グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第132話 崩壊グンマー包囲網


 ――2100年5月12日 18時00分 馬返し
 その悲報が馬返し側に報告されたのは、夕方になってからであった。 中禅寺湖側の展開部隊3万名が重軽傷……。
 第一いろは坂からは、多数の重軽傷者達がゾロゾロと車に乗っている。 いずれも白地に十字架の旗を付けている。
 『照貴琉男できるお君、中禅寺湖側は指揮系統が破壊され動きが取れないようだ』
 「その様ですね、やはり制空権を取られているのがキツイですね」
 『南関東連合は太平洋のビーストと米国のテロで身動きが取れない』
 「NEO中禅寺湖もNEO埼玉も現状は維持でしょうね」
 現在の日本及び世界中の情勢は悪化している。 ビーストの防衛に、中東からの移民にテロリストの暗躍。 先日は米国首都で、中東のテロリストが汚い爆弾ダーティボンブを爆発させた。  これにより米国は非常事態宣言をした。 世界中が米国の動きに注目をしている。
 「ネットの噂では、NEO中禅寺湖と埼玉からも航空部隊を派遣するとか」
 『眉つば物だな……彼らは練度が最も高いがPKOの仕事が有るだろうに』
 「ですが、もし彼らが同盟を結んだとしたら……」
 『そんな事は無い!首都圏とグンマー校、NEO埼玉は互いに水と油なんだから』
 フンっと鼻を鳴らしながら当然の事だと言う。  が、彼の予想は大きく外れる事になる。 それを告げた、情報収集員だった。
 「か、係長!大変ですグンマー、首都圏、NEO埼玉が平和同盟を結びました」
 『ど、どういう事だ!』
 「いま、映像に出します」
 映像には黒髪に黒目のグンマー首席、銀髪に赤い瞳の首都圏首席。 そして中央には、年配の白人男性であるジョン陸軍大将が映っている。 グンマー校、首都圏校、星条旗が壁に置かれている。 3人がそれぞれの手を握手するとフラッシュが焚かれる。
 場所はどうやらNEO埼玉の様で、ジョン大将がマイクの前に立ち記者会見をする様だ。
 ~~ジョン大将の演説~~
 先日、我が米国は多大なる損害を受け多くの人が犠牲を出した。 今回の件は中東の愚かなテロリストによって引き起こされた。
 かねてより、我々1州と2県は争いを止める為に平和的条約の締結を目指してた。 今回の件は、私は大統領から全権を任されており米国の利益になる。 また、首都圏とグンマー校が行う山梨の長野南部の開放は成功すると確信している。
 更に軍事的面では、陸軍と大統領、米国と協力的な関係を築けていく事が協定で結ばれた。 残念ながら、まだ他の軍と組織は信頼をされていない為に協定には含まれていない。 されど、今回の事を通じて互いの主権を認め、協力し信頼出来る事を願っている。
 ~~終了~~
 発表と同時に首都圏及びグンマー校、NEO埼玉に展開する企業の株価がピンと跳ね上がる。 さらに円とドルが互いに反発しあいながら、上昇を始める。
 世界中のニュースにテロップが乗る。
 【NEO埼玉と首都圏校、グンマー校が平和同盟を締結】:アメリカ 【美国と東京校がグンマーとの平和条約を締結、合衆国日本の誕生か】:大漢民国 【米国と東京校がグンマーとの平和条約を締結、対テロ戦に参加か?】:ロシア 【適合者フィッタ―が対テロ戦へ参戦か!】:フランス 【東日本国内勢力が一致団結!我が連合国も一致団結へ向かうのか?】:イギリス
 首都圏首席が聞いたら切れそうな表現が混ざっている。 首都圏校は静岡校と神奈川校が合併した学校。 正式名称は首都圏防衛メンタル校で略して首都圏校と呼ばれているだけなのだ。 乙姫ならこういうだろう、【首都圏校は決して東京では無い】。
 が、悲しいかな外人から見たら日本の首都といえば東京なのだ。 グンマー校は……10年前からのインパクトが有り過ぎてヤバイ所だと思われている。 同じ日本人を1000万人を消滅させたり、東京を空爆したり。 京都を七日七晩燃やし消滅させたり、北海道から沖縄まで10mの雪を降らせ日本を雪で埋めたり。 人外魔境アウトオブヒューマンの地だと認識されている。
 「これは不味いですね」
 『ああ、そうだな。西部戦線側が同盟を組んだ』
 「彼らはこれで全力で我々に対応が出来る」
 『政府は一体何をしているんだ!?』
 日本政府はこれを受けて緊急の記者会見を開いている。 【今回の同盟は我が国は聞いていない、遺憾の意を表明する】 っといつもの様に遺憾の意を表明している。
 日本政府は2県に、主権を認めている為に非難は出来るが否定は出来ない。 もし否定すれば、国家としての信頼を失う事になる。 なぜなら、2県が平和条約を結んだのは飼い主たる米国様なのだから。 文句を言って機嫌を損ねたら政権の首が文字通り変わってしまう。
 そんな政府の苦悩は彼らは知らない訳であり。 グンマーと首都圏が如何に苦労して信頼関係を築いたかも知らないのだ。 ここでは、どの様に苦労をしたかを省くが調整役の米国担当官多数が胃潰瘍で入院している。
 「もしNEO中禅寺湖がグンマーと手を組んでいたら……」
 『くだらない妄想はやめたまえ!我々は我々は……』
 思わず秋山係長の言葉が詰まる。 絶対にないとは言えないのである……。
 そもそも重要拠点の明智平要塞を取られたのに、米軍が行動を起こさないのがおかしいのだ。 まるで、自分達が彼らに支援を求めるのを待っている。 NEO埼玉とグンマー校が同盟を結んでNEO中禅寺湖が絡んでいない訳が無い。
 状況でみるならば、関東で東西に分かれた状況に陥っているのだ。 南関東連合及び東京の上層部が対グンマー戦争を前提としたグンマー校包囲網は崩壊した。 そんな迷いがある彼らの元に上層部から連絡が入る。
 「係長殿!日光要塞から新たな指示です」
 『こ、これはどういう事だ!』
 「どうされたのですか?」
 デキルオが覗き込むとそこには驚くべき事が書かれていた。
 ~~NEO日光司令部指示書~~
 1週間後大攻勢を掛ける、数にして50万人を動員する。 それまで、敵の砲弾等を消耗させる事。 また、華厳の滝所属の乃木のぎ部長、牟田口むたぐち課長。 つじ係長の死亡が確認された。
 現時点をもって秋山係長を部長代理。 照貴琉男できるおを課長代理に任命する。 奮闘を期待する。
 ~~終了~~
 華厳の滝部隊の壊滅……ここまで酷い事に絶句したのだ。 そして、秋山部長代理に任命されたという事は全ての責任を押し付けるという事。 自分達に責任が来ないように全てを押し付けたのだ。
 『くそったれ!照貴琉男できるお!奴ら俺達に全てをおっ被せる気だ!』
 「その様ですね……このままだとそうですね」
 『何か良い方法があるのか?』
 「少しお耳を拝借」
 照貴琉男できるおが秋山の耳元に話す。 最初は怪訝な顔をしていた秋山は納得した顔をして頷いた。 果たして、照貴琉男できるおは何を提案したのか?
 それは次回に明らかになる。

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