グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第156話 中東部の活躍 後編

  ――2100年5月25日10時00分 中東部アラブ中東地域成層圏
 それは時間を遡る事、数時間前。 中東部部長はデウス・ウクス・マキーネ号格納庫内の一段高く為った所に立ち演説する。
 『
  諸君!今の中東アラブは石油の利権に溺れ安穏な生活を送っている  金持ち達は高級車に乗り、傭兵達が狩ったビーストを己が倒した様にSNSに乗せている。  これは命がけで獲物を狩った者へ対する冒涜である!
  また、貧しい者達へ施す為に喜捨ザカートなどもしているが、まやかしに過ぎない!  彼らが施したのは僅かな物で根本的な解決に成っていない!  富める者は冨み、貧しい物は貧しいままである。   そして、何より許せないのが国民全体が石油の利権に塗れやる気が無い点にある!
  実に!実に許しがたい事実である!
  我々のグンマーはどうか?  人々は老いも若きも日々、ビーストと戦う為に切磋琢磨している。  そこには何があるか?  そう、競争原理がある。
  競争原理と言っても相手を蹴落とすのは無く、互いに高め合う競争である。  皆により認められ必要とされたい!グンマーをより良くしたいという気持ちがある!
  では、我々は何故にグンマーでは無く中東に来ているか?  我々の世界を変える為に、世界を今一度洗濯するのだ!
  諸君はバタフライ効果を知っているだろうか?  ブラジルの蝶が羽ばたいただけで、アメリカで竜巻が起こるという物だ!
  ならばこそ、我々は我々の世界を変える為に行動を開始する!
  愚かな欺瞞に満ちた平和憲法の名の下に安穏としている愚か者達の目を覚まさせるのだ!

  往くぞ諸君!全ては世界に冠たる群馬の為に!                              』
 「「「「「グンマーの為に!!」」」」」」

 飛行装置を付けた少年少女達は敬礼をするとカタパルトに乗り射出される。

 ■  ■  ■
 ――2100年5月25日11時00分 アラブ連合支配地域
 一人の男がが砂漠の中をトラックで疾走している。 男の名前はアダム、情報局カンパニーの職員である。 米国がこんな砂漠まで来るのは、反米側の部族を取り込み自国側へ取り込む為だ。 交渉の為に現金、薬品、武器などを満載している。
 周りには民間軍事会社プライベートミリタリーの兵士達が囲んでいる。 彼らは何れも元米軍に所属していた猛者達である。 が、何れも問題行動を起こし不名誉除隊となった者でもある。 つまり、失っても痛くない人材を有効活用しているのだ。
 『あと、もう少しでつくか?』
 「サ―、もう少しで着きます」
 汗を拭きながらアダムは丘を越えると目の前に渓谷が見えてくる。 眼下には多数の遊牧民のテントや兵士達の姿が見える。
 『見えて来たぞ!交渉相手が案内人をよこす予定になっている』
 そう言いながら煙草に火を付けた時。 ヒュンっと音がし土埃が男達を襲い、同時にドン、ドンドンっと音がする。
 『な、なにがおきたんだ!』
 土煙が晴れた先には爆炎に包まれる渓谷があった。 辛うじて生きている人々が我先に逃げだろうとしている所へ再びドンっと音がし人々が吹き飛ぶ。
 アダムは超望遠機能付きサングラスで見上げると星条旗の機体が姿が確認できた。
 『何故だ!どうしてだ!』
 そう言っていまにもミサイルが再び渓谷を襲う。 結果として、誰も生き残る者は彼ら以外にはいなかった。

 上空では飛行装置を付けた何者かがメッセージを送っている。 【こちら、スターズ01。敵勢力を撃滅に成功】 これらのメッセージは世界中の各地で受信される事になる。
 ■  ■  ■
 ――2100年5月25日12時00分 地中海
 お昼、地中海には米国新第六艦隊がいる。 新という名がついているだけあって空中に浮いている艦隊である。 旗艦は双胴空中空母エンタ―プライズ。
 『今日も出撃は順調か?』
 「イェス、サ―!地上部隊における敵部隊との戦闘を我が艦は支援をしております」
 『ハハハ、この戦いもクリスマスまでには終えて帰れるだろうな!』
 そう言っていると突如としてブーブーっと警報が鳴りだす。
 『どうした?』
 「レーダーに感あり!敵味方識別装置I・F・Fに反応無し」
 展開された映像には、オレンジに赤丸に黒点が入ったエジプト空軍のMiG-35が表示される。 編隊では無く一機の様である。
 『早期警戒器は何をしている!迎撃しろ!』
 「ステレスの為に発見が遅れたかと、迎撃します!」
 艦橋内が騒がしくなり担当士官が迎撃用のミサイルを発射する。 空母から炎の矢が飛び出し向かってくるMiG-35へ飛んで行き尾翼に当たる。
 『よっしゃ!やったぞ!』
 「ま、まって下さい!敵!異常なし!外装武器ペルソナシールドの様です」
 「何だと!早く撃墜しろ!!」
 そう言っている間にもその機体は無傷でエンタ―プライズにマッハ3で接近。 多数のミサイルを発射する!
 双胴空母の良い点は多数の機体を同時に発艦させられる事である。 同時に広大な面積を持つ事は標的としても申し分無い事を意味する。 ダン、ダン、ドーンっと音と共に艦は揺れ、警報がジリジリと鳴りだす。
 『ダメージコントロール!』
 「すでにやっています!!」
 部下が吠えるが艦は高度を緩々と下げて行く。 彼らがアタフタしている間に襲撃した機体はあっと言う間に雲海に消えて行く。 ただ、その機体からは奇妙な暗号通信が送られる。
 【こちらタイル01、攻撃に成功!帰投する】
 この通信は米国諜報部によって傍受され解読される事になる。


 その機体はエジプトの基地に戻らずドンドン高度を上げて行く。 やがて、成層圏まで来ると機体の姿は無くなり飛行装置を背負った少女に変わる。 少女は成層圏に浮いている装甲飛行船に入って行く。
 『お疲れさん、君で最後だよ』
 「部長たら!大したことは無かったわよ」
 『お陰で世界は変わる!我々中東部アラブの勝利だ!』
 部長は両手を広げながら叫ぶ。 そんな時に内線で少年の声が聞こえる
 「部長!行き先を教えて下さい!」
 『取りあえず我々はスイスのベルンを目指せ!そこで宗教ジ―サス部と合流だ!』
 「分かりました」
 機体はゴゴゴっと音を立てて動き出す。 部長は閉まり始めたハッチからイナゴの置物を放り投げる。
 イナゴの置物は生き物の様に飛び始め各地に飛んでいく。 まるで、中東に火種を撒き散らす様に……。

「グンマー2100~群像の精器(マギウス)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く