グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第148話 国会にて


 ――2100年5月22日 09時30分 国会
 国会とは日本の議会であり「国権の最高機関」であり「国の唯一の立法機関」であった。 あったとは既に過去形となっているのだ。 現在、この国ではグンマー校と首都圏校を筆頭に地方分権が行われている。  特にグンマー校では完全に自県内で経済を循環させと自治を行い政府の圧力を受けていない。
 日本政府は何としても喰いこもうとしているが出来ていない。
 現政権は自由保守党で内閣総理大臣は阿倍野見玖須あべのみくす。 国難に至り一次は挙国一致の体制であったが、現在は平和に甘んじ分裂状況である。
 「阿倍首相は今回のグンマー、首都圏、NEO埼玉の平和条約を知っていたのですか?」
 襟を立てたスーツを着ている女性は民心党の村田議員である。 この村田議員、村田蓮華むらたれんげといい二重国籍疑惑を持たれている。
 『私は何も知らされていなかったのです!これは全て二校と一県で行われた物です』 「首相!首都圏校は我々東京側では無かったのですか!?」 『5年前の件で命を狙われた事で心変わりしたと先程、乙姫首席から連絡が有りました』 「首都圏首席の命を狙ったのですか?」
 首相の言葉に思わず村田議員以外の議員からもおおっと声が上がる。
 5年前の海ほたるで起きた事件は【グンマー校首席暗殺未遂事件】と呼ばれている。 結果として、南関東首席や側近が死亡。 米国は第七艦隊旗艦空母バラック・オバマ等を含むほぼ全ての艦を喪失。 自衛隊も対適合者トゥフィッター部隊や多数の艦艇を喪失。 極東アジアの情勢は一気に混沌の状態に陥った。
 当時の民心党内閣は僅か半年で総辞職。 関係者の多くが自ら命を絶っている為に事情はよく分かっていない。 一部では米国の強い圧力が有ったのでは無いかと言われている。
 その米国でもグンマー校と繋がっていたと思われる人物がいる。 現大統領にして、ゼネラル・エジソン社の元CEOのトーマス・エジソンである。 当時の大統領が共和党に対して民主党に所属していた人物である。
 当時の米国戦略は枯渇し始めた石油を求めてイスラエルの中東戦略に加担。 中東から石油利権を得て、イスラエルを軍事的に支援する。 これが新保守主義ネオコンの共和党が行っていた者。
 これに反対したのが民主党を支援するトーマス・エジソン。 移民や他民族による共栄の元によって成長するアメリカを唱えていた。 そこに新しい種族として加わったのが、適合者フィッタ―である。
 首席暗殺未遂から1年後には、イスラエルの【ソロモンの盾】が崩壊。 同時に第六次中東戦争が開始され中東情勢が悪化。 4年間で30万人以上の死傷者が出る最悪の戦いとなり国民の支持率は低下。 その他色々あり、結果として当時の大統領は辞任する事になった。
 選挙を行い、トーマス・エジソンが大統領に選ばれた。 その結果、米国は高度外装武器ハイペルソナとイタリア半島を手中に入れ活性化。 大統領の支持率は、95%とうなぎ昇りの状態である。 まさにアメリカ・アズ・ナンバーワンの時代が来ている。
 2016年代のドナルド・キング大統領の様に米国第一主義で国家を傾けたりはしていない。
 『そもそも、グンマー首席と首都圏首席の命を狙ったのは民心党でしたね』
 見事にブーメランが刺さる。 2100年になって名前を変えた民心党の伝家の宝刀は変わりが無い。
 「そ、それは当時の代表に問題があり我々の感知する事では無い」 『それで、国民が納得しますか?全てのきっかけは貴女方が撒いた種ですよ!』 「うっつ!」
 思わず言葉に詰まるがそこは政治屋、さらなる武器を投げる。
 「そもそも、閣下の孫さんが首都圏校の生徒に手を出したが原因では?」 『アレはグンマー校の生徒と聞いております』 「ふフンそうでしょうか?」
 そう言いながら拡大された資料を見せる。 何れも暴行を受けたとされた少女達の紙媒体で書かれた物である。 電子上ではグンマー校と改竄されているが、紙媒体では首都圏校の生徒と書かれている。 どうやら、凛書記は電子媒体は改竄出来るが紙媒体までは流石に改竄出来なかった様だ。
 『こ、これは』 「フン、乙姫首席はこういった経緯で見限ったのでは?」 『それは分かりませんが!今回の件と関係は無いでしょう!』
 ブーブーっと野党側からブーイングが発せられる。
 これは首相の言うとおりである。  これだけで首都圏校が見限る事は有り得ない。 色々な事の積み重ねで見限られたのだ。 一番が経済であり、技術である。
 「首相が政権を取られてから5年で税金は上がり、企業の移転が進んでいます」 『確かにそうですが、それは東京都と南関東の為なのです』 「今回の三県の300条の協定では税率を3%にし関税の撤廃に技術交流を行うそうです」
 左巻きやPTA関係者が大好きな夕日新聞を掲げる
 【グンマー校、NEO埼玉、首都圏校の関税を撤廃!】 【3県の税金を3%に下げる方向へ調整を開始!】 【グンマー校、首都圏校、NEO埼玉、高度外装武器ハイペルソナの技術交流を開始】
 これを受けてNEO埼玉と首都圏校内の日米企業の株価は上昇。 東京及び南関東系の企業株価は下落が始まっている。
 同時に東京及び南関東の中小企業の数十社が生産工場と本社を移動を発表。 移動先は、首都圏校地域の神奈川と静岡である。 元から有った首都圏校企業はグンマー校へ移動を始めている。
 その多くの企業がナノ、ピコ単位での手作業精度を持つ高度職人マイスターを要している。 何れも金で動く様な者で無く、頑固一徹という者達が多い。 そんな彼らを引きつけたのは、アト単位での精度要求。 漢字では刹那という単位で、10のマイナス十八乗の単位である。
 これらは、新型の精神炉マギウスリアクターの部品を造るのに必要。 現在は3Dプリンターで行っているが、精度の高さがネックになって来ているのだ。 そこで提案したのが高度外装武器ハイペルソナ技術交流である。
 技術交流という名の高度外装武器ハイペルソナ商売なのである。 高度職人マイスターはグンマー校内に造られた専用工業団地へ移動。 首都圏校の開いた穴には、南関東からグンマー校が引っこ抜いた企業を招致。 何れも大企業の下請けで部品等の値段を叩かれ続け疲弊した中小企業達である。
 必要な物を生産してくれれば移転費用等を全て出し適正価格で購入すると提案した。 困窮に困窮を重ねていた彼らは提案に飛び付きあっという間に移動を開始した。 南関東から移動を普通の方法で行うと妨害をされる可能性がある。
 そこで、NEO埼玉とグンマー校のGPUが協力して彼らを逃がしたのだ。 作戦名は千夜一社サウザントワンナイトで一日一社を目標に千社を夜逃げさせる。 3年間で実行されていた。
 これによって南関東から首都圏校に中小企業が集積される事になった。 南関東側は自動化オートマチックによって夜逃げした企業分を補っている。 東京の政治屋はこれらの事実を知らない。

 『我々も外務省と努力し外交に勤めて行きたいと思います』 「そんな悠長な事を言っていて良いんですか?グンマー校と南関東校の内戦も有ります」 『アレは日光安全保障局とタワミ人材派遣の業務であり内戦では有りません』 「なにをおっしゃるのですか!アレは戦争以外の何物も有りません」」
 グンマー校と南関東の戦いは内戦では無い。 っというのが政府の見解である。 日光安全保障局とタワミ人材派遣の足尾要塞を奪還するという業務なのだ。 グンマー校も100万人近いNEETを撃滅するという業務を行っている。 それを知らない彼らは喧々諤々の議論は続けていく。
 業務を依頼したのはどちらも同じ人物で、依頼を受けているのだ。 一体何者なのだろうか……次回それは明らかになる。

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