グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第153話 中東の成層圏にて

  ――2100年5月25日09時00分 中東地域成層圏
 それは、ホワイトハウスに連絡が入る前の話し。
 『今日も下の世界は暑いですね』
 機体の窓ガラス見ながら少女は言う。 服は黒地に金色のスジが入り、スカートは可愛くピンク色。 灰色のショートヘアに蒼い瞳は小動物の様に可愛い。 彼女は討論ディベート部、部長の藤岡言葉ふじおかことのはである。
 「ようこそ、灼熱のカイロ戦線へ」
 『中東部アラブは何時もこんな所にいるのですか?』
 「まぁ、そうですね」
 黒髪に蒼い瞳の美少年は言う。 彼が所属するのはグンマー校の中東部アラブである。 中東部アラブの正式名称は中世・近代古今東西研究部という。 略して、中東部アラブと呼ばれているのだ。
 『で、貴方達の目的はこの地域を古き良き時代へ戻す事にあると』
 「ええ、我々は時代は繰り返すと仮定しています」
 『だから、手始めに100年を戻す事にしたのですね』
 「ええ、そうです。手始めに米国による中東の介入を行わせるのです」
 そう彼らの最初の目的は米国による中東介入を起こす事にあった。 歴史というのは常に勝者によって創られる物。 その時に何が起き人々がどのように思ったかは当時の人間のみが知っている。
 では、【正しい歴史】を知る為にはどうすれば良いかを中東部は答えを見出した。 【歴史を繰り返せばよい】っという事である。
 『何十、何百万と人が死ぬよ?それでも良いの?』
 「すでに、賽は投げられています」
 『我々、討論ディベート部は外交ですよ?戦争を防ぎ交渉を有利にする為にいるのよ』
 「ええ、貴方には是非とも交渉して貰いたい事があるのですよ」
 『秘密裏に運んだ大量の食糧とも関係があるのかしら?』
 「モチロンですよ、生きる物は食料無しに生きられない」
 そう言いながら少年は右手でイナゴの置物をテーブルに置く。 その生き物はまるで本物の様に動き始めテーブル上の果物を食べる。 暫くしてイナゴが震え十数匹に分裂する。
 「中東、イヤ世界で最も獰猛で食料を喰い荒らすのはイナゴなのですよ」
 『まさか……蝗害こうがいを起こすつもり』
 「その通りエグザクトリーです。多くの文明はイナゴにより消滅してきました」
 蝗害こうがいというのはトノサマバッタやイナゴによる被害の事をいう。 紀元前の大陸にあった殷という国の記録にも残されている程で多くの為政者達を悩ませる存在であった。 この2100年代ではこういった害は存在しなくっている。
 「我々は歴史を繰り返すのです、そして中東は飢餓で人々が苦しむ」
 『なるほど、我々は食料を援助して救世主として……ふざけないで貰いたい』
 「オヤ?反対ですか?近代文明が崩壊する所をこの目で見れるというのに!」
 少年は両手を顔の両手で上げながら信じられないという感じのジェスチャーをする。 一方の言葉ことのははジッと彼の方を見つめる。
 『ウラの言いたい事は分かりました』
 「ほぅ、お分かりになられましたか?」
 『ええ、貴方達は貨幣経済からこの地域を物々交換の時代にしたいようですね』
 「あはっつ、分かりましたね!」
 この中東は現在は第六次中東戦争中であり、基本通貨は米ドルである。 食料や武器、様々な物がドル建てで買われている。 が、ドルは本来なら中東に存在していなかった貨幣である。
 では昔はどうだったか? 金に胡椒、絹っといった価値を見出された物が物々交換されていた。 近代になり石油が発見されドルと石油取引によって貨幣経済が流入した。
 『で、私は国連分担金を現物で支払う様に交渉しろというのですね』
 「ええ、我々も我が校の園芸部が小麦と米を豊作を捌く仕事があるのです」
 『っというと凛書記からの依頼かしら?来年度の部費でもアップでも言われたのかしら?』
 「イエ、出来高制ですよ」
 少年は持っていたアタッシュケースを言葉に見せる。 中には金色の仮面が入っている。
 「闇市場に出回っている盗掘された物ですよ」
 『で、これをどうするの?』
 「これは、英国のとある博物館が保護●●してくれるそうです」
 『ものは良い様ですね、是非とも保護●●して貰って下さい』
 フフフっと言葉は笑うが目は笑っていない。 彼らがやっているのは、違法な美術品の売買である。 明らかな犯罪クロであり、外交という曖昧グレーな世界を好む彼女には許せない事である。
 「まぁ、怒りなさんな。これには訳があるのですよ」
 片手をパタパタふると少年は紙の束を言葉に渡す。 言葉は怪訝な顔をしながら書類をみていたが顔をパァッと輝かせる。
 「お気にいっていただきありがとうございます」
 『悪くは無いわ、交渉の材料としては良い物だわ』
 言葉が見ている書類には売られたリストと売主に金額書かれていたのだ。 売った先は欧米の個人資産家や博物館など多数に渡っている。 欧米は美術品の盗掘を非難しているがこれが建前である事が証明されたのだ。
 『では、私の仕事は下に行って仕事をしてくるわ』
 「お気をつけて良い旅を!」
 言葉は部屋から出ると自分の機体へ戻る。 戻ると同時に機体の扉が閉まり繋がっている廊下が外される。 同時に乗っっている機体のダークコンドルが高度を下げて行く。 逆に、繋がっていた装甲飛行船は逆に高度を上げて行く。
 『浪漫部が造ったデウス・ウクス・マキーネ号は大きいわね』
 っと言葉が呟く。
 デウス・ウクス・マキーネ号とは巨大な装甲飛行船である。 気嚢は精神鋼アイアンメンタル。 船体下部側面には、ミサイルの発射口や飛行部隊投下用のカタパルトが備えられている。 巡航高度は成層圏で最高速度はマッハ1、稼働距離は精神伝導メンタルトランスで無限である。 内部にはプラントがあり食料も自給自足でき5年間という長期の運用にも耐えている。
 『さて、我々もエジプトでやる事をやりますわよ』
 「ハイ、部長!我々も中東部アラブに負けていられません」
 言葉の横に居るのは、討論ディベート部の部員。 彼らもこの地で行うべき任務を行う為に派遣されたのだ。 そう言っている間にも機体はドンドン高度を下げカイロ国際空港に侵入を始める。 彼らの到来は中東地域・世界に波紋を与えて行く。

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