グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第150話 停滞する戦線 前篇


 ――2100年5月24日 12時30分 明智平要塞周辺
 「暇だお」
 『そうだな』
 塹壕の中で矢路一男やるかずお屋良凪男やらないおは話している。 5月8日の開戦から2週間、現在は戦線は停滞している。 攻撃が無いのでは無く攻撃が出来ないのである。
 「南関東の工業団地の電気製品が破壊されれたどうだお」
 『やったのは、グンマー校の凛書記だそうだ』
 先日の凛による稲妻攻撃は南関東一円の設備を破壊した。 機械という物はいずれもICチップが集まった基板によって動かされる。 これらは何れも電気に非常に弱いという側面を持つ。 もし、過電流が生じたらどうなるかというと……。
 「パソコンの中のデータが吹っ飛んだらしいだお」
 『ネラーからしてみれば悪夢だろうな』
 全ての電子データや機器が使用不能になる。  世間一般的にいうと電磁パルスの様な物である。 これにより南関東連合の工業団地は多大なる損害を被った。
 「被害額は5兆円程らしいだお」
 『まぁ、大本営発表だからなグンマー校の新聞だと20兆円規模だそうだ』
 そう言いながらヤラナイオは通称G新聞と言われるグンマー校の新聞を見せる。 グンマ校新聞部ジ―メディア部は、良い意味でも悪い意味でも世界的に有名な新聞部である。 その部のモットーは【事実は生産される】。 座右の銘は【人々へ真実を!】である。
 こんかいの被害を仕組んだのは、勿論彼らである。 今回の記事は【戦争の悲惨さ】を訴える為の記事を創る為である。 記事では明日からの会社が存続するかを不安視する市民の声が載せてある。 また、経済的な損害についても各社ごとに詳しく載せている。
 『特に酷いのはルノワール社だ、メインサーバが吹き飛んだらしいぞ』
 「どのくらい大変なことだお?」
 『研究開発データが吹き飛んだらしいぞ』
 「でも、フランス社にもデータが保存されているだろ?」
 『まぁ、これを見ろよ』
 ヤラナイオが指で示すのはG新聞の国際面の隅っこ。 そこには、【ルノワール社、開発部にハッカーの攻撃か?】っと書かれている。 紙面によるとロシアや大漢民国経由で何者からの攻撃があったのだ。 被害規模は不明だが、サーバー内のデータが消失したという関係筋の話が掲載されている。
 『恐らくは、凛書記がやったのだろうな』
 「凛って奴はそんなに出来るのだお?」
 『十年前、月基地や人工衛星、宇宙ステーションが破壊され、数千万人が死んだよな?」
 「教科書に載る位に有名な事実だお?」
 『やったのが、彼女っと言われている。証拠は無い』
 2人の間に長い沈黙が流れる。 【地球が停止した日ワールドストップ】とこの世界では言われている。 10年前の世界では月基地の原子炉がメルトダウンし人工衛星に宇宙ステーションが核で破壊された。 同時に世界中で経済・交通・インフラといった全てが停止し大暴動が起こった事件である。 月面基地や宇宙ステーション、地球において犠牲になった人名は2千万人と言われている。
 当時、犯人とされたのは七歳の少女で名前を妙義凛みょうぎりんという。 が、肝心な証拠は無かったのだ。 いずれも米国や大漢民国、ロシアの軍事チャンネルを通じて不思議な力ハッキングされていた。
 「だけど、事前にネットで申告していたってはなしだお」
 『ああそうだな』
 スマホを検索しとある映像を展開させる。 そこには金髪に金色の瞳の美少女が映り、こう言っている。 【グンマーを認めぬ物は不思議な力ハッキングで死ぬ事になる】。
 各国はこれらの発言を【少女の悪戯】として放置し無視した。 その結果が、【地球が停止した日ワールドストップ】である。 これ以後、日本政府・有志軍とグンマー校の戦いが始まったのである。
 『結果として日本、イヤ世界はグンマー校に負けたのだ』
 「無人機ドローンやも電子機器も使えない、使えるのは外装武器ペルソナってつんでるお」
 『確かにそうだな10年前の戦いは酷かった』
 当時の戦いは電子機器は一切が使用不能。 何故なら、電子機器は凛の制御化に全て置かれていたからである。 ミサイルを撃てば自艦に戻ってくる、無人機を放てば自軍を襲撃する。 有志連合は壊滅的な大損害を被り撤退していった。
 唯一対応できたのは、日米連合軍だけ。 彼らは精神波動メンタルウェーブエンジンを使った武器と外装武器ペルソナを使用していた。 そして、当時7歳台だった適合者《フィッタ―》達を参戦させたのだ。
 結果として、文字通り自衛隊及び在日米軍の戦力が消滅した。 極東における軍事バランスは崩壊し大漢民国が幅を利かせる様に見えた。 調子にのって日本の領海に入った、大漢民国は日本海でグンマー校に海軍及び空軍戦力を消滅させられた。 これにより、【亜細亜は平和化アジアンズピース】が生じた。
 『凛書記も恐ろしいが、一番恐ろしいのは朱音副首席だ』
 「なんでも焼いて殺す狂人ってきいているお」
 『隣国では妲己だっきの再来と言われている』
 「確かに、火が大好きだもんな」
 妲己だっきといえば古代いんで有名な悪女である。 何より炮烙ほうらくという猛火の中に人間を放り込むのを好んだとされている。 それを知っている大陸の人間からはそう言われている何より彼女は本気になると……。
 『あとは本気の朱音副首席は九の炎を纏う、九尾の狐の様に……』
 そう言いながら映像を見せる。 いずれも不鮮明な画像であるが、何れも赤い髪に瞳の美少女が映っている。 その少女の周りにはまるで躰から生えた様に赤い炎が纏わり着いている。 いずれも日本海と京都・東京で撮られた映像である。
 一つは大漢民国海軍と空軍との単身での戦いの映像である。 もう一つは京都と東京は関西連合と首都圏校首席との戦いの映像。 東京以外では朱音副首席の勝利であり、全てが灰塵と化している。
 『彼女に勝てるのは、乙姫首席と賢治首席だけ』
 朱音副首席は大漢民国海軍と空軍戦力を撃滅後に大漢民国を火の海にしようとした。 理由は【20億人もいるなら、19億くらい燃やしても良いよね?】っという理由である。 それは、賢治首席によって止められたが痴話喧嘩によって黄海が焼失し黄塩畑となった。
 『朱音副首席によって、先日は日光要塞の10万が全滅した』
 「照貴琉男できるおは無事で良かっただお」
 『そうだな、良く生きていたと思う』
 先日、日光要塞は焼け焦げた。 今回は焼失●●はしなかった。
 「でも、当分の間は隊員の補充は無いんだろう?」
 『そうだな、一か月、イヤ二カ月はムリだろうな』
 その通りである、物資に人員の不足。 他の地域からニートの隊員を動員するのにも時間が掛かる。
 「後は上で考えるだお!俺達は普通に行動していれば良いんだお」
 『そうだな、俺達は与えられた任務をこなすだけだ』
 そう言いながら2人は大空を見上げる。 太陽だけが明るく優しく2人を照らしていた。

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