グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第125話 適合者VS人造人間達★


 ――2100年5月10日10時00分  華厳の滝
 装甲車から降り立った5人の男女達。
 「はぁ、硝煙に血の匂い最高」 「そうだな、これこそ戦場」
 彼らの目の前には、骸と化した隊員達が転がっている。 銃撃音と砲撃と同時に、隊員達は銃を撃ちながら雄叫びが上げ突撃していく。 敵の塹壕に接近する前に、濃厚な銃雨に撃たれ全員が戦死する。
 なんという第一次世界大戦の塹壕戦、命の投げ捨て。 っと思うだろうが敵の弾数を減らし、尚且つ陣地を奪うのは歩兵の役目なのである。
 「やろうども行くぞ!」
 ごつい躰の黒人がいう。 まるで現役のラグビー選手の様に、厳つい肩パットをしている。 肩パットでは無く外装武器ペルソナである。 スイッチを押すとブンっと音がし全面にシールドが展開される。 彼ら5人が山を登って行くと塹壕から砲撃がされ、シールドに当たる。 120mm砲も発射され着弾するが周りを破壊するだけで、彼らにはダメージが無かった。
 「こんなんなんなら制圧も簡単そうだね」 「そうだと良いな!」
 言い合っているとヒューンっと風を引き裂く音がする。 ドーンっと音がし、シールドを切り裂き彼らの中央に着弾する。 爆発はせず、だた土煙が周りに立ちこめる。
 土煙が晴れ距離を取った5人の目の前には、直方体の物が立っている。  幅400×奥行500×高さ1750mmのそれは掃除用ロッカーである。 ガランと扉が開き中からは、人民服を着た美少女が姿を見せる。 茶色のドリルヘアに、紫色の瞳。 創られた様な美しさは、適合者フィッタ―である事が分かる。
 <a href="//19656.mitemin.net/i247210/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i247210/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a> 
 『皆さん、ニイハオ。ここは、中華人民国の核心的領土アルね帰るアル』
 巻き舌で訛った日本語でいう。 この子はまさか中華人民国の適合者フィッタ―なのだろうか? 少女の言葉に反応したのは、ごつい躰の黒人。
 「嬢ちゃん?随分と中華人民国所属にしたい様だな?」
 『あ、はいアルね。私は愛国心無罪な中華人民国が大好きアル』
 「ならば、俺も愛国心無罪だな」
 そう言いながら、その巨漢から信じられない動きで右手を出し少女に飛んでいく。 少女は男の右手を左手で掴み、ロッカーを右手で掴み男の眼前に向ける。
 『ロッカーって便利アル、爆発するアル、我が国5千年の名物爆発アル』
 男の眼前でロッカーが爆発し男の頭が吹き飛ぶ。 巨漢がダンっと大地に音を立てて大地に叩き付けられる。
 『資本主義の犬が偉大な共産主義に勝てる分けないアルね』
 「貴様!良くもロックを!」
 『ロックというアルね!まさに路傍の石アルね』
 東洋人の男が右手に付けていた鋏を展開させた時。 ドグシャっと音がし男が立っていた所が血に染まる。
 『五千年の歴史の重しを知るが良いアルね』
 「ホンダ!!」
 『残り3人掛かって来るが良いアルね』
 が3人は少女に飛び掛かってくる事はしない。 一度に2人を倒す様な人間に真正面から当たる気は無いのだ。
 『じゃ、行かないならこっちから行くアルね!』
 少女は両手にロッカーを持ち横にする。 ロッカーの天井部には9個の穴が存在していた。
 『フリーガハマー発射―アル』
 9個の穴から煙が出ると同時にミサイルが発射される。 動きに着いてけない3人の元へミサイルは飛んで行き爆発する。 爆風が少女髪の毛を撫で、爆煙が辺りを覆う。
 『やったかしら?』
 煙が晴れるとそこには3人の姿は無かった。 姿形するら無くなる程に吹き飛んでしまったのか?
 「「「貰った、わよ!!」」」
 3人は爆風を使って上に飛んでいたのだ。 白人女性は両手に鞭を持ち、男達は剣にマシンガンを展開している。
 『では、パトリオットアルね!』
 ロッカーが30個ほど現れ、扉からはパトリオットミサイルが姿を見せる。 炎を上げながらアッという間に迫ってくる3人の元へ飛んでいく。 鞭や剣、マシンガンで数初を撃ち落とす事に成功はする。 が、残りは3人に刺さり中禅寺湖の方に飛んでいく。
 『不味いアルね!上手く爆発しなかったアルね!爆発!』
 中禅寺湖上で爆炎が上がり、3人は中禅寺湖に落ちて行く。
 『目標の沈黙を確認アル!敵の有効戦力の撃破を確認アルね』
 ガッツポーズをしているとインカムに連絡が入る。 指示を受けた彼女は自動化オートマチックされた塹壕内に入る。 同時にロッカー30個ほどならべて、全ての扉を開けられる。
 『トマホーク発射!』
 少女は、先ほどまでの訛りのある巻き舌の日本語では無く普通の日本語で喋る。 放たれたトマホークは炎を上げながら眼下の陣地へ落ちて行く。 計30本の火柱が上がり、後方陣地に詰めていた隊員達が宙を舞う。
 「さすが、苗場六花いなばろっか先輩の物騒な玩具箱デンジャラスロッカー
 『あら、瑠奈ちゃん。応援に来てくれて嬉しいわ』
 鉄兜をかぶり人民服を着た少女を抱きかかえる。 スキンシップをしている2人の様は戦場に咲いた百合の花。
 「ねぇ、六花先輩?」
 『なにー瑠奈ちゃん?』
 「敵陣地の兵站は残しておいて良いの?」
 『良いんだよ、我々の目的は戦争停止で無く継続なのだから』
 関西勢に対してグンマー校がやったのは兵站物資の根こそぎ殲滅作戦。 兵站が無ければ兵士は食事が出来ないし、砲弾を撃つ事も出来ない。 今回は、タワミ側と南関東側の物資を破壊する事は無い。
 「首席さんも書記さんも不思議です。今回は、南関東の為に兵士を溶かさせるって言うんです」
 『そうね、瑠奈ちゃん。今年の4県の30と40代の失業者率とニート率って知っている?』
 「確かグンマー校と首都圏校は両方0で、東京が1%と5%。南関東は45%と65%でしたっけ?」
 そう驚く事とは、グンマー校と首都圏の失業率とニート率は0なのである。 グンマー校は人口が10万人で、大人の人数は2万人で残り8万は高校生までの子供達。子供達の多くが、他地域で虐めや貧困・飢えに苦しんでいた孤児院の子供達である。首都圏校は人口が1000万人であり、大人と子供の比は6:5となっている。
 両県ともビーストの戦いに直面しており、大量の物資や資源を生産している。 病人と義務教育を受けている者以外は、老いも若きも全員が仕事をしている。 その為に、失業率とニート率は極めて異常なゼロを記録している。
 東京は1200万人の人口であるが、腐っても日本の首都で有るため失業率とニート率は少ない。 っというのは嘘であり、仕事をしない者を南関東校に移送しているのである。 南関東校は生徒会と企業連合が統括しており、人口は1000万人である。 物資等の製造ラインは、自動化オートマチックされている。 その為に人定ソースはダブり、ニートと失業者が多く東京からも押し付けられた為に増加している。
 『人的在庫は減らさないと治安は悪くなるわ、ニートと失業者対策には戦争が一番なの』
 「今の所は10万人ほどが中禅寺湖にいますが、最終的には何人ほど消耗するつもりなのですか?」
 『そうね、人口健全化の為には100万人ほどが消えて貰う事が重要かしら?』
 「100万人……すごい数ですね」
 『さて、お客さんが来たわよ!』
 土煙を上げながら砲撃を開始する戦車部隊と歩兵が突撃を開始する。 彼らの任務はまだ始まったばかりなのだ。

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