グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第97話 羽田空港狂騒曲 (3)


 ――2100年4月27日09時00分羽田空港
 2人の少年達がタブレットを覗き込んでいる。 一人は鉄斎少年で、もう一人は先輩少年である。
 『鉄斎、どうやら成田が封鎖された様だな』
 「本当ですか?」
 『本当だ、フランス機が滑走路で爆発、近くの爆弾も爆発』
 画面に映るは、火の海になっている成田空港の滑走路。 羽田と同じ様に多数の滑走路が有るが、飛び散った破片で使用出来ない。
 『さっきの奴がやった』
 「まさか、羽田から成田を狙ったというのですか?」
 羽田から成田まで凡そ北東に60km。 そんな距離をモップで狙うなんて、信じられない事である。
 『が、やったのは老婆で無く。グンマー首席だ』
 「グンマー首席!?あの老婆がグンマー首席?」
 『ああ、あの雰囲気っと刹那の殺気は、グンマー首席だ』
 「グンマー首席を随分ご存知なのですね」
 『ああ、任務で一回暗殺しに行ったからな』
 さらりと凄い事を言う。 この先輩少年は、一度グンマー首席の暗殺目的でグンマ校に潜入。 結果として暗殺には失敗、這う這うの体で逃げて来たのだ。
 『証拠は……あの首席の事だ……無いだろう』
 「そうなのですか?」
 『なんと10万人を暗殺しているという噂だ』
 ここに賢治首席がいたら、500とんで1になったと言うだろう。 10万人を暗殺といえばトンデモ無い数と思うだろう。 だが、賢治首席は求められて対価を貰い暗殺をしただけ。 決して、彼は殺戮者では無い。
 前に彼は海外メディアに、同じ様な事を質問された。 彼は暗殺をしているとは、答えなかった。 ただ、ある言葉を紹介している。
 【需要が有り供給するのが、資本主義】 【常に顧客の需要を満たせる様に、世界の需要を注視している】
 『まぁ、そういう訳だが。アイツは誰かと会う予定だったんだと思っている』
 「まさか!ここにグンマー校の暗殺者が!」
 『ああ、間違えなくいる』
 2人は客で溢れる、ロビーを見下ろす。
 ◆  ◆  ◆
 同時刻、とある男が機体の中で通話をしている。
 『大使閣下、宜しくお願いします』
 「ああ、分かった。なるべく早めに開放する様に依頼する」
 電話を切り、窓の外を眺める。 来た時は、ビジネスクラスで有ったが帰りはファーストクラスである。
 「皆様、本日もエア・アメリカをお使いいただきありがとうございます」 「本機は、もうしばらくしましたら離陸いたします」
 アナウンスがされる。 男は、タブレット端末を操作してるとメールが来たと表示される。
 (ん?知らないアドレスだな……)
 添付された資料は無く、文章だけの様だ。 手順通りに、男は所属する組織製の最新ウィルス判定ソフトで確認する。 【異常無し】っと表示される。
 (まぁ、任務が終わったら捨てる端末だし良いか……)
 男はメールを開く。 そこには、大量の文章と写真が貼られていた。
 (こ、これは……)
 表示されたのは英国、大漢民国、露国、日本、仏国の各国スパイの関係者情報。 丁寧に相関図まで、設置されている。 最後に書かれた文責者の名前は、至誠賢治。
 (ミスターケンジ、貴方は何を狙っている)
 ファーストクラスの椅子を倒しながら考える。 見ているタブレット端末には、危険で危ない情報が入っている。 相関図の最後には、米国の政府高官達が多数を占めているのだ。
 更に、同じアドレスからメールが送られて来た。 男は内容を確認する。
 【途中で、送ちゃったゴメン】 【情報は、羽田空港内にいたスパイを殺って、脳をチュウチュウして出したよ】 【情報は好きに使って良いよ、可能なら謝礼くれると嬉しいな】 【くれるなら、何時ものスイス銀行の口座へ】
 っと気前良く書いているが、逆に読めば脅迫とも捉えられる。 【お金くれないと、お前の頭をチュウチュウしちゃうぞ】 こういうふうに、言っている訳で有る。
 (まずは、本部に戻ってから相談だな)
 そう思っているとピンポーンと音が鳴る。
 「皆様、お待たせしました。これより離陸します」
 機体が動き始め、滑走路へ侵入を始める。 精神伝導メンタルトランスエンジンが静かに動き出し、空を駆け始めた。

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