グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第136話 褌作戦


 ――2100年5月15日 09時00分 NEO中禅寺湖要塞
 スミス大将は朝から自室で盆栽を剪定している。 彼にとって盆栽は心の安定が欠かせない物なのである。 元スナイパーで第一線で数多くの人間を屠っていたのである。 スナイパーにとって心の安定は必須である。 盆栽を使ってトレーニングを日々行っているのだ。
 そんな彼の心を乱すのは……ある人物の出会いである。 10年のあの日、彼は総司令官を解任され後任と引き継いだ時だった。 目の前にいた後任の首が飛んだのだ。
 そこに立っていたのは黒目に黒髪に日本人の少年だった。 銃を構え彼に放った兵士達は一瞬にして塵に変わった。
 その時……少年は彼にこう言ったのである。
 「やっぱり戦うなら、有能な指揮官と戦いたいですね。無能は文字通り」
 転がっていた後任の頭をひょいと持ち上げて彼に渡した。 首から滴り落ちる後任の大量の血。
 「首にするファイアなのです。私は優秀な貴方と戦いたい」
 そう言うと少年は姿を消した。 幾度となく彼は解任され掛かったが、変わりの担当者が不慮の事故に会い死んだ。 その後、彼は継続して在日米軍日光部隊の総指揮官として指揮を取っているのだ。
 内外からの評価は高く、対ビースト戦における少ない兵士の犠牲者数は各国からも着目されている。 また、軍事方面以外にも経済等にも明るく近年はグンマー校との民間交流も行っている。 ただこれに関しては、日本政府及び南関東側から非難が上がっている。
 米国政府は米国の国利益を優先される限りは反対出来る物では無いと反論している。 近年の外装武器ペルソナ情報がグンマー校から米国のみに売られているのだ。 これらの情報は特定の軍と民間企業に譲渡され米国の核心的な利益になっている。
 そんな彼の何時もの日課を邪魔するノック音が扉からする。
 『入れ』
 入って来たのは、参謀長である。
 「閣下、民間軍事会社P・M・Cの英仏露部隊が移動を始めました」
 『確か、PKOで来ていた二個師団の計2万だよな……許可は出したが問題でも?』
 「彼らが抜けた事で対ビーストの備えが薄くなりました」
 『問題は無い、これを見たまえ』
 横に置かれていた黒地に金字で書かれた表紙の書類を渡す。 参謀長はパラパラと捲りながら驚愕の顔をする。
 「グンマー校部隊1000名が魚沼市を開放し、残りの1000名で長岡と新潟のビーストを殲滅中」
 すでにグンマー校は能登半島から反転、新潟に向かっていたのだ。 やる気があれば越境し日光へも向かう事が出来たのいうのに新潟へ向かったのである。
 『っという訳だビーストたちはグンマーの相手に忙しい』
 「英仏露を移動を許可したのは……」
 『そうだ、半数の5万を使い新潟を開放する。英仏露にはプロ市民の相手をして貰う』
 ふっと悪い笑顔を見せる。 新潟を開放し、色々とメンドクサイ連中である英仏露を片付ける。
 「ですが閣下?我々だけで管理運営するのは大変では?」
 『何と為のNEO埼玉・首都圏・グンマー校の平和条約だと思っているのかね』
 「まさか……首都圏とNEO埼玉も噛んでいるいると」
 『そうだ、グンマー校は能登で忙しいから首都圏とNEO埼玉、我々に任せる』
 ポカンっと参謀長は口を開ける。 常識的に言って有り得ない事だからである。 自分達が開放した所を我々に譲って去って行く信じられない事である。
 「何故に彼ら無償で我々に譲るのですか?」
 『無償?彼らは彼らの1年前の契約に則り行動したに過ぎない』
 「契約ですか?」
 『内容は私と大統領閣下のみ知っている。新潟への計画はこの計画書通りだ』
 「はっつ!」
 参謀長は書類を敬礼をすると部屋から出て行く。 さて、英仏露軍は一体どうしているのだろう。
 ■  ■  ■
 ――2100年5月15日 09時00分 華厳の滝
 上空には無数のヘリが飛び、地上には多数の戦車群が待機している。
 「それでは、秋山部長殿。我々が明智平を攻撃させていだだきます」
 『了承しよう、フランソワさん』
 トリコロール旗を肩に付けているのは、フランスから来た民間軍事会社P・M・Cである。 っというのは建前であり実際の所はフランス軍である。 背後には様々な政治的事情が絡んでいるが、元は米国とグンマー校の関係に割って入る為の方便である。 現在、外装武器ペルソナにおいて米国が世界をリードしている。
 各国からしてみれば【米国だけずるい】であるがグンマー校は相手にしていない。 国連で幾ら文句を言っても常任理事国であり世界の盟主である米国が拒否すれば話題に2度と上がらない。 まさに、米国版の【国連を相手にせず】である。 そこで何とかしてグンマーを槍玉に上げる為に、PKOとして戦闘・諜報に特化した部隊を送り込んだ。
 送りこまれてから数年立っているが未だに成果を全く上げていない。 本国からは何としてもグンマーとチャンネルを開けけと命令を受けたのだ。 そんな時に明智平要塞が何者かによって占領された。
 情報では全員が人民服を着たプロ市民……。 ネットでも人民を服を着た少年少女達が銃を持ち撃っているのが流されている。 何れも共産党を褒め讃えている事から大漢民国の仕業と思われた。 が……大漢民国はこれについて否定をしている。
 【我が国民が愛する人民服を着て仮装するとは許しがたい暴挙である】 【この様な事をするのは、狂った独裁国家であるグンマー校と思われる】 【我が国の人間より流暢な中国語を話していた事には適合者フィッタ―だからである】
 っという感じの事を記者会見でしている。 これに対して、グンマー校はというと……。
 【大漢民国の妄想・妄言であり受け入れる事は出来ない】 【大漢民国へグンマー校を侮辱した事へ誠実な謝罪と賠償を求める】 【大漢民国人より流暢なのは、軍人である為の核心的な事実である】
 どっちが本家だか分からない様な事を記者会見で言っている。
 米国政府は【日本国内の主権問題であり内政干渉はしない】っと言っている。 その為に、米国軍もまだ●●手出しをしてないのである。
 それを狙って来たのが彼らである。
 「それでは、全員準備をしたか!!」
 「「「ウラぁーーーー」」」
 ロシア人達が雄叫びの声を上げる。 彼らが載っているのはロシア製のT-14アルマーヌである。 上空にはエアバス・ヘリコプター製のティーガーHADが飛んでいる。
 「攻撃開始だ!!」
 フランソワ指揮官の声と共に一斉に砲撃が始まりヘリがミサイルを発射する。
 『照貴琉男できるお君、これでよかったのかい?』
 「ええ、使える駒が有るなら使うのが一番ですから」
 そう彼らはタワミの海外支店である民間軍事会社P・M・Cを使う事にしたのだ。 勿論、彼らの上司が彼らの国家である事は分かっている。
 「他人の力で戦う、【ふんどし作戦】で良いかと】
 『褌作戦か!気にいった』
 かくして褌作戦は作戦は開始された。 果たして彼らの作戦は上手くいくのだろうか?

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