グンマー2100~群像の精器(マギウス)
第105話 羽田空港狂騒曲 (11)★
――2100年4月28日16時00分羽田空港
羽田空港内の駐車場。 一台の装甲車が、滑る様にして入っていく。 周りには、同じ様に装甲車が止まる。
一体誰が護送されているのだろうか……。 中から出て来たのは、白髪に黒目の老人。 肌の色は黄土色で、顔は深い皺で覆われている。 体の調子は悪く、ほっとけば死んでしまいそうな老人である。
<a href="//19656.mitemin.net/i237245/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i237245/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
何故にグンマー校は、こんな老人を殺そうとしているのか?
「久保方博士、お待ちしていました」
『ご苦労様です。今日は宜しくお願いします』
「我々の面子に掛けてお守りします」
老人の名前は、小保方春男。 適合者研究の第一者である。 ただ、【適合者は生きた機械】等の問題発言も多い。
その為、グンマーの脳業部とは敵対している。 学会等でも、勿論互いに非難し合う犬猿の仲。 ある時に部長の宇佐美が、久保方の非合法な実験や人体実験を公表。 それを機に、表舞台から姿を消していた。
先日の適合者の少女達の暴行にも関わっていたと発覚。 潜伏先からいち早く、政府に保護を求めた。 新聞では、司法取引をしたと話題に成っている。
『何としても、生き延びのなければ』
ぶるっと、躰を震わせながら呟く。 それというのも、先日か暗殺未遂が10回程あったのだ。 正体は不明だが、久保方には分かっていた。
『グンマーの脳業部が私を殺しに来ている』
「脳業部?確か研究開発部門でしたね?彼等が暗殺を?」
『ああ、そうだ!これを見た前』
腕を捲り、包帯を取る。 現れたのは、何かが刺さった跡。 大きさ的には、直径1cm程でペンが刺さった程度の太さである。
『腕に、ペンが刺ささったのだ!』
「う、うでにペンが?」
『グンマーは、ペンは剣より強しを字で行くのだ』
そう、グンマーを含め日本では銃を持つ事は一部を除き許可されていない。 通常ならば、銃を持つには許可というペンで書類にサインをして貰う必要がある。 【ペンが剣より強し】というのは、本来ならそういう意味で使われる物である。
が、グンマー校では別な方法に使われている。 外装武器の弾と使われている。 勿論、銃形でありりビーストから精製した特殊な鉄を使用している。 銃の定義は、日本では銃砲刀剣類所持等取締法で決められている。
法律では銃は、金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃の事を言う。 グンマー校が主に使うのは、電磁誘導を使ったレールガンと反重力を使った物である。 何れも外装武器を使用した武器であり、引き金が無い。 そして、発射に使う弾はペンである。
<a href="//19656.mitemin.net/i237247/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i237247/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
よって法律の観点からみれば、違法では無い。 違法で無いため、罰する事は出来ない。 国会で審議はされているが、如何せん進む余地はない。 【ペンは剣より強し】である。
それを改訂されると困る勢力が、あの手この手で邪魔をしているのだ。 お隣の国だったり、太平洋を隔てた国だったり。 色々な勢力の代表者が反対している為、法整備が上手くいっていない。
『ところで、私が乗る便の時間まであと何時間だ?』
「2時間です!搭乗開始が1時間前です」
『そうか……大丈夫なんだろうな』
「大丈夫です、現在此処は我々が制圧しています」
『だと良いのだが』
久保方は、心配そうな声を上げる。
突然、護衛官の男が厳しい顔になる 耳の付けた骨伝導マイクで会話を始める。
『どうしたのだ?』
「此処は危険です。避難します」
地下の扉からダダダット銃撃音が響く。 男が目配せをすると、他の武装をした男達が扉の方へ向かう。
「博士は此方に」
男は博士を引っ張りながら、他の隊員達と共に別な扉へ走り始める。 博士と男達が駐車場から抜けたのと同時に、銃撃音が止み扉が吹き飛ぶ。
煙が晴れ、中からは2人の少年少女が姿を見せる。
「あれ、お兄ちゃん獲物いないね」
「そうだね、妹。取り敢えずそこの人達に聞けば分かるかな?」
「グンマーだ撃て!!!」
声と共に駐車場内に銃撃音が響く。 暫くして、場内は血染に染まり2人の少年少女達が立っている。 隊員達の全身には、多数のペンが刺さっている。
「さて、アイツを殺して私達が」
「来年の部費をゲットする」
物騒な会話をしながら、2人は老人達が逃げたと思われる扉へ足を向けた。 どうやら、彼等を狙う複数の勢力が居る様だ。 役者達は揃い、狂る狂ると舞台は稼働を始める。
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