グンマー2100~群像の精器(マギウス)
第101話 羽田空港狂騒曲 (7)
――2100年4月28日12時00分羽田空港
羽田空港内の社長室、中年の男が突っ伏している。
『これで、わが空港は救われるぞ』
「よろしかったのですか?アノ県と協定文書を作って?」
『問題は無い、むしろ我々は利益に預かれるぞ』
男は秘書に合意した合意文章を見せる。 秘書は、渡された文章を眺める。
~~合意文書~~
羽田は、グンマー機の乗り入れ数を増やす。 この時の所属は、ヴァチカン国であり機体の紋章は鍵を使う。 滑走路の着陸料及びその他の資金はグンマー校が支払う。
所属がヴァチカンである為、協定には違反せず規定道理の着陸数に収めている。 万が一にもこの件が露見してもグンマー校は責任を取らない。
 ~~終了~~
『後は、警備を派遣に変える様に』
「分かりましたが、派遣に変えて良いのですか?」
『人的被害を出さない為だ』
ここでの派遣というのは、民間警備会社の事である。 PMCを使うというのは、良い点と悪い点が有る。
悪い点は、雇用費用が高いという事。 大体正社員の5倍から10倍の費用が掛かる。
良い点というのは、雇用者企業には何か有っても責任が無いという事。 例えば、死亡したりしても死んだにカウントされない存在。 更に、任務中に死んだ場合は支払いの義務が無い。 多くの国や企業からは、大変都合の良い人材なのだ。
『空港に被害が無ければ、派遣が何人死のうと構わない』
「そうですね」
『我々に求められるのは、利益のみ。派遣などどうでも良いのだ』
社長は、タバコを口に入れ自由の女神型ライターで火を付けた。
◆ ◆ ◆
鉄斎少年と先輩少年は、空港内のラウンジで時間を潰している。 一見暇そうにしているが、周りを注意深く見ているのが伺える。
「先輩ーっつ、ここでダラダラしていて良いんですか?」
『問題は無い、グンマー校の標的は此処に来る』
「それなら、よりいっそう警戒しないと!」
『まぁ、そういう仕事は彼等に任せよう』
食べていたフライドポテトを周りに向ける。 周りでは、多数の警官や刑事が職質をしている。
『鉄斎、我々の仕事は暗殺を阻止する事だよな?』
「ハイ、そうです」
『ならば、我々は仕事が来るまで待つことにする』
そう言いながら、ウェイターが持ってきたパフェを頬張る。 ただのパフェでは無く、羽田名物のバケツパフェである。 お値段にして、1万円と高い。
普通なら4、5人で食事で食べる所。 それを一人で食べられるのは、適合者ゆえだろう。 アッという間に、バケツの中に入れられたパフェが無くなる。
『鉄斎も食べたらどうだい?』
「イイエ、大丈夫です」
『食べないと、元気が出ないぞ!』
「はぁ……そうですが」
溜息を吐いている鉄斎少年。 鉄斎少年の背後のテーブルにも、料理が届けられる。
「レバノン料理のファラーフェル、ファターイル、タブーリです」
「ありがとう」
イケメンフランス人パイロットが、ウェイターにお礼をいう。 男が食べたのは、ファラーフェルというヒヨコ豆のコロッケである。 丸い形のコロッケを切ると、中には香辛料の良い匂いが広がる。
「流石、羽田!何でも揃っていて美味しいな!」
次に食べるのは、ファターイルという肉をキャベツで包んだ料理。 パリパリとキャベツの小気味よい音と共に肉汁が男の頬を伝う。 男は、それを気にせず食べ続ける。
「やはり、日本の肉と野菜は新鮮で旨いな」
嬉しそうな声で、タブーリを手にする。 タブーリとは、三角形のパンである。 中には挽肉、ホウレン草、フレッシュチーズを入れた物。 中東版の肉まんの様な物だ。
「旨いな、ヤハリ日本で食べるレバノン料理は最高だ」
アッという間に、男は食事を終える。
「食べたら、眠くなったな。仮眠室でも行くか」
アクビをしながら椅子から立ちホテルの方に、消えていった。 男が手に持っているのは、銀色のアタッシュケースだった。
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