グンマー2100~群像の精器(マギウス)

奈楼小雪

第86話 うさぎ追いしかの事件(やま)中編★

 ――2100年4月25日09時00分東京
 鉄斎少年は、目を覚ました。 ベッドの上では無く、機械の中で有った。
 (健康増進装置ヘルスマシンの中か……随分時間が掛かったな)
 「おはよう、騎士くん。お目覚めかい?」
 ガラスの向こうには、メガネを掛け白衣を着た女医が立っている。 周りには、同じ様に生徒達が入っている。
 「君は全身を強く撃った程度●●●●●で、一番重症だったよ」
 データが、鉄斎少年の前に表示される。 適合者の全身を強く撃った程度●●●●●は、一般人でいう所の全身骨折。 報道ニュースが、言葉を濁すのに使う心肺停止前の状態。
 「他の同級生君達も中々、エキサイティングな怪我だよ」
 ある女子生徒は、腕が吹き飛び背骨を骨折。 別な男子生徒は、顔面を骨折。 何れも、一般人なら再起不能になっている。
 「適合者フィッターの君達が羨ましいよ」
 棒付きキャンディーを舐めながら画面を操作する。 腕が吹き飛んだ、女子生徒の腕が生え元に戻る。 顔がボコボコの男子生徒は端正な顔に戻る。
 「メンタルギアユニオン、通称マギウスの力は偉大だな」
 心臓と脳が動いていれば、どんな部位でも復活出来る。 そう言っている間に、鉄斎少年の躰も修復される。
 やがて、健康増進装置ヘルスマシンから元気な鉄斎少年が出て来た。
 ◆  ◆  ◆
 躰が元に戻った鉄斎少年は、パソコンの前に座っている。 ある件に付いて、調査をしているのだ。
 (あれは、本当に彼女なのか……)
 胸元に隠しているダイヤを握り、鉄斎少年は思う。
 取られた映像に映るは、ウサ耳の少女。 顔認証から、前橋宇佐美まえばしうさみである事は確定。
 『お、全身骨折から復活か!』
 「先輩!お仕事終わったんですか?」
 『ああ、ゴミをこの世から断捨離して来た』
 そう言いながら、パソコンを覗き込む。 暫く眺めていて、口を開く。
 『これは本物なのか?違和感があるぞ』
 「どこにです?」
 『ここだ、ウサミ耳を良く見ろ』
 映像を拡大すると、ウサミ耳が映る。
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 何時も宇佐美が付けているウサミ耳と違う。 他にもスカートや白衣が色々と違っている。
 更に先輩少年は、データを抽出すると精神波マギウス波が表示される。 これは、適合者によって千差万別。 つまり、一般人でいう指紋の様な物。
 これを前橋宇佐美まえばしうさみのデータと照合。 結果は……。
 【 不一致アンフット 】
 「先輩っつ此れはどういう事ですか?」
 『偽物だと言う事だ』
 「偽物……?」
 モニターを覗き込むが、本物にしか見えない。 顔認証でも100%一致していると表示されている。
 が、あの時の事を思い出す。 爆炎の中で飛び散った破片に当たった時、見えたのは彼女。
 『そういえば、仕事をしていて手に入れた物が有った』
 先輩少年は、データを見せる。 其処には護衛対象の男達や研究者、刑事様々な職業の人間が載っている。 最後には、孤児院の院長が載っていた。
 『とある組織が、何かを調べて脅迫材料に使う予定だったみたいだ』
 鉄斎少年に先輩の声は、届いて居なかった。 最後の院長が経営する孤児院は、自分が生まれ育った所だったのだ。
 「先輩、孤児院の院長に会いに行っても良いですか?」
 『あ、うん。本部に此れを出すから、早めに行きな』
 椅子から立ち上がり、鉄斎少年は急ぎ孤児院へ向かう事にした。
 (何か嫌な予感がする)
 その気持ちを裏付ける様に、東京の空は曇り始めた。
 場所は変わり、一人の少女が教会の前で歩みを止める。
 「依頼●●は完了された様ですね」
 封鎖された孤児院の入口を見て笑顔になる。
 そして、両手に銃型メンタルギア●●●●●●を展開し教会の扉をブチ破る。
 「懺悔の時間よ!」
 少女の声が、教会の中に響く。

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