グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第124話 激動の戦いへ


 ――2100年5月10日09時30分  華厳の滝
 華厳の滝といえば、日本三名瀑のひとつ。 落差97mの滝が一気に落ちる様は2100年でも変わっていない。 変わっているとすれば人間と環境だろう……。
 滝の周りには多数のカーキ色の服を来た兵士達がいる。 戦車や迫撃砲、120mm砲までが雁首を揃えている。
 「全砲うちかーたはじめ!」
 マイクから声が響きドーン、ドーンっと砲撃が始まる。 砲弾が飛んでいく先は第二イロハ坂のトンネル付近の陣地である。 ドドドンっと爆音が陣地に響く。
 「全員突撃!!!」
 号令と共に派遣兵士達が銃を持ちながら声を上げ突撃する。 同時に、反撃の爆音や銃音が響き隊員達がバタバタと倒れる。 が倒れた以外の隊員達は急な斜面を登り始める。
 『ふむ、効果はあるようだな』 「流石、乃木部長です」 「閣下の慧眼には恐れいります」 『イヤイヤ、作戦立案のつじ係長に隊員の扱いが上手い牟田口むたぐち課長のお陰だよ』
 中禅寺湖の畔に建つ司令部内で椅子に座り、映像を見ているのは3人の男達。 人材派遣会社タワミ、乃木のぎ部長と牟田口むたぐち課長、つじ係長である。 彼らは元は自衛隊や警察のキャリア組で、定年後に天下りをして来た人間である。
 『それにしても、照貴琉男できるおという人物はバカだな』 「そうですね」 「我々に手柄を譲るなんてね」
 言いながら持っている書類をヒラヒラと見せる。 照貴琉男できるおとゴア・ビル特別顧問が書いた作戦書類だ。 書類では日光要塞側には人員不足の為、作戦提案しますという感じの内容。
 それを見たつじ係長が作戦を更に練って牟田口むたぐち課長に報告。 乃木のぎ部長が最終的に決断を下して攻撃が始まったのだ。 デキルオからしてみれば、【計画通り】の様な気持だろう。
 まぁ、その通りになるわけで……。 第二イロハ坂のトンネル前で、反撃を喰らい第一陣は全滅した。
 「第一次は、全滅しました」
 『なんだと!』
 ドローンから送られてくるのは屍累々の映像。 凡そ5千の兵士が僅か30分の戦闘で全滅した。
 これには理由がある。 砲撃をしながら、歩兵の突撃には適合者フィッタ―相手には有効かもしれない。 が、ここの陣地は自動化オートマチック迎撃カウンターシステムである。 敵の砲撃に合わせて、重火器を地下陣地に格納し移動。 突撃してくる兵士には、軽機関銃を塹壕内から攻撃。 移動した重火器を攻撃不能と予測された地点で展開し砲撃を開始。 120mm砲100門の砲撃を受けた兵士達はミンチになった。
 『第二陣と第三陣を出せ!』
 乃木が声を荒げ指示を出した時に、ドローンの前を黒い影が通る。 次の瞬間、120mm砲の陣地が大爆発する。
 『な、何があった』
 「こちら、敵の航空攻撃をうけああああぁ……」
 通信が途絶し映像が切れる。 ドローンから送られて来たのは、前線指揮所と120mm陣地が掘り返された光景。 鉄の塊や隊員達が滝つぼの中に落ちて行く。
 『牟田口むたぐち課長、南関東連合の航空支援は!』 「ムリです!現在は館林と古河の間で大空戦中で出払っています」 『NEO中禅寺湖の米軍に依頼は?』 「あー指揮系統が違いますし、そもそも四軍の最高指揮官は大統領ですから」 『分かった……航空支援は受けられないと事だな!』 「その通りです」
 乃木は左手で顎を掴み、目を閉じ瞑想にふける。
 (相手は航空支援があり、我々には兵力と……あれがあるか)
 『分かった、英仏露の人外アウトヒューマン部隊を使う。その間は通常兵士と砲弾を投入しろ』 「人外アウトヒューマン部隊ですか部長?あれは、未だに調整中の部隊ですよ」 『牟田口むたぐち課長、報告書ではあとは実戦データを取るだけとあったな?』 「はい、そうですが……まさか!」 『奴らに伝えろ、実戦データが取れるぞと』
 いったい人外アウトヒューマン部隊とは何なのだろう? 外人部隊と間違えたのか? イヤ、間違っていは居ない。
 「ヒャヤハハハ、あいつらバカじゃね」 「マシンガンで撃たれて穴だらけじゃねーか」 「ニートじゃなくてよかったわー」 「日本人に生まれ無くてよかったわー」
 ドローンの映像を見て言い合っているは肌の色が黒や白、黄色の男女達。 一般人と違うのは、躰のどこかが機械に置き換わっている点だろう。 彼らは今軍事系で流行の人造人間である。 昔でいう所の0から9の番号を与えられたサイボーグと同じ様な物である。
 だからといって、マッハ5の速さで走れるという訳では無い。 歩く速度は一般人と余り変わらない。 それでは、何が違うのか?
 「おい、全員聞けよ!上から出撃命令だ外装武器ペルソナの最終確認しとけ」
 「「「「OK、ダ―」」」」
 そう、彼らは外装武器ペルソナを躰の内部に付けているのだ。 この世界では、各国の適合者フィッタ―は少なく幼い。 現在の適合者フィッタ―で、歳年長は17歳で日本人が殆どである。 しかも、群馬独立戦争グンマワ―で第一世代はグンマー校と首都圏校に偏っている。
 いずれもビーストの戦いは、日本国内で忙しいと各国の要請は断っている。 何よりこの二県は改正前の憲法九条を執行している為、他国で戦争が出来ない。 その結果……外装武器ペルソナを付けた人外アウトヒューマン部隊が造られたのだ。
 何れも元軍人で戦争中に重傷を負い躰の一部分を欠損した者達である。 元の技術があるだけに、外装武器ペルソナを付ければ100人力である。 が、これらの技術は未だに何というか未完成な物である。
 彼らの周りには、白衣を来たザ・理系という感じの男女が沢山いる。 いずれもタブレット端末から送られてくるデータを見ている。
 「皆さん分かってると思いますが、薬品の効果は30分後からで5時間が限度です」
 「「「「分かっている、大丈夫だ」」」」
 そう言いながら、白衣の男女達は彼らの躰に太い注射を打っていく。 薬品の名前はメンタルギアユニオン、通称マギウス。 人造人間はこれが無いと外装武器ペルソナを最大限に動かす事が出来ないのだ。
 「後は、戦う相手が適合者フィッタ―なのでなるべくデータを取れるようにして下さい」
 「「「「時間を稼いでデータを取れば良いという事だな?」」」」
 「そうです、宜しくお願いします」
 彼らは注射が終わると立ちあがり部屋から出て行く。

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