グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第128話 ゴア・ビル大佐の情報収集


 ――2100年5月11日10時00分 馬返し
 ゴア・ビル大佐は自室でサーフィンボードの上に乗り、クラシックを名一杯掛ける。 外では銃撃音や砲撃音が響いているの防ぐ為と盗聴防止の為である。
 『外装武器ペルソナ起動、パス【ロックンロール】。コール、ラビットガール』
 ザザザっと波の音がしサーフボードが青白く光り映像が展開される。 映像には銀髪に黒い瞳の猫耳少女が全裸で映っている。 ゴア・ビル大佐は思わず首を傾げている。
 『あー宇佐美であっているかな?裸のガールを見てしまったのだが?』
 「問題は無いわビル、私だから」
 『だが君は何時から姿を変えたのかい?』
 「ああ、本物の私はこっちにいるわ」
 兎耳のカチューシャに赤茶髪、兎の様に赤い瞳の美少女が白衣を着て座っている。 が赤い瞳は虚ろで、焦点が有っていない。
 『また操っているマリオンしているのかい?』
 「イイエ、私は彼女の中にいるのよ」
 そう言いながら、虚ろな瞳の顔を撫でキスをする。 兎耳少女はかくんと身体を動かし、猫耳少女は糸が切れたマリオネットの様に倒れる。
 『あいかわらず、悪趣味だな』
 「最初に比べたら、だいぶ自我を取り戻し始めたのよ」
 いつの間にか右手に持っていた手板マリオンをキッと引っ張る。 猫耳少女は糸に引っ張られる様に再び全裸の躰で立ちあがる。
 「アッ、アッハダカ、ハズカシイ」 「これを着ていなさい」
 宇佐美が白衣を猫耳少女に渡すと恥ずかしそうな顔をしながら羽織る。
 『君の言い分だとこの少女は自我が無かったのかい?』
 「イイエ、彼女は自らの精神を殻の中に閉じ込めたの」
 『何が有ったのかい?』
 「彼女達はこの間のポルノ事件の被害者なのよ」
 『なるほどね、君の専門である脳業デカルチャー部だな』
 そう彼女は、現役総理の孫が起こした【適合者《フィッタ―》凌辱事件】被害者を救出しているのだ。 いずれの少女達も激しい暴行を受け躰の傷は、健康増進装置ヘルスマシンで直されていた。 が、心と精神の傷は健康増進装置ヘルスマシンでは治せない。 少女達は度重なる暴行の恐怖から逃れる為に、自らの精神を閉ざしてしまった。 開放された少女達は、グンマー校に運ばれ脳業デカルチャー部によって覚醒させられているのだ。
 「それが、私が開発した精神メンタル介入インターべーション
 『なるほど、君が彼女の中に入るのか?』
 「そうよ、私が自分の精神を彼女の中に入るの」
 『悪魔だな』
 「医学の進歩と言って欲しいわ」
 皆さんは、日本神話の天岩戸伝説をご存じだろうか? 分かり易くいうと閉じこもった天照さんを引っ張り出したという話である。 ここで話題になるのは、スサノオという暴君の所業。 だが、忘れてならないのは天手力雄神アメノタヂカラオという力持ち。
 彼は空いた隙間から馬鹿力で天照さまを引き出したのだ。 そのお陰で今の世界はお日様が出ているのだ。 そう、閉じこもった引きこもりは馬鹿力で出すしか無いのだ。 ただ神話を参考にするには、少しだけ引きこもった精神の周りで騒ぐ必要がある。 その為に宇佐美は彼女の精神内に入って、身体を操っていたのだ。
 一人の躰に二つの精神が入る。 躰はざわめく訳で、引き籠っていた精神は気になって殻から出て見る。 そこを宇佐美は欠かさず引きずりだして精神を覚醒させるのだ。
 「で、女の子の裸を見た変態さんは何か御用かしら?」
 『わたしは少女に興味は無いな、私はグラマラスで熟女好きだ』
 「ああそうね、ジブラルタルで会った時もそうだったわね。で用事は何?」
 『ストレートに言うと君達が仕組んだ明智平要塞の件について教えて欲しい』
 先ほどまで、にこやかに話していた宇佐美の顔が曇る。  どうやら、宇佐美は余り話したくない様だ。
 「貴方にはあの時の恩は有るけど話せないわ」
 『理由は?』
 「自分の命が大切だからよ!あの女は能力で、世界中の通信を傍受しているわ」
 『この会話もかい?』
 「ええ、話したら能力で人格が消されリセットされかねないから話せないわ」
 『君が言うのだからそうか、わかった』
 「では、切るわ。また、連絡してね」
 少女はウィンクをすると通信が切れた。 ゴア・ビル大佐は何も得られなかったとため息を吐いた時、通信回線が開かれた。
 『おぅ!?』
 彼の外装武器ペルソナは発信はするが、基本は受信しない。 それが突如として開かれた為に、大佐は驚いたのだ。
 「あら、こんにちはゴア・ビル大佐。私は妙義凛みょうぎりん
 金髪に金色の瞳を笑わせながら手を振る。
 『一体君は何者で、私の外装武器ペルソナにどうやって接続したのだ』
 「先ほど宇佐美が言っていたあの女よ、どうやってかは不思議な力ハッキングしたのよ」
 『なるほど、どうやら私に何か言いたい事があるみたいだな』
 「彼女が言っている事は嘘でないわ、彼女は正直者よ」
 『その証拠は?』
 「ここに丁度良い被験体がいるわ」
 映像をずらすと両手足を手錠で押さえられ、猿轡を填められた女性が台の上にいる。 先週に、NEO埼玉から連れられて来られた脳神経権威でブレナン博士であった。
 「彼女は禁止したのに、外部と何度も接触を試みので心から会心させるの」
 『な、なにをするんだ?』
 「ねぇ、知っている人間の躰の反応とか記憶って電気信号で出来るのだよ」
 そう言いながら、凛はブレナン博士の頭を掴む。 バチバチと音をさせ閃光が光り、暫く痙攣をした後に博士はぐったりとする。
 「よし、これで彼女の頭の中は研究に集中できる」
 『貴様は一体なにをした!』
 「米国ステイツへの愛国心を消して、研究への愛に上書きして上げたの」
 大佐は絶句する……これが年頃の少女がする事なのかと……。 はっきり言って悪魔のする事ではないかと……。
 「まぁ、倫理的な事は良いわ!貴方は直ぐにも米国から戻る様に指示があるわ」
 『私は顧問であり、状況を本国に報告する様に言われているのが?』
 「良い事教えてあげます、これが何か分かるかしら?」
 中洲の中に、四本の冷却塔が立ち米国人なら誰でも知っている原子力発電所が映る。福島、チェルノブイリに続く有名原発のスリーマイル島発電所である。
 「ここのシステムを不思議な力ハッキングしてメルトダウンさせる準備をした」
 別な映像が映る。 ニュースレポータが緊張した顔で声を上ずらせ原稿を読んでいる。 人々が乗った車が原発から離れる為に、大渋滞を起こしている。
 『貴様!我が国に宣戦布告するつもりか!?』
 「攻撃しても良いわ!ちなみに攻撃源は廃墟の三沢基地の梯子エシュロンよ?」
 『要求は何だ!政府には言ったのだろう?』
 「原子炉の上でサーフィンしてみたいでしょ?」
 ブンっとサーフボード型の外装武器ペルソナが唸りガタガタ動く。 予期しない事に思わず大佐はヨロケて降りる。
 「メルトダウンを防ぐには、外装武器ペルソナを向こうで起動する必要があるわ」
 『そういう事か……貴様は私の事が邪魔なのだな』
 「ええ、優秀な人間は私の計画において障害でしか無い」
 『貴様は一体何者なのだ!』
 「ただのグンマー校の書記であり、グンマー県を愛する愛国者パトリオッツよ!ではまた」
 勝手に通話が切られ部屋の中が静寂に包まれる。 数時間後、彼は急ぎNEO中禅寺湖から本国へ帰国する事になる。

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