グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第115話 少年は英雄になる 後編


 ――2100年5月5日09時00分 首都圏校
 首都圏校の首席執務室。 白虎乙姫びゃっこおとひめ首席は判子を押している。 何時もなら、不機嫌そうな顔で判子を押しているが今日は機嫌が良い。
 室内のテレビには複数の局の映像が映っている。
 『先週のエアバスA380の緊急着陸で活躍した件で政府は』 『多数の乗客を救った少年に、国民英雄賞第三級を授与する事にしました』 『英雄賞が授与されるのは、首都圏首席と副首席の第一級を含め3人目です』 『今、少年が姿を見せました』
 テレビの全局が一人の少年を映し出す。 姿を見せたのは、鉄斎少年である。 白地に金の収集の入った制服を着て、メディアの前に姿を見せる。
 「フフフ、賢治首席。最後に笑うのは私だったな」
 「まぁ、今回は君に勝ちと賞金の100億を渡す。我々は最も価値が有る物を得た」
 「一体なんだい?」
 テレビ電話の先にいる賢治首席はペラペラと紙の束を見せる。 何の事だか分からない様で首を傾ける。
 「10年前に小保方春男おぼかたはるおが製作した適合者フィッター目録インデックス
 「ま、まさか実在していたのか!」
 「我々の命である能力の目録インデックスに比べたら、100億の方が安いだろう」
 「確かに、そのデータは金より重い。お主、それをどうするつもりだ?」
 「燃やそうと思ってね」
 左手に書類を持ちながら、右手にライターを取り出す。 予想だにしない答えに思わず乙姫の手が止まる。
 「これは誰の手に渡っても問題が起きる」
 「グンマーは各適合者フィッターの情報を得られるではないか?」
 「有っても存在が公になれば、争いの元になる」
 そう言うと書類に火を付けるとメラメラと燃え始める。 暖炉に放り込むと炎を上げて燃え始める。 それを見届け、賢治首席は乙姫の方を向き口を開く。
 「鉄斎君は、国民英雄賞第三級をゲット。以外に政府も腰が重いね」
 「そりゃそうだろね、私と誉ちゃんの為に創った賞だもんね」
 「グンマー首席に対抗して、君を首席に成さしめた賞でもある」
 国民英雄賞とは、10年前に出来た日本政府が与える内閣総理大臣表彰。 三級から一級まであり、10年間で表彰された者は居ない。
 それには、10年前のグンマー独立後を説明する必要がある。
 10年前に、当時の賢治がグンマー校を開校し、首席となり群馬を統治し始めた。 以外にも日本政府は、これを承認した。
 これには、勿論裏が有る。 政府は当時7歳で、群馬の英雄で有った賢治首席の英雄失墜を望んだのだ。 同時に比較する対象を用意する為、乙姫を首都圏の首席にする必要が有った。 その為には、何らかの泊付が必要であった。 急遽作られたのが、国民英雄賞第一級である。
 第一級には、副賞として特定地域の長として管理する権限が与えられる。 政府は、長を支援する義務が有るとなっている。
 「まぁ、色々あったけど。グンマー校は発展したよ」
 賢治首席はこういうが、周りから見れば異常の一言である。 グンマー校は当初の1万人から年次1万人の増加。 食料自給率も150%で、全ての資源を自県内で賄い他県に依存していない。 3年前には、ビーストに占領されていたスイス・イタリア・ヴァチカンを開放。 ローマ法皇には、適合者フィッターが人であると祝福を貰った。 更に言えば、4年前から米軍との●●テロの戦い●●●●も行っている。
 「そっちが異常なだけだよ、どんな魔法を使ったは知らないけどさ」
 「知らない方が幸せという場合も有るんだな。彼の表彰が始まるね」
 「そんな事より、そっちは日光安全保障局N・S・Aが攻勢を始める頃だね」
 「そうだね、情報部の報告だと二・三日後くらいに春季攻習スプリングテスタメントをするみたいだ」
 「春季攻習スプリングテスタメントか……襲学旅行アサルトトラベリング並の迷語だな」
 「ハハハ、重要なのは【建前】と【同音異義語】、そして【同床異夢どうしょういむだよ】
 「フフフ、その通りだね。でも、貴方とは同じ夢を見れそうだね」
 「流石に君も殺され掛けて目が覚めたかい?」
 「まぁ、そうね。フフ」
 乙姫も変な笑いを浮かべる。 5年前のグンマー首席暗殺以降、首都圏とグンマーは仲が良くなっているのだ。 グンマーから大量の技術や人的交流が、内密に行われているのだ。
 この仲の良さが世界的にヤバイと、専門家の間ではこの様に言われている。 どれだけヤバイかというと……【全盛期の21世紀的な倫理観と技術を持ち迫害が無く、綺麗なナチスとソ連が盟友マブダチになった感じ】 これだけで、如何に危険で危ない存在だかを分かって貰えたと思う。 だが世界各国はグンマー校と首都圏に脅威を感じながら、期待もしているのだ。
 「さて、彼は今度は山梨と長野南部を制圧に参加するのかな?」
 「その通りだよ、私達が彼を英雄にして上げるのよ」
 そう言っている間にも鉄斎少年は、内閣総理大臣の阿倍野見玖須あべのみくすから賞状を貰い握手をする。フラッシュが焚かれ、拍手が響き渡る。
 世界は2人の予定道理に動いており、平和である。

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