔法に愛された少年】    【一万年に一度の逸材】
 そう書かれた、多数の新聞の切り抜きや、賞状が、棚に並んでいる。 その天才少年が、最後に行ったのが【召喚魔法】。
 人族のファンタジー小説では、召喚魔法のイメージはこうだ。
 「助けてください、来てください」 「来ました」 「ありがとう、助かりました。おかえりください」 「はい、帰ります」
 一期一会、お手軽インスタントフレンド的に、召喚魔法は書かれている。
 実際の召喚魔法は、もっと複雑で、恐ろしい。 星々の動き、対価の魔力量、召喚対象の絞込み。 この少年は、七歳から十歳、人族の時間で、三百年の時間を掛けた。 召喚魔法は、一期一会ではない。 永久に、術者と対象を縛る。呪いにも似た、魔法である。
 召喚魔法の真髄は、召喚した者を永久に使え、力が共有される。 つまり、強い物を召喚すれば強くなり、弱いものを召喚すれば弱くなる。
 この少年は、【更なる魔法の高み】を望んでいた。 だから、魔法の天才達が、死を超越した究極の姿、【リッチ・ロード】の召喚をした。
 少年は何処かで、計算を間違っていたのか……彼の記憶では、間違っていない、と太鼓判を押している。 結果は、私が彼の躰に憑依し、【リッチ・ロード(国土交通大臣)】が召喚された。
 それを成功というか、失敗というかは不明。 だが、私は与えられた知識と命で、また生きていこうと決意した。
***
 次に、一緒に召喚された【リッチ・ロード(国土交通大臣)】について。 リッチは、魔法の天才達が、死を超越し、集まった異界の住人。 リッチ界は、以下の5段階に分けられる。
 リッチ・総統プレジデント リッチ・枢機卿カーディナル リッチ・ロード リッチ・市民シティズン リッチ・道端浮浪者ロード
 人族で、リッチといえば、リッチ・ロードを想像する人が多い。
 人族に、迷惑を掛けるのは、卿のLordでは無く、道端浮浪者のRoadである。 【Lord】 と【Road】 人族では、発音の判別が難しい。だが、天才集団リッチ達にとっては、判別は雑作も無い事らしい。
 リッチ市民シティズンの直接投票で、リッチロードとリッチ総統プレジデントが選ばれる。 総統プレジデントは、各省庁の代表として、リッチ枢機卿カーディナルを指名する。
 なんて、民主的なリッチ界、と彼からこの内容を聞き思った。
 召喚されたリッチは、国土交通大臣で、周りから道路族ロードと呼ばれていた。 だから、【リッチ・ロード(国土交通大臣)】なのかと私は変に納得した。
***
 最後に、私が居る国は、メフィスト帝国。 【金髪の芝刈り機】と異名を持つ、ラインハルト・ゴールディ・メフィスト皇帝を頂点とした国家。
 この国は、優秀な者は、平民・貴族・人族・魔族だろうと取立てられる。 私の父は、人族のしがない男爵家の三男だった。 だが、皇帝直属リクルート部隊からヘッドハントされ、帝国へ移住した。
 その後は、能力と機会に恵まれ、皇帝の孫娘のタラン・レッドアイと結婚した。 その時に、父は人族から魔族に、種族が変わった。 現在は、人族と唯一の接点のドラゴ領辺境伯爵として、人族と魔族の出入りを管理・監視している。
 西隣には、ソンム川とマルヌ川を隔て、人族のヒュマン王国がある。 現国王は、ジャン・ルイ十四世。 前王、ジャン・ルイ十三世は、肥沃な大地と豊富な鉱山資源を狙い、ドラゴ伯爵領へ侵攻を計った。
 人族歴、五十年前の戦いは、【ソンム・マルヌ会戦】と呼ばれた。 人族は、凡そ300万の人的損害を出し大敗北。総大将、十三世は戦場で憤死。 魔族側は、新年に、餅を詰まらせた兵士1名が死んだだけ。それ以外は被害を受けなかった。
 ドラゴ伯領の兵士は志願制、全員が強靭な肉体と能力訓練を受けていた。 尚かつ、優れた魔法と魔導具の知識教育もされ、常備軍で忠誠心も士気も高かった。 ヒュマン国は、前線に、農民や奴隷を肉壁として配置し、後方に貴族達の混載部隊を置いた。 また、麦の収穫時期も相まり、士気はとても低かった。
 戦術面でも、ドラゴ領兵士は、事前に得られた情報から綿密な作戦を練り、指揮系統を立て行動した。 対して、ヒュマン国側は、貴族同士の功名心や縄張り争い、突撃や短絡的な無秩序な行動だった。
 当時、人族の歴史家達は、こう評している。 【ドラゴの一撃】 【悪魔に魂を売った男、ドラゴ】 【ソンム・マルヌの悪夢】
 一方、魔族の歴史家達は、こう評している。 【甘い、温い、ドラゴ】 【恩情を掛けた男、ドラゴ】 【ソンム・マルヌの手抜き】
 人族は、三百万の人的損害、魔族と組んだ人族の男を非難し恐れる評価。 魔族は、三百万の人的損害だけを与え、ヒュマン国へ逆侵攻しなかった、人族の男を非難する評価。
 皇帝は、人族の侵攻を封じた褒美として大量の金銀財宝を与えた。 そして、反攻しなかった罰として、伯爵領代々の当主が永久的に統治・発展を行うよう命じた。
 現在、私の伯爵家の子供は姉と男子の私のみ。男子が、家を継ぐ原則から、将来の伯爵に成る可能性が高い。 っと思っているとドアが、トントンと叩かれ、入るよう言い、ドアが開かれる。 そこには、リッチ・ロードが姿を表し、ニつの大袋を持っている。 一つは、何かモゴモゴ動いてる。

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