グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第151話 停滞する戦線 中編


 ――2100年5月24日 12時00分  グンマー校茶道室
 畳が敷かれ盆栽が置かれ、掛け軸が掛けられたザ・ワビサビ和室という感じの部屋。 和服を着た少年少女達がちゃぶ台の周りに座っている。
 「これより、浪漫部の円卓会議を始める」
 「副部長、これってちゃぶ台じゃ無いですかーー円卓じゃない!」
 整った顔の少年はちゃぶ台の端をなぞりながら言う。 どうやら円卓の会議といえば洋風のテーブルで話をするイメージだと思っている様だ。
 「うーん?これだとイマイチなのか……」
 「そうですよ!もっと円卓らしくして下さい」
 「分かったそうしよう!」
 副部長がタブレットを操作するザ・和室の壁が動き室内が小金色に変化する。 まさに、秀吉が愛したザ・ゴールデン・茶室である。
 「よし!豪華絢爛な円卓会議室になったぞ!」
 「ち、違うそうじゃ無いです!」
 慌てながら少年は言うが、副部長は理解して無い様で首を傾げる。 どうやら副部長は和テイストで好きなようだ。
 『全く、貴方は何時もそうね』
 「何奴!」
 障子の向こうから少女の声と同時に障子が引かれる。
 『余の顔を見忘れたか?』
 「こんな所に凛書記が居るわけが無い!凛書記の名を騙る偽物だ!出会えで会え」
 っと声を上げるが誰も出てこない。 一体何があったのだろう。
 「誰も出てこないだと!まさか……」
 『彼らなら、これを渡したら出でいったわ』
 少年に凛書記はある紙を渡す。
 「これは、本日限定の食券!」
 『お昼だし行っておいで―』
 「ありがとうございます」
 少年は嬉しそうに挨拶をすると部屋から小走りに去って行く。 姿が見えなくなると凛は障子を閉める。
 『さて、邪魔者は去ったし円卓会議を始めましょうか?』
 凛が言うとの同時に部屋が降りて行き2人の周りには黒い板が展開される。 いずれも【Sound ONLY】っと表示されている。 副部長は相変わらずちゃぶ台に座っている。
 『さて、浪漫部部長に副部長!戦線の状況はどうなっているかしら?』
 【R:Bucho】と表示された黒板モノリスから報告がされる。
 ~~浪漫部部長の報告~~
 明智平要塞における戦線は停滞している。 指揮系統を瑠奈ルナによって破壊した為である。 同時に、一大スポンサーであるルノワール社のセルバンテス・ゴ―ンを暗殺出来た事も大きい。
 また先日において凛書記が南関東のタワミ傘下の工業地域を破壊した影響もある。 調査の所では軍事物資の生産所の機器多数が全損、復旧には一年以上掛かる。 在日米軍及び自衛隊、南関東校はビーストとの戦いの為にグンマー校に構ってられない。
 ビーストはハマグリ型とそれを追ってきたラッコ型、クジラ型、イカ型と様々。 いずれも九十九里浜全域にて大規模な戦闘が行われている。 善戦はしているが、何れも我が校の漁業部と沿岸部が太平洋場で間引いた結果である。 これからも太平洋のおける漁業部と沿岸部の活躍が期待されている。
 現在のこれらの漁業部と沿岸部の狩ったビーストの保存場所は北海道である。 解体する場所としては申し分が無く、外気が絶対零度である為に保存にも問題が無い。 ただ、北海道を偵察に来たロシア機や大漢民国機、米国機が多数墜落している。 搭乗員等は全員が凍死しており、機体は調査後に全てを太平洋に廃棄している。 各国はこれらの件については知らず知らせいない為に秘匿しておく必要がある。
 ~~終了~~
 『関西連合は?』
 「あっちも物資を朱音副首席に喰われました」
 そう関西連合側は朱音副首席に襲われていたのだ。 多数の戦闘機や物資に鉄鉱石を全て喰われたのだ。
 「これにより、海外からの物資輸入量が増加しています」
 『まぁ、暴食グラトニ―の彼女はまだ足りてない様ですけどね』
 「ハイ、既に能登のビーストを喰らい長野方面の作戦へ参加しています」
 『あー諏訪にはデカイ蛙のビーストが居たわね』
 そう言いながら地図を展開させ諏訪湖の場所を拡大する。 ちょうど諏訪湖の付近までが赤い線で引かれている。
 『で、首都圏校の開放作戦は上手くいっているのかしら?』
 「ほまれ副首席が指揮を取っていますが偵察部隊の報告では富士山で苦労している様です」
 『はッツ?富士山?まだそこで苦労しているの!』
 「どうやら、親玉のビーストで苦労してる様です」
 映像には双頭の鷹や赤・青・黄色の三色のビースト化した茄子が暴れている光景が映る。 それを見て凛書記は思わず顔を顰める。
 「あれ、凛書記?綺麗な顔を歪めてどうかしました?」
 気が付いた副部長が声を上げる。
 『そもそも、浪漫部の情報では何もいないハズでは?』
 「あーそれなどのですが、先日逃げ出したそうです」
 『どこから?諏訪湖からって言わないでね』
 「その通りです、朱音副首席から逃げる様に逃げ出したそうです」
 ビースト茄子と双頭の鷹は諏訪湖に本来なら生息していた。 そこには多数のビースト化した蛙がおり彼らの餌場になっていたのだ。 が、そこに強大な食欲を持った殺気丸出しの朱音が現れたのだ。 彼らは安全な場所へ逃げ出したのだ。 その結果が富士山への逃亡である。
 『流石の誉副書記も苦労しているみたいですね』
 「まぁ、英雄君がいるから大丈夫では?」
 『鉄斎くんね、でもアレはまだ覚醒はしていないわ』
 「人で言う所の一皮剥けていないという奴ですね」
 『そうね』
 首都圏校は長野へ進撃する為には富士山を抜ける必要がある。 そこに、双頭の鷹と三匹の茄子が突如として現れた。 グンマー校のランクが高い者なら瞬殺でも首都圏は時間が掛かるのだ。 何故なら……。
 「10年前からの適合者フィッタ―不足が原因ですね」
 『彼らはまだ、完全に復活していないようね』
 「どうします?応援します?」
 『まぁ、良いわ。朱音さんに手助けを行う様に言っておきます』
 スマホを取りだし凛は朱音に電話をする。 画面越しに嬉しそう声で肯定的な声がでると通話が終わる。
 「了承された様ですね」
 『ええ、蛙肉には飽きた様ですね』
 「蛙肉も美味しいですけど」
 『まぁ、チキンの方が美味しいけどね』
 笑なら凛は答える。 朱音からしてみれば鷹と茄子なんて美味しい組み合わせにしかならないのだ。
 『次は中東アラブ戦線だけどどうなっている?』
 「それは、我々中東アラブが説明しましょう」
 【ARA:Bcho】と黒い板が説明を始める。
 ~~中東アラブ部長報告~~
 中東において第六次中東戦線は停滞している。 理由としては、米国及びイスラエル軍が市街地戦へ移行した為である。 制空権及び制海権は米軍と我が校が拮抗している。 地上においてはアラブ各国のゲリラ戦に米軍とイスラエル軍が苦労している。
 何故なら我が校の新聞部が【戦場のカメラマン】をしている為である。 彼らは世界が喜ぶ様な被写体を生産し記事を創り生産している。 何れも虚構フェイクでは無くリアルは戦争を映している。
 3年経ってもガザ地区の制圧が出来ずただ死体を積み重ねている。 が、本国のテロ等を鑑みると彼らは本気を出すと思われる
 ~~終了~~
 『ふーん?本格攻勢時には浪漫部部長どうする?』
 「そうですね……宗教《ジ―サス》部部長の力をお借り出来ませんかね?」
 『いいけどアレは危険よ?私が断言するわ』
 「勿論分かっておりますよ七剣者セブンソーダ―ズの危険性は」
 七剣セブンソーダ―ズというのはグンマー校で最も危険度が高い適合者《フィッタ―》の事をいう。 いずれも賢治首席に忠誠を誓う七人の少女達である。 彼女達は親衛隊と僕達GPUの共同組織の【首席近衛】を300人率いるメンバーである。
 朱音副首席、凛書記、彩華庶務、それに続くメンバーである。
 『そう、内村天使うちむらあんじぇちゃんを使うとはね』
 スクリーンには、薄緑ロングに翠色の瞳を持つ美少女が映る。 更に両手には対物ライフルを持っている。
 『ヴァチカンは喜ぶでしょうけどね……ウチの首席は喜ばないわね』
 不満そうな顔をしながら凛の声が辺りに響く。 それを知っているメンバーも反論をしない。 その後、彼らの会議は30分程ので終了するのであった。 

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