グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第154話 エジプト記/スパイ達の暗躍


 ――2100年5月25日12時00分 エジプト・カイロ
 第六次中東戦争が勃発している中でカイロは唯一の中立都市である。 戦争の当事者国の首都が中立とは何故だろうか? それは、高度な政治的理由に起因する。 っというか欧米の勝手な理由にあるのだ。
 2010年代はシリアの内戦により、欧米に難民が流入。 多くが米国やフランス・イギリス・ドイツに流入した。 その結果……国内の治安は著しく悪化した。
 それは当然な流れとともいえる。 難民は自国の文化のみを優先し他国の文化を受け入れないからだ。 良くも悪くもグローバル化という名の下で多文化共栄が標榜されていた。
 そして、欧米の甘い考えに止めを刺したのは難民である。 2080年、彼らは己の国を難民先で立ち上げる運動を開始した。 決して亡命政府では無く、国家としてである。 結果として欧米各国で内戦の様な物が起きた。
 その時に起こったのが、動物愛護団体によるビースト開発と氾濫である。 ドイツは北海から迫るビーストに難民による暴動により崩壊した。 欧州の要たるドイツが崩壊しイタリア等も瞬く間にビーストに蹂躪された。
 これにより、欧米は建前の正義を殴り捨てて移民を中東へ強制送還した。 それの受け入れ先としてカイロが有る。 郊外には10万人程の難民達が都市の周りにテントを張り生活している。 もちろん食料援助等は国連が行っている。
 欧米を巻き込んだ戦争の中心国に援助を行うというは不思議な事である。 が、欧米からしてみれば難民が押し寄せて自国に流入するよりマシなのである。 それだけ異教徒の移民に対しては国民のアレルギーが酷いのである。
 さて、カイロ国際空港は従来の3倍までに拡張され国連等の各国の輸送機が離発着を行っている。 いずれも運んでいるのは米国のギャラクシー、露国のイリュ―シン、大漢民国の運20(Y-20)である。 そんな中で異彩を放っている機体が停止している。
 針の様な細い胴体、大型のデルタ翼、高出力の精神伝導メンタルトランスエンジン4機が特徴。 さらに。機体は着陸時には、独特の長い鼻が曲がり、金色に塗られている。 黒で淵が金で塗られている機体が太陽の下で輝いている。 討論ディベート部を乗せているダークコンドルである。
 「あれはどこの機体だ?」 「米国かサウジあたりの金持ちのプライベ―トジェットか?」 「こんな所に何の用があってきているんだ?」
 他の機体を整備している係り員達が口ぐちに言う。 そんな彼らを見ながら一人の男が機体を見て呟く。
 「日本、イヤ、グ、グンマー校……」 「ジャパンか?こんな機体が日本にあったのか?」 「オイ、誰か出て来たぞ!小さい子じゃないか?」
 言い合っている男達を横目に一人の機体整備員が持ち場を離れてて行く。 その整備員は付けていたメガネを触りながら降りて来た少女を確認する。 メガネは超遠距離でも顔を確認できるようになっており少女が何者かを照合する。
 【グンマー校所属、討論ディベート部、藤岡言葉ふじおかことのは
 男は急ぎ米国大使館へ連絡を入れる。 その情報は大使館から本国へ送られそこから各国へ情報が漏れだす。 各国は現地の諜報員に情報収集を命じ、彼らは行動を開始した。
 ◆  ◆  ◆
 本国から情報収集を命じられたその男は少女を追いかけている。 決して、少女を追いかける事案では無い。
 少女はカイロ市内の高級雑貨店に入って行く。 向かった先は女性物の下着コーナーだ。 流石の男はそこに行けず遠くから少女の様子を見ている。
 相手をしているのは、顔だけが見えるヒジャブを被っている女性だ。 少女は数点の下着を選び女性に包んでもらっている。
 (普通の買い物か?)
 男はそう思いながら少女の様子を見る。 女性から荷物を受け取り、嬉しそうに何かを呟き下着コーナを離れた。
 男が少女とすれ違った時、思わず男はギョッとした。 二ヤリと少女が男に向けて笑顔を向けたのだ。 ただの少女の笑みでは無く、まるで男を嘲け笑っている様だったのだ。
 (バレタのか?あの笑みは一体?)
 そう疑問に思いながら男は少女の尾行を始めようとしたが、突如背後から衝撃を受けた。 同時にズキンっと男の背中に痛みが走る。 背後を見ると先ほどまで少女と話していた女性が立っており手元にはハサミが握られている。 女性は神を讃える言葉を放ちながら男へ向けて両手で握ったハサミを振り下ろす。
 (糞、糞、何がどうしたんだ!)
 悪態をつきながら、男の意識はそこで途切れた。 その後、女性は周りの人間も襲い始め駆け付けた警官に射殺された。
 ◆  ◆  ◆
 少女、イヤ言葉ことのはっというと騒ぎの中で姿を消して今は路地裏に来ている。 先ほどまでの少女の姿は無く、中東系の男に姿を変えている。
 『なるほど、流石は浪漫部さんは良い物を造りますね』
 左手の指に付けた銀色の指輪が光っている。
 『でも、あの女の人も中々悪い事をしていたみたいだね』
 呟き右手に天秤を出し、通りに座っている男の肩を掴み話しかける。
 『悪い事をしているなら、異教徒を殺して己の罪を開放しないとね』
 水平を保っていた天秤が傾き、男はボゥっとした顔になり手元の銃を取り立ちあがる。  そして、男は路地裏からメインストリートの方へフラフラと出て行った。
 「流石、言葉ことのはさん。相変わらず性質たちが悪いですね」
 『そういう貴女も同じくらいに達が悪いじゃないですか?』
 振り向きながら答えた先には中東系の男が笑顔で立っている。 が、先ほど言葉《事のは》は貴女と言った。
 「我々、中東部アラブ地上支部は貴女を歓迎します」
 『では、例の場所まで案内してくれるかしら?』
 「勿論!手を拝借」
 『はい、宜しくね』
 傍から見れば2人の男が手を握った瞬間に姿は消え、周囲は爆風により吹き飛ばされた。 警察官達や消防車が駆け付けるが単なるテロと断定されそこに人物達も死んだ物とされた。 

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