女神に毒殺されたら異世界でショタ魔法使いでした

奈楼小雪

第三話 拾い物と研究所

 

 リッチ・ロードが、持って来た袋。 片方には金銀財宝が、もう片方には、二人の美少女が顔を覗かせている。
 「これは、一体……何が有った?」 『ええ、お話ししましょう』
 リッチ・ロードの話では、散歩をしていると商人が盗賊に襲われていた。 商人を助け、盗賊を捕縛し、国境警備隊に引渡した。盗賊は、襲った商人が密入国した事を警備隊に話し、商人も捕まった。
 魔族領、人族領、密入国は重罪。資産没収の上、死刑。 法律でも、密入国者を捕縛時に、没収した資産の半分が貰える。
 商人の馬車には、奴隷が多数いた。リッチは、二人の少女を貰い受け、袋に詰めた。 その足で、盗賊の記憶に有った隠れ家に行き、財宝を見つけた。 法律では、盗賊の財宝は、捕縛者に権利が与えられる。
 「で、どうして?この子達を選んだの?」 『いい骨格、ですから』 「へ?」 『冗談!冗談ですってば!』
 リッチ・ロードは左手をヒラヒラさせた。
 曰く、魔法で、奴隷達の記憶と思考を見た時に、人族で人族への強い憎しみを持つ少女達に、興味を持った。 そして、魔族に負の感情を持つ奴隷より、人族を憎んでいる奴隷を貰った方が良い、と考えたそうだ。
 そして、リッチ・ロードは、私にカードを渡してきた。 このカードは、オストラと言われる物。 自分の名前や、犯罪などの賞罰が書かれている。
 【イリナ・奴隷、14歳、所有者:チェイス・レッドアイ】 【エヴァ・奴隷、14歳、所有者:チェイス・レッドアイ】
 少女達のオストラには表示されていた。
 「私が、奴隷の所有者に成ってる?」 『私のマスターが、貴方です。彼女達の所有権が、貴方に帰結するのは、当然の理です』 「分かった、ありがたく貰う。取り敢えず、彼女達と話をしてみよう」 私は、少女達に、袋から出る様にいった。
 袋から出てきた二人は、銀髪、蒼い瞳に端正な顔。汚れたワンピースの服を着。 白い肌の両手足に付いた鎖が、首輪に繋がり、動くたびにジャリジャリと音を立てる。 その様は、好事家ならきっと高い値段を付けるだろうと思った。
 「さて、君たち2人には、私の質問に誠実に、嘘偽り無く答えて貰う」 「「分かりました」」
 二人が、出てきたので、質問をすることにした。
***
 少女達の話を聞いたが、メチャ重い、うん重い。
 彼女達は双子で、ヒュマン王国の南部、サンバルテルミ民主主義人民共和国の出身。父親は、その国の政府高官だった。 少女達が10歳の時に、軍が起こしたクーデターで粛清され、死亡。母親と少女達は、逃亡を計るが、捕らえられ、政治犯教科収容所に送られた。
 収容所は、毎日、自分と同じ年齢・境遇の子達が虐待、殺される地獄だった。ある日、大規模な蜂起が起きた混乱に乗じ、母と三人で逃亡に成功した。 山奥に逃げた、四年目。四年目の春は、雪解けが遅かった。やがて、妹のイリナが、栄養失調で倒れた。 姉のエヴァが、母に包丁を渡し、自分を殺し、妹に食べさせる様、提案をした。 だが、母が持った、包丁はエヴァを貫く事無く、母を貫いた。
 母の最後の遺言は【私は兎だよ。妹を頼んだよ、エヴァ。愛しい娘たち。幸せに成ってね】で、あった。
 二人は、父を母を奪った国、そんな国を見ぬ振りをしていた、同族を恨んだ。 もし、私が同じ環境に置かれたら、間違えなく「復讐してやる!同じ様な苦しみを、人間共に!」と思うだろう。 そして、少女達は雪がなくなると、山を降りた。そして、魔族領へ奴隷を卸している商人を探し、自らを売った。
 うん、可愛い奴隷を得たと思ったら、魔族を利用し、人族に復讐を狙う者だった。彼女達を他の魔族に、売り飛ばす? 答えは、ノーだ。
 なぜなら、彼女達の事だから、売られた魔族に多分取り入る。そして、我が、伯爵家がまた、矢面に立つ事に成る。
 彼女達を助けて、人族の復讐に手を貸す? これも、答えはノーだ。
 復讐以外は、何も持っていない彼女達に、私や姉さんの持つ、最高の技術を教え、躰を作るのに、人族の時間で、何千年必要に成るか…… そして、何より魔族が関与したと思われたら、魔族への風評被害が生まれる。
 さて、魔族でも人族でも無く、高度な知的な文明を持ち、明らかに異なる系統の魔法・技術体系を持つのは…… ふと目をやると、リッチ・ロードの大きく空いた、目の穴と目が合った。
 「ねぇ、リッチ・ロード?質問が有ります」 『なんでしょう?マスター』 「彼女達を、魔族の技術を一切使わず、人族として、最強無敵の兵士にする方法ってある?」 『えーと有る事は有ります。ただし、人族の定義によります』 「どういう事?」 『人族とは、血が赤く、二足歩行、羽や角が生えず、胎内で子供を孕み育てる種族と、我々リッチは、定義してます』 「そうだね、魔族は青い血、二足や四足歩行、羽や角が生え、子供は体内で孕む者や卵で育てる種族」 『ええ、その通りです。人族として、最強にするなら先程の条件を満たす、必要が有ります』 「そうだ!リッチの技術で、人造人間って作れない?躰は鋼、武器を内部に持ち、潤滑剤は血、子を孕む機能がある」 『出来ますけど、大規模な設備が必要に成ります。大丈夫ですか?』 「多分、私の研究室なら大丈夫!」
 右手の薬指に、嵌めた指輪をリッチ・ロードに、見せた。
***
 白い壁、白い床の清潔な通路をリッチ・ロードと共に、歩いている。後から、奴隷の少女二人が歩くたびに、ギャリギャリと鎖が擦れる音を立てる。
 『転移魔法を使えるとは、流石です、所で此処は?』 「私と姉さんの研究所、ヒュマン王国との国境の山にある。マッターホルン魔法・魔導研究所」
 此処は、アルプス山脈、標高5000m。【角】を意味するマッターホルン山をくり抜き造られた、最先端の魔法・魔導技術開発をしている研究所。 ヒュマン国側の地元民は、【悪魔が住み着いている】と噂をしている。まあ、魔族が住んでいるので、あながち間違えでは無い。
 やがて、目の前の大きな扉が現れる。扉に、手を当て魔力を流す。 魔導具で、魔力パターンの一致が確認され、青ランプが付き「おかえりなさいませ、チェイス様」とノイズ混じりの声が聞こえ、扉が開く。
 中では、メイド服や執事服を着た少年少女達が、忙しそうに、仕事をしている。彼らの、髪や瞳の色は、金・銀・青・赤・黒、千差万別。 全員共通して、右目が赤く、首に奴隷の首輪を付けている。彼等は、ヒュマン国からの奴隷、ドラゴ伯爵領へ売られた子供達の一部。
 ヒュマン国は、戦後、三百万の兵士の死亡という多大な人的損害を受けた。 その多くが、農夫や奴隷で有り、農作物を育てる人材が居なくなった。 さらに、政治を回す貴族も多くが死に、ヒュマン国の経済活動は停滞し、国家は破綻した。
 父が反攻作戦を立てず、侵攻しなかったのは、こういった事情がある。
 弱った敵を攻め、村や街を占領するのは簡単。だが、統治と成ると話は別。 貧困や飢えからの蜂起や暴動の鎮圧、荒れた土地の土壌改良に掛かる費用が掛かる。 失敗したら、全て魔族の責任。私なら、正直やってられないと思う。 父も同じ様に考え、ヒュマン国との国境を封鎖し、難民の流入を防ぐだけにした。

 暫くして、ヒュマン国内の政治が安定し、荒れたインフラを直そうとした。 されど、ヒュマン国の国庫は、戦費で全て使い果たしていた。 父は、ジャン・ルイ十四世に「指定する、種類の奴隷を高値で買う」と提案をした
 父の領地は戦争で、被害を受けず、皇帝から金銀を褒美として受け取り、懐が暖かった。 父が、指定した奴隷は、【魔法が僅かでも使える、奴隷の十代の少年少女達】であった。
 一年間で凡そ千五百人、四十年間で六万人を買い付けた。 その資金で、ヒュマン国はインフラに資金を投入し、復興した。それにより、ジャン・ルイ十四世は、国家中興の名君と言われている。
 父の方は、仕入れた奴隷の少年少女達に、文字書き算盤の教育を施し出荷した。 父の領地から、出荷した奴隷達は、他の業者の奴隷と比べ、勤勉で優秀、顧客から好評だった。 奴隷達は、ある者は高位魔法を戦場で使い、他の者も様々な分野で功績を残した。 功績を残した奴隷達は、奴隷身分から解放され、魔族と結婚する者も増えた。
 だが、中には、高位魔法は使えるが躰・頭が弱い、性格がダメ、不器用、と出荷に適さない者達もいた。 そこで、姉が彼等を父から買い付けた。買われた奴隷達は、研究所で、肉体、精神を改造された。 改造された奴隷達は、全員が右目に赤い眼球型の魔道具が、埋め込まれている。 彼等は全員が、現在、研究所の労働者として働いている。
 彼等に手術をした本人は、巨大ディスプレイが置かれた机の前で、突っ伏している。 彼女こそ、私の姉、歳は25歳、プランター・ドラゴン。 私は、肩を揺らし、姉を起こす。 姉は、サラサラした金髪をかき揚げ、だるそうに顔を上げ、赤い瞳を私にむけた。
 「あら、チェイス、おはよう」
 言葉を掛け、横にいるリッチ・ロードと、奴隷の少女達を、見つめた。

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