グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第98話 羽田空港狂騒曲 (4)★


 ――2100年4月27日09時00分羽田空港
 鉄斎少年は、暇そうに空港内のソファーで寝転がっている。 先輩少年も同じ様に、雑誌を顔に当て寝ている。
 「先輩、起きていますか?」
 「……」
 返事がない……ただの先輩の様だ。
 鉄斎少年は起き上がり、周りを見渡す。 コツコツッと音を立て歩いて来たのは、白人の男性。 日焼けした丹精な顔立ちに茶髪と茶色い瞳、パイロット服を着ている。
 <a href="//19656.mitemin.net/i237023/" target="_blank"><img src="//19656.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i237023/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
 女性陣には、大変モテそうである。 暫く周りを見たあとに、鉄斎少年の横に座った。
 『やぁ、少年。学校は行ってないのかね?』
 「イエ、勉強の一環で来ています」
 『そうか……今、時間あるかい?』
 ふっと優しそうな瞳を笑わせ、鉄斎少年の方を見る。
 (も、もしかしてそっちのケがあったり)
 思わず鉄斎少年は、男から離れる。 それを見た男は、少し戯る様に両手を上げる。
 『ああ、私はそっちのケは無いから安心したまえ』
 「本当に?」
 『ああ、そうだ。娘の誕生日プレゼントを買ってやりたくてね』
 そう言いながら、男は鉄斎少年にスマホの写真を見せる。 黒髪・黒い瞳の何処にでもいる女子中学生であった。
 「娘さんは、適合者フィッターなのですか?」
 『イヤ、違う。普通の子だ、年頃の子というのは難しい物でね』
 ポリポリと恥ずかしそうに、頬をかく。 どうやら、同じ年代の彼に娘に似合う様な物を選んで欲しい様だ。
 「なるほどー協力します」
 『私の名前は、ボナンだ宜しく』
 ボナンと名乗るパイロットは、手を出す。 鉄斎少年も手を出し2人は、握手をした。
 ◆  ◆  ◆
 ここは、羽田空港内の免税店。 ただの免税店では無く、高級品の女性物が並ぶ店だ 安い物は1万円から高い物は1千万以上している。
 「た、高い……」
 鉄斎少年は、思わず絶句する。 小さいブローチが300万、ピアス型ダイヤが500万。 男が使う安物の服や物とは、全く違う別世界なのである。
 『ハハh、君も驚いたかね?私は慣れたよ』
 ボナンは笑いながら、店員らしき女性に商品を指差す。 出されたのは、アメジストの宝石達。 紫色の宝石が、指輪やイヤリングに付いている。
 『君なら、どれを上げたいかね?』
 「ウーン、指輪もピアスも中学生に早いと思います」
 『そうなのか?』
 ボナンは、首を傾げながら店員に別な物を依頼する。 次に出てきのは、ネックレス。
 『これならどうだい?』
 「服の中に入れられますし、良いと思います」
 『そうか!分かった此れにしよう』
 置かれていたネックレスの中で、一際輝いている物を示す。 値段は、1000万円と表示されている。
 「ちょ、待って下さい」
 『どうしたのかね?何か問題でも?』
 「有りすぎです!中学生に高い物持たせてどうするんですか?」
 『ふむ、そうなのか?では、君が選んでくれたまえ』
 腕を引っ張られ、鉄斎少年は並べられた宝石達を見る。 ライトに照らされ、キラキラと紫の宝石達が光る。
 (うう、分からない。でも、僕なら此れを買うかな?)
 一番右隅に置かれた、花の形をした宝石が付いたネックレスを指差す。 それを見た店員が、声を上げる。
 「桜の花ですね、良い花言葉になりますね」
 『桜の花言葉とは?』
 「精神の美、優美な女性となっております」
 『気に入った!買おう』
 値段は50万円と表示されていたが、ボナンはカードで支払った。 呆然とその会計の様子を見る鉄斎少年の肩をボナンが叩いた。
 『お礼に、食事でもレバノン料理が美味しい料理があるのだが』
 「い、いえ。お腹は空いていませんので大丈夫です」
 『そうか、私の少しばかりのお礼だ。彼女に何か買って上げなさい』
 鉄斎少年の手に、分厚い札束を渡す。 何かを言おうとしたが、ボナンは立ち去っていく。 呆然と見送る鉄斎少年、優雅に歩くボナン機長。
 暫くしてボナン機長は、男子トイレに入る。 バタンと扉を締めると、そこに機長の姿は無かった。
 『鉄斎君に選んで貰った、うふふ』
 色素が薄い紫のツインテールに、紫水晶の様な瞳が特徴の少女が笑っている。 グンマー校首席秘書の中居屋銃子なかいやじゅうこである。
 彼女の手の平には、紫色の桜を象ったアメジストのネックレスがキラキラ光る。 首に付けると、白い肌にアメジストの紫が映える。
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 『さて、私の任務は終了。次は、両校の首席様の依頼』
 再び、指輪を付けると黒髪黒目のサラリーマンに姿を変わる。 個室から出ると、掃除用具入れを開ける。 其処には、黒髪黒目のサラリーマンが寝ていた。
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 『ありがとう、役に立ちました。財布とスマホ返します』
 畜生である……。
 たまたま、トイレにいた出張帰りのサラリーマンを確保。 スマホの待ち受けにしていた娘の画像と財布のカードを使用。  そして、高額のネックレスを買う。 鉄斎少年に渡したのは、サラリーマンの財布内に入っていた金で有る。
 『ではでは、さようなら』
 財布とスマホを戻し、扉を閉めた。
 数時間後、サラリーマンは目を覚ます。 そして、一ヶ月後に多額の金を引き落とされた事に絶句するのであった。

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