グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第95話 羽田空港狂騒曲 (1)


 ――2100年4月27日05時00分羽田空港
 「暇ですね……先輩」
 『ああ、暇だな。まだ朝の5時だしな』
 フードコーナで、鉄斎少年と先輩少年は言い合っている。 そんな時にカラカラと音を立て、掃除の老婆が掃除台車と共に現れた。
 『鉄斎、気がつかねーかー』
 「何がですか?」
 『あの老婆、足音がしない』
 鉄斎少年は、耳を澄まして音を聞く。 適合者フィッターである彼の耳には、足音が入ってこなかった。
 「確かに先輩聞こえませんが、何か問題でも」
 『さらに、僅かだが血の匂いがする』
 クンクンと鉄斎少年は、鼻を動かすが首を傾げる。 どうやら、気がつかなかい様だ。 先輩少年は、食事を片付け老婆を追い掛け始めた。
 ◆  ◆  ◆
 カラカラという音を拾いながら、先輩少年は老婆を追いかけた。 従業員専用通路に老婆が入った事を確認し、先輩少年はナイフを投げる。 ナイフは、老婆に吸い込まれる様に入ったと思いきや床に刺さる。
 『やっぱ、あんた只者じゃねーな』
 先輩少年は、メンタルギアであるナイフを展開させる。 老婆は何も言わず、掃除用のモップを槍の様に持っている。
 「久しぶりかな?10年ぶり、イヤ5年ブリかな」
 『なっつ!』
 アッという間に老婆は、先輩少年の鳩尾に掃除用のモップを叩き付ける。 避ける間も無く、先輩少年は直撃を受け床をビタンビタンと転がる。
 「センパーいいいい!」
 「鉄斎君も元気そうで何より」
 「貴様!先輩になに……ぐほっつ」
 鉄斎少年はメンタルギアの刀を出す前に、モップで叩きつけられ床に転がる。 よろりと立ち上がったのは、先輩少年。
 『貴様の狙いは、何だ!俺たちの命では無いな!』
 「うん、そうだよ。僕の狙いは、あそこさ!」
 モップが投げられパリンと窓ガラスが割れる。 自分の方へ飛んでくると思っていた先輩少年は呆然と立っている。
 「5時15分着、仏発成田着便、仏国軍参謀長が搭乗中の機体を破壊完了」
 『暗殺だと、貴様はまさか!』
 最後の言葉を言う前に、先輩少年に運んでいた台車が投げられる。 台車に載っていた物達が転がり床に落ちる。 4人の男女が床にビタンと叩き付けられるが、ピクリとも動かない。
 「し、しんでいる」
 鉄斎少年が声を上げるが、先輩少年はそちらを見ず老婆を睨む。
 『貴様は、賢治首席か!?』
 「さぁ、誰だろうね?」
 『化けの皮を剥いでやるさ』
 無数のナイフが、老婆に向かって飛んで行く。 老婆はナイフを避け、非常口に走り姿を消す。
 『逃がすか!』
 先輩少年も非常口に入ったが姿は無かった。
 『くっそ!逃げられたか!』
 言葉を吐きながら、ナイフを仕舞う。 後ろを振り向くと鉄斎少年が尻餅を付いている。 どうやら、人の死に慣れていない様だ。
 『鉄斎大丈夫か?』
 「な、なんとか大丈夫、ぐぇ」
 突如として、鉄斎少年は口に手を当てる。 床に落ちた死体から、猛烈な血の匂いがし始めたのだ。 血に慣れていない鉄斎少年は、吐きそうなのだ。
 『とりあえずッツ!逃げるぞ!』
 「は、はい」
 2人は非常口から逃げ出した。 逃げ出した2人を別なところで見ているのは、先程の老婆。
 「さて、僕は任務終えたから帰るね。後は宜しく」
 「了解しました、首席様」
 老婆がリングを外し、ウサ耳少女に渡す。 ウサ耳少女は、黒髪黒目の青年に姿を変えた。 老婆は、黒髪黒目の少年に戻った
 「じゃねー」
 一陣の風が吹き、少年の姿は消えた。 青年は、逃げる少年2人を見つける。
 「さぁ、楽しい狂騒曲パーティの始まり始まり」
 口角を上げ、爛々と瞳を光らせながら呟く。

「グンマー2100~群像の精器(マギウス)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く